世界に向けて

 今日も傭車には仕事が回ってこず、休みになった。三連休だ。


 昨晩梱包したカナダの友人への誕生日プレゼントを、久しぶりに地元の郵便局に出しに行く。少し前、eBayで日本の骨董品を販売していた時には毎日通ったものだが、今ではすっかりご無沙汰になってしまった。eBayの私の店は一応まだあるが、メインのアメリカにはまだ国際貨物を送ることができないので、事実上の開店休業だ。


 久しぶりに行く窓口は、すっかりコロナ対策が施され、以前の様子とは様変わりしていた。局員の方々とは顔なじみだったが、局長と、いつも窓口を担当して下さっていた女性の方以外は、すっかり顔ぶれが変わっている。


 私がうろうろしていると、背の高い男性の方が対応してくれた。いつもの方は、おそらく10時からなので、まだ来ていないようだ。


 給付金が入ったので、隣の窓口で自動車税も納めた。ここ数年はコンビニで収めたり、ネットから送金したりしていたが、やっぱり顔と顔を合わせて支払いをするのは何かが違う。こちらの方も、私が国際郵便を持って行った際、何度か対応して下さった方なので、恐らく私のことをわかっていると思う。


 一時期ではあるけれど、こうやって、朝、郵便局で荷物を出して、その後は家に帰って商品を出品したり、問い合わせの英語のメールに返信したり、そんな生活をしていたこともある。帰り道、やけに天気が良く、その頃のことを思い出した。

 

 その頃、少しずつ積み上がってしまった借金を、今、運転手のバイトで返済している。朝の柔らかな光の中を歩いていると、少しだけあの頃に戻りたいと思う一方で、安定した運転の仕事からは、やはり離れることはできないよなと、再度実感する。以前の私なら、何とかならないかと考えたものだが、どうやら安定志向に、歳を取ってしまったようだ。



 メダカが増えて来たのでどうしようかと考えていると、ビオトープというものを発見した。睡蓮鉢やボウルなどで生物群集の疑似生息空間を作り、その中でメダカを飼う、というのが流行っているよう。何の気なしにYouTubeを見始めたらこれまた大失敗、午前中いっぱいをYouTubeに費やしてしまった。


 いくつかのチャンネルを見たが、やはり動画が上手にできている。私の物なんかハナクソだと思う一方で、この人たちはどうやって生計を立てているのだろうと思った。とある方は、若い頃は世界各地を旅行し、今はとある地域に落ち着いて、ビオトープを作ったり、好きなことをしながら暮らしている。


 私も途中までは同じだったのかもしれないが、最後まで走りきることはできずに、何だか中途半端にここまで来てしまっている。何度か同じ思いをしたことはあるが、自由な暮らしをして、今も同じスタイルで頑張っている人をうらやましく思ってしまうことが時々ある。今回も同じような気持ちになった。


 私は生まれながらに、人と違うことを好んだり、人と違う行動をしたりする習性がある。屋久島での田舎暮らしはまさにそれで、自分ながらに上手く行っていたと思っている。その後、環境は変わってしまったが、頭の中の脳みその成分なんて、そう簡単に変わる物じゃない。


 さあ、世界を舞台に、何か面白いことをしでかそう。と、言うだけ言ってみたところで、なかなか難しいのが現実だ。走り出す前に、こんな風に考えてしまう時点で、歳を取っている。


 ホームセンターへ行って、大きな睡蓮鉢を買ってこようとも思ったが、気分が乗らない。いい天気の平日、一人の時間も、もうすぐ終わってしまう。


 こうしてこれを書けただけで良しとしよう。


 まずは基本の、大きな庭をきちんと手入れすることからはじめてみようか。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る