第10話「弓手横」

~コロッセオ(コロシアム)~

現実世界では、当時の皇帝が市民を懐柔するための娯楽施設の目玉として円形闘技場の建設が検討された。模擬海戦が行われると共に、剣闘士試合で様々な猛獣5000頭が殺され、数百人の剣闘士が命を落としている。

名前の由来だが、フラウィウス朝の皇帝が建設者であることから「フラウィウス円形闘技場」が本来の名前である。しかし、ネロ帝の巨大なコロッススが傍らに立っていたためそれと混同してコロッセウムと呼ばれるようになったという説や、円形闘技場があまりにも巨大な建物であったからコロッセウムと呼ばれるようになったという説という諸説がいくつか顕在し、おそらくこの二つが有力説である。


構造はローマン・コンクリート(火山灰を利用したコンクリート)で出来ている。鉄骨を用いないコンクリートにも関わらず幾多の地震の際も崩壊しなかったのは、全体が円筒形で力学的に安定していたためである。


ここの力学を西暦40年で確立していたのが驚きだ。


長径188m、短径156mの楕円形で、高さは48m、約5万人を収容できた(文献により40,000人 - 60,000人と幅がある。4階建てで、アーチは各層で様式が変えられており、1階はドリス式、2階はイオニア式、3階はコリント式になっている。天井部分は開放されているが、日除け用の天幕を張る設備があった。皇帝席には1日中直射日光が当たらないように設計されており、また一般の観客席についても1日に20分以上日光が当たらないように工夫がされていた。円形闘技場に入るアーチは全周で80箇所あり、そのうち皇帝や剣闘士専用のものを除く76のアーチには番号が付されていた。これはテッセラ(入場券)にその番号を記して混乱せずに入場できるようにするためのものと考えられている。


整理券もさることながら、この時代に既にドーム化をしていたのが、すごい!


初期においては競技場にローマ水道より引いた水を張り、模擬海戦を上演することさえ可能だったが、後には「迫」のような複雑な舞台装置を設置したためにそのような大規模演出は不可能となった。

このほかには剣闘士と戦う猛獣を闘技場のあるフロアまで運ぶ人力エレベーターが用意されていた。


コロッセウムの横には噴水が作られた。それは「メタ・スダンス(汗をかく標識)」といわれ、闘いを終えた剣闘士もここで体を洗ったと伝えられている。


(一部Wikipediaより抜粋)



さて、このコロシアムで俺は『屋島の戦い』をしなければならない。

水を入れる抜くにはパパッと出来る。ちなみに収容人数もそんなに多くない。2000名前後の規格で出来ている。じゃあ前述の説明はいらなくねーか?という元も子もない話になるが、そこは、世界遺産を伝えれる大事な箇所であるので説明すべき点はする。なぜなら、中世ヨーロッパを土台のファンタジーがイーリアスの良いところなので関連付けて説明する義務と権利がある。本件は後者に当たり、権利放棄の選択はなかった。




その前に流鏑馬で得点を争う形となる。

流鏑馬の歴史は、平安時代にさかのぼる。6世紀に発生し、メジャー化させたのは源氏の頼朝公の武家政権の鎌倉幕府の時代に行なった。というのを踏まえて頂きたい。

流鏑馬は疾走する馬上から的に鏑矢かぶらやを放ち、日本の伝統的な騎射の技術・稽古・儀式のことを言い、馬を馳せながら矢を射ることから、「矢馳せやばせうま」と呼ばれ、時代に追うごとにつれて「やぶさめ」と呼ばれるようになったといわれています。

【立ち透かし】という、姿勢ができて本来馬上での騎射ができるのだが、そこはゲームなので割愛する。



【立ち透かし】

鐙に脚を踏み立つ姿勢を取り、馬上で弓を引くには体を安定させなければ出来ない。

通常のように座らないのでこの姿勢が正しく出来ないと本来、弓を引けないので、馬上で立ち透かしが出来ないとどんなに馬術に長けた人でも流鏑馬は出来ないと言われている。逆に、立ち透しが出来ると頭や体は揺れず、安定して矢を放つことが可能である。



ちなみに時期的に(9月~10月)に全国各地で開催されているので、ぜひ見に行ってほしい!

地元の流鏑馬や近隣の流鏑馬でも結構です。非常に面白いですし、当たれば「おおっ!」歓声が上がります。素人でも楽しめるものです。稽古でもあり、奉納・厄除け、そして伝統的なスポーツという多角的な視点で流鏑馬は素晴らしい文化だと思います。


さて、準備は整ったようだ。


流鏑馬のルールを説明しよう。

事細かく説明するとダラダラ長くなってしまうのでかいつまんで説明しよう!


そもそも儀式なので、礼儀作法をする。

そして、的は「天下泰平、五穀豊穣、万民息災」を祈念するという目的。

これらの的を二回、馬を走らせて狙う。現実は外しては恥なので、かなりの凄腕の弓術・馬術が求められる。

最後に勝ったものが、勝鬨かちどきを挙げて奉納するというのが、ざっくりとした流れだ。

今回は、かなり簡略化されているらしい。


さてさて、今回は「健康第一、開運厄除、必勝祈願」となっている。

ま、まぁいいか。ゲームだけどちゃんとやろうとしていることが凝っている。

本来であれば、伝統衣装に身を包みやるところなんだが、流石にその衣装はないので、装備のままやる。


さぁお立ち会い頂こう。真弓勝負!!!


どうやら俺をとりまく皆様は俺の失敗を見に来たいらしい。

スカルドさんの気合がどうも全体にいきわたったらしく超満員だ。

中には、別サイトで俺らの対決を放送してるやつも出てきた。そんなに俺に負けてほしいのかよ。

アンチども!!人の不幸は蜜の味という言葉あるくらいだ。こうまでして俺の失敗や悔しがる顔をみたいものなのか?!!まったく民衆というのは、人を公開処刑するのが大好きな生命体のようだ。

まったく。


俺は控室に赴いた。

カルディアやピピン、ユーグまできていやがる!!

「負けるなよ!!」

「マスターの腕前拝見といこうか」

「マスター!!サクッと割っちゃってくださいよぉ!!!」


「わーったわーった!とりあえず、控室にいくからお前らは観客席にいってろ。」


はーいといい、観客席にむかった。


「今何飲みながらやってるの?」

「コーラ」

「俺、スプライト派!」

「俺は緑茶だ!」


と、遠巻きに聞こえた。

ユーグとカルディア、ピピンは俺がいない間に意気投合していた。

ユーグはムードメーカーだったんだな。


部屋に入ると結華がおり、俺に話しかける。


「セイメイさん、先攻と後攻どちらがよろしい?」

「まぁ後攻がいいかな?…。」

「相手が女性だから“レディーファースト”っていいたいの?」

「そういうのじゃない!」

「じゃあ作戦?」

「んなもんねーよ!」

ふーんといい、後ろを向き一呼吸を入れて、2.3歩歩いたところ急にきびすを返し俺に近づき、

「じゃあ殿方がお手本を見せてくださいな♪」といいながらウィンクをしてきた。


これが女のペースか。


しかたない誘いに乗るか。


さて、ファンファーレがなった。俺らは対決の場“戦場”へ赴くこととなった。


~コロッセオ・決闘場~

まぁ現実だとここで何百人という血が流れてていた狂乱の祭典だったと思うと身震いがする。


「あら?怖いんですか?」と結華は俺の顔を伺いながらいう。

「武者震いだ!」


スカルドがコロッセオ全体に声をかける。


「これより、PROUD主催の激戦!青龍偃月刀争奪戦を行います!!」

観客からわーっと歓声が上がる。

スカルドはあーだこーだ大袈裟に演説をしていっているが俺には入ってこなかった。

「…では、協賛のオケアノスより、英雄アイオリアさんからの挨拶をお願い致します。」



「諸君!!私がアイオリアである!!」



わーっ!!!!『アイ・オリ・ア!』『アイ・オリ・ア!』『アイ・オリ・ア!』『アイ・オリ・ア!』

と、アイオリアコールがかかる。それをなだめるように、手を翳し静粛を保たせる。


コイツ…。自分がやらねーから楽しんでやがる…!



「諸君らも知っておろう!わが主!!セイメイ“様”がオケアノスの実力を見せつけるため、PROUDに対して親善試合を申し込んだ!!!」


ちょっとまてーーーーぃ!!!!俺は試合申し込まれた方だ!!!!!!!

あいつは、俺をダシに面白がってるだけじゃねーか!!!!

しかも様ってなんだよ!!いつからお前は俺に様をつけることにしたんだ?おい!!!


演説は続く


「PROUDのスカルド氏はこれを快諾、試合条件を弓とし、平和的且つ、和洋折衷のコラボレーションをここに実現させようとし、今日この場で成し遂げたのだ!!」

「セイメイ様は、皆に己の実力を披露し、今後の展開の祈願という伝統的な背景も抑えつつ、このような運びとなりました!」

「ぜひぜひ、このコロッセオの伝統と流鏑馬の伝統の融合した夢のコラボレーションを熱狂していただきたい!!以上だ!!」


わーっと同時に悪ノリしたプレイヤー達が年末に運営からもらった花火アイテムをしようして花火をバンバン打ち上げたり、音を鳴らしたりして盛り上がっている。


俺はやりづらくて仕方がない!!


「アイオリアめ~~!いつかぶっ殺す!!」と壁に向かっていっていた。

しばらくすると馬が用意されてきた。

セコンドにクリスがついてきた。



「あれ?クリスなにしてんの?」ときくと

「わ、わたしは、ボディーガード兼秘書ですっ!!そばにいるのがあ、ああ、あたり、当たり前じゃないですか!!」と慌てながらいってきた。

「あ、そっか。」といって俺は馬に跨り準備をした。


PROUDのメンバー達が準備と扇をもち、合図する。


一の的、二の的、三の的とあり、馬場からスタートしてすぐに3本の矢で射貫くという実は高等技術なのだ。

まずは【素馳すばせ】をする。

射手は弓を射ずに全速力で馬場を走り抜ける。まずは馬と自分の打つイメージの“慣らし”だ。

結華も走り準備をする。


さてそろそろ本番。


奉射ほうしゃ】だ。

真ん中から5.4.3.2.1点となっている。


撃つ前に少し弦のハリを確認する。


さてスタートだ。


扇をもった女性が俺に合図を促す。


「せいやっ!はっ!」と声をかけて走り込む。


馬を馳せながら矢声やごうをかけるが、意味のない言葉は臆病声といい、意味ある言葉として「インヨー(陰陽)」の声をかける。矢声は番える動作の間に発す。というらしいが、俺は気合でいうこととしよう。


まずは一つ目


ある程度のロックオンはできるが、果たしてど真ん中を打ち抜けるかだ。

「はっ!!!」

バコン!

少しずれたか?


次、二つ目


すぐさま右後ろから矢を取り出し、矢継ぎに入る。


気づいた方もいるだろう。「矢継ぎ早に~」これはこの次装填が早い為、矢継ぎ早にという言葉はここからきている。



弦をキリリッと最大限に引き、狙いを定める。


こんどこそ!!


「せいや!!!!!」


おし、当たった。


最後、三つ目


「さぁっ!!!!!!!」


お、そこそこいいかも??



さて得点を確認しよう。


3点   5点   4点


合計:12点




場内はわーっとなった。




「1回目にはしては上々かな…。」まずまずの成績に納得した。


次に結華だ。


パーン!!……パーン!!……パーン!!








場内はオオオオオッッッ!!!!と場内はうごめいた!!!







なんだ!!!!????


じゅ…14点だと!!??



撃ち終えた結華が俺にいう。

「まぁこんなものですね。さぁさらに突き放しますよ!!」




「くっ…」



まじかよ!!おいおいおいおい!!!あんな上手いのかよ!!!俺完全にアウェイじゃん!!いや、知ってたよ!!わかってたよ!!!!他国でこんなことなっちゃってるんだから!!!


くっそう。馬上で馬を歩かせながら、焦った心を落ち着かせる。


二回目の馬場で埒が開くのを待つ。



ここで豆知識だが、馬場の周囲に巡らした柵。これを埒という。

埒が明かないというのは、ここの埒からきている。



クリスが拝むようにいう。


「一本大事に!!!!」

「ああ、集中!!集中!!!」



二回目の扇の合図が見えた。

ふぅー。と一息つき集中する。


「はぁ!!!」



一つ!

スパァァアン!!



二つ!!

スパァァアン!!!


三つ!!!

スパァァァアン!!!!



おーし!!手ごたえありだ!!!!


得点をみる。



5点  5点  4点


合計:14点


2回合わせて、26点!!

おっしゃあ!!!!!!!!!

本来ならこんな事で喜ぶのは不謹慎だが、神様許せ!!



あとは結華の精度がどうかってとこだ。



パーン!パーン!パーーン!!


相変わらずいい音だすなぁ!!






問題は点数だ。


5点  5点  3点  





合計:27点!!!!



クソ、負けた…。

そう悔しさを滲ませながら苦い思いを無理やり飲み込んだ。


まじか!いや~惜し良かったな!!


結華が近づき、俺を労う。


「お疲れ様です。はじめてにしてはスジがいいね。なんかやってたの??」

「いや~~、FPSを少しやってて、俺、偏差撃ちを昔少し練習してたんだよ。その調整がたまたまうまくいっただけだよ!それより、すごい命中精度だね!!」


「最後は少し狙いすぎちゃった!てへ♪」



可愛い!!……いやいやいや!!!これは罠だ!!!!


危ない危ない!!



「次はまけねーぞ!」


「私も負ける気はありませんよ!」






~コロッセオ・水上場~



コロッセオの水上戦闘を古代ローマでは宴の一興としてやったらしいんだけど、これ面白かったんかな?と思っていた。


今回は、あの那須与一で有名な屋島の戦いを模した戦いである。


屋島の戦いは、源平合戦の戦場の名称である。

源氏が平氏を攻めて一進一退、両軍被害がひどく、休戦状態になったとき、

平氏軍から美女の乗った小舟が現れ、竿の先の扇の的を射よと挑発され、それを

紆余曲折あって、那須与一が射ることになり、見事撃ち落とした。

その後、この戦いに余談は諸説言われているが、それはどこかで語れたら語ろう。




さて今回は3本の弓を使い、多く撃ち落とした数が競われる。


雰囲気を出すため、砂浜と海上の雰囲気をだす。

俺が結華に近づきいう。


「次はレディーファーストでいこうか」


「あら?それただ単に先攻後攻入れ替えただけのコートチェンジみたいなものじゃないですか?」


「うっ…。いいんだよ!いちいち突っ込んでくるなっ!」と言いながら下がった。


―可愛い人だな…。




さて、後半戦


船に乗ったアイオリアとスカルドがいる。

スカルドはなぜか着物を着ている。


「私、これ着てやってみたかったのよね~~!!」

と船上で盛り上がってる。


「くっ…。」これもしかして、このためだけに弓を選択したんじゃないか???


さて、先ほどの流鏑馬と違い、先攻は結華だ。

扇は竹のようなものを船首に垂直に指してあり、そこに扇をおいた。




結華は馬に跨り、馬が溺れる手前まで進む。



周りは静けさが残り、波打つ音が静かにこだまする。




はっっ!!!



一本目の矢はするすると扇に近づき、波の上下により、外した。



「あーん!惜しい!!」


あーん惜しいってあんた。これほぼ運だからね!!と心の中でツッコミを入れていた。





…さて、次は俺か。




こんなんあたるわけねーだろーと思いながら、半分やけくそで準備につく。



俺も同じように馬が溺れないように近づく



スカルドが何かいってる!


「セイメイ様~~!!私のハートを射るのではなくて、扇ですよ~~!」と叫んでいる。

場内はゲラゲラと笑いが起きている。


このクソエルフ!!そんなことどうでもいいわ!!!!


気持ちを入れ替えて弦を引く。


波の高さの高低差をある程度、タイミングも考えていろいろ無駄な計算をしたが、タイミングで打つしかない。


「はぁ!!!!!!!!!!」



矢を放った。一直線に矢は扇に向かう。




しかし、矢はスカルドの頭上をかすめた。



「な、危ないじゃないですか!!!」と焦って叫ぶ!


俺は少しニヤッとして、

「危うくエルフの女王に惚れさせようとしてしまった!!!俺はどうやら罪深き異邦人だわ!!大変申し訳ない!!」といい、俺は後ろに下がった。




スカルドは、少し動揺した。


―私を惚れさせようとしたですって!?



二本目


俺も結華も両方とも外し最後の三本目になった。


場内からはため息が漏れている。


三本目に入る時に、結華が近づき話をした。


「これが当たれば、あなたの負けですね。青龍偃月刀は取引所行きですよ?」

「まぁそれも仕方ない。だが、勝負に負けるのだけは嫌だな。」

「じゃあ勝ってくださいね。」

「あーでも俺が当ててもひきわけだよな?一点計算だろ?これ?」というと、


結華が3点でいこうといってきた。

すぐさま、主催者側に伝達し、これを了承した。


場内にアナウンスが入り、俺が逆転するか先に結華が落とすかの戦いになり、逃げ切る結華と追うセイメイの戦いはこれが最後となった。


三本目



場内は再び、静けさを保ち、波音だけが聞こえてくる。

まさにゴルフの“お静かに”の状態。




結華はタイミングを計り、矢を放つ。


矢は海と水平に飛び、矢は扇を刺した竹に当たり、扇は落ちた。

「うへ!まじかよ!!!!うわーー!!」と俺は叫び、負けを確信した。



おいそれと待ったがかかり、審議を始めた。


あんなの当たったのと一緒じゃん!!かーっ負けたかーと肩を落とした。


スカルドがアナウンスを始めた。

「今のを有効打にするか審議を始めた結果、セイメイ殿の最後の矢が残っているのでそれが当たるか外れるかで勝負が決まるとしたいです!!以上!!」というと、ブーイングかと思いきや、拍手が起こり、なぜか、俺のコールがかかる。


セ・イ・メイ!セ・イ・メイ!セ・イ・メイ!


どこまであいつらは俺にプレッシャーをかけてくるんだ。

俺、プレッシャーにつぶされちまうぞ!!!!!





泣いても笑っても最後だ。

この矢で決まる!!


俺は矢を水に濡らし、お祈りをした。無駄な足掻きだ、少しは付き合え!主催者&ギャラリー共!!


俺は天を仰ぎ、そして馬を海に沈ませる。


俺は矢をみて、気休めのお祈りをした。


―どうか、俺に力を与えてくれ。海の守り神よ!海流よ!!那須与一様よ!!!俺に力を貸してくれ。

 オケアノスは我と共にある!!


祈りを終えた俺は何かを吹っ切るかのように弓をおもいっきり引いた。


波は静けさを与えてくれた。


 ―好機!!―


上下運動が少ない今なら、射抜ける!!そう信じて俺は張り詰めた弦をぱっと放した。


矢は一直線に扇に吸い込まれるように当たり、一もみ二もみして海にさっと落ちた。


その瞬間だけ俺は那須与一が舞い降りたと思った瞬間だった。



「あた~~~り~~~~~!!!!」と結華が叫んだ。



ギャラリーはわーっと盛り上がり花火は飛び交い、紙吹雪が舞い踊る。




俺は、うぉーーーーーーーー!!!!!

と、雄たけびをあげて両腕の拳を天に掲げた!


そして、礼儀に基づき、勝鬨をあげた。


エイ・エイ・オー!エイ・エイ・オー!エイ・エイ・オー!

と三回ほど言い、場内は割れんばかりの勝鬨が上がった。




結華が近づき俺を労った。


「いや~~~持ってますね!!天運はやはり持ってる人は持ってるんですよ!!」

「そんなことはない。たまたまだ。波の上下運動が収まってたから当たりやすくなっただけだよ。同じ条件だったら俺は完全に負けてた。」

「そこまで言われると皮肉になっちゃいますよ。今は自分を褒めてください。負けました。そして、ありがとうございました。またどこかのタイミングで競いましょう!!」

「ははは。ありがとう!でも次やったら、こうはいかない。俺の負けは見えている。だから勝負しないよ!」

「あ、勝ち逃げだ!!ずるいぞ!!!!」

「ははは!勝ちに拘って何が悪い?!指揮官は勝ち戦してこその戦果だぞ?ははは!!」


授与式が盛大に執り行われて、俺は見事、青龍偃月刀を手にすることができた。

そこで、スカルドは頬にキスするモーションをとり、俺はあせった。


女神のキスというの表現するのとかずりーな!おい!!

「あーー!!」とクリスは俺とスカルドを離した。


俺は戦利品をもってコロッセオ出た。


もう一度、PROUDのギルドハウスに立ち寄り、スカルドと話をする。

むろん、クリスも同伴だ。すごい膨れている。


「いやぁ~。お見事でしたね。」

「そんなことはない。運がたまたまよかっただけだよ。」

「それも実力ですよ。」

「まぁよく言う話だね。あ、そういえば、例の先陣の件、前向きお願いしてもよろしいでしょうか?」

「ええ、もちろん。うちのギルドで先陣を切らせていただけるのであれば、伏兵探しも両面でいけますよ?」

「それはありがたい。」

「ご存じないと思いますが、うちは女性が多い上に山岳兵に特化しているのはご存じ?」

「いやお恥ずかしながら存じませんでした。」

「そう。うちは弓兵が多いので、突撃は不向きでも伏兵探しは得意なの。斥候向きっていうところかしら?」

「あーそうだったんですか!頭に入れておきます。」

「いいえ。それより今日はお疲れ様でした。今日はいい夢が見れそうです。」

「あははは。ぜひ、見てください。」


そこにクリスが割って入ってくる。

「くれぐれもセイメイさんの夢は見ないように!」とくぎを刺したが聞こえているのかいないのかわからない状態でスカルドはログアウトした。



俺は指令室で落ちようと思い、クリスを連れて戻った。

部屋に戻ると、クリスが話しかけてきた。

「ゲームとはいえ、ちゅーされて鼻の下伸ばすなんてセイメイさんはヘンタイです。」

「おいおいおい!俺がしたんじゃない!スカルドにいえよ!」

「だめです!セイメイさんの貞操は私の範囲です!!!」

「…おまえが一番ヘンタイじゃねーか!!」

「え?は!!私は何も言ってません!!!」

「今言ったじゃねーか!!」

「言ってません!!」

「今日は眠いので落ちます!おやすみなさい!」というとクリスはログアウトしていった。


一人、椅子に座りぼーっとしていた。


すると、アイオリアが入ってきた。


「おい、アイオリア!今日は疲れたからお前のことをいうつもりはもうねーけど、明日覚えておけよ!」

「私は忘れやすいので覚えていれば、伺いますよ」

「けっ!このひねくれものが。」

「それはそうと、ずっとソロモンをみてないが、あいつどこいたの?」

「あーマスター。それはですね。ソロモンさんはPROUD陣営の席で女の子たちと楽しく話してましたよ!!」

「あの野郎!!!!!!!」

「まぁいいんじゃないですか?たまには。」

「俺も女の子と話したかったよぉ~!」

「今日はいっぱい話したじゃないですか?うちの妹や結華さん、スカルドさんも。スカルドさんはあなたにキスまでしてたじゃないですか。」

「私の見立てでは扇を落としただけじゃすまなくなったんじゃないですかね?」

「なにいってんだ?今日は色々疲れた。いろいろありすぎたわ。明日からの仕事に影響でないようにもう寝るよ。おやすみ。」


「おやすみなさい。」



アイオリアは俺がいなくなってから、夕暮れの光がさしかかる部屋でたたずんでいた。

アイオリアはオリハルコン製の手甲を夕日に当てて光を愉しんでいた。

そして、眉間に皺をよせていった。


「…明日から忙しくなる。何としてでも勝たなくては…!!」



アイオリアはエウロパとの戦いに再度誓ったのであった。



沈みゆく夕日の光は彼を、茜色に染め上げたのだった。




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