第233話 三激突
びゅうううーーーーーー
「さあ、ヘンガン。最初に騎竜乗り科の奴等を潰しちまおう。それから他校だ。」
フルメタルボディを着こなす激突竜の主人である角刈り頭のラザット・バラッカスは激突竜ヘンガンに指示をする。ラザットは既に武装解放しており。鋭利なスピアーを所持していた。
『それは構わないが。俺は早くあの二匹の騎竜に激突したいんだよ!。俺の逞しくもこの熱く滾った俺のものを早く奴等にぶちこみたいんだ‼️。』
激突竜ヘンガンはデコに伸びる突起物を長首を前後に動かし。ピストンのような動作をする。
やっぱどうしてもあの激突竜ヘンガンとかいう竜の台詞卑猥に聞こえるんだよなあ~。動作もちょっとイヤらしいし。気のせいか?。
校庭グランドに設置された音声も聴こえる高性能な魔法具スクリーンにうつるレースの様子にライナはどうしても映像にうつる激突竜ヘンガンの様子が卑猥に見えた。
『お嬢、そろそろ仕掛けますか?。』
コクッ
後ろ髪が結った艶のある濡れ鴉色の髪が風でなびく。イーリスは剣帝竜ロゾンの鋼色の背中の上で無言で頷く。
『では。』
剣帝竜ロゾンな静かに竜瞳の瞼を閉じ瞑想する。
『千の深き剣落ちし。闇深き魔を断ち、聖祈りしは白き刃、百と見なし千と成りて。』
ジャキッ!!
パッと竜瞳が見開きロゾンは眼光を放つ。ギザギザした鋭利な鋼の翼が大きく広がる。
『剣千想界(けんせんそうかい)!!。』
ロゾンの周囲の空間が歪みだす。
「よし!先ずは後方の騎竜乗り科を。て、なっ何だ!?。」
突然周囲の景色が歪む。
ぶああああああ
チャギ チャギ チャギ チャギ チャギ
歪んだ空間から突然何十何百何千の剣が並ぶよ
うに出現する。
『これは剣帝竜ロゾンの剣千想界か!?。おい!ラザット。どうやらやっこさん。俺達の目的を待たせてはくれないようだぜ!。』
激突竜ヘンガンは剣帝竜ロゾンが自分達に攻撃を仕掛けてくることを速やかに判断する。
「ちっ、騎竜乗り科をさっさと片付けたかったのによお。」
竜騎士科のラザット・バラッカスは竜騎士科の勝利を確実にするために騎竜乗り科を早くたおしたかった。
『どうする?。』
「しれたこと!。こうなったら全員まとめてぶちのめすだけだ!。」
『そうこなくっちゃな!。』
主人の了承得た激突竜ヘンガンは興奮したようにデコから伸びた突起物を鋭くつきだす。
『ああ~熱い!。熱いぜ!。俺の熱く滾るリビドーが。も、もう何ものにも抑えられねえ…,』
激突竜ヘンガンの突起物が真っ赤に染まりだす。充血したようぎんぎんに固くなる。
やっぱあれを連想するんだが…。
スクリーンに写る激突竜ヘンガンの光景にライナは竜口をあんぐり開けたまま絶句する。
いや、違うあれは絶対に違う。そうあれはただの角、ただの凹凸だ。ただのこぶ、出来物だ。
俺はどうしても激突竜ヘンガンのデコに伸びる突起物をあれを想像してしまう。
ヘンガンの台詞もあれを連想させる言葉が多い気もするがたんなる幻聴であろう。
『刺す!刺す!ぶち刺す!。お前達のアソコにぶち刺あああああああーーーーーーーあーすぅっ!!』
やっぱ、幻聴じゃねえええーーー!!。
ライナの心の突っ込みなどお構い無く。激突竜竜ヘンガンのデコに伸びた突起物を前に突きだしそのまま突っ込む。
ずっきゅーーーーーーーーーーーーん!!
はっ?
激突竜ヘンガンは翼を扇ぐ動作もせず。そのまま数千の剣が並ぶ剣帝竜ロゾンの元へとマッハスピードで突撃する。
本来なら突っ込む擬音がずっきゅ~ん!になったりしない。それなのにあの激突竜ヘンガンの突っ込む飛行の擬音が何故かずっきゅ~ん!になっていた。いや、ぜんたいかんたいおかしいだろ!。
キンキンキンキン! ガッ キィッ!
聖剣、魔剣、神剣並ぶ剣帝竜ロゾンの周りを真っ直ぐ突っ込んでくる激突竜ヘンガンの前方はデコに伸びる突起物で全てを通りすぎながら弾き返される。
『お嬢、来ますぞ!。』
「……。」
パシッ
イーリスは剣帝竜ロゾンの周囲に並ぶ聖剣、魔剣、神剣の中から一対の剣を手に取る。それは何の変哲もない西洋の剣というよりは反りかえった刀身を持つ刀であった。
その反りかえった刀身の刃を目の前に突撃してくる竜へと向ける。
『激突!激突!激突!!。』
ずっきゅーーーーーーーーーーーん!!
あり得ない擬音を発しながら激突竜ヘンガンが突っ込んでくる。
イーリスを乗せた剣帝竜ロゾンに激突竜ヘンガンが真っ正面にぶつかる。デコから伸びた突起物を突きだし。突っ込んでくる。
ずっきゅーーーーーーーーーーーーん!。
カチャ
「……。」
ひゅッ
しかし激突する寸前イーリスは刀を返し。ヘンガンのデコに伸びた突起物に当てる。マッハスピードでありながらタイミングよくイーリスは刀の刃を激突竜ヘンガンのデコに伸びる突起物にあてた。
ギりギりギりギりりりーーーキンッ!!
ずっきゅうーーーーーーーん!
激突竜ヘンガンの突撃は剣帝竜ロゾンとは激突せず。イーリスはヘンガンの突起物を刀身であて火花を散らし削りながら受け流すように方向を逸らす。激突竜ヘンガンの竜の巨体はからぶったように空を切る。
ずっきゅーーーーーーーーーーーーん!。
『な、何だ?何が起こった!?。』
通りすぎた激突竜ヘンガンも状況も解らず困惑する。
「あの女。剣一本でヘンガンの突撃する方向を逸らしやがった!。」
竜騎士としても実力を持つラザット・バラッカスは人間業とは思えない芸当に絶句する。
『マジか!?。流石は剣(つるぎ)の巫女と呼ばれた騎竜乗りだな。』
激突竜ヘンガンは素直に感心する。
剣の巫女はイーリスの二つ名である。
『で、どうするよ。ラザット。またロゾンとやり合うのか?。』
このまま剣帝竜ロゾンと剣の巫女とやり合っても構わないが。これは純粋な竜騎士の戦闘ではなくレースである。レース中は確かに戦闘はするが。目的はあくまでも早くゴールに到着することである。戦闘はあくまで進行を妨げる妨害行為でしかない。
「次は騎竜乗り科の奴等に突撃する。」
『本気で言っているのか?。』
剣帝竜ロゾンと剣の巫女とやりあっている最中に更に騎竜乗り科ともやり合うなどと。正直馬鹿げている。騎竜乗り科はまだ後方にいる。しかしそれはレースとしては後退する行いだ。先にゴール到着するのが目的なのに後退するなどと愚の骨頂である。
「あの剣の巫女の目、あれは確実に俺達をとりにくる目だ。つまりあいつらは俺達を倒すことを目的としている。現にあの剣の巫女と剣帝竜は今も尚、止まってるしな。」
ラザットの言葉に剣の巫女達の様子を激突竜ヘンガンは竜瞳で観察すると。確かに剣の巫女と剣帝竜ロゾンは自分達を追い抜いたりしていなかった。からぶった時に逃げに徹すること出来たのに。いまでもその場に止まり停滞している。
「奴等が俺達を倒す気であるなら一層騎竜乗り科の奴等を巻き込んでの戦いにした方がいい。」
『乱戦ということか?。』
「そうだ。元々騎竜乗り科を潰す算段だったからな。計画は狂ったが。このまま巻き込んだ形で戦闘を行う。ヘンガンとしては文句ないだろう?。」
『ああ、俺としてはこれほど熱く滾る戦いはないな。俺の心棒はもう堪らんよ。』
デコに伸びるヘンガンの突起物は逞しく脈つ。
「んじゃ、始めるか!。」
ラザットはスピアーを前にだす。
激突竜ヘンガンはデコに伸びた突起物を前方のイーリス達ではなく。後方に飛行するソリシラ・マスタートを乗せた磁電竜オロスへとむける。
『ああ~。俺の熱く逞しい逸物が!。お前達を貫く!貫く!つらっぬっくう~~~ん♥️。突いて!突いて!突きまくっるう~~ーーーーん♥️!。』
ずっきゅうーーーーーーーーーーーーーん!。
激突竜ヘンガンは後方へと突き進む。
もうやめてあげてよ。どんだけ下ネタ入れてくるんだよ。あの竜(ドラゴン)。
て言うか何で誰も突っ込まねえだよ!。どう見てもあれ完全にアウトだろうが!。
シャンゼルグ竜騎士校、教師生徒含めてあの放送禁止用語を連発する竜(ドラゴン)を突っ込まないのは俺は本気でおかしいと思う。
『お嬢様。激突竜が此方に向かっております。』
磁電竜オロスが主人に危険を報せる。
「そうなのですか?。」
主人のソリシラ・マスタートは素知らぬ顔で特に何も動じず首を傾げる。
『そうなのですか?じゃないですよ!。早く対応お願い致します!。』
「あ!?、はいはい…,」
ソリシラは今更気づいた様子で手の甲に宝玉が付いたドラグネスグローブを掲げる。
『はあ……。』
磁電竜オロスは深いため息を吐く。
「武装解放。」
パああッ
緩い叫びに呼応し。宝玉から光が漏れる。光が形を形成し。そこから一対のミラーが現れる。ソリシラはミラーを太陽光にあて反射させる。
ミラー?何でミラー?。
アイシャは魔法具スクリーンにうつるシャンゼルグ竜騎士校の騎竜乗り科二年令嬢生徒が武装解放でミラーを出したことに???マークが止まらなかった。
ずっきゅーん!ずっきゅーん!ずっきゅーん!
ずっきゅーん!ずっきゅーん!ずっきゅーん!
ずっ きゅう~~ーーーーーーーーーーーん!
ああ…。何か頭がおかしくなる…。
あり得ないずっきゅーん!という擬音を発しながら特効する激突竜ヘンガンに俺の竜の脳内はゲシュタルト崩壊起こしそうになる。
「お嬢、ヘンガンはどうやら騎竜乗り科の騎竜に攻撃を仕掛けるようです。どう致しますか?。」
「……。」
イーリスは刀を握りしめる。
「…··。」
『追うと?。』
コクッ
イーリスは無言で頷く。
『了解つかまつった。』
ジャキッ!
剣帝竜ロゾンのギザギザした鋼の翼を広げる。
ひゅん
剣をかすめるような音を鳴らしながら突き進む。
『責める!責める!責める‼️。』
ずっきゅーーーーーーーーーーーーん!。
激突竜ヘンガンのデコから伸びた突起物が磁電竜オロスの小金色の鱗に覆われた身体に向けて突っ込む。
背中に乗るフルメタルボディの鎧を着こなすラザットはスピアーを磁電竜に乗るソリシラにむける。
ずっきゅ~~ーーーーーーーーーーーーーん!
「騎竜乗り科!。このレース取ったり!。」
ラザットは高笑いをして勝ちを確信する。
ソリシラはミラーを太陽光に反射させ。それを目の前に激突してくるラザットと激突竜オロスに向ける。
「サンシャインド・ミラー(太陽反射鏡)」
ピッ カあああーーーーー!。
「ぬわっ!。」
『ま、眩しい!。』
ソリシラのミラーによって反射された太陽の光がフルメタルボディの鎧を着こなすラザットと激突竜オロスに向けられ。ラザット達は目を覆い一瞬怯む。
パン パン パン
怯んだ隙に磁電竜オロスの小金色の翼からトゲなようなものが飛ぶ。ラザットの周りにそのトゲのようなものが宙に浮いたまま停滞する。
『飛雷針(ひらいしん)!。』
バッ ババババッ バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ
稲光りと同時に雷が磁電竜オロスの小金色鱗から放たれ。雷のような稲光りが磁電竜オロスが飛ばしたトゲに貫通し。そのままラザットもろとも激突竜ヘンガンに感電する。
「あっばばばばばばばばばばばばばば!。」
ぎゃばばばばばばばばばばばばばばば!。
竜騎士とその騎竜一人一匹はまるで感電したかのように全身を震わせながら痙攣する。磁電竜オロスのスキルである電気か雷のようなものをまともに喰らったようだ(普通死ぬけど)。
あれ、痛そうだなあ~。
魔法具にスクリーンの映像に俺は遠目で静観する。
俺が前世の頃バイトの電球の取り換えで感電したことがある。その時は大事故にはならなかったが。本当にあばばばと口にしてしまうのだ。漫画みたいだけどこれ本当の話。
びりびりびりびりびりびりびりびり
「あばばばばばばばばばばばっ。」
ぎゃばばばばばばばばばばば
あばばとぎゃばば連呼する一人と一匹。竜騎士科のフルメタルボディの鎧を着用している故より通電性が増しているのだろう。
「あばばばばっ!。くっ、ヘンガン!。離れろばばばば。」
『ぎゃばばばばば、あっ、があっ。』
ずっ きゅーーーーーーーーーーーーん!。
飛雷針に感電してた激突竜ヘンガンは翼を広げ方向転換して一旦その場を離れる。
磁電竜オロスが飛ばした針の外側まで一旦退く。
「はあはあ、磁電竜…雷竜族かっ!?。くっ、厄介な…。」
ラザットは息を整えちっと舌打ちする。
雷竜族は西方大陸に生息する雷を操る特殊な個体の竜(ドラゴン)である。風神竜に並ぶ雷竜族の頂点である雷神竜を筆頭に西方大陸のとある雷雲が止まない山脈を縄張りにしている。天候を操るというよりは雷系のスキルを操る雷竜族は元素にない雷を操る。雷撃系のスキルに対策など持っていない竜騎士科のラザットにとってはやりづらい相手である。しかもフルメタルボディの鎧を着てるせいで通電性もある。
ジャキッ!
ギザギザの鋼の翼の金属音を鳴らし。剣帝竜ロゾンも彼等の戦闘の場に追い付く。
三匹が戦闘と飛行繰り返すなか。レースコースはいつの間にかシャンゼリグ公園を過ぎていた。
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