第245話 親交

「それじゃ頼みましたよ。」

「はい、誠心誠意無事ライナをアイシャ・マーヴェラスの元へと送り届けよう。」


今日はシャルローゼ王女様達は王族の責務があるらしく。学校に遅れるらしい。故に変わりに妹であらせられる。竜騎士科に身をおく第二王女であるメディア王女が俺をシャンゼルグ竜騎士校に送り届けることになった。


「うう···らいな····。」


やっと名前を覚えてくれたマリス王女は指をくわえ。物悲しそうな瞳で見送りに同行している。


「大丈夫ですよ。マリス王女。直ぐにライナ様は戻ってきますから。」


唯一の遊び相手である俺がいなくてマリス王女は寂しいのだろう。ただ俺もアイシャお嬢様の騎竜として授業に付き合わなくてはならない。王族のペットではあるが。それ以前にアイシャお嬢様のマーヴェラス家の騎竜でもあるのだ。

城門前でマリス王女との一時的な別れの挨拶をすませる。


「では、行こうか。ライナ。」

ギャア ラギャアギャア

(はい、メディア王女様。)



メディア王女と一緒に俺はアイシャお嬢様の合宿先であるシャンゼルグ竜騎士校へと向かう。首にはちゃんと王族のペットの証である金のメダリオンを着けている。


銀髪レイヤーショートヘアーでプリンセスダイナマイトなお胸のお持ちのメディア王女様は竜騎士科のブルーの制服を着ていた。


「メディア王女はやめてくれないか?。堅苦しいのは城内だけにして欲しいのだ。」

ギャアラギャアギャアラギャ

(畏まりました。メディア様。)

「様も止めてくれ。確かにクラスメイトにそう言われてはいるが。王族のペットであるならば親しい間柄だ。なら呼び捨てでも構わない。」

ギャラギャアギャア

(では、メディアさん。)

「ん?なんかより遠くに。より他人行儀なったような気もするが···。まあ、いいか·····。」


どうやらメディア王女様も色々面倒臭い人のようである。

中央にある王城から東地区にあるシャンゼルグ竜騎士校に向かう。本来ならお城から西門の方が近いのだが。今日は正門でアイシャお嬢様と待ち合わせをしている。


王都の通りを普通に出歩く俺の姿をすれ違う貴族は奇異な視線を送ってくる。しかし誰もノーマル種が王都の通りを堂々と歩くことに文句を言わない。隣に一緒に出歩く女性がこの国の第二王女であることに気が付くからである。しかも俺の首にかけている金のメダリオンに皆驚愕な眼差しを向けてくる。何故なら俺が王族のペットであることを認識したからである。皆あり得な~いといったような表情で凍りついたように呆気にとられている。そんな貴族の様子にもメディア王女は意に介していない。


「ライナ、昨日の組分けの模擬レースは凄かったな。」


メディア王女は昨日の俺とアイシャお嬢様の他校の生徒同士の模擬レースを素直に誉める。

ギャアラギャアガアギャアラギャア

(あまり自分は活躍してませんけどね。)


昨日のレースは殆どアイシャお嬢様が狂姫の大技で騎竜もろとも倒してしまった。俺はただただ静かに静観しただけである。


「謙遜することはない。あれほどの加速スピードは私は風竜族や一部の騎竜しかみたことがない。それに変わった加速飛行していたな。アイシャ・マーヴェラスが竜の背中に自分の胸を擦り付けていたようだが····。」


ギャアラギャア

(Boin走行ですね。)

「Boin走行というのか?。背中に擦り付けることに何の意味があるのだ?。」


メディア王女は本当にBoin走行という走行行為に素直に疑問を感じているようである。


『それは自分の特性なんです。自分は女性の胸を背中に胸を押し付け。擦り付けられることで何というかうちなるパワーが爆発するんです。それであの加速飛行が出るんですよ。』


気の説明をしてもこの異世界では難しいだろうから。なら取り敢えず俺が女性の胸(Boin)を背中に押し付け。擦り付けるとパワーが爆発して加速するということだけ説明する


「なるほど。そんな特性を持った竜(ドラゴン)なんだな。ライナは。私もやってみたいものだな。」

ギャハ!ラギャアギャ‼️ガアガアバギャハッ!!

(是非!機会あれば是非‼️。お願い致します!!。)

「ん?ああ····。」


メディア王女はライナのあまりにも激しい食いつきに少したじろぐ。


メディア王女のあの素ん晴らしいダイナマイトボーンの胸を背中押し付け擦り付けられたら。

んもお~~堪らんばい♥️。

いつの間にかライナは博多弁になっていた。



ドシドシ


「あっ!ライナだ!。」


シャンゼルグ竜騎士校正門前に到着すると。アイシャお嬢様が俺に気付いて笑顔で駆け寄ってくる。


「あ、えっと。メディアさん?ですか。」


アイシャお嬢様が俺の隣に見知らぬ竜騎士科の制服を着た令嬢に立ち止まって。恐る恐る問いかける。


「ああ、姉上が世話になっている。メディア・シャンゼベルグだ。」

「シャンゼベルグ?。」


アイシャは眉せ困惑する。


「シャンゼリゼじゃないんですか?。」


シャルローゼ先輩の名前が名字が違うことにアイシャ戸惑う。

そう言えばアイシャお嬢様はまだシャルローゼ先輩がこの国の王女だと知らないんだった。

俺は事実を伝えるべきかどうか迷う。


「シャンゼリゼ?、確か姉上は学園ではそう名乗っているのだったな····。」


メディア王女は何か察したように納得する。


「すまない。シャンゼリゼは仮名でシャンゼベルグが本名なんだ。家の事情があって本名は名乗れない。」

「そうなんですか。」


アイシャお嬢様は素直にメディア王女の言葉を信じる。

上手い!。流石は社交界デビューしまくっている王女様である。場の会話の流れに違和感がなく言い訳している。それに全く嘘も言っていないし。

会話で王族であることは伏せているが。それ以外は全て事実である。


「申し遅れました。マーヴェラス伯爵家の娘アイシャ・マーヴェラスと申します。ライナがお世話になり。ライナを預かってくれて本当に感謝致します。」


アイシャお嬢様は貴族風な礼儀で挨拶とお礼を告げる。


「そんな畏まらなくてもいい。本来なら他校の騎竜を迎え入れられない我が校。此方の落ち度だ。」

「いえ、シャルローゼ先輩には本当に親切にして貰って感謝してもしきれません。ライナが其方で何か迷惑かけていませんか?。」


アイシャお嬢様は心配そうにメディア王女に問いかける。

アイシャお嬢様は自分がまた迷惑かけていると思われているようだ。

本当に心外だなあ~。


俺が迷惑かけたことなど一度も·······いや、一杯迷惑かけておりました····はい。


思い起こせば昔アイシャお嬢様にかなり迷惑かけていたことを思い出した。我ながら反省である。


「迷惑をかけてはいない。寧ろ妹のマリスの世話してくれて助かっている。」


メディア王女は俺が王城内で役立っていることを伝える。


物凄く疲れましたですけどね····。

マリス王女の相手は昨日の夜と今日の朝もした。何か王族のペットが王女様のお相手をすることが認知されているようだけど。本当にペットって。お世話する方じゃなくてお世話される方なんだと思うのですけど···。

俺は内心言い訳まがいの言い訳を並べてみる。

不毛であることに変わりはないのだが。


「私はこれで失礼するが、校舎まで大丈夫か?。」


正門前でメディア王女の心配は竜騎士科と騎竜乗り科の諍いのことである。アイシャ達は初登校の一件から双方に敵視されることになってしまった。


「友達と待ち合わせしているので大丈夫です。」

「そうか····。何かあったらいつでも相談に乗ってくれ。特に竜騎士科のものが何かしでかしたら積極的に伝えて欲しい。即対処しよう。」

「ありがとうございます!。」


アイシャお嬢様とメディア王女は挨拶を交わしその場で別れる。俺の首に着けている金のメダリオンも取り外して持っていってしまう。帰りにまた着けるのだろう。

アイシャは凛々しい立ち振舞いで校舎に向かうメディア王女をアイシャお嬢様は羨望な眼差しで見送る。


「いい人だったね。ライナ。」

ギャアラギャ

(そうですね。)


「アイシャ。」

「待たせたわね。」


アイシャお嬢様と俺が正門で暫く待つと。パールお嬢様とレインお嬢様が現れる。

しかし二人の騎竜のうち炎竜ガーネットの姿が見当たらない。


「あれ?ガーネットは。」


アイシャお嬢様も気付いたようでレインに疑問を投げ掛ける。


「ガーネットは今日気分悪いみたいで···。休むことにしたの···。」


レインお嬢様の表情は少し曇っている。


「心配だね。後でライナと一緒に様子みにいこうかな?。」

「そうしてくれる!。ライナが同行してくれたら。きっとガーネットも喜ぶから!。」


俺はパールお嬢様の隣に立つメイド姿の青宮玉竜のレイノリアにガーネットのことを聞く。


ギャアギャアギャアラギャア?

(ガーネット、どうしたんだ?。)


レイノリアははあと小さなため息をひと息吐く。


「模擬レースで竜騎士科の氷結竜に敗けたことをまだ尾を引いてるんです。氷結竜が言っていた炎竜族の中で一番弱いと言われたことが相当堪えたようで。今はシャンゼベルグ竜騎士校の騎竜専用の寮部屋で引きこもっています。全く、変なところが繊細なんだから。いつものように不遜でふてぶてしい態度でしていればいいものを。」


レイノリアはガーネットに対して悪態をついているが。何だかんだで良いライバル関係を築いているようである。


ギャラギャアガアガアギャアラギャアギャアガアギャア

(まあ、レースで敗北して落ち込むのは仕方ないことだな。)


俺もレースで敗北して立ち直るのにも少し時間が懸かった。炎竜ガーネットも敗北の味を乗り越えてケロッとした元気な姿で再び戻ってくるだろう。



「それじゃ、行きましょう。オリンもラムもシャンゼルグ竜騎士校の並木通りで待っている筈だから。」


パールお嬢様が先導する。


ギャア?ラギャ?

(オリン?ラム?。)


聞いたことのない名前にライナは竜の長首を傾げる。


「シャンゼルグ竜騎士校の女子寮の食堂で親しくなった騎竜乗り科の生徒だそうです。」


レイノリアが説明する。

へえ~他校との交流上手くいってるんだな。最初の方が悪印象だったから心配してたよ。

他校の令嬢生徒とアイシャお嬢様が打ち解けていることに俺は深く安堵する。

俺なんか竜騎士科や騎竜乗り科、騎竜もろともけ何故か嫌われているからな。ノーマル種だから仕方ないのかもしれない。ただアイシャお嬢様が他校の生徒と仲良くできて本当にに良かったと思っている。


正門からシャンゼルグ竜騎士科校舎まで並木の大通りを進む。

すれ違う竜騎士科の生徒と騎竜乗り科の生徒は矢張冷たい眼差しを向けてくる。特に俺(ノーマル種)中心に。

暫くシャンゼルグ竜騎士校敷地内の並木の大通りをすすんでいるとピンクの制服を着た二人組がたっていた。一人はおしとやかで清楚な印象与える令嬢で。もう一人は黒髪の小柄な少女で耳元が髪で隠れるほど厚みがある。二人の彼女達の隣にはピンク色だが制服のデザイン違いを着た女性が二人おり。一人はウェーブかかったオレンジ色の独特な髪をした女子が鶏冠部分に三本のアホ毛?みたいな髪の毛をぴんぴんと元気よく飛び跳ねさせて立っておる。もう一人は漆黒の角をはやし。油絵のアイボリブラックのような深みのある色をした髪と瞳をしたどこか品のよい女性が立っている。

恐らくあのピンク色の制服を着た騎竜乗り科の騎竜なのだろう。


「オリン、ラム、ご免。遅くなって。」


アイシャお嬢様は親しげに二人に挨拶する。


「いえ、私達も今来たところでしたから。ライナと合流できたんですね。」


オリンという騎竜乗り科の令嬢生徒はニッコリと微笑む。


「ええ、メディアさんに送って貰ったから。」

「メディアさん?まさか···メディア王女···。」


オリンは絶句するほど驚いている。

どうやらメディアさんの正体を知っているようである。というよりはこの学園全体がメディアさんの正体を知っているのかもしれない。ああ、後、メディア王女がメディアさんになったのは彼女が王女や様付けを嫌うようなので王城の外ではメディアさんと呼ぶようにしている。


「この学園に在籍しているシャルローゼ先輩の妹なんだって。そこでライナが女子寮に入れないから。シャルローゼ先輩の実家に預かって貰っているの。」


アイシャお嬢様は屈託の笑顔で事情を説明する。


「シャルローゼ···シャルローゼ様の実家?。まさかお城に預かられているの?。え、え、え?。」


どうやらオリンという令嬢生徒は思考が追い付いていないようである。まあ、お城にやっかいになっているノーマル種なんて聞いたこともないだろうし。尚且つ王族のペットだし。


「それよりオリン。自己紹介したら?。」


耳が隠れた黒髪の小柄な少女は半場パニックってるオリンに冷静にアドバイスする。


「ああ、そうでした。私はオリン・ナターシス。彼女はラム・カナリエよ。私達は貴女の主人と仲良くなったの。宜しくね。」

「宜しく·····。」


二人はノーマル種である俺なんかに丁寧に自己紹介の挨拶をしてくれる。

どうやらアイシャお嬢様と親しくなった他校の令嬢生徒は心からいい人そうである。


ギャアラギャアガアガアギャアラギャアギャアラギャアギャアガアギャアラギャアギャアラギャア

(此方こそアイシャお嬢様と仲良くして貰い感謝致します。ノーマル種のライナでございます。)


アイシャお嬢様が親しくなった他校のご友人に俺は丁寧に挨拶を返す。


「で、此方が私達の騎竜で。オレンジ色の髪のした彼女は私の騎竜で鳳凰竜フェニスよ。オリンの騎竜は彼女で。魔剣竜ホロホス。両方ともレア種よ。」


二人の騎竜が両方ともレア種とは流石は王都の騎竜である。


ギャアラギャアギャ······

(宜しくお願いします·····)


俺は親しくなった他校の令嬢生徒の騎竜に挨拶する。


「此方こそ宜しく。」


漆黒の角とアイボリブラックの髪と瞳をした品のよい女性の姿をした魔剣竜ホロホスは丁寧に挨拶を返す。


···············

もう一人の鶏冠に三本のオレンジ色のアホ毛?を揺らす鳳凰竜という竜のフェニスは俺をぶっきらぼうな態度でじっと無言で横目で一瞥する。

···············

「ふん!。」


そのまま不機嫌にそっぽを向いてしまう。

ええええーーーー!?

俺は突然拒絶似た態度に少し動揺してしまう。


「ご免なさいね。フェニスはちょっと素直じゃないところがあるのよ。気にしないでね。」


魔剣竜ホロホスは鳳凰竜フェニスの態度に深く謝罪し弁明する。

素直じゃないというか確実に嫌われているとおもうのですが。何か王都のシャンゼルグ竜騎士校に来てから殆ど嫌われているような気がする。ノーマル種だから仕方ないだけど。

本当にノーマル種にとっては王都は世知辛い生きずらい場所である。


仲良くアイシャお嬢様達はおしゃべりしながらそのままシャンゼルグ竜騎士校の敷地の並木の大通りを進む。


シャンゼルグ竜騎士校舎のでっかい建物が見えてくる。


「いい加減にしなさいよ!竜騎士科‼️。」

「それはこっちの台詞だ‼️。騎竜乗り科!。」


シャンゼルグ竜騎士校の校舎前に到着すると突然罵声が飛び交う。

よく見るとブルーの制服を着た令息生徒達とピンクの制服を着た令嬢生徒がお互い声を張り上げ罵りあっている。

シャンゼルグ竜騎士校の玄関前で竜騎士科と騎竜乗り科が口喧嘩をしていた。

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