第22話
僕は、たった今聞いたことが信じられなかった。
……だって、お泊りだよ!?
一泊だよ!?
超絶美少女の家にお泊りだよ!?
………断ろう。
「あの……僕、帰りますから………」
「えぇ?帰っちゃうの?」
「は、はい。だってもういい時間ですし、流石にお泊りだなんて………」
「あ、それなら大丈夫。拓海くんのお父さんには許可を取ってあるわよ。
それに、今の時間に帰って警察にでも捕まったら、補導されるわよ?」
……少し脅迫が混じっていた。
しかも、父さんも許可してるとか…
…これはもう、降参するしかない……と思う。
「……分かりました。一泊させて頂きます。」
「うん。それでよろしい!雪菜も良いわよね?」
「お泊り……7年ぶりのお泊り………ふふっ……」
「……雪菜?聞こえてるの?」
「へ?あ、うん!もちろん良いよ!」
僕は、雪菜に嫌がられていないようでホッとした。
そして、改めてお願いする。
「じゃあ……一泊よろしくお願いします。」
「はいはい。ゆっくりしていってね。」
「はい。」
僕がそう返事をすると、月城さんは微笑んで、食器の片付けに移った。
そして、手持ち無沙汰になった僕に、雪菜が支持を出してくれた。
「拓海はお風呂を掃除。私は洗濯物を洗うから。」
「了解。」
雪菜に一通りの事を教えてもらい、与えられた仕事に着手する。
*
泡のスプレーを床にかけて磨くだけの掃除が終わり、僕はまた暇になった。
ソファに座って雪菜を待っていると、二階から雪菜の声が聞こえてきた。
「拓海〜布団先に敷いておくから!」
「ありがとー!」
僕も二階に聞こえるように返事をする。
……この時僕は思い出すべきだった。
二階には寝室が2つしかない事に……
*
しばらくした後、雪菜が二階から降りてきた。少し頬が赤くなっている。
「おまたせ。」
布団が重かったのだろう。
僕はそう推測して、雪菜に労いの言葉をかける。
「お疲れ様。」
すると、雪菜はチラリと僕の顔を見た後、プイっとそっぽを向いて言った。
「う、うん。」
少し様子がおかしいと思ったが、疲れたのだろうと思い、僕は座っている位置から少し横にずれた。
「ありがとう。」
と、雪菜は言って、僕の隣に腰掛けた。
「……………」
「……………」
……電車の時の二の舞にはなりたくないので、僕から話題を投げかける事にした。
「雪菜。」
「何?」
「進路ってどんな風に決めた?」
突然の質問に雪菜は驚いたようだが、ちゃんと答えてくれた。
「えっとね………近かったから?」
「それだけなの?」
「うん。それだけだよ?」
「へ、へえー。」
改めて、僕は思ってしまった。
………この子、やっぱりアホなのか?
……いやいや、確かに距離というのは進路を選択するにあたって重要な事だ。
……でも、念のために聞いておこう。
「雪菜、入試の点数を教えてくれ。」
雪菜は不思議そうな顔をしたが、頷いて教えてくれた。
「えっと……国語が58点、数学が60点、社会が55点、理科が60点、英語が60点……だったと思う。」
「………………………………」
説明しよう!
僕達の県の公立高校入試は、5教科300点満点で行われる。
つまり、1教科の満点は60点という事になる。
そして、この県最高レベルの高校の合格点数は、252点だった。
対して雪菜の合計点数は、293点。これはもう、学力推薦であの高校に入ってもおかしくない成績である。
………え?
何でこの高校に来ちゃったの?
「……な、なあ雪菜。この高校に来るの、先生に止められなかったか?」
雪菜はそれを聴くと、激しく頷いた。
「そうそう!物凄く反対されたんだ!…中でも酷かったのは校長先生だったなぁ………必死の形相で説得してくるんだもん。」
「そ、そうか。大変だったな。」
………どうやら、この子は真正のアホのようだ。
いや、天才か?
“バカと天才は紙一重”って言うしな。
あ、この場合はアホか。
……まあ、過ぎた事だし、こうして僕が雪菜に会えたのだから良いのだろう。うん。
僕は何時ものように自分を納得させる。
それと同時に、お風呂が沸いた事を告げる音が聞こえてきた。
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