第246話 騎竜乗り科の授業


「私達騎竜乗り科わね。レースに出場してこの国に貢献しているのよ!。」

「はっ、俺ら竜騎士科の竜騎士は命をかけて国を守る役割に務めているんだ。命を落とす危険性もない安全なレースに出場してでかい面すんじゃねえよ!。」


わーーーー!わーーーーー!

ギャーーー!ギャーーーー!


ブルーの制服とピンクの制服を着た令息生徒と令嬢生徒が互いに牽制しながら喚き散らしている


この人達またやってるんだな····。

よく飽きないなあ·····。

俺は双方に呆れた竜瞳の視線を注ぐ。

真っ昼間か口喧嘩するなどシャンゼルグ竜騎士校の生徒達は本当に暇なんだなあと俺は正直にそう思った。


「行きましょうか。」


親しくなった他校の騎竜乗り科のオリンに促され。アイシャお嬢様達は校舎の玄関前で口喧嘩する双方科の間を通り抜けようとする。


「くっ···。」

「·····ちっ。」


校舎の玄関前で口喧嘩していた竜騎士科と騎竜乗り科の生徒は俺とアイシャお嬢様の存在に気付くと。罵りあいがやみ。不機嫌な顔で舌打ちしして。その場から離れてしまう。どうやら双方の科の生徒達はアイシャお嬢様本人には喧嘩をするつもりはないようである。組分けの模擬レースの時あれだけの実力を見せつけられたのだ。しょうがないのかもしれない。本心では納得できないだろうけど。


ギャラギャアガアギャアラギャアギャ

(では、アイシャお嬢様。俺はこれで。)


校舎の中には矢張人化しなければ入れそうにもないので俺は玄関前で待つことした。


「解った。ライナ、ちゃんと大人しくしてね。」


アイシャお嬢様は念を押すように俺に注意をする。


「あ、そうそう、アイシャ、今日は一年は午前に騎竜専用の授業があるの。」


突然親しくなった他校の騎竜乗り科のオリンは何かを思い出したかのようにアイシャお嬢様に告げる。


「騎竜専用の授業?。」


アイシャは不思議そうに首を傾げる。


「そう、今日は竜騎士科と騎竜乗り科の合同授業がある日なんだけど。お互い勉学や競争しあったり能力を高めあったりする目的で行われる授業なんだけど。その中で互いの騎竜達だけで模擬戦闘や筋トレする授業もあるの。竜騎士や騎竜乗り抜きで騎竜だけで行う授業よ。」


へえ~シャンゼルグ竜騎士校にはそんな授業があるんだな。

アルビナス騎竜女学園の方では俺は騎竜を必要としない授業では殆ど待機状態であり。暇な時は学園のグランドでいつも俺は走り込みしながら筋トレをしている。


「そうなんだ。」


アイシャお嬢様は素直に感心する。


「だから騎竜専用授業の時は持ち場にいたほうがいいわね。人化できる騎竜はそのまま授業が行われる騎竜の訓練場に向かうけど。校舎に入れないライナはもしかしたら授業に入れず置いてけぼりにされるかもしれない。学業の方はあまり騎竜には関係ないから受けなくても問題ないのだけど。騎竜専用の授業を受けないと成績や戦績に響くかもしれないわ。アルビナス騎竜女学園の合宿でもあるのだけど。それでも授業を受けている以上は点数が入るから。」



なるほど、アイシャお嬢様の為にも俺も騎竜専用の授業を受けなくてはならないのだな。

アイシャお嬢様の成績や戦績に響くなら。やる一択しかないな。


「騎竜専用授業が行われるのは確か第4訓練場よ。そこで待っていれば一年の騎竜達が集まる筈よ。」


ギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャアラギャアガアギャア

(それではアイシャお嬢様。自分は先にその第4訓練場に向かいますね。)

「うん、解った。」


こうして俺とアイシャお嬢様は玄関前で別れる。


ギャアラギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャ

(さて、第4訓練場に向かおうっ、て、俺、第4訓練場知らないよ。)


よくよく考えたら俺は第4運動場の場所を知らなかった。昨日は学校の施設を案内されていたけど。駄々広いシャンゼルグ竜騎士校の敷地内を全て網羅しているわけではないのだ。どっかに案内板が設置されていないだろうか?。

俺は仕方なく校舎の周りに案内板がないか探すことにした。


ドシドシ

ガアガア····

(はあはあ···)


全然案内坂無えよ。何なのここ?。ここまで駄々広い敷地があるのだから普通案内板くらい設置しているだろ?。まさか魔法とかの異世界設定で案内板は必要としないと言うならもうお手上げである。


ギャアラギャアギャアラギャアギャ?

(はあ、どうすりゃあいいんだ。これ?)


俺はシャンゼルグ竜騎士校舎敷地で途方に暮れてしまう。アイシャお嬢様が授業を終えるまで待つか?。いや、しかし騎竜専用授業がいつ行われるかも解らんし。


むにゅう♥️

ギャホ!

(うっほ!)


突然俺の背中に柔らかい感触が当たる。

恐る恐る長首を曲げ振り向くと。そこにはピンクの制服を着ていたアイシャお嬢様と親しくなったオリンとかいう他校の令嬢生徒と一緒にいたラム・カナリエが抱き付いていた。小柄ではあるが中々いいものをお持ちである。


ギャア?ラギャアガアギャ?

(えっと?ラムさんですか?。)

「そう····ライナが第4訓練場が解らないと思ったから戻ってきた·····。」


ラム・カナリエという他校の令嬢生徒は口数がそれほど多くないが。俺が困っていると思い様子をみにきてくれたようだ。見た目からして思いやりのある良い娘だと解る。


ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャアギャギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャ

(本当にありがとうございます。実は本当に困っていました。何でこんな駄々広い敷地内で生徒が迷わないのか疑問に思いますよ。)

「ああ、それはこの魔法具を使っているの。」


ラムがピンクの制服の胸ポケットから何やらコンパクトな長四角いものを取り出す。


「これは起動させて。」

ブウン

ラムの四角いものは突然液晶のように画面が写る。


「この赤い点が私達の現在地でここをタップするとスクロールして。建物名とかが出たりするの。これを目安に私達は目的地を目指すの。」


ラムが四角い魔法具の画面を俺に見せて説明する。



何?そのスマホ設定。それ普通ファンタジー異世界にあるもんじゃないんでしょう!。

本当にこの異世界は色々あべこべである。まあ竜をレースに主流にしている時点で変わっているは確かなんだけど····。


俺はラムお嬢様の指示で第4訓練場まで向かう。

ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャア?ギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャア

(それよりホームルームとか授業、大丈夫なんですか?。俺が第4訓練場に到着するまでに遅刻するんじゃ。)


案内してくれるのは嬉しいが。それで遅刻してしまったら元もこうもない。ラムお嬢様に申し訳ない。


「大丈夫、大丈夫、第4訓練場に到着するまでには間に合う····。」

ギャアラギャ

(そうですか。)


ラムお嬢様が大丈夫と言うのだから大丈夫なのだろう。俺は彼女が学校に遅刻してしまう心配を忘れることにした。

ドシドシ


「本当に精霊を身に宿している····。」


ラムの唇からか細い声がもれる。


ギャア?

(はい?。)

「何でもない····。あ、そこ、右。」

ガ、ギャアギャア

(あ、はいはい····。)


俺はラムお嬢様の指示に的確にシャンゼルグ竜騎士校の敷地内を進んでいく。

いくつもの運動場や体育館などを通りすぎていく。

本当にシャンゼルグ竜騎士校の竜騎士育成もとい騎竜乗り育成の設備は充実しているようである

ドシドシ、


「あの、もし、其方の方。」


突然誰かに呼び止められる。

白いワンピースを着た綺麗な女の人に呼び止められた。白い薔薇の髪飾りをつけ。白薔薇のような真っ白な髪をした綺麗な人だ。流れる波のよつなウェーブ髪からちょこんと白い角が見える。透き通るようなエメラルドブルーの瞳をしている。きっと何処かの高貴な貴族の騎竜なのだろう。そんな雰囲気を目の前の白い薔薇の髪飾りをつけた美女は醸し出していた。


ギャギャアラギャア?

(はい、何でしょう?。)


俺は突然の美女に呼び止められ困惑する。王都から来てからそんな状況に陥ったことはないからだ。殆どノーマル種に対して無視か無関心である。


「お名前をお聞かせくれませんか?。」


薔薇の髪飾りをつけた真っ白な波のようなウェーブ髪の美少女は恥ずかしそうに何かもじもじしながら俺にそう告げる。


ギャアラギャ?

(名前ですか?。)


いきなり名前を教えて欲しいだなんて。何を考えているのだろう?この娘。ナンパ?いやこんな美しい人がナンパする筈がない。しかし人じゃなくて竜ならあり得るかもしれない。万年男漁りを趣味にする魅華竜もいるくらいだし。


ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアガアギャアラギャアギャアガアギャアギャア

(自分はアルビナス騎竜女学園に在籍する我が主人であるアイシャ・マーヴェラスの騎竜で。ノーマル種のライナと申します。)


騎竜の貴族風の自己紹介は先ずは主人たててそれから自分を紹介するのがセオリーである。王城に滞在する中で少し学んだ。


「ライナ様と言うのですね。私はフェネゼエラ家のご息女シャロム・フェネゼエラの騎竜をしております。白薔薇竜のマリアンと申します。此方はお近づきの印です。どうぞお受け取り下さい。」


白薔薇竜のマリアンは一本の白い薔薇を俺に手渡す。


ギャラギャア

(あ、どうも。)


ライナはその薔薇特に疑問も持たずに三本の鉤爪で受け取る。


「一本の薔薇。花言葉は一目惚れ。やっぱり白薔薇竜のマリアンはライナに気が合うの?。」


ライナの背中で一部始終観察していたラムは昨日の食堂で起きたことを思い返す。金輪際近寄らないでと白薔薇竜マリアンの主人である薔薇竜騎士団候補生のシャロム・フェネゼエラに言い付けられていたが。当の騎竜がライナに逢いにきたのだからこれに関しては無効であろう。


「それではライナ様。またお逢い致しましょう。」


白薔薇竜マリアンは社交界のような丁寧で優雅な礼儀正しい挨拶をするとニッコリと微笑んで何処かに去ってしまう。

一匹取り残され。呆けるライナは訳も解らず竜の長首を傾げる。


あの娘一体何しにきたんだろう?。


ライナはあの白薔薇竜マリアンの意図が全く理解できなかった。


ドシドシ

駄々広いグランドや運動場、コートを過ぎやっと第4訓練場に到着する。

まだ誰一匹として他の科の騎竜は来てはいない。一番乗りである。まあ当たり前なんだけど。


「じゃあ、私は戻るから。」


ラムお嬢様は俺の背中に乗ったまま伝える。


ギャアラギャアガアギャアラギャアギャア

(戻るってここまでの距離かなりありますよ。)


シャンゼルグ竜騎士校校舎までかなり歩いた。戻る頃には既にホームルームが終わるのでないかと危惧する。


「大丈夫。私転移魔法が使えるから。じゃ。」


しゅん

そう言うとラムは俺の背中から一瞬で消えてしまう。

·············

第4訓練場で一匹取り残されたライナは沈黙したまま物憂げに澄みきった大空を眺める。


ギャアラギャアギャア······

(本当に魔法って便利だな······)


ライナはそう正直に想った。


しゅん トス

一瞬で移動したラムは一年教室の自分の席に座る。


「お疲れ様。どうでした?。」


オリンは事情を知っていたので問いかける。


「うん、無事第4訓練場にライナを案内したよ。」

「ありがとう。ラム。ライナならきっと迷うと思って。」


オリン達と同じ教室で授業を受けることになったアイシャは相棒のライナを案内してくれたラムに深く感謝する


「気にしないで。でもこれからが大変かも。」

「大変?。」


アイシャは不思議そうに首を傾げる。


キンコンカーン ゴーン

ガラガラ

チャイムが鳴り教室の扉が開かれる。

おしゃべりしていたクラスは一斉に自分達の席に着く。アルビナス騎竜女学園専用に用意された席にアイシャは座る。

教室の扉から騎竜乗り科の担任教師と思われる女性とカーネギー教官が入ってくる。

騎竜乗り科の担任は教卓の前に立つ。カーネギー教官は後方を控えるように


「私はシャンゼルグ竜騎士校一年担任を務めるエレベア・エレノールと申します。これから

アルビナス騎竜女学園の教師であるカーネギー・アヴィレンス先生と一緒に合同に授業を受けることになります。宜しくお願いします。

さて、みなさんはこれからアルビナス騎竜女学園の生徒と一緒に授業を受けることとなるのですが。二年生三年生は経験はありますが。一年生はまだ初めてなので戸惑うかもしれません。お互いの能力を高めあい仲良く授業を受けましょう。」


しかし騎竜乗り科一年の令嬢生徒は皆ノーマル種を騎竜にするアイシャに冷たい視線を送っている。

そんなぴりぴりとした空気に騎竜乗り科の担任エレベア・エレノールは小さな深いため息を吐く。

エレベアの話を終えるとカーネギー教官が前に立つ。


「お前たち。王都での合同合宿ではあるが。普通に他校の授業も受ける。気を引き締めて真面目に取り組むように。返事は?。」

「「「イエス!マーム‼️。」」」


アルビナス騎竜女学園の一年生徒一同は元気よく返事を返す。

騎竜乗り科の令嬢生徒達はそんなアルビナス騎竜女学園の生徒達の挨拶にドン引きする。


「ちょ、ちょっと、カーネギー。なんで軍隊式の挨拶なんかを騎竜乗りの生徒に教えているのよ!。」


騎竜乗り科の担任は慌てふためく。


「ん?、ああ、うちの学園では普通のことだが。」

「普通じゃないわよ!。はあ、薔薇竜騎士団から教師に転職したと聞いた時からやな予感してたのよ。」


カーネギー教官と騎竜乗り科の担任のエレベアはどうやら顔見知りのようである。

合同合宿のシャンゼルグ竜騎士校のホームルームと授業は坦々と進む。


       

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