間章・邪悪な神様の目論見

 ……いやぁ、真実ってぇのは残酷だぜ。知らなければ、どれ程楽に終われたことやら。

 だが、まあ知ってしまったら無知には戻れぬし、偽って知らなかったことにもできない。……こうなったら神である俺でも腹を括るしかない。





 宇宙を創るも破壊するも自由自在。生命を生み出し、万物を制御する。

 最強を超越した、至高にして超常の存在である神。

 そう思って、俺は浮かれていた。だが事実は違った。

 俺のように世界を創造できる神など、ウジ虫のごとく存在している。

 それこそ、かぞえるのが嫌になるくらいにだ。……天文学的数で神は存在しているのだ。

 そして各神々やそれに酷似する超常の者達は、独自に無数の宇宙や世界を作り上げ管理している。

 その、一つ一つの世界にも色々な概念がある。

 魔法、超能力、ステータス、スキル、特技、異能。もう、なんでもありの状態だ。

 だが、そんな中、俺は宇宙を一つしか創造していない。

 それに、この宇宙は俺だけの力で創ったものじゃない。半分程は俺が創ったと言ったところだ。

 ……俺達が望む存在を誕生させるために、創造した宇宙。

 



 

 他の神達は何にも知らないのだ。我々、神が危機的状況にあることに。

 それに対向するためにも、俺達は戦力を持たなければならない。

 ……神々の要請によって武勇を働く特殊な戦力を。

 そして俺は今その力を得るために、創り上げた大宇宙の中にある一つの惑星に注目している。

 この惑星の者に試練を与え、強力な存在に進歩させることを試みてるのだ。 

 その一つとして、英雄と魔族との戦いを企てた。

 一部の人間達に超常の力を与え、そして魔族と言う試練を仕向けた。

 戦うことで発展していき、いずれ俺達の役に立つ力になると考えていた。

 しかし、結果はよろしくない。

 英雄達は超常の力に依存しすぎて、まるで成長も進歩もしていない。

 ……そして人間と魔族が戦争を継続して、はや千年以上。何も得られるものはなかった。

 俺の理論が間違っていたのだろう。この計画は今回で打ち切りにしよう。

 しかし別の可能性が、まだある。

 もう一つ、神である俺でも制御できていないが可能性がもう一つある。

 ……あの熊の毛玉人、あれは俺が望む存在になる最有力の候補と言える。 

 神や世界の力を必要とせず、戦いと経験を重ね成長し、生命の持つ可能性を高めていく者。

 あとは、こいつが最後の試練を乗り切った時に俺の望む存在となるはずだ。

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