第227話 ライナ、喧嘩を売る

わーーー! わーーー!

がやがやがやがや


校庭から竜騎士科令息生徒の嘲笑と冷やかしの声が飛び交う。

そんな校庭の様子を屋上から冷めた顔をした竜騎士科最強のリーダーに位置する青年ゼクスとごつい鎧のような鱗をした竜(ドラゴン)。無双竜ザインが静観する。


『止めないのか?。』


無双竜ザインが主人であるザインに問いかける。


「下らん·····。」


ゼクスは興味なさげにそっぽを向く。

無双竜ザインは真下の校庭で行われている嘲笑の嵐に竜瞳をやる。

矢面に立たせられている騎竜乗りの少女の隣にいる平凡な緑色の鱗に覆われた竜であるノーマル種を何故か無双竜ザインは興味津々にみいいる。


ざわざわ がやがやがや


「何の騒ぎかしら?。」

「校庭から聞こえてくるわね。」


騎竜乗り科リーダーである三年のエネメリスとクラスメイトのラウラはシャンゼルグ竜騎士校の公園から校舎に到着していた。


わーーーー!わーーーー!


「これは······。」

「何なの·······。」


校庭では竜騎士科の令息生徒がノーマル種を傍にいる他校の一人女子生徒をよってたかってからかい冷やかし嘲笑していた。

そんな異様な光景に二人の騎竜乗り科の令嬢生徒は愕然とする。


「騎竜乗りの面汚し!。」

「騎竜乗り恥さらし!。」

「お前みたいなノーマル種を騎竜にする騎竜乗りはお呼びじゃないんだよ!。」


ブルーの制服を着た竜騎士科の令息生徒達は

一人のノーマル種を騎竜にする他校の令嬢生徒に対してよってたかって容赦ない野次罵声を浴びせてくる。


「せーの!!。帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!

「せや!。帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれっ!」

「そや!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!。」


更に勢いが増し。竜騎士科の令息生徒達は盛り上がるように一人の騎竜乗りとノーマル種を集中にまくし立てる。



「エネメリス。これって不味いじゃないの?。」


ラウラの顔色が青ざめ動揺する。

あの他校の生徒が何故ノーマル種を騎竜にしているか解らないが。竜騎士科が他校との問題を起こしてることは明白である。

バッ


「エネメリス!。」


エネメリスは突然飛び出し。校舎の中へと急いで駆け込む。


   シャンゼルグ竜騎士校

      一年教室


「帰っえっれっ!帰っえっれっ!帰っえっれ!。帰っえっれ!。帰っえっれ!。」

「貴方達止めなさい!。あれは他校の生徒でしょうに。」


一年の常識人で優等生でもあるオリン・ナターシスは二年三年の竜騎士科と一緒になって野次を飛ばす竜騎士科の一年のクラスメイトを注意する。


「ああ?。」


ブルーの制服を着た一年の竜騎士科の令息生徒は不快に眉を寄せる。


「俺達は騎竜乗りの常識を教えているだけだぞ。」

「そうだそうだ。そもそもノーマル種を騎竜にする貴族なんて何処にもいねえだろが?。」

「ほら、騎竜乗り科の皆さ~ん。何か言ってみたらどうですう~?。」


竜騎士科の令息生徒は挑発するように騎竜乗り科の令嬢生徒に問いかける。


「········。」

「········。」

「········。」

「········。」


いつも勝ち気で竜騎士科に反論口答えする騎竜乗り科の令嬢生徒達も今だけは重く口を閉じている。皆反論できずに悔しそうに唇を歪ませている。


「オリン。ここは身を退こう····。」


ラムは静かにオリンを宥める。

隣の魔剣竜ホロホスも同意するように頷く。


「ま、マリヤ、し、しかし·····。」


誰一人としてオリンの味方するものはいなかった。ノーマル種を騎竜にする騎竜乗りなんて騎竜乗り科であっても非常識極まりないことである。だから竜騎士科がノーマル種を騎竜にする他校の騎竜乗りを責めても騎竜乗り科の令嬢生徒達からはそれを咎める者はいなかった。寧ろノーマル種を騎竜にする他校の生徒を憎むものもいた。

何であの娘はノーマル種なんかを騎竜にしているのよ!。おかげで竜騎士科の奴等におもいっきり馬鹿にされたじゃないの!。あの他校の一年絶対許さない!!。

騎竜乗り科の一年令嬢生徒達は皆激しい怒りを滲ませている。どす黒い感情がわきだし全員があのノーマル種を騎竜にする他校の一年をどう報復してやろうかと考える。



鳳凰竜フェニスは椅子に腰掛けたままオレンジ色の長い髪を靡かせ。窓際から見える校庭のつまらなさそうに見ていた。鳳凰竜フェニスは人間事の争いには興味なかった。無関心を決めこんでいる。ふと校庭から見える平凡な緑色の鱗に覆われた竜を一瞥する。


えっ!?何、あれ?


鳳凰竜フェニスは驚愕する。ノーマル種の体からとてつもないオーラが流れていた。オーラの中には7色の光の粒子も交じっている。

それが精霊であることは不死の竜と吟われた鳳凰竜であるフェニスなら直ぐに解った。


「7大元素の精霊が憑いてるの?。有り得ない····。」


妖精竜や精霊竜、三年エネメリスの相棒である精霊竜の上位互換、精霊帝竜でさえ7つの精霊を使役するのは不可能である。もし可能であるならばあの伝説の神足る竜以外は考えられない。

それなのにあの平凡のノーマル種は体内にその精霊を内包?飼っているのである。

困り果てる主人であるオリンをよそに鳳凰竜フェニスは校庭に佇む平凡なノーマル種を強く凝視する。


    シャンゼルグ竜騎士校

       二年教室


帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!


「あら?あら?あら?大変なことになりましたね。」

「おお~、大いなる蒼き救世の竜(ドラゴン)よ。どうかあの不遇なる者を救いたまえ。」


二年の騎竜乗り科のソリシラ・マスタートとシーシス・マザラーは教室から竜騎士科の生徒にに責められている他校の一年を憐れに思う。


「我が神竜聖導教会の信徒でもノーマル種を騎竜にしたりしません。彼女にはきっと辛く苦しい事情あるのでしょう。」

「かわいそうね。」


二年の他の騎竜乗り科の令嬢生徒達は皆あのノーマル種を騎竜にする他校の一年に激しい怒りと憎しみが湧いていたが二人は素直に同情していた。


「まさかノーマル種を騎竜にする騎竜乗りがいるとはな。」


磁電竜オロスがよってたかって嘲笑する竜騎士科の生徒に不快に眉を寄せる。竜騎士科の相棒である人化している騎竜もそれに交ざって暴言を吐いていることで更に不快感が増す。


「貴族の学校では上位種の竜にノーマル種はついていけないという常識があるのですがね。それにしてもあのか弱きも純真な美しき少女がよってたかって一人責められるのは心が痛みます。私が優しく後でケア致しましょう。」


聖光竜クリストファーは女性に対してジェントルマンである。男性対してはからっきし辛辣である。


「その前にこの状況に収拾つくのか疑問なんだがな。竜騎士科のリーダーであるゼクスとかいう人間はこの揉め事を止める気はさらさら無いだろうし。」


竜騎士科と騎竜乗り科の揉め事さえ彼は止めなかったのだ。他校の生徒の問題など止める義理はないだろう。


磁電竜オロスと聖光竜クリストファーはこの揉め事を静観することを決め込む。人間の争い事に騎竜が首を突っ込んでもいいことにはならないからである。




わーーーー!わーーーー!


「何か騒がしいですわね?。メディア様。」

「一体何の騒ぎだ?。」


正門から通ってきたメディア王女は竜騎士科の令嬢生徒と共に並木道を進み。シャンゼルグ竜騎士校舎付近までたどり着いていた。

校庭のある方角から何やら喚き声が聞こえる。

メディア王女は竜騎士科のクラスメイトの令嬢と一緒にシャンゼルグ竜騎士校校舎が見える校庭へと入る。


帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!


「なっ!?。」


メディアは校庭で行われている光景に絶句する。クラスメイトの竜騎士科の令嬢生徒も何が起こっているのか理解できずおろおろしている


それはシャンゼルグ竜騎士校校舎の窓という窓から一人の他校の騎竜乗りの生徒とその騎竜であるノーマル種をよってたかって罵り嘲笑する光景であった。竜騎士科の令息生徒達がまるで彼女とその騎竜であるノーマル種ライナを晒し者にするかのように野次罵声を浴びせている。

そんな誇り高き竜騎士候補生とは思えぬ暴挙にメディアはふるふると怒りに身を震わせる。


「こ、こんなこと····竜騎士としてあるまじき行為だ!。」


王都ではノーマル種を下等と見なし見下していることは理解していた。だからと言ってそれを晒し者にする理由にはならない。王都を守護する誇り高き竜騎士なら尚更である。


「私はあいつらを止めてくる!。」

「メディア様!!。」


メディアは物凄い剣幕で愚行を行う竜騎士科を叱るために校舎の中へと突撃する。


       三年教室


帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!


「咲夜様·····。」


一人三年教室で佇む騎竜乗り科の令嬢生徒に

着物を着た角を生やす黒髪のおかっぱ頭の少女蛍は心配そうに主人の顔色を窺う。


「せっかく···せっかく···妹に逢える日を楽しみにしていたのに·····。竜騎士科、とことん私の気分を害するのですね···。」


ゴゴゴゴゴゴ

濡れ鴉のような黒く染まる美しい長い髪が怒りによって頭上へと揺らめき逆立つ。美しい顔はみるみる激しい怒りの羅刹の表情へと変貌する。彼女にとって竜騎士科と騎竜乗り科の争い事には興味なかった。けれども今日という今日の記念の日だけは彼女にとって特別な日であった。それを邪魔されたことに彼女の温厚な性格が怒髪天へと変わる。


「さ、さささ、ささ、咲夜様·····。」


主人に遣える騎竜である蛍は久しぶりの主人の激しい怒髪天の怒りに恐怖に怯えおののく。


   

     特待生専用特別室


「まあ、ノーマル種を騎竜にしてるですって。他校の騎竜乗りは何を考えているのかしら?。ねぇ、マリアン。」

「「「全くですとも!。」」」


取り巻きの薔薇竜騎士候補生に囲まれ。

薔薇竜騎士候補生専用の教室で丁寧に真っ白な薔薇模様の鱗をした竜の尻尾を主人である令嬢が丁寧にブラッシングする。

竜騎士科の野次罵倒も関係ないという様子である。

しかし真っ白な薔薇模様の鱗をした竜は澄んだ青い竜瞳が少し興味げに平凡な緑色の鱗をしたノーマルしかしに視線を注いでいた。


帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!


「ま、マウラ!。どうしよう?。」


セーシャはアイシャ達の執拗な陰湿な野次罵倒の嵐に狼狽する。


「くっ、だから言ったのです。ライナ。これは貴方の失態ですよ。貴方の存在が主人であるアイシャ様を苦しめるということがこれで理解てきたでしょう。それにしても···ここまであからさまに表だって嫌がらせするとは。シャンゼルグ竜騎士校の生徒は一体何を考えている。」


冥死竜マウラはノーマル種ライナに関してはどうでもよかったが。よってたかってアイシャを責めるのは我慢ならなかった。


「ここまで竜騎士科は地に落ちたのか·····。騎士系の貴族として恥ずかしい!。」


レインの家系は騎竜乗りではなく。竜騎士の家系だった。竜騎士科の有り得ない暴挙にレインは唇を歪ませ激しく幻滅する。


「アイシャ·····。」


パールはアイシャを心配そうに声をかける。

アイシャお嬢様の顔を伏せ。両手の拳を強く握りしめていた。アイシャお嬢様の長い金髪の前髪が素顔を隠すかのように垂れている。今のアイシャお嬢様は悔しさで一杯なのだろう。きっと前髪が隠れれている素顔は涙でくしゃくしゃになっているに違いない。俺だって悔しい。これは完全に俺(ノーマル種)が原因だからだ。アイシャお嬢様は蔑まれているのは完全に俺のせいである。しかしそれはどうしようもない。ノーマル種は王都では卑下にされていること身に染みていたのに。こうなることは解りきったことだったのに。俺はそれでも少し楽観視しすぎたのだ。俺はまだノーマル種としての覚悟が足りなかった。

校庭から帰れコールが未だになりやまない。


帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!

バン!!

屋上の扉が強く開かれる。


「ゼクス!。彼等を止めて!。貴方、竜騎士科のリーダーでしょう!。」


激しいエネメリスの非難の声が屋上から響き渡る。


「断る‼️。」


校庭を眺める無双竜ザインに寄りかかるゼクスは彼女の言い分を冷たくあしらう。


「そもそもノーマル種は貴族の学校ではやっていけないことは騎竜乗りであるお前でも百も承知だろうに。あの他校の一年の自業自得、自己責任だ。」

「で、でも····。」


騎竜乗り科のリーダーエネメリスは何もいいかえせなかった。ゼクスの言い分は正しい。それでもこんな晒し者のような仕打ちはあまりにも酷すぎる。


帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!帰っえっれ!


「いい加減にするのですわ!。ライナ様の侮辱は私はゆるしません!。」

「お嬢様······。」


マーガレットお嬢様の非難の叫びも竜騎士科の生徒達の罵倒には届かない。


ギャアラギャア····

(アイシャお嬢様·····)


俯いたままでいるアイシャお嬢様に俺は声をかける。


「大丈夫だよ······。ライナ。」


突然アイシャお嬢様のはっきりとした声が聞こえた。


キッ!

っ!?。


アイシャお嬢様は暗く伏せていた顔がゆっくりと上がると素顔が露になる。アイシャお嬢様は顔は結して涙でぐしゃぐしゃなっていたわけではなかった。

激しい闘争の炎を宿した力強い眼力を放ち。

凛々しいほど揺るぎ無い素顔をしていた。それはまるでいくせんの戦乱を戦いぬく戦士のような顔立ちをしていた。


「私はこんなことでは折れない!!。」


アイシャお嬢様ははっきりとそう俺に告げたのだ。


ああ···そうか·····

俺は今さらに確信した。


アイシャお嬢様はちゃんと成長していたのだ。あんな泣き虫だった少女が今はどんな苦境も逆境を耐えるほどの精神を知らず知らずに身に付けていたのだ。

今は悔やんで泣く娘はここにはいない。

前を向いて戦いぬくことを覚悟した娘がそこにいた。

アイシャお嬢様はここまでの覚悟を見せたのなら俺もそれに応えなくてはならない。

騎竜としてやるべきこと。今は俺がやるべきことを考える。

この校庭で暴れてもただアイシャお嬢様に迷惑を懸けるだけだ。なら俺は穏便に済ます方法を考える。


············そうだ!?。発気があった!。


龍族に伝わる言霊を用いた技、あれなら目の前の野次馬どもを危害を与えずに黙らせることができる。我が思い入れのある言葉であるおっパーイ!は日常的に使うと混乱を招くので無しとして。そう言えばレッドモンドさんは言ってたな。


『発気は言葉に発せずとも使える。頭にその言葉を思い浮かべ。気を発散させれば可能だ。しかし効果は半減するがな。』


発気の効果は半減すると言っても黙らせることが目的なら充分であろう。


言霊用いる言葉は当然これだな。

俺は瞼を閉じて頭を空っぽにする。無の領域となった脳内に一つの文字を思い浮かべる。

体内の気を循環させ。それをある一つ言葉に乗せて一気に放出させる。


発気!『黙れええええええええーーーーーーーーーーーー!』


ぶわっわわああああああああああーーーーーーーーーーーー!


とてつもない圧がシャンゼルグ竜騎士校校舎に伝わる。


バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ


校舎の木々が激しく揺れ動き。校舎の窓が激しく音をならす。窓際いた竜騎士科の生徒が次々と訳の解らぬまま足がもつれ尻もちをつく。



「うあっ!。」

ドシン!ドシン!ドシン!

「えっ!?。」


突然窓際で罵倒していた竜騎士科の生徒が尻もちをついたことに一年のオリンは驚く。ガクガク足を震えて立てないものもいた。


「何が起こったの?。」


理解不能な状況にただただオリンは困惑する。

窓際の椅子でオレンジ色の髪を靡かせる鳳凰竜フェニスは校庭に佇むノーマルは凝視する。


「うっわあっ!」

「ほあっ!」

「ばばっ!。」


ドシ!ドシ!ドシ!


「これは·····。」

「何が過りました。まさか威圧!?。まさかあのノーマル種が威圧を放ったのですか?。·。有り得ない·····。」


滋電竜オロスは校庭ノーマル種が起こした行為に絶句する。聖光竜クリストファーはノーマル種が上位種が一部しか持ち得ない威圧のスキルを持っていることに驚きを隠せない。


「何か竜騎士科の皆さん尻もちついていますね。」

「きっと大いなる蒼き救世の竜が不遇なる少女を救ったのです。」


二年の騎竜乗り科のソリシラとシーシス二人のこんな事態でも呑気にマイペースに振る舞っている。


「咲夜様····これは!?。」


突然の出来事に着物の着た黒髪のおかっぱ頭に角を生やした少女は信じられない表情で校庭に佇むノーマル種をみいいる。



「まさか発気なのですか····?·。あのノーマル種、龍技を扱うのですか?。」


西方大陸を故郷とする咲夜は校庭のノーマル種が自分達の故郷におられる龍神様と同じ技を扱ったことに驚いていた。


『はっう~~~~~~~ん。』


ドスン

「あっ!?マリアン」



薔薇竜騎士専用の教室でブラッシングされていた薔薇模様の鱗をした美しい白竜は何かショックを受けたかのように教室の地べたに倒れる。

薔薇竜騎士候補生は突然の薔薇竜騎士の象徴たる竜が倒れたことを大いに慌てふためく。



「え?何。」


突然校庭から飛び交う罵声も罵倒も嘲笑する声さえも一瞬で止まり。校舎一帯が静まり返ったように静かになったことにエネメリスは困惑する。


ガララ

「お前らいい加減にしろ!。えっ、何だっ?。」


メディアは教室にいる竜騎士候補生を叱りつけようとしたが。教室内は静まり返り。竜騎士科の生徒はまるで放心状態にように硬直し固まっている。尻もちついているものもいる。隣にいた人化している騎竜達は何故かおある校庭にいる緑色の竜を集中放火の如く激しく睨んでいる。


「これは一体·····。」


メディアは叱りつけようとした竜騎士科の男子生徒が大人しく沈黙したことに困惑する。




「おい、これって······。」


屋上で手出しもせず静観していた竜騎士科最強の竜騎士ゼクスは思わず相棒の無双竜ザインに声をかける。


『ああ····あのノーマル種。ここにいる全騎竜に喧嘩を売りやがった···。』


グルルルルル

窓際の教室や廊下で主人の傍にいた竜騎士科と騎竜乗り科の人化している騎竜は皆何故だか竜瞳の瞳孔が開きっぱなしになり。校庭に佇むノーマル種を好戦的に睨みつけている。


無双竜ザインは屋上から身をのりだし面白げに竜口をほくそ笑んでいる。


あれ?確かに黙ったけど·····何でこっち睨んでいるの?。


俺は不思議そうに竜首を傾げる。


ノーマル種のライナは何故かシャンゼルグ竜騎士校舎にいる人化した全騎竜が自分を睨んでいることに理解できずにいた。

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