夢の記録
ナナシイ
Ⅰ・ホーム
私は新幹線のホームを歩いていた。
ホームには幾人もの人が立っていた。しかし、私の方を向いている人は誰もいなかった。皆が皆、私に背を向けていた。
歩き続けていると、その内の何人かは知人であるように見えた。あの長身でスタイルの良い後ろ姿は大学の友人のMであろう。また、酷い猫背なのが後ろからでも分かるあの者は高校の友人Yであろう。あのがっしりとした筋肉を見せているのは同僚のOであろう……。
しかし、私は声を掛けなかった。彼らに声を掛ける必要性も、そして感慨も湧かなかったからである。私にとって彼らはそこに立っているだけの存在であった。彼らは、こちらに気付くこともなく、じっと私に背を向け続けていた
私は彼らの背後を通り、ホームの先端を目指して歩いているらしかった。
幾人もの人々の背後を通り、やがて私はホームの端に辿り着いた。そこに彼女がいた。
彼女は初め、線路に向かって立っていた。私が近づくと、彼女はこちらに気付き、私の方に向き直った。そうして、彼女はゆったりと、私に向かって笑みを投げかけた。
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