科学の街
本日も快晴なり。エリンダ様との約束どおり、俺を研究する場所までやって来た。
エリンダ様と護衛役の隊長とベーンを乗っけて歩いてやって来たこの場所はゲン・ドラゴンから南東に向かって歩いて約三十分程のところだ。
それは科学の街と呼ばれている、スチームジャガーと言う街。……凄い街名だな。
その街の入口付近で隊長、ベーン、そして俺は佇んでいた。
今エリンダ様は、この街の町長兼科学者である方に挨拶しに行っている。そして実験の許可をもらうために。
「ここで、俺の体を調べるのか?」
なんでも俺の体組織を採取するために、エリンダ様はこの近代の街につれてきたと言うのだ。
なぜ、わざわざここに来たかと言うと、俺の表皮が頑丈過ぎて並の器具では体組織を採取できないためだ。
俺は街の中を見渡す。広がるのは金属やコンクリートをベースとした建物と蒸気が噴き出すパイプばかり。
「まるで工業地帯だな」
街そのものが巨大な工場や研究所を思わせる。
そして街の入口の付近では、つなぎとゴーグルをつけた人達が実験に明け暮れている。
右下を見ると、全高五メートル程の有人型二足歩行ロボットの起動実験を行っていた。
見た目はズングリムックリで真ん丸頭のロボットだ。
「
機体の胴体に取り付けられた、スピーカーから男の声がする。
ロボットはガタガタ震えていて動きが鈍い。背中には動力と思われる熱機関があった。あれではコックピットの中が物凄い暑いだろうな。
つーかロボットの名前、ひどくないか?
しかし、動きはぎこちないが転倒せず、歩行自体はうまくいっているようだ。
「ようし歩行は、まあまあだ。続いて武装のテストを行う」
搭乗者がそう言うとロボットは片膝立ちになり、右拳を前方に向けた。
おお! もしや、これはスーパーロボットの
「必殺!
ドンと言う破裂音と共に右腕が射出された。
しかし腕はワイヤーで繋がっていたので、射程は三十メートル程度だ。そして射出した拳を巻き取る作業が始まる、格好いいとは言えないが、しかしなぜかそこが良いな。
俺達がロボット実験を見学していると、白衣を着た女性がやってきた。
「そこのチミ達、良かったらワタシの実験を手伝って……ひひっ」
誰だろうか、この人は。怪しい笑い声をもらしている。
ボサボサしたロングヘアー、目の下にクマ、ジト目、猫背、見るからに気だるそうな女性だ。だが長身でスタイルは抜群。
「いやオレ達は領主様が戻ってくるのを待ってるだけで……」
隊長の言葉など無視して、女性はなにやらリモコンとアンテナの用な物を手にして隊長に近寄る。
問答無用に実験を始めようとしている。
「オレ達に拒否権はないのか?」
「まあ、いいじゃない。領主様が帰ってくるまで……ひひっ。ワタシはここの研究所の所員、マエラよ。今からよろしくね……ひひっ」
マエラさんは、ときより引き笑いをもらす。
どうやら実験に付き合わせられるのはオボロ隊長とベーンのようだ。
すると彼女はいきなりアンテナをベーンの頭に突き刺した。
「ブガァ!」
悲鳴をあげると、ベーンは白目をむいて意識を無くした。……いきなりなんと恐ろしいことを。
続いて隊長にも突き刺そうとしているが、頭蓋骨が硬く刺さらないようだ。
そのためか隊長は安心した表情を見せる。
「オレの頭は貫けねぇぜぇ、ふふっ」
これなら実験に付き合わなくてすむだろう、と隊長はおそらくそう考えたのだろう。
しかし、甘かった。
「安心して、お尻でも大丈夫だから」
「アッー!!
隊長はケツにアンテナをぶちこまれたのだ。無論白目をむいて意識を手離す。
城での陽動作戦時におった、ケツの傷が治ったばかりだというのに……。
するとマエラさんはリモコンを手にして、俺にその装置の説明を始めた。
「さあ! そこのデカイ竜よ良く見ててごらん。今挿入したアンテナから制御針が伸びて脳にむかっているわ」
彼女がそう言うと、オボロ隊長は白目状態でビクビクと体を痙攣させた。すごい体に悪そうなことが起きていると思う。
「制御針は脊髄に入り込み、そこから脳髄に向かうのよ。そして大脳に挿入され電流を流してくれるの。すると、あーら不思議」
マエラさんは楽しげにリモコンを操作する。
すると隊長は、いきなりブリッジ体勢になりゴキブリのように周囲をシャカシャカと走りだした。動きが、かなり気持ち悪い。
どうやら隊長は脳に電流を流されて体を操られているようだ。
「……マエラさん、隊長はちゃんと元に戻るんですよね?」
「……さあ、お次はこの陸竜さぁ。……ひひっ」
この所員、俺の話も無視していやがる。
彼女は操作をベーンに切り替えた。
「この装置で操作された者は、細かい筋肉まで操ることができるのよ。まずは肛門の筋肉から」
いかんいかん、ベーンにそれは不味い!
マエラがリモコンを操作すると、それに合わせて肛門が緩み
――プッ! ブッ! ブビィ! ドベェェ!!
屁が三回放たれ、最後になにか漏れた。
ああ、そうか。地面にぶちまけられた
そして、すぐさま重装備の危険物処理班が駆けつけて、ベーンがぶちまけたものを回収してくれた。
そんなこと、お構いなしにマエラさんは次なる実験道具を持ってきた。
エリンダ様、早く帰ってきてください。このままでは隊長達が……。
彼女が持って来たのは、なんかでっかい万力。
「次はこれだよ……ひひっ。名付けて
無事でいられるかな、隊長達。
ここでやっと、隊長とベーンが意識を取り戻した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます