第127話 メルドリン家のお茶会

ドドドドドドーーー!!。ズッササー!


俺は牧場を駆け抜けマーヴェラス家の邸前の門に地面を擦りながら到着する。


サッサッ

マーヴェラス家の門前ではカーラさんが箒で掃除をしていた。

カーラさんは俺が灰銀色の角を生やしたソーラさんを背中に乗せている俺の姿を一瞥すると不機嫌に眉を寄せる。


「駄竜、盛りのついたオス竜のように明朝にメス竜をお持ち帰りとは良いご身分ですね。」


カーラははんとふてぶてしげに鼻をならす。

貴女は俺を何だと思っているのですか?。

反論するのも疲れるので俺は正直に訳を話す。


ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャア

「マーヴェラス領の牧場の小さな森で見つけたんです。」

「なるほど。それで草むらにつれこんだと。」

ギャガアアああああーーーーギャッ‼️!!

「人の話を聞けやああーーっ!コラッ‼️(竜だけど)。」


カーラさんの勝手な思い込みに俺は思わず怒声を浴びせてしまう。


ギャアガアギャアラギャアガアギャアラギャアギャアガアギャア

「マーヴェラス領にプロスペリテという方に逢いに来たそうです。」


俺は怒りを静め冷静になりながらもぶつくさな竜顔で状況を説明をする。


「プロスペリテ····。」


カーラはプロスペリテという名前に急に真顔になり。俺の背にのるカーラさんをじっと疑わしげな視線で睨み付ける。

カーラさんの睨みなど臆することなく銀晶竜のソーラさんはじっと様子を見守っている。


「どうかしたの?。」


邸からアイシャお嬢様が現れる。


アイシャお嬢様がマーヴェラス家の邸から出てくる。メルドリン家のお茶会に誘われていたのでその準備におめかしをしていたようだ。


「お客様?。」


アイシャお嬢様は眉を寄せる。


「はい、お嬢様。ライナが牧場からメス竜を連れてきたんです。全く私はそんな不良に育てた覚えはありませんよ。」


カーラは両手を広げはあと頭を左右に振りジェスチャーをする。

育てられた覚えもありませんけどね。

俺は微妙な竜顔を浮かべる。

銀晶竜のソーラさんは俺の背中からゆっくりと降り丁寧に会釈する。


「失礼致します。私は銀晶竜のソーラと申します。ここへ来たのはプロスペリテという騎竜に逢いにきたからです。どうやらマーヴェラス領にはいないようですね。」

「プロスペリテ?。マーヴェラス家にプロスペリテという名の騎竜はいません。私の騎竜はライナだけです。」


アイシャお嬢様の言葉にソーラさんの琥珀色の縦線の一瞬瞳孔が開いたような気がした。


「そうですか····。」


カーラさんは重々しくじっとソーラさんを警戒している。


「どうかしたのか?。」


続いてアイシャお嬢様の父親であるマーヴェラス伯爵も玄関から現れる。


「あ!?お父様。この方がプロスペリテという騎竜に逢いにきたそうです。でもプロスペリテという騎竜は家にはいませんよね?。」


アイシャお嬢様は眉を寄せ首を傾げる。


「プロスペリテ····。」


マーヴェラス伯爵はプロスペリテという言葉に動揺したかのように狼狽える。目の前の竜の客人を強く凝視する。

切り詰めた空気が流れる。

プロスペリテという騎竜の名が出てからカーラさんもマーヴェラス伯爵も何か空気が重い。


「アイシャ、私はこの客人と話がある。アイシャはライナと一緒にメルドリン家に遊びに行ってきなさい。」

「解りました。お父様行ってきます!。ライナ行くよ。」


ガア

俺はとありあえず返事を返す。アイシャお嬢様は俺の背中に股がる。

牧場に向きを変え竜の翼をばたつかせ飛び立つた。


バァサッ バァサッ



「ソーラさんでしたか。プロスペリテに関して私とお話を致しませんか?。」

「はい、こちらも聞きたいことがありますので。」


マーヴェラス伯爵は来訪の騎竜を邸に招き入れる。


バァサ バァサ


「ライナ、プロスペリテという名の騎竜何だろうね。何かお父様とカーラの様子がおかしかったけど。」


確かにプロスペリテという騎竜の名を聞いてからマーヴェラス伯爵もカーラさんの様子がおかしかったな。


バァサッバァサッ

俺は牧場上空を飛行する平原を抜けメルドリン家の領地に入る。

マーヴェラス領とメルドリン領は近くでお隣さんである。

上空から牧場に数匹のノーマル種と家畜を見かける。メルドリン家は財力がある貴族だからノーマル種の騎竜や家畜を何頭も飼いならしている。ただノーマル種をレース用として飼ってはいない。労働力として働かせているのだ。ノーマル種は主に庶民の騎竜乗りが騎竜にしてレースに出場している。貴族はノーマル種をレース用には使ってはいない。何故なら上位種とノーマル種との能力の差に開きあるからだ。貴族がレースに出場する騎竜は殆ど上位種であり。貴族がノーマル種を使うことは無謀か愚か者ととらえられるのだ。アイシャお嬢様と俺は本当に例外である。


バァサッバァサッ

俺はノーマル種と家畜がいる牧場を抜けメルドリン家の邸の門前に降り立つ。

門前にはメルドリン家の門番をしている女門番であるシェーク・リストライトさんがいる。シェーク・リストライトさんは元は庶民の騎竜乗りで長いレース巡りの末メルドリン家の門番に落ち着いたのである。どういう経緯か知らないが。パールお嬢様の母親であるメルドリン女爵にスカウトされたのである。

女爵(じょしゃく)とはこの異世界特有の爵位である。男爵という爵位があるが。地位は同格でいわゆる家系の柱が誰かで男爵と女爵が決まる。この異世界では女性の地位は低くない。それは救世の騎竜乗りという伝説あるからである。救世の騎竜乗りの伝説から騎竜乗りという職業が誕生し。それが騎竜レースまで発展したのである。騎竜乗りの戦績がそのままその家系の貴族の功績となるのだ。騎竜乗りの家系の貴族が女子が誕生しなければそのままその貴族の家がなくなってしまうくらいだ。だから家系を絶やさない為に他所の貴族の家から女子の赤子を養子にすることもあるらしい。


「おはよう。シェーク!。」

「おはようございます。アイシャ様。話はパールお嬢様から聞いております。どうぞお通りください。」

「ありがとう。」


アイシャお嬢様は俺から飛び降りるとそのまま門を通る。

俺も竜の脚を踏みしめついていく。

メルドリン家の門を通り過ぎる美しい庭園が広がっていた。パールお嬢様の母親であるメルドリン女爵は趣味でガーデニングもやっている。それが庭園レベルでである。家のマーヴェラス家の邸の庭は殺風景である。雑草しか生えてない。一応メイドのカーラさんとリリシャさんが手入れはしているが。花壇程度で庭園をつくるほどの予算はない。特にカーラさんに関して趣味がガーデニングにではなく別な方向性に向かっている為皆無に等しい。


メルドリン家の広い豪華な庭園を進む。広いので俺のサイズでも通れる。

庭園の路を暫く進むとドレスを着た貴婦人が竜瞳に入る。

パールお嬢様と同じ真珠色の髪と瞳をしていた。パールお嬢様と比較にならないほどのボリューム感溢れるお胸を所持している。

パールお嬢様の母親であるオパール・メルドリンである。オパールだからおっパールなどではない。確かにパールお嬢様の母親、オパール・メルドリン女爵のボリューム感溢れる素晴らしい2つのおっぱいは正におっパールと呼ばれても過言ではない。


「あら、アイシャ。遊びにきたのね。」

「はい、パールからお茶会を誘われました。」

「そう、あのボンクラ甲斐性無しゼオンから良くこんな出来た娘が生まれたものね。全部ネフィスの血を引いていて良かったわ。」

「はは、そうですか·····。」


ゼオンとはマーヴェラス伯爵の本名である。本名はゼオン・マーヴェラスである。オパール・メルドリンとアイシャお嬢様の母親ネフィスとは仲の良い親友であったらしい。前に融資を断った経緯があるが。それはマーヴェラス伯爵をオパール・メルドリン女爵が毛嫌いしているからである。別居した理由もマーヴェラス伯爵のせいたどオパール・メルドリン女爵は思っている。


「貴女のノーマル種も大分立派になったようね。ノーマル種を騎竜にしたと聞いてどうなるかと思っていたけれど。まさかここまで強くなるなんて。」


オパールはまじまじ俺を眺める。


「へへ、ライナは物凄く強くなったんです。」


アイシャお嬢様は屈託ない笑顔で自慢する。


「礼を言うわ。ライナ。レイノリアをハーディル家から取り戻してくれて。私ではどうすることも出来なかったから。」

ギャギャ ギャアラギャアガアギャアラギャアギャアラギャ

「いえいえ、礼なら背中に抱き付いてくれたなら尚良いです。」


俺は竜の背中を見せて抱きつかせアピールをする。


「ほんと、貴方も相変わらず背中を抱きつかせるのを好きね。アイシャ気をつけなさい。こういう癖を持った竜(ドラゴン)は女性特にずる賢い竜のメスに騙されやすいから。」

「はい!以後気を着けます!。」


アイシャお嬢様は礼儀正しく返事を返す。

え~俺、女性に騙されやすいかなあ~。

俺は竜の長首を傾げる。


「娘は裏庭のガゼボにいるわ。」

「ありがとうございます!。」


アイシャお嬢様は元気良く頭を下げ。裏庭へと向かう。

裏庭ではガゼボ内のテーブルにお菓子とティーセットを用意したパールお嬢様が座っていた。


「パール来たよ!。」

「アイシャ!!。」


パールお嬢様は笑顔で迎え入れる。


俺は隣にいるメイド姿のレイノリアに声をかける。


ギャアラギャアギャ

「やあ、レイノリア。」

「お待ちしておりまっ····!?。」


突然目の前のメイド姿のレイノリアは近づきクンクンと俺の匂いを嗅ぐ。


「メスの匂いがします。何処かのメス竜と一緒でしたか···。」


レイノリアの温和な表情が一緒にして険しく鋭い眼光を放つ。

相変わらず鋭いなあ~レイノリアは~。


俺はやましさはなかったが。レイノリアの気迫というか底知れぬ圧に根負けしそうになる。



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