第4話 自分の足で裁判所に来た
その惑星(ほし)は青い海と緑の大陸におおわれた、とても神秘的で奇跡に満ちた惑星だ。
神様が居るとするならば、惚れ込んだのも頷ける美しさである。
その惑星(ほし)には、1つの大きな大陸と、2つの小さな大陸。
あわせて3つの大陸があり、その内人と呼ばれる種族が住んでいた。
1番大きな大陸は、駆け出すライオンを横から見たような形をしている。
リエーフ大陸である。
この惑星(ほし)にじゃれつくように、南北に広がっている。
そのリエーフ大陸の……ライオンでいうなら、頭の部分にある国の名前を「ガラヴァ聖信国(せいしんこく)」という。
このガラヴァ聖信国の北西に位置する森の奥に、その神殿はあった。
ひとりの老人が、森の道に立っている。
道は草木に侵食されているが、かろうじて石畳だと分かる。
過去にはしっかりと整備された道であった事がうかがえる程、立派な道幅があった。
今は森に見えるが、木々の間から建造物だった石の壁などが見え隠れしていることから、ここはかつては栄えた都市であったのだろう。
あたりには老人以外には誰もおらず、しんと森のざわめきだけが響いていた。
老人は、裾(すそ)の擦りきれたローブをまとっており、足取りは迷うことなく、まっすぐ廃都市の奥へと向かっている。
老人の名はアルタイル。
右手に1枚の、紙を折ったものを大事そうに持っていた。
アルタイルは、この廃墟と化した街の最奥にある、神殿に足を踏み入れる。
いくつもの真っ白な柱が並ぶ入り口から中へと進むと、神殿の建物が見えた。
彫刻が素晴らしかったであろう壁が、いまは半分崩れて存在している。
神殿の屋根は崩れてなくなっており、中は眩しいほど日の光に照らされていた。
神聖さすら感じられる。
一番奥、正面には半円形の階段上の祭壇があった。
その祭壇を、老人(アルタイル)はゆっくりと見つめる。
祭壇の上にある、黒く銀河を閉じ込めたように光る岩を。
戦いを挑むかのように鋭い視線を向け、その目に覚悟を滾らせていた。
その時、2メートルほどの高さのある、祭壇の岩が震えるように光りだした。
老人(アルタイル)はそれを、身じろぎもせず睨んでいる。
まるで予期していたようにじっと見ていた。
そして、右手に握りしめていた紙を、そっと胸元へ抱き締める。
光は膨大な魔力(エネルギー)となり、そして一点にに集約していく。
眩しい光に視界がくらんだ瞬間。
光が人の形へと変貌し。
1人の人間と1匹のウサギになったのである。
この世界に、零史とルナが現れた。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」
「零史、ご老人が驚いていますよ。少し声を抑えましょう。」
さしもの老人(アルタイル)も、まさかこの光景には度肝を抜かれたのか、目を見開き固まる。
それもそうだろう、零史とルナが異世界へと降り立った瞬間を目撃したのである。
声の大きさとかの問題ではない。
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