第136話 同着

ギャアあああーーーーーーーーーーーー!!

(オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️オパパイーヨ‼️)


びゅーーーーーーーーー!!


オパパイーヨ‼️を連呼するライナは猛スピードでゴールを目指す。

我に返った結殻竜リストラとサブリナはその後を追う。


『くっ、まさかこの状況で逃げに徹するとは······。』


リストラは竜のくちばしが苦虫を噛む。


「リストラ、私の目の錯覚かしら?。あのノーマル種の騎竜乗りの娘が背中に胸を押し付けて擦り付けたことで。あのノーマル種の騎竜が異常な速さを発揮したような気がするの。」

『気のせいではなかろう。あれがあのノーマル種の加速飛行なのだろう。』


リストラは冷静に分析し伝える。


「はあ?、どういうこと?。どうして背中に胸を押し付けて擦り付けることで加速するの?。理由(わけ)が分かんないわ。」

『そんなこと知らぬわ!。現にあのノーマル種が背中に胸を押し付けて擦り付けることで加速しているんだから。それが事実なのだろう。』

「理由が解んない!。理由わかんないわ!。」


サブリナは錯乱したかのようにヘルムの頭を何度も振る。


『理由(わけ)が解んない。理由が解んないを何度も言うな!。私だって理由が解らないのだから·······。』


結殻竜リストラもサブリナもどういう理屈と原理であのノーマル種が加速しているのか理解出来なかった。


『くっ、仕方あるまい。変殻を行うか。スピード重視の変殻なら追い付ける筈だ。』

「わ、解ったわ。もうすぐゴール地点である船着き場にも着きそうだし。とにかくあの変なノーマル種のことは置いといて。レースで優勝することだけ考えましょう。」


取り敢えずサブリナとリストラは変なノーマル種のことは頭の隅に置くことにした。




リストラは瞼を閉じスッと瞑想する。


『変殻!!。』


パン! パン! パン!

覆われた甲殻が外れ。殻がぶんふんと周囲を飛び回る。


ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!

体から外された殻が再び腕、頭、胴体、尻尾と接着し。営利な鋭い姿へと変貌する。


『変貌完了。スカイフライフォーム(大空飛行形態)。』


リストラは鋭くなった翼を広げる。


『ノーマル種、私達の戦闘を放棄したことを後悔させてやろう!。』


ずひゅーーーーーーーーーん

リストラがレースコースの運河を音速の速さで突っ切る。


『本当に凄いノーマル種ですね。』


レース会場の放送席で解説の庶民の騎竜乗りクレネールが感心する。


『しかし、私としてはノーマル種があの結殻竜と戦うところを見てみたかったのですが。最下位と言われたノーマル種が最高上位であるレア種と戦うのです。それは最早前代未聞ですよ。』


実況のガルボ・ナラは少し不満そうにしていた。


『そうですね。ノーマル種が逃げに徹したのは私としては長期戦となれば此方が不利と悟ったからでしょう。後方からも追い抜いた騎竜と騎竜乗り達も来ていますし。そうなれば乱戦も避けられないでしょう。』

『そうですか。しかし、結殻竜が加速形態となればスピード勝負になるでしょうから。勝敗は予想がつきませんねえ。』


実況のガルボ・ナラと解説のクレネールはお互い二匹の竜と騎竜乗り二人に神妙な面持ちで実況解説する。


魔法具のモニターに映るレースの状況を銀晶竜のソーラは静かに見据える。


「アイシャお嬢様の事を考えてのことでしょうけど。結殻竜に一点に特化した形態変化は本当に一分野の能力値を数百倍も強化されます。まともにスピード勝負を行えば確実に負けるのはライナ、貴方の方です。どう対応するつもりですか?。」


観客席に座る灰銀色の角と瑠璃色の髪を流す銀晶竜ソーラの口元が少し緩み。楽しんでいるようだった。


ひゅーーーーん

音速を切る音が竜耳に響く。

矢張追いついてきたか。

追い付かれることは想定済みだった。あの結殻竜の変殻という変形は一つの能力値を数倍も引き上げる。その分の他の能力値は大幅に引き下がる。それを逆手に取る。今結殻竜の変殻はスピード重視の筈。ならば他の攻撃、防御に関しては疎かになっている筈だ。



『私にスピード勝負を挑むとは愚かな。後悔させてやろう!。』


リストラは結殻竜はスピードを強め俺を追い越そうとする。

リストラは俺の隣に並ぶ。

今だっ!!


ギャアあああーー!!

「竜破掌‼️」


気を練りこんだ竜の素手を凪ぎ払うように放った。

ドゴッ!!

気の衝撃波がリストラの側面に直撃する。


『くっ!何!?。』


虚を突いた衝撃波を喰らい。リストラ竜の図体は苦悶の表情でたじろぐ。

俺はすかさずBoin走行で飛行スピードを上げる。

バサバサッ

リストラはバランスを崩したが。直ぐに翼を扇ぎ飛行の態勢を立て直す。


「大丈夫?。リストラ!?。」


ノーマル種の思いもよらぬ攻撃を受けたが。サブリナの長年の騎竜乗りの経験で対応できた。


『くっ!。まさかスピード勝負と思いきや。攻撃を仕掛けてくるとは······まさか!?。』


結殻竜はハッと竜顔が閃いたように気付く。

ノーマル種が自分を攻撃したのはスピード勝負を挑むのではなく。攻撃で牽制しつつ逃げて徹してゴールに辿り着く作戦であることだと知る。結殻竜の強みでもあり弱点とも呼べる能力値の変動を上手く逆手に取ったのだ。

リストラの竜口がふふと笑みを浮かべる。


『面白い!。私の能力を理解し逆手にとるとは。矢張ノーマル種、お前は私の好敵手であり天敵のようだ。だが爪が甘いな。確かに私の変殻は攻撃、防御、スピードに特化した形態をする。だがスピード重視の形態にスピードだけ特化するとは限らないのだよ。攻撃と防御を捨てているという考えなら大間違いだ。私にはスピードを重視しながら攻撃と防御の能力値をどちらか選ぶことも可能なのだよ。まあ、その方法とると一時的に重視した能力が劣ってしまうがな。だがノーマル種。お前が戦いながら逃げに徹するならこの手段が有効だろう。』


リストラは瞑想し甲殻の翼を大きく広げる。


『変殻!!』


パン! パン! パン!

リストラの体の殻が分離し。飛び回り再び接着する。

ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!


『変殻完了!!スカイディフェンスフォーム(大空防御形態)』


アルマジロのような甲殻と営利な翼な容姿に変形する。


『さあ、我が変容特と味わうがよい。』


オパパイーヨ‼️

びゅーーーーーーーーー

ライナの前方にゴール地点である船着き場が見えてくる。赤いフラットが掲げている箇所がゴールの着地点のようだ。


「ライナ、作戦上手くいったね。」

ギャギャア

「そうですね。」


ひゅううーーーー!!

音速切る音が響く。

あの結殻竜が追って来たのか?。ならば竜破掌で返り討ちに。

俺は飛行しながら竜の素手に気を練り込み準備をする。隣に出ようとする結殻竜を待ち構える。

ひゅうう!!

今だっ!?


ギャアあああーー!!

「竜破掌!!」


パアキィ


ギャア!?

「何っ!?。」


竜破掌の衝撃波が跳ね返るような音が響いた。よくみれば結殻竜の姿が防御特化とスピード特化の合わせたアンバランスな姿をしていた。


『残念だったなノーマル種。今の私はスピードと防御を重視した変殻を行っている。攻撃は捨ててはいるが。今のお前は逃げに徹しながら攻撃しているのだから丁度良いだろう。』


リストラの不適な笑みが浮かぶ。

ふざけるな!。そこまで変形可能なんて聞いてないぞ!。

俺は険しく竜顔をしかめる。

俺はてっきり攻撃、防御、スピードの特化した形態しかないと思っていたが。どうやらスピード特化に攻撃や防御も加えられる形態があったようだ。


ギャアラギャギャアガアギャアガアギャア!

「ならばこのままゴールを目指してやる!。」


最早結殻竜のスピードと防御に対策を立てている時間はない。このままゴール地点である船着き場を目指すしかない。

俺は大気の気を身体に吸収し。全神経を背中へと集中させる。


ひゅーーん!!

ひゅーーーーーー!!


ガン!ガン!

互いの騎竜は猛スピードで飛行しながら身体がぶつかりあい。鍔迫り合いのような状態になっていた。互いにゴールを目指すことだけを考え。純粋なスピード勝負に賭けていた。


『おおっと!これは凄い!。騎竜が互いに身体をぶつけ合いながらゴールを目指している!。これは正に身体と身体のぶつかりあいだあーー!!。』


わーーーー! わーーーー!

観客席の観客の熱気の歓声が上がる。


ギャアあああーーー!!!

「いっけえええええ!!!。」

『私は敗けぬぬぬぬぬ!。』


運河を抜け。互いの騎竜がゴール地点である船着き場に到達する。


ギャアあああーー!!

『ぬああああーー!!。』


スーッ

ゴール地点である船着き場のゴールラインにライナと結殻竜リストラの殻の身体が重なるように通過する。


『これは!?同着?。もう一度ゴールラインの映像を見てみましょう。』


魔法具のモニターに映る記録された映像がながれる。

スローモーションに二匹の竜の巨体が船着き場のゴールラインに通過する映像がうつる。


『これはノーマル種の先端のくちばしと結殻竜の殻が同時にラインに入っている!。同着!同着だああ!!。今宵ブリジット杯優勝者はこのノーマル種と結殻竜の同着で終わりましたああああーー!!』


わあーーーー!!わあーーーー!!

わあーーーーーーーーーーーーー!!


観客席からはなりやまぬ歓声が広がる。

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