第八巻 第六話 バブル景気と昭和の終わり

〇会見する佐藤栄作(首相、六十九歳)とリチャード・ニクソン(米大統領、五十七歳)

N「昭和四十七(一九七二)年五月十五日、ついに沖縄が日本に復帰した」


〇米軍基地

N「しかし米軍基地の多くは、返還後も存続し続け、冷戦中には核弾頭も持ち込まれていたことが明らかになり、基地問題は現在も続いている」


〇田中角栄(五十三歳)UP

田中「日本にはまだまだ開発の余地がある! 全国を新幹線と高速道路で結び、地方を活性化させれば、過密も過疎も公害も解決する!」

N「昭和四十七(一九七二)年、『日本列島改造論』をぶち上げて首相となった田中角栄は」


〇田植えを手伝う田中

N「小学校しか出ていないことを逆手に取り、庶民派のイメージで人気を得た」


〇周恩来と握手する田中

N「九月二十九日、念願だった中華人民共和国との国交を樹立するが」


〇スーパーマーケット

トイレットペーパーに殺到する主婦たち。

N「中東戦争に端を発するオイルショックの対応で苦慮し」


〇国会・衆議院議事堂

頭を下げる田中(五十五歳)。

N「金脈問題の追及を受け、昭和四十九(一九七四)年末に総辞職する」


〇会社のオフィス

FAXから書類が送信され、オフィスコンピュータをOLが操作する。それをあっけに取られて眺めている初老の上司。

N「七十年代にはOA(オフィス・オートメーション)の導入が進み、働く女性たちに『OL』の呼称が定着した」


〇証券取引所

ずらり並んだデジタルの数字を前に、売り買いをする証券マンたち。

N「一九八〇年代後半から、日本はバブル景気に突入した」


〇テレビのスタジオ

日本製のコンピュータをアメリカの議員が破壊している。

N「莫大な対日赤字を抱えることとなったアメリカは、日本政府を強く非難し、『ジャパン・バッシング』という言葉も生まれた」


〇ジュリアナで踊るイケイケ

N「しかし日本は好景気を享受し続けた」


〇葬場殿に向かう昭和天皇の柩を乗せた葱華輦(そうかれん)

※天皇の遺体を運ぶ輿

N「昭和六十四(一九八九)年一月七日、昭和天皇が亡くなる」


〇テレビに映る「平成」の紙を掲げた小渕恵三(おぶちけいぞう)(官房長官、五十三歳)

N「新年号は『平成』に決定した」


〇手塚治虫(マンガ家、六十一歳)と美空ひばり(歌手、五十三歳)

N「奇しくも同年、マンガ家の手塚治虫と歌手の美空ひばりが死去。人々は昭和の終わりを実感した」


〇連行される宮崎勤(二十八歳)

N「この年には連続幼女誘拐殺人事件の犯人・宮崎勤が逮捕される。その風貌と趣味から、『オタク』全般が不当な差別を、長きに渡って受けることとなる」


〇ベルリンの壁

東西ベルリン市民が、ハンマーで壁を壊している。

N「平成元(一九八九)年十一月九日、突如として冷戦の象徴であった、ベルリンの壁の通行が自由化され、翌日から解体がはじまった。東側諸国は連鎖的に崩壊し、ソ連も崩壊する」


〇山一証券に詰めかける債権者たち

N「平成三(一九九一)年三月、バブル景気が崩壊。景気はその後二十年以上に渡って回復せず」


〇入社試験の説明会場

リクルートスーツの男女で満員の会場。全員疲れ切り、真っ青な顔をしている。

就活生「俺は三十一社目だ。君は?」

就活生「もう五十二社目だ。正社員ならもう、どこでもいい……」

ため息をつく就活生たち。

N「就職難が続き、『氷河期世代』『ロスジェネ』と呼ばれる世代を生み出した」


〇家電量販店店頭

携帯電話(まだかなり大きい)がズラリと並んでいる。

N「平成五(一九九三)年、NTTドコモが二Gサービスをはじめ、携帯電話が本格的な普及を開始した」

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