第9話「唯心論」
~ギルドハウス街~
ここにはいくつかのギルドが存在し軒を連ねている。
とりあえず、PROUDのギルドハウスに向かう。
歩いて向かっていると俺のとこのような中小企業…いやここでは、中小ギルドというか、そもそもうちは零細ギルドは、なんだが俺を畏怖するのか、さけて通る。
6ギルドの人間は、俺が通るたびに挨拶が飛んでくる。
俺も「皆さん、こんにちわ」と昼のニュースキャスターみたいな言い方をしていた。
窮屈だな。全然自由じゃない!
挨拶に疲れて、挨拶を邪険にしようものなら、陰口を叩かれて指揮範囲が狭まる。俺の疲れなど無視してるのにな。人とはなんともめんどくさい生き物だ。
さてどうしたものか。
と、ふと下を見ていたら、ドンっとぶつかった。
「ああ、すまな…うわ!!!」と、情けない声を上げてしまったのと同時に胸倉を掴まれた。
「てめーか!雑魚ギルドのマスターは!!こいつが盟主だと???」
街中でPKモード?そんなの出来るはずがない。
くそっ!どうなっていやがる!!俺はそのまま投げ飛ばされてコロシアム側のエリアへ飛ばされた。
俺はすぐに起き上がり一般回線を開く
「どういうつもりだ!?なぜ街中の安全エリアでPKがオンに出来る!!??」
俺より遥かに大きい体格が眼前に立ち塞がっていた。
危険を察知し、バックダッシュで下がる。
そいつはデカいジャイアントのプレイヤーだ。
<ジャイアント>
大斧を両手に持ち、投擲・ブーメラン・投げ技と多彩なスキルを熟すことが出来る。
無論、剣技や弓などは一切使えない。
これの女版が♀ストライカーである。
「なんだ。しらねーのか。お前は一瞬だけ通常エリアの範囲に足を踏み込んでいたんだよ。」
「PKは自由だろー?ぶっ潰してやるよ!」といいながら、突進してくる。
なんてやつだ!あんな一瞬でPKオンにして投げ技を入れてくるとか、あぁもう!!どんだけ~~~~!!!
「くそ!こんなところで!!!」
俺は安全地帯のエリアに走ろうとしたが、
「おいおいおいおい!安地(安全地帯)に逃げようなんて考えるなよ!!」
どうやら向こうのお仲間が壁を作っていた。
俺はソロモンとクリスと分断された。
「セイメイさん!!大丈夫ですか!!」と聞こえてきた。
全然だいじょばない!またかよ!踏んだり蹴ったりだなー今日は!!
「壁にいけば、あいつらの餌食だぜ!」
「おいおまえら!そっちいってもとどめ指すのは俺だからな!!手ぇだすなよ!!」
クソクソクソクソ!!!!なんでいつもいつもいつも俺の前に邪魔が待っているんだ!!
俺はゲームを楽しむのになんでストレス溜めなきゃいけねーんだよ!!クソがぁ!!!!
渋々、刀を抜く。
刀を抜き、パッシブが発動し、闘気を纏いさらに悟りを発動させた。
※ パッシブスキル…命中UP
※ 闘気…攻撃力UP 悟り…命中率・速度UP
対ジャイアント対策は一つ。近づかない!!!!
つーか、圧倒的不利なんだよな。俺、遠距離は弓スキルぐらいしかねーし。風の刃はスキがでかい。
相手の硬直や気絶などの
相手は遠距離の投擲も威力高いし、近づけば投げられるし、強くねーか??おい!!
こちとら、剣速とカウンターと足さばき、連携コンボが取り柄なのにどれも勝てんw
ある程度、散らばせてカウンター狙いからの巻き返ししかねーな。
俺の刀は九五式軍刀の最新式ではあるが、付与がない。刀の歴史が最新でもこういったMMORPGは伝説が乗っかってるやつの方が強いというのがお約束だ。
この刀は爺様の形見のものと一緒だから選んだ逸品だ。まぁ無駄に粗悪品扱いされてるからこんな冷遇なポジションなんだろうな。いずれ天下五剣を手にしてやる!
「おいおい縮こまってばっかじゃ張り合いがねーじゃねーか!!こっちからいくぜぇ!!」
大斧を振り回し俺に斬りかかる
俺は、下がりカウンターの構えを崩せない。
「おいおいおい、そんだけ下がれば、カウンター狙いだってバレバレだぜ??」
というと、突進してくる。
クッソ!体当たりはカウンターできん!
俺は横に交わした。隙ができたが攻撃せず、下がる。
「ほうやるじゃん。俺の隙をねらわねーとはな!!」
「その罠にかかるわけにはいかねーんだよ!」
「ほう、PvPはそれなりにしてきたようだな!!盟主さんよぉ~!」
「そこで俺が攻撃したら、お前のカウンター返しで俺は即死コンボ喰らうからなぁ!!」
「くっくっくっ!!いつまでも逃げて時間稼いだって無駄だぜ!!」といって襲い掛かってくる
「アイオリアがいなくても俺はそこそこつえーぞ???」
俺は刀の棟で受流し、相手の左後ろを取った。
袈裟斬り、逆袈裟斬り
袖摺返し(そですりかえし)!
左下から右上に斬り、上段構えを経由し、左上から右斜め下に斬る技だ。
からの燕返し!!
刀を右前に持ち左下に流し、手首を返して左下から右上に切り上げる。
からの中段蹴りで突き倒す
相手はよろけて前に倒れ、起き上がる
俺は武器をチェンジし、薙刀を出す。
兜割りを打ち、大車輪を放つ!!
砂煙が立ち起こり、周りが霞む
レイジング!!!ブラスト!!!!
風圧で一気に砂埃を消し、高く飛び上がり俺にめがけて両手に持った斧を振り下ろしにきた。
ヤベ!!
俺は間一髪交わし、転がるように逃がれた。
横目でとある線をみた。
―このライン…は!?
俺は立ち上がる最中に態勢を整える間もなく、相手は突っ込んでくる!!
「これで終わりだ!!!」
俺は薙刀をしまい、鞘を少し前に出し、鯉口を開け
「フハハハハ!!バカめ!!居合の抜刀距離の前に俺の斧が先に当たるぜ!!」
「なに!!!???」
俺が立っているところは安地(安全地帯)だった。
斧は俺の体をすり抜ける。
その瞬間
俺はヤツの後ろで既に刀を納めていた。
剣聖神道流 “ 霞 ”
解説:体を前に屈め、静かに抜刀ともに、胴を抜き、当てたと同時に刀は鞘に納める。
シンプルだがここぞという時に効果を発揮する。いわゆる居合といったらこれ!というやつ。
相手はHPゲージは0 前のめりに倒れた。
いつの間にか周りにはギャラリーが出来ていて、わーっとなった。
連れの仲間たちはジャイにかけより、聖水を与えていた。
すると、おきあがり、俺にワイルドチャージをかけてきた。
※ワイルドチャージ…起き上がりと同時に瞬歩で相手との間合いを詰める技
俺はまずいと思って柄を当てて、相打ちを狙おうとすると、俺の前にいきなり白金の鎧が舞い降りて立ち塞がった。
「おいおいおいおい!!タイマンしかけて負けたのに、聖水もらって不意打ちとは、中々オシャレな事をするじゃあねーか!!!」
アイオリアだ。この白金の鎧、そしてうざったい無駄なマント。コイツをいつもなびかせてスーパーマンもどきだ。
アイオリアの拳は相手の鳩尾に深く入り、相手の硬直のところを回し蹴りのようなかかと落として地面に這いつくばらせた。
「マスター。遅くなり申し訳ございません。クリスが泣いて何をいってるか聞き取れなかったので、時間がかかりました。」
「まったくボディーガードになってないぞ?おまえの妹w」
「はい。修行させるには、マスター直々がよろしいかと。」
「おまw人任せかよ!!そもそもヴァルキリーなんか使ったことないぞ!!」
「私は武器を使いません。槍を使う者同士、教えてあげてください。」
「…いや、使うスキル全然ちげーし!!」
と、ツッコミどころ満載で話をしていたら、クリスが近寄ってきた。
「マ‶ずだー、ごヴぇんなざい゛!ま゛ぼれでない゛よ゛ぉ~!!」と泣きながらいってて
なぁにいってんだかさっぱりわからない。
「おおうw大丈夫だ。矢とか魔法とか飛んできたときに頼むわwww」
「でもでも…!!!」
「うるせーな!!!終わったんだからいいだろ??しかも勝ったんだから!!泣くな!!wwww」と一喝した。
「てめーー!!アイオリア!!!なんでてめーがでてくんだよ!!!」
ジャイアントはアイオリアに文句をいってきた。
「フランジ!お前は負けたのだ!!潔く認めろ!!」アイオリアは声を高々と張り上げた。
俺の心はそうだそうだ!と思っていたが、段々と俺に執着する理由がわかってきた。
そう、俺が“名も無き
「アイオリア下がれ。」
「ここからは俺の処理の問題だ。同盟
「しかし、勝負はついてる!まだこれ以上…」とアイオリアが俺を咎めようとするが、かき消すように俺は叫んだ。
「いいから下がれ!!お前の主は俺だ!!ギルマス命令だ!!」
アイオリアは跪いて「…御意、仰せのままに」といい俺の後ろについた。
「フランジとやら、俺はお前の上司に当たる。悔しいか?悔しいよなぁ?だから俺に喧嘩を売ったわけだ。そして、儚くもお前は地面に手をついた。」
「これ以上やるというのであれば、それ相応の問題提起につながる。最早、お前個人の話ではない。キサマのギルマスを潰し、ギルドを解散させるまで追い込むこととなる。それでもいいか!?」
「そんなのどうでもいい!俺はギルドを抜けてやる。」
ギルドの紋章が彼の腕から消えた。
「さぁこれで思う存分に出来る。かかってこい!!!」
「お前は既に負けている。ギルドを抜けた時点でな!!」
「なぁに言ってやがる!!まだ終わっちゃいねー!!」
「野良となったお前に加担するやつは、もうここに誰もいねーってことだよ。」
そういうと、今までつるんでた仲間がフランジと目を合わせず、下を向いてばかりだ。
「この腰抜け共が!!」といい、仲間だったやつらに走り込む!!
俺はすかさず、武人の怒りを発動し走り込み、刀の峰で受け流し喉元に切っ先を添えた。
「はい。もうこれ以上醜態をさらすな。本当はお前、俺がガルヴァレオンでない無名の奴がアイオリアに担ぎ上げられたのが、気に入らんのだろ?」
「…。」
「“無言は肯定の証”というが、まさにそれがお前さんの答えだ。」
俺は、刀を納めた。
「危ない!マスター!剣をしまわないで!!」とアイオリアがいう。
「うるせーー!!こいつも使えないような総司令官がだったら、他も使えんだろうが!!ボケナス!ナンパ野郎!!」と罵倒した。
アイオリアはやれやれといった表情をした。
俺はフランジという男に話しかけた。
「フランジさん。アンタもあれかガルヴァレオンの…なんつーか亡霊というと失礼だな。引退しただけで、生きているからなwまぁ…存在がでかかったんだろ?」
「そうだ。」
と小声でいった。
「まぁ気にくわねーのは、俺もわかる。俺も逆の立場だったら、同じような行動もしくは言動をしただろうよ。」
「でもな、男ってーのは、スジ通さなきゃいけない時ってあるんだぜ?俺はエウロパが勝手に勘違いして俺を付け狙った。しかも、うちのギルメンに脅迫までかけてな。ギルドが大きいからなにやってもいいのかといったら、違うと思う。スジをたがえてはいけないのだよ。」
「人数が多いのであれば、それ相応の規律やモラルを確認し合わなければ、ならないと俺は思っている。同じ価値観の仲間ならいいのだけど、生憎、人間というのは十人十色以上のカラーリングをしていて、統一するには難しい。だから話し合いなどをして相互理解を図っていくものだと思う。俺らは動物ではない。口があり言葉がある。そして何よりも大事なのは、『思いやり』だ。こんな世界だ、変な奴はごまんといる。俺とこうやって関わってしまった以上、総司令官直々の勅命を申し伝えます。君には仲間を思いやるという“任務”を与える。それ以上は俺は望まない。もう一度、ギルドに戻り、ギルマスさんに謝ってもう一度、頑張ってほしい。そして来たる最後の戦線に
フランジは黙ってその場から動かなかった。
俺は、みんなに散れ!!っていって彼を一人にさせた。
俺は彼を残して、PROUDギルドのドアを叩いた。
は~いという声にセイメイです!というと、慌ててちょっと待っててください!!といい、ドア越しの向こうでどったんばったん大騒ぎしている。
アポなしみたいなもんだからそうりゃそうだわねぇ~。
ふと思ったので、アイオリアに声をかける。
「そういえば、アオイリア。」
「はい?」
「おまえ、もう戻っていいぞ。お疲れ様」というと
「えええーーー!!!!なんでよ、マスター!!俺、頑張ったでしょ?ほめてよ~~!!」
「あーあーあー!ご立派ご立派!!英雄様!!」
「それ気持ち入って無くない??」とギャルみたいな言い方をしてきた。
「おまえは!!!キャラブレブレすぎんぞ!!最近!!!」と俺は切れ気味に叱責した。
PROUD
女性プレイヤーが多めに所属するギルドで有名。
俺は高級マンションのブランドとしかイメージがない。
俺には縁がないけどな!www
ギルドハウスに入ると、♀エルフやウィッチ、女ウォーリア・女剣士などが出迎えてくれた。
ソロモンが耳打ちする。
「高級キャバクラみたいだな」といいながらニヤニヤしている。
俺らは奥の間に通された。
そこには美しいハイエルフが立っており、俺はハイクラスとお目見えするのには慣れていたが、ハイエルフとはな。
俺は「どうも」としか言えなかった。
ハイエルフが話しかけた。
「総司令官殿、よくぞご訪問頂けた。感謝いたします。私の名前はスカルド・キューレ。PROUDのギルドマスターをやっています。どうぞ、おかけください。」
俺らはソファや腰掛に座り、話をする。
「いきなり伺って大変申し訳ない。実は、今回は公式ではないのです。」
「あら?てっきり先陣を切らして頂けるお願いにきたのだと思いましたが…。」
「それはそれで心強い。感謝いたします。それもまだゼロベースです。その際に具体的な戦略があれば、後程お伺いいたします。実は…」
俺は、自分の装備の件を伝え、また青龍偃月刀を所持している者を紹介してほしいことを伝えた。
そうすると快く快諾してくれて、その人を呼び出してくれた。
間もなく来るとのことなので、待たせてもらうことにした。
しばらくすると、一人のサムライが入ってきた。
「こんばんわ。初めまして。
「女…だと!?」俺は思わず、立ち上がり吐露してしまった。
「あらー?女性はお嫌い?現実だとセクハラにもなりますよ?」と笑いながら釘を刺された。
「あーいやそういうつもりじゃなくて…。初めて女サムライをみた。」
静御前という薙刀を使っておきながら、なんとも恥ずかしい思いをした。
気を取り直して俺は青龍偃月刀を持っているか確認すると、重いから倉庫にしまってあるという。
そこで見せてくれないかというと快く快諾してくれた。
実際に目にするのは初めてだ。
そう胸が高鳴るのを抑えて我慢をしていた。
そうこうしているうちに持ってきてくれて見せてくれた。
青龍偃月刀
かの三国志に出てくる関羽雲長が愛用していた槍のような大刀である。女性キャラは重い物になるがLE枠なので、特に制限はないのだが…。
結華はいう。
「私がこれ使うとみんなが女関羽女関羽!とからかってくるのでつかってないんですよね。」
「だって威力あるしつかうべきだよ!!」と俺が戸惑うと、
「これって実は砂漠を越えた時にクエストでとある廟に入っていったら廟の奥にたまたまあったのよ。」
それはおかしい。クエストをこなしLE枠は必ず宝箱にはいってる。またはNPCから報酬でもらうようになっているのだが、なぜだ?余りにも楽すぎる。
「しかもね、関羽?っていう亡霊が現れて『これを手にした者よ。使いこなすのも良し、託すも良し。お主の好きなようにせよ我が兄者の下に魂はあればそれでよし』とも言われた。」
「だから、これをあげるよ。」
「はぁ?」
おいそれともらうは流石にためらう。
「じゃあ勝負に勝ったらというのはどう??」
「うんじゃあそれでって、ちげーわwwwwwww」ついノリ突っ込みをしてしまった。
「勝負で勝っても負けても受け取れない。やっぱそういうのは自分で取らないと…」
「じゃあ売っちゃうね。お金ほしいし、倉庫の邪魔だし。」
「わあああああちょ、ちょっとまてえ!!!!!勝負するよ!します!!させてください!!」と俺はこのチャンスを自分のこだわりで不意にするところだった。
「うん、OK~☆ じゃあ、せっかくだからコロシアムにいこうよ!!」
「わかりました。立会人はアイオリアか、スカルドさんにお願いしよう…。」と二人をみた。
アイオリアは
「OK。いいですよ。連戦ですね???お盛んな年ごろですね~。プークスクスw」と茶化す。
「連戦?」とスカルドが聞き返すとアイオリアは楽しそうにフランジとの私闘を話す。
コイツ…。いつか覚えていろよ!!!!!!!!!とアイオリアにイライラしているとスカルドが提案してきた。
「…そうですねぇ。一工夫いれましょうか?」
「どんな感じでしょうか?」と恐る恐る聞くと
「船上の扇を射抜く闘いなんてどう?♪」ニコニコしながらいう。
「サムライ同士ですし♪」さらに満面の笑みで俺を見つめる。
「そうだわ!!流鏑馬も悪くないわね♪先に流鏑馬をして、最後に船上の扇にしましょう!!早速準備しなきゃ!」
「スカルドさん本当にこういう趣向を凝らすの好きですね~…。」と結華はため息をついた。
これ中身おっさんじゃないよな?おっさんじゃなくてブスでもあれだけど…。それはネトゲーでは御法度だな。ていうか!!!!そもそも若い女性が俺に声かけてくれてるんだ。見せてやるしか!!俺のカッコイイプレイを見せつけてやるわ!!!
みてろよ~~~!!惚れんなよ!!!!!!
かくして俺は流鏑馬をすることとなった。馬上での弓は相手を落馬させる重要な初手となり、弓持ちキャラはみんなこれを練習する。
準備にはさほどかからないらしい。俺は少し離席し、トイレに行き真“弓”勝負をすることとなった。
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