第210話 誰よ!
ギャアラギャガアギャアラギャガアギャ······
(学園長とレッドモンドさん強かったなあ·····。
休日、来客専用竜舎の藁の寝床で昨日の野外訓練で起きた模擬レースの出来事を思い返していた。
「参りました!。学園長。いえ、狂姫ラチェット・メルクライ。」
「怪我は無いかしら?。私はレースとなると我を忘れて手加減出来なくなるから。」
学園長は好戦的な過激さは薄れ。毒気が抜けたようにいつもの学園長に戻っていた。
「いえ、寧ろお礼を言いたいくらいです。私の立場を知りないがらも手加減無しで戦って頂き誠に本当に感謝致します。」
シャルローゼは学園長に深くお辞儀をして会釈する。
シャルローゼお嬢様は外見は多少傷だけらであったが。大怪我というほどのことではないようである。
隣横では初老紳士に人化に戻っている絶帝竜カイギスはホッと安堵の息を漏らしている。
一年令嬢生徒と三年令嬢生徒達は皆狂姫のレースを観戦垣間見て興奮していた。シャルローゼ先輩と学園長が見せた激闘の熱が未だ冷めないようである。皆口々に狂姫の模擬レースの活躍に盛り上がっている。
「貴女の戦いは真っ直ぐです。無情のしがらみを忘れよとは言いません。だけどレースは競技です。憎しみに囚われてはいけまんよ。」
学園長の言葉にシャルローゼお嬢様は素直に
お辞儀をする。
「はい、肝に命じておきます。」
シャルローゼお嬢様の表情は前より清々しく晴れ晴れとしていた。
憑き物が落ちたようである。
「さすがは狂姫ね。引退したとはいえ衰えを感じさせない戦いだったわ。」
セランは深く感心する。
「シャルローゼも色々迷いが吹っ切れたみたいで良かった····。」
王女の付き人でもあり。親友でもあるセランはシャルローゼの無情に対する異常なまでの執着が少し和らいだようで安心した。狂姫とのレースが良い方向に向いたようである。
「きゃはははは!。カイギスのおっちゃんと筋肉のおじさんの戦いみて僕もレースしたくなったよ~!。」
疾風竜ウィンミーは二匹の竜の激戦をみて興奮したかのように野原をはしゃぎかけまわる。
「コラ!ウィンミー!。お行儀良くしなさい!。」
それを主人であるセランは厳しく叱咤する。
「困ります!。生徒達の野外授業に無断で立ち入るなど!。」
カーネギー教官は腰に手をあて。難い体格の紳士の男の前で厳しく叱る。
「申し訳ありません!。どうしても凛々しい筋肉を持つレッドモンド様のお姿をこの目で確かめたくて。」
「ふええ、お父様がご迷惑はおかけしてごめんなさい!。」
ふわふわ
アーニャの父親マクス・ハウンデルは隠れて野外訓練を見学したことが見つかり。みっちりカーネギー教官に絞られていた。
父親娘揃って平謝りする。
グ~グ~
後方では地土竜モルスが安全安心爆睡タイム中である。
カーネギー教官ははあっと何とも言えない深いため息を吐く。
「強靭のレッドモンドのファンなのですか?。」
レッドモンドのファンの共通点はほぼ筋肉である。生徒てあるアーニャの父親も難いのよいいい筋肉の体格をしている。
「はい!。レッドモンド様の写ったブロマイドを全種コンプリートしております!。」
パラ パラ
マクス・ハウンデルのごつい筋肉のふところから何枚ものレッドモンドを写したブロマイドを見せびらかす。そこには何枚もの筋肉ポージングするレッドモンドの姿が写っていた。
「そ、そうですか····。以後、お気を付けて下さいね·····。」
カーネギー教官は何枚ものレッドモンドの筋肉のブロマイド視て。鳥肌がたち早々に話を中断させた。
その場にいた令嬢達の話題は狂姫と相棒のレッドモンドで持ちきりである
ただ隣にいたアイシャお嬢様はだけは何処か上の空であった。
学園長をじっと眺め。何か考えこんでいる様子である。
ギャアラギャガギャ?
(アイシャお嬢様?。)
俺は心配になって声をかける。
「あっ!?、ライナ、学園長とレッドモンドさん凄かったね。」
ギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャガアギャアラギャギャア
(そうですね。もし学園長とレッドモンドさんとレースしてたら確実に敗北していましたよ。)
学園長の二投流。レッドモンドさんの奥の手の技。このペアとレースしたなら確実に敗北していただろう。何故なら両方とも攻撃特化と呼べるほど戦闘能力が高いのである。特に狂姫と呼ばれる学園長は一般の騎竜並に強さと戦闘能力を持っている。色々濃い強靭のレッドモンドさんよりもスポットが当たるのが解る気がする。正直学園長、狂姫ラチェット・メルクライは一般の騎竜と渡り合えるほどの戦闘能力を持ってるのだ。2対のブーメランの神捌きとも呼べるブーメラン捌き。回避不可能な千の数もある折り鶴のような大群のスキル(もうブーメランですらないけど)。どれをとっても騎竜乗りとして最強である。世界最強の銀姫と戦闘したならどちらが勝つのだろうか?。あの時シャルローゼお嬢様達と一緒に三つ巴の戦闘したけれど。銀姫とは生身の戦闘はあまりしていない気がする。白銀竜の能力で屈服されたのだから当たり前なのだが。もしかしたら銀姫の生身の実力は本気出される前に終わってしまったのかもしれない。それ以前に俺に対してかなり憎悪を抱いていた気がしたけど。もし世界最強の銀姫も狂姫と同じ実力のある騎竜乗りならば考え直さなくてはならない。それは騎竜だけではなく騎竜乗りの対策もしなければならないということである。殆どの騎竜乗りは騎竜の能力を頼っていた。騎竜乗りが生身で戦闘を行っていた者は数えるほど多くはない。騎竜乗り自身積極的に戦いに身を投じていると言えばシャルローゼお嬢様や武羅鬼竜、我怒羅の主人であった夜叉のベローゼ・アルバーニャだけである。しかしこれからの強豪の騎竜乗りや騎竜に渡り歩く為にも。いずれ積極的に戦闘に参加する騎竜乗りとも相手どらなくてはならないのだ。
今後のためにもレッドモンドさんから教えてもらっていない技を伝授する必要性がある。後は戦闘向きの騎竜乗りの対策だろうか?。今後は騎竜の能力だけではなく。騎竜乗りにも気をつなくてはならない。騎竜よりも騎竜乗りの方が強いことを想定した戦闘も視野に入れなくてならないのだ。
はあ~段々億劫になってきたな。
徐々に強くなってはいるが。まだまだである。問題は山積みである。
「よし!。」
アイシャお嬢様は何か決意したかのように覚悟を決めた独り言を呟いていた。
◇◇◇◇◇◇
ザッ ザッ
休日は俺のマイホームであり。来客専用竜舎の掃除を雑務管理長であるモロトフさんが掃除することが日課になっている。モロトフさんの娘であるぴっちぴっちのオーバーホールからつきだされた巨乳と。鼻もとの頬が可愛いソバカス付いた三つ編みお下げのチャームポイントの赤毛のアンナさんは今日は休日らしく。年頃らしく都会の街で買い物をしている。日頃俺のマイホームの手入れしてくれているのだから息抜きも必要ではある。
「ライナ、いる?。」
ギャアラギャガアギャアラギャ
(いますよ。アイシャお嬢様。)
がさっ
俺は藁の寝床で横になっていた竜の体を起こす。
珍しいこともあるものだ。レース以外休日はパールお嬢様やレインお嬢様と一緒にいつも都会の街に遊びに行くのだが。
アイシャお嬢様は俺の藁の寝床まで歩を進める。
アイシャお嬢様はいつもと雰囲気が違う。何処か覚悟と真剣が滲み出ているようだ。
アイシャお嬢様は俺の寝床の前に立つ。
ギャアラギャガアギャ?ギャアラギャガアギャアラギャ
(どうしたんですか?。アイシャお嬢様。こんな朝早く。)
アイシャお嬢様が休日にくるにもこんな朝早く竜舎に来るのは初めてである。
アイシャお嬢様澄んだ青い瞳が何処か熱い炎を宿しているような気がする。
「ライナ、私考えたの。このままじゃ駄目だって。」
ギャギャア?
(駄目とは?。)
俺は長い竜首を傾げる。
「最初、ライナが攻撃で私は援護役と決めていたけれど。それじゃ駄目なんだと解ったの。私もライナと一緒に戦わなくちゃって。」
ギャアラギャガアのラギャガギャギャアラギャガアギャアラギャガアギャア
(充分戦っていますよ。アイシャお嬢様。アイシャお嬢様に何度助けられたことか····。)
精霊歌やBoin走行、援護魔法、ブーメラン。アイシャお嬢様を足手まといとは一度も思っていない。何度も騎竜乗りと騎竜のレースで助けられている。
「ううん、でも結局私はライナの力に頼っている。海王竜リヴァインの時も武羅鬼竜、我怒羅の戦いの時も。」
ギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャガアギャア
(そりゃあ、騎竜同士相手の戦いですから致し方ないかと。)
騎竜乗りは騎竜乗り、騎竜は騎竜同士で戦うものが本来あるべきレースの闘い方である。それを破ると過剰攻撃とみなされルール違反反則となる。
「そういうことじゃないの。私はライナの援護だけで満足しちゃいけないと思うの。それが私は目指す騎竜乗りじゃないと思うから。」
アイシャお嬢様は心揺らぐことなく俺に告げる。
「ライナ、私決めたよ!。学園長から二投流を教わろうと思う。」
ギャアギャ······
(二投流ですか·····)
俺は考え込む。
確かにアイシャお嬢様が狂姫の二投流を覚えたなら心強いが。狂姫である学園長に教えを請うことが心配である。普段は温厚そうではあるが。レースのことになると性格が変わるようである。二投流を教わる時もスパルタにならなければよいが。色々不安が重なる。
「それでライナ。学園長の自宅何処かなあ?。私しらないんだけど。」
ギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャギャアガアギャアギャアラギャ
(俺も知りませんよ。レッドモンドさんが学園長に連れていかれて居場所解りませんでしたし。弱ったなあ~。野外訓練の時に聞いとけば良かった。)
野外訓練の授業の時にレッドモンドさんの住居を聞くのを忘れていた。多分学園長と一緒に住んでいると思うが。レッドモンドさんの居場所も学園長の居場所も解らない。俺もレッドモンドさんから教わりたい技が2つもあるのだが。
「困ったねえ。」
一人と一匹は途方にくれる。
技を教わりたいが。その技を扱う相手の居場所が解らない。
「何じゃ?。学園長のとこに行きたいのか?。」
会話の一部を聞いていた竜舎を掃除していたモロトフさんが声をかける。
ギャアラギャギャア!?
(知っているんですか!?。)
俺はぱあっ竜顔が明るくなる。
モロトフさんはここの学園の雑務を仕切る管理長である。学園長の自宅を知っていってもおかしくはない。
「知ってるもなにもそうじゃなあ···。マリモに聞けば良いんじゃないか?。マリモも丁度学園におるし。」
マリモって誰よ!?。
俺はモロトフさんにマリモという名前出されてもそのマリモという名前の人物を俺達は知らなかった。
「そのマリモって言う人が学園長のお家を知っているんですか?。」
アイシャお嬢様は尋ねる。
「まあな、学生時代の時からの腐れ縁じゃからのう。あのじゃじゃ馬ラチェットの行動にいつも頭を悩まされておったしのう。」
モロトフさんは思いだしたようにふおふおと笑う。
どうやらそのマリモという人は狂姫である若い時の学園長に相当苦労させられたらしい。
「嫌々ながらも何気に三大陸まで付き添ったからのう。じゃじゃ馬ラチェットのことを一番よく知る理解者でもあるのじゃよ。本人は不本意だと思っているようじゃがのう。」
ギャ····
(はあ····)
でっ?。マリモって誰よ!。
マリモって人が狂姫のよく知る人物だと解るのだが。そのマリモっていう人が誰なのか一向に全然解らんのだが·····。
「それでマリモって人は何処にいるんですか?。どんな方なんですか?。」
俺の疑問の全てアイシャお嬢様が代弁してくれた。いやほんとにマリモって誰よ?。
「何じゃ?解らんのか?。マリモって言ったら教頭じゃよ。マリモ・アカンタール。じゃじゃ馬ラチェットの後輩でいつも世話役をしておった娘じゃ。」
ああ、マリモって教頭先生のことだったのか。納得した。て、知るわけねえだろ!。俺教頭先生の名前初めて知ったよ。多分アイシャお嬢様も初めて知ったとおもう。
「今はマリモは学園正面校舎前の花壇におるじゃろう。いつも悩みや気苦労が絶えない時は花壇の前でぐちぐち愚痴を吐くのじゃよ。」
それ、色々恐いんですけど·······。
マリモっていう教頭先生の深い闇の部分を垣間見た気がする。
「それじゃ。教頭先生に学園長のこと聞いて来ますね。ライナ、行こう。」
ギャア!ギャアガアギャ
(はい!アイシャお嬢様。)
バサッ
俺はゆっくり藁の寝床から起き上がる。
どしどし
アイシャお嬢様の後ろについていく。
「おお、気をつけてのう。」
再びモロトフさんは竜舎内の掃除を始める。
並木道を通り過ぎ。正面校舎前にある花壇へとむかう。
正面校舎の玄関入り口が見えるにつれ。花壇付近に人陰がみえた。
ぶつぶつ何か呟いていて近付くにつれその内容が鮮明になる。
「何で私がいつもいつも先ぱ学園長の尻拭いしなければならないのですかグチグチ。学園長の山積みの仕事を全部私に丸投げ押し付けされるしグチグチ。相棒のレッドが戻ってきて浮かれまくって。挙げ句の果てに生徒の野外授業を勝手に変更してレースを始める始末だしグチグチ。しかもあの三年のシャルローゼ・シャンゼリゼとレース始めたというではないですかグチグチ。何かあったらどうするつもりだったのかグチグチ。大怪我させたら国際問題なるっつうのにグチグチ。本当に先輩は歳に重ねてやっと落ち着いたと思ったらぶり返しているじゃないですかグチグチ。本当に先ぱ、学園長は全然変わってないんだからグチグチ。」
うっわ~~
本当に花壇の前で愚痴を吐いているよ。
俺の竜口がひきついてドン引きしてしまう。
色々抱えているようである。教頭先生の深い闇の部分に触れて俺は帰りたくなってきた。
物凄く声をかけずらいんだが。花壇前で愚痴を吐きまくって憂さ晴らし。ストレス解消しているようだが。こちら側からにしてはたまったもんじゃない。
「教頭先生!。おはようございます!。」
そんな陰気な空気など意に介さずアイシャお嬢様は明るく挨拶する。
ギャアラギャギャアガアギャアラギャ
(マリモさん!。おはようございます!)
俺もアイシャお嬢様に続いて元気良く挨拶する。名前で
キッ!
ひいっ〰️
俺は思わず竜の背中が鳥肌が立つ。
凛とした眼鏡から覗く鋭い眼光が俺を睨んでいた。
「その名前で呼ばないで頂きたい。気に入らないので。」
教頭先生は不機嫌に眉間を寄せる。
マリモって名前に何かトラウマでもあるんですか?と言える雰囲気でも空気でもない。
「何のようですか?。アイシャ・マーヴェラス。私は今忙しいのです。」
花壇の前で愚痴を吐いてるだけですよねと言おうものなら何か投げてきそうな雰囲気なので。あえて俺は竜口を閉じて大人しくしている。
「はい、学園長の自宅をしりたいんです。教頭先生は学園長の自宅知っていますか?。」
「学園長の自宅?。何の用なのですか。今日は休日です。私は仕事ですけど·····。別の日に改められないのですか?。」
「今日じゃないと駄目なんです!。お願いします!。」
アイシャお嬢様は誠意を込めて頭を下げる。
真剣なアイシャお嬢様の姿にマリモじゃなくて教頭先生は眉を寄せる。
「はあ、何にか事情あるようですね····。解りました。丁度あの馬··学園長に用があるのでついて来なさい。」
「ありがとうございます。感謝します!」
アイシャお嬢様は嬉しそうにもう一度教頭先生に頭をさげ。お礼をいって返事を返す。
今教頭先生、学園長のこと馬鹿と言いかけたような·····。いや、語呂が学園長と重なって。馬鹿が訂正できていないのだけど····。
こうしてマリモ····ではなく教頭先生に学園長の自宅まで道案内をしてくれることになった。
無事アイシャお嬢様と俺が学園長とレッドモンドさんから教えを請えれば良いが。
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