〈マッスル24〉 グリム童話
「萌ちゃん……。現場の状況で、何か気になった所はなかったかい?」
デジルが尋ねて来る。
「うーん、鍵が中からかかっていて、窓が開いていたぐらいかな……。部屋の中央に、亜房先生の頭部が置かれていたんだけど……。何か他に違和感があったような……無かったような……」
そう……。不思議な感じだった。初めて目の当たりにした殺人現場なのに……。亜房先生の首がポロっていたのに、私は思いの外、冷静だった。
「ちょっと、もう一回現場に戻ってみる……!」
やっぱりあの部屋に何かがある。私の本能がそう言っていた。多分だけど……。
「何かあったら大声で助けを呼ぶんだよ! ボクが、この屋敷ごと破壊して助けてあげよう!」
デジルが意味の分からない事を言っている。無視して、私は亜房先生の首がポロっていた現場にまで戻った。
私が破壊した薄いドア。
そして、部屋の中央に亜房先生の頭部がある。
やっぱり、直視はできない!
とりあえず、恐る恐る部屋の中へと入り、何かヒントになる物はないかを探す。私が階段を壊してしまった以上、責任をもって手掛かりを探さなければならない。
首ポロ様なんて現実にはいない。
きっと、生きた人間の仕業に違いない……。
ん、待てよ?
そもそも2階って体重制限があるんだった……。
となれば、明らかに筋肉達は重量オーバー。まぁ、私達の身内が犯人だとは考えにくい。この屋敷内で可能性があるとすれば、
じゃあ、首月さん?
いや、そもそも車椅子なのだから、2階に行くことは困難だ。仮に来れたとしても、床が壊れる。
色々考えていた時、亜房先生の頭部の数十センチ先に、夏井さんから借りていたグリム童話の本が床に落ちていることに気がついた。
「あ……」
私は、無意識にそれを拾い上げる。なんとなくそれを見てみたら、ちょうど『金の鍵』と言う物語のページが開いてあった。
ページの角が折れ曲がっている。
なんだか、亜房先生の脆さを思い出した。
結局、収穫は夏井さんの持ち物である本だけ。それ以外に、私の脳みそでは、何もヒントになりそうな物は見つからなかった。
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