第2章 にゃおぱれす殺人事件

〈マッスル11〉 物理的パワースポット

「いやぁ、素晴らしい景色だ! ボクの筋肉も喜んでいる!」


「デジルの筋肉ってさ、いつも喜んでいるじゃん……」


「え、そうかい?」


 あの事件から、1ヶ月の月日が流れた。不思議な事に、デジルとは、毎週休みの度に会う程の仲となってしまった。デジルが私の会社で作っているプロテインを気に入ってくれたし、筋肉達と一緒に居れば、なんだか元気を貰えるような気がするのだ。以前と比べて、ポジティブにもなれた。


「はぁ〜、萌様。やはり、貴女あなたはお美しい! この、刑事・無江なしえ……道中、何が起ころうとも、必ずや萌様をお守り致します……! さぁ、何かご不満はございませんか? 何でも、ご命令ください……!」


「よし、じゃあ今すぐ窓から飛び降りて」


「はぁ〜、棘のあるお言葉もお美しい……」


 今日は、万鳥まとりさんの退院祝いって事で、日帰りのバス旅行。都内を出て、彼此3時間ぐらいはバスの中。都会の忙しさを忘れさせてくれる大自然の中へと来た。


 これぞ秘境。


 車道に沿って流れる川の水の透明度。黄色やあかの葉が付き始めた木々の間をバスが悠々と抜ける。


 本当に素晴らしい場所だ。


 だけど、一緒にいるメンバーが意味不明だ。なんであの厨二刑事まで一緒に来ているの!?


「酒が進むぅ! かんぱぁい!!!!」


 酔っ払いサイドプランク野郎の林田も来ている。それから、景色を観ながらブロッコリーを齧る風炉島ぶろしまさん。当然、万鳥さんもいる。彼は、静かに外を眺めていた。


 そして……。


「林田さん、ダメだよ。こんなにアルコール飲んだら……。ぼく、困っちゃうよ」


 万鳥さんの命の恩人である、亜房あぼう先生も来た。元々、デジルと亜房先生は長年の友達らしく、こうして今でも会う頻度は高いようだ。


 噂通り、可愛い容姿の男性だ。目がパッチリとしていて、私よりも女性らしいかもしれない。


「亜房先生も一緒にかんぱぁい!!!!」


 林田さんは止まらない。林田さんもやっと退院したばかりなのに……。バスの座席を利用して、相変わらずサイドプランクをしながらの飲酒だ。良い子は絶対に真似しないでほしい。


「もう、林田さんったら仕方ないなー」


 亜房先生は困り果てている。しかし、その姿もまた可愛い。


「デジル、まだ着かないの?」


 私達以外に、運転手を除いて、一人だけ緑のベレー帽を被った女性がいるのみ。皆、退屈してないのだろうか? 私は、林田さんのせいで車内が酒臭いから、一刻も早く外の神聖なる空気を吸いたいのだ。


「あと30分もすれば着くんじゃないかな? 萌ちゃん、楽しみに待ってるんだ……!」


 目指すは、パワースポット・筋肉岩。

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