第200話 発気


ギャあああああーーーー!!


赤色の光の粒子が右の鉤爪の掌に集まる。

加速したまま武羅鬼竜の真ん前に鉤爪の右掌を翳す。


ギャああおおーー!

(竜炎掌おおお!!)


ごおおおおおおおおおおウウ~~~!

掌から炎がうねるように吹き出す。


『何っ!?。』


我怒羅はノーマル種の掌から炎から吹き出したことに竜瞳が見開き絶句する。

うねりをあげた炎は我怒羅を包み込みあっという間に火だるま化となす。


「我怒羅!?。」


火だるま化した相棒を地土竜の巨体の背中に乗っていたベローゼが焦る。



ぼおおおうううううーーー!! 

黒光りした鱗に覆われた竜体が火だるまになりより黒ずんでいる。


『鬼気怪怪(ききかいかい)!。』


ぱああっっ!!


火だるま化した我怒羅だったが。体内の気を循環させると身体が黒光りに輝き。まとわりついていた炎が一瞬にして消える。火傷もなくほぼ無傷である。

我怒羅は驚愕な竜瞳の視線をライナに向ける。


『驚いたな···。まさか炎を出すとは。気が扱えてもこんな芸当は普通は出来ない。赤い光の粒子····まさか!?精霊を使役できるのか?·····。』

··········

俺は我怒羅の視線に険しげに竜の眉間を寄せた。

精霊の技が全く効いていなかったからである。

無傷でなくても火傷ぐらいしてると思ったが。奴の体内の気の循環は炎さえも受け付けないようである。

こいつは本当にに手強い····。


「ほっ。大丈夫のようだ。たく、冷や冷やさせる。まあ、我怒羅がこの程度で倒れたりしないがなあ。」


ベローゼは地土竜の背で安堵する。大剣はセランの鞭でがっちりと捕らえられていた。


「貴女の相手は私達よ。我怒羅が倒れるまでそこで黙って見てなさい!。」


ベローゼの大剣に絡まるしなやかな鞭ををセランはピンと張る。


「はっ、我怒羅が倒れる?。それは万にしてもあり得ない話だ。相棒である私でも我怒羅がレースで敗けたことがあっても。戦闘で倒れたところなど見たところがない。」


ベローゼは余裕の冷笑を浮かべる。


ざわざわ ざわざわ

風の谷ウィンドヒルのレース会場の観客がざわめく。皆ノーマル種ライナが炎を出したことに驚きを隠せないようだ。


『何よ··あのノーマル種。何で手から炎なんか出せるのよ!。』


全く微塵もこれぽっちも埃一欠片さえも期待していなかったノーマル種が普通にあの問題である騎竜と対等に普通に戦っていることにエエチチは口を半開きにしたまま唖然とする。


『風姫のチームと一緒にいたノーマル種。ただのノーマル種ではなかったようですね。手から炎を出していました。これは一体····魔法?スキル?。とにかくあり得ない光景です。』


実況ハマナスはスクリーンに写るノーマル種の戦闘の様子を冷静に分析実況する。




『くくく、面白い!。俺はとことん楽しませてくれるようだ。さあ、次はどんな技を見せてくれるんだ?。全て使ってみろ!。俺が全て受けきってやろう!。』


武羅鬼は挑発めいた言葉を俺に投げ掛ける。

言われなくてもやってやるよ!。

俺はぐっと牙のくちばしを噛み締める。


すぅ~~はぁ~~~~~

俺は水の精霊を呼び寄せる呼吸を行う。

水色の光の粒子が鉤爪の右掌に集まる。


む?水色の光が奴の掌に集まっている。まさか水の精霊か!?。

武羅鬼竜、我怒羅は精霊を視覚できていた。龍から気を教わった武羅鬼竜という種族は気を扱うにつれ微かな精霊さえも視覚できるようになっていた。しかし精霊を使役できる訳ではなく。あくまで見えるというだけである。


ギャバあああーーー!

(竜水掌おおおーー!!。)


山脈地帯の水蒸気を利用し水分を集め。それをハイドロブラスター並みの威力で放射する。


どおおおおおおお~~~~~~!!


『今度は水鉄砲か?。芸達者だな。』



高圧の威力を持つ放水だろうと武羅鬼竜我怒羅は余裕な笑みを浮かべる。


『鬼竜怪怪(ききかいかい)!。』


ベコッ!

片腕で黒光りの鱗に覆われた筋肉が一気に盛り上がる。


どおおおおおおーーーーー!!。


『ふん!!。』


バシャッ!

筋肉が発達した腕を軽く振り払うと放射された水が軽く水しぶき上げて弾け飛ぶ。


くっ、竜炎掌が効かない時点で悪い予感していたが。案の定全然効いてない。


『アースブロー(大地の激突き)!。』


ごおおおおーー!。

地土竜モルスが魔法を詠唱し援護する。いつも居眠りしている今だけは空気を読んでくれたようだ。微かにモルス竜顔の頬にほんのりと紅く染まっているが。もしかして腹パンが原因?。そんなに気持ちよかったの?。


放たれた岩石の形をしたつららが我怒羅にめがけて進む。


『ふん!。』


バッ キャ! 

我怒羅は茂もせず岩石のつららを手刀で叩き割る。


くっそ、格闘タイプの竜(ドラゴン)がここまでやりずらい相手だとは思わなかった。ほとんど相手した騎竜は魔法やスキル、能力を生かして戦闘していたが。我怒羅という騎竜は生身の肉弾で相手してくる。正確には小細工が効かないということである。


「ライナ、援護するよ!。」


え?

アイシャはブーメランを我怒羅に投げつける。

ぶん! くるくるくるくる


「ふええ、私もです!。」


じゃらじゃら ごおおおおおーーーん!


続いてアーニャお嬢様も我怒羅にむけてモーニングスターのトゲ付き鉄球をなげつる。

本来なら騎竜乗りが騎竜に攻撃することはしない。ルール上攻撃し続けると過剰攻撃とみなされ反則になりかねないからだ。騎竜乗りが騎竜に攻撃してはいけないわけではないが。あくまで牽制、妨害に止まる。


「本当なら騎竜乗りは騎竜に攻撃を加えるべきじゃないのだけど。この際しかたないわ!。あんな化け物、騎竜だけじゃ。抑えきれないもの。」


セランの唇がくっと苦虫を噛む。


「くくく。」


モルスの背で突然鞭で大剣を絡めとられ固定され身動き一つもしていなかったベローゼが笑い出す。


「何が可笑しいの!?。ベローゼ・アルバーニャ!。」


ベローゼの突然の不気味な冷笑にセランの背中に悪寒が走る。


「いいのかなあ?。騎竜乗りが我怒羅に牙をむけて。我怒羅は今は騎竜だけに注意を向いていたから良かったものを。攻撃範囲が騎竜乗りにまで向けられたらまともに戦えなくなるぞ。」

「な、何を言っているの?······。」


ベローゼの余裕な態度と意味深な言葉にセランは薄気味悪さを感じた。


じゃらじゃら

くるくるくるくる


『邪魔だ!!。』


ガン! バッキッ!

我怒羅は拳と蹴りだけでブーメランとモーニングスターのトゲ付き鉄球を弾け飛ばす。


アイシャは我怒羅の拳で弾け飛ばされ方向を見失ったブーメランをモルスの背からジャンプして何とかキャッチする。


「あわわわわ!。」


じゃらじゃら ガシ

アーニャお嬢様は慌てて鎖を引き戻し。トゲ付き鉄球を手元に戻す。


ぐるるるる

我怒羅は機嫌悪そうに低い唸り声をあげる。


『闘いに水を差されるのも癪だ。黙って貰おうか。』


我怒羅は黒光りした竜のくちばしを大きく開け。息を大きく吸い込む。

何だ?何が来るのか!?。

俺は竜が息を吸い込んだということからブレス(息吹)が来るのだ判断し警戒して身構える。


すぅうううううううう

我怒羅は多量のありったけの空気を吸い込んでいる。

ピタリと息を吸い込ませるを止めると目一杯竜口かガバッと開かれる。


『殺(さあ)あああああああああああああああああああああああああーーーーーーーつッ!!』


どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおううううううううううーーーーーーーーーー!


びりびりびりびりびりびりびりびりびりびり


武羅鬼竜が強烈な咆哮が放たれる。

ただの声音でありながら我怒羅の黒光りする鱗の体からとてつもない風圧が吹き出る。俺達の体はその風圧に推されそうになるが。何とか耐え続ける。

発せられた風圧がおさまると平静と我怒羅は風車の丘、空中を鎮座していた。


俺の体には何も異常はない。

特に傷つけられた外傷もなく精神攻撃の疑いはあったが心に関して至って正常である。


ギャラギャガアギャガアギャ····

(何だ。やっぱりただの威圧か·····。)


俺はホッと胸を撫で下ろす。


『威圧?はっ、威圧程度ですめばいいがなあ。』

ギャア!?

(何!?。)


俺は竜の眉間を寄せる。


「ふえ、な、何ですか?。これ?。」

ギャガアギャアラギャ!?。

(どうしたんですか!?。アーニャお嬢様!。)


突然背に乗っていたアーニャお嬢様が慌てふためいたように声を張り上げる。

もしかして!?騎竜乗りの方に何かされたのか。

俺は危惧する。


「身体が震えてる······。」

『はああ~?、何ですか?。何か怖い~。とても怖いです~。』


アーニャお嬢様はまるで何かに怯えたように震えだしていた。それと同調するかのように地土竜モルスも竜の巨体がぶるぶるガクガク揺れてい?。


「な、何なの?。」


セラン先輩も鞭の握る手が痙攣したかのように震えている。

疾風竜のウィンミーは問題ないようだが。

これは···何だ?。やっぱり何かされたのか?。

俺は険しい竜瞳で我怒羅を睨む。


ギャアラギャガギャ!?

(我怒羅、何をした!?。)


我怒羅は俺を見据え。ニヤリと不適な笑みを浮かべる。


『ふっ、どうやらノーマル種。貴様は気を扱えても発気(ハッキ)を知らぬようだな。』

ギャア?

(発気?)


聞いたことのない言葉だ。スキルか何か?。


『発気とはいわば気迫。明確には俺は殺気を飛ばしたのだ。』

ギャあ?

(殺気?。)


殺気を飛ばすというのは武士とかがよくやるあれか。厨二的なものだから実際あるとは思わなかった。


ギャアラギャガアギャアラギャギャアラギャガ?

(殺気飛ばすだけでこんなことになるのか?。)


俺の知っている殺気は相手を一瞬怯ませる程度であり猫だましのようなものだ。しかし三人一匹は本当に心の底から怯えている。


『発気もまた龍から教わった技だ。唯一気を外側から体現できなかった我が武羅鬼竜族が唯一扱える技でもある。貴様は言霊というものを知っているか?。』


言霊······。

確か言葉には力を持つというあれか。陰陽道の特集のテレビ番組で一度見たことがある。


『発気は言霊の力を利用したものだ。言葉をのせて気迫で放つ。それが発気だ。気は生命エネルギー。そして言霊は言葉の力。言葉一つ一つに意味があり力を持つ。その言葉の意味を気迫に乗せて発っしたのが発気だ。私が乗せた言葉は殺す!死ね!という言葉だ。だから殺気を飛ばすことにはかわりはない。発気には実際死に至らしめる力などない。実際言葉で攻撃できるのは呪術の類いだ。だが···。それでも殺す!死ね!と言われれば誰でも怯えるだろうがなあ······。』


武羅鬼竜の竜口が卑しくつり上がる。

俺は青ざめる。

アイシャお嬢様達は恐怖にかられ。震えて戦闘もままならない。


「だから言ったじゃない。我怒羅にちょっかい出したら不利になるって。」

「くっ!。」


セランの大剣を縛りつけている鞭の手が震える。

セランは恐怖で震える手を懸命に堪えている。


「手元がお留守だぞ!。」


グン!

その隙を見逃さないベローゼは絡まったセランの鞭を思い切り引っ張る。


「あっ!。」


セランは思わず鞭を放してしまう。大剣を縛る力が無くなり。緩んだ鞭をベローゼはなんなく大剣を振り払いほどく。

ダッ!。

ベローゼはモルスの背にハイジャンプし空中飛び越え我怒羅の背へと股がる。


「ただいま~。」

『早いご帰還だな。』


再び鬼竜の元に夜叉が戻る。


『さあ~、次はどうする?。ノーマル種。』

「形勢逆転だな。」


武羅鬼竜、我怒羅とベローゼは互いに冷笑を浮かべる。

セラン先輩とアイシャお嬢様、アーニャお嬢様と地土竜モルスは未だ恐怖で震えている。発気の効果時間がどのくらいあるかわからない。そもそもこれはスキルと魔法ではなく単なる気迫なのだ。恐怖がおさまる時間は個人差があるゆえにまちまちである。ぶっちゃければホラー映画を観賞して恐怖がなくなるまでの時間帯である。数分で済むはずもない。


『さあ、どうする?。ノーマル種。』


我怒羅はとぼけたように挑発する。

俺は険しげに竜瞳の視線を目の前の少し上空に佇む武羅鬼竜に注ぐ。


「ら、ライナ·····。」

「く、ふ、震え!。とまりなさいよ!。」

「ふええ、か、身体の震えが止まらないです。」


三人はまだ身体が恐怖で震えている。

どうみても今は戦える状態じゃない。

ギャアラギャガアギャアラギャガギャギャア!

(アーニャお嬢様。しっかり掴まって下さい!。)


「ふえ?。」


バァサッ!

俺は翼を翻し風車の丘の地上むけて急降下する。震えているアーニャお嬢様を気遣いながら降下する。


『はっ、逃げるつもりか?。鬼ごっこなら得意だぞ!。鬼だけに。』


その後をすかさず我怒羅が追いかける。


びゅううううううう~~~~~!


むぅ~~~~ ほぉ~~~

俺は竜口から口一杯に地の精霊を呼ぶ呼吸を行う。

風を切り。風車の丘の地上の大地に視界が近付く。

風車の丘の地上に俺は地の精霊と気を練り込んだ右掌をおもいっきり叩きつけた。


ギャあああーー!!

(竜地掌!!。)


ドガッ! ドガガガガガガガガガガガガガガガガッーーーー!!。


叩きつけた地面から無数の突起物の岩石が飛び出す。突起物の岩石は次々突きだすように現れ。針地獄のように覆い尽くす。ライナの姿が埋め尽くす岩石の針地獄によって覆われ埋まって隠れる。 

追いかける武羅鬼竜は空中で一時停止する。


「岩石の針山って。あのノーマル種。バリエーション豊富過ぎない?。」


ベローゼはノーマル種が風車の丘地上で引き起こした光景に呆れかえる。


『鬼ごっこの次はかくれんぼか?。岩の陰で隠れたつもりか?。そんなもの破壊してやるわ!。』


武羅鬼竜は体内の気を練り込み循環させる。


『鬼気怪怪(ききかいかい)!』


黒光りの鱗に覆われた筋肉がベコっと音ともに盛り上がる。


『オリャ!オリャ!オリャ!オリャ!オリャ!リャ!リャ!リャ!リャ!リャ!リャ!リャ!リャリャリャリャ!。』


ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!ドゴッ!

バッキャ!バッキャ!バッキャ!バキッバキッ

 ドガガガラガラガラッ


岩石製の針の山を武羅鬼は拳一つで片っ端から殴り砕いていく。

体内の気を循環させたことで武羅鬼竜の拳は岩石よりも硬くなっていた。


『オラッ!!。』


バッキャッ! ガラガラ ゴロゴロ

岩石の針山できたシェルターが最後のひとふりの拳で砕かれ大穴が開く。


ひゅううううううう~~~~~~~~~

ごぉおおおおおおおおおおおお~~~~

砕かれた大穴から強風が入り込む。


『ん?。』


岩石製の針地獄の山にできた大穴に風車の丘から流れる強風が集まる。

それと同時にさっき精霊歌で集まり。風の谷にあふれていた多量の風の精霊も流れてきた。


『次は何をするつもりだ?。ノーマル種。』


武羅鬼竜は怖じ気も物怖じもせずに針の岩石のシェルターの大穴から見えるノーマル種を楽しむかのように静観する。



ひゅうううう こぁおおおおおーーー!


俺は風車の丘にあるありったけの風と風の精霊を集め。武羅鬼竜を吹き飛ばすことにした。今の段階で武羅鬼竜を倒す術がない。これ程頑丈で手強く厄介な相手はいない。こいつにはどんな小細工も通用しないのだ。ほぼ肉体を極限まで高めた竜種であるからこそどんな手段をしいても敵わないのだ。魔法もスキルも恵まれなかったノーマル種であるからこそ解る。こいつは生半可なパワーじゃ勝てないと。魔法やスキルを駆使しても全てを肉体とパワーで覆してしまうのだ。こいつに通用するのはチートレベルのスキルか魔法、或いは世界を滅ぼせるほどのパワーだけである。

だからこそこいつは退ける方法として倒すのではなく。『遠くに行って貰う』のが正解なのである。生憎レースは戦闘で勝敗を決めるものではない。あくまで順位で決めるものである。先にゴールに到着すれさえすれば勝ちであり優勝なのである。だからこそ武羅鬼竜、我怒羅を遠くに吹き飛ばすことを考えた。

ありったけの気と風の精霊を呼び起こし密度ある威力の風を呼び起こす。


災害レベルの風を極限まで萎縮させたものを奴にぶつける。


ごぉおおおおおおおおおおおお~~~

ライナの周囲が風で渦を巻く。


『今度は風の精霊を呼んだようだが。風程度で何ができる。』


武羅鬼竜、我怒羅はせせら笑う。


多量の風の精霊を集まった右掌を大きく振りかざした。


ガッ!ギャああああーーー!!

(極大・竜風掌おおおおー!!。)


ごぉおおおおおおおおおおおお~~~~

乱雑、氾濫する風が我怒羅目掛けて吹きすさむ。それはG がのしかかるほど威力を持った風である。



「きゃああああーー!。」


ベローゼは我怒羅にしがみつき。思わず女の子らしい悲鳴をあげてしまう。

武羅鬼竜、我怒羅は仁王立ちするかのようにGがかかったような威力ある風をまともに受ける。


ごぉおおおおおおおおおおおお~~!!

『くくくく、そういうことか。俺を風で遠くに吹き飛ばす作戦のようだな。だが甘いわ!。』


我怒羅は翼を一端折り畳み。縮こまるように身を固める。


『鬼気怪怪!。』


パアああッ

縮めた身体を解放するように手と脚と翼を広げると圧縮した風いとも簡単に弾け消える。


ギャラギャあ····

(なっ、何だと·····。)


俺はあまりにも呆気なさに口を閉じることも忘れてしまう。


ひゅん

我怒羅は視界から一瞬に消え。いつの間に間合いに入り。俺の懐の真下に屈むようにしゃがんでいた。

くっ!

俺は次の動作に遅れる。


『残念だったな。その程度の風で俺は吹き飛ばせぬわ。相手を吹き飛ばすとはこうやるんだ!。』


我怒羅はぐっと身を屈め。まるで正拳突きをするかのような動作でおもいっきり前右脚を踏み込む。


ふしゅうううう

我怒羅の黒光りする竜口から白い蒸気が漏れる。


『鬼拳突き!。』


ドッ

ギャアああああーーーー!!


我怒羅の咆哮とともに俺はいつの間にか宙に浮いていた。否、俺は知らぬまに拳を打ち付けられていた。


うギャあああああああああーーーーー!!


どおおおおおおおーーーーーー!!


俺の身体はなすがままに風車の丘上空を吹き飛ぶ。


「ライナ!。」

「ライナ!?。」


主人であるアイシャお嬢様とセラン先輩の叫びがあっという間に小さく遠くなるのを感じた。

ライナの身体は物凄いスピードで風車丘上空を吹っ飛び続ける。





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