第114話 銀姫の来訪

バサっバサっ


アルナビス騎竜女学園の門前上空に白銀の鱗に覆われた騎竜が舞い降りる。白銀の鱗に覆われた騎竜の背上には豪華な装飾を施された甲冑を着用した娘が騎乗していた。門の前には何故か学園長と教頭が来訪者を迎える為にわざわざ出向いていた。

豪華な甲冑を身にまとう娘は美しい白銀の鱗に覆われた騎竜から飛び乗る。


「よくぞお越しになられました。王竜騎士、操竜の爵位を持つシーア・メルギネット様、そして竜の頂点、竜の帝王とも呼ばれた幻のレア種白銀竜プラリスナーチ様。」


学園長も教頭も目上を敬うように丁寧に頭を下げ会釈する。


「気にしないで下さい。確かに私は操竜の称号を王から承りましたが。プラリスも竜の中では帝王と呼べるほど位の高い幻の白銀竜ではありますが。私達はあの方のご様子を確かめにきただけですから。いっかいの騎竜乗りと騎竜として扱ってください。」


甲冑を着た娘は笑顔で返す。


「そうですか·····。」


学園長は頭をあげる。


「それであの方、シャルローゼ・シャンゼべではなくシャンゼリゼ様のご様子はどうでしょうか?。」


位の高い甲冑の娘は真剣な面持ちで三年令嬢の名を言い直す。


「はい、有意義な学園生活を送っております。」


学園長は緩やかに笑顔で言葉を返す。


「そうですか····。本来ならあの方はこのような学園に入るようなご身分ではないのですが····。」 


ムッ

悪気は無いだろうが。シーア・メルギネットの不平不満の一言が教頭の目くじらをたたせる。


「シーア様も我が学園に入学してくれたら良かったのに。」


学園長も空気が悪くなりそうになったので場を繕うために話題を変えようとする。


「仕方有りません。私にはお家のお務めがありますし。学園生活は既に諦めております。それでも我が国、我が王の為に捧げたこの身、悔いは有りません。」

「そうですか····。」


学園長と教頭は学園内を案内するように門を通り抜ける。

守衛も冷や汗流れるほど深いお辞儀をしていた。

コツコツ

学園長と教頭が案内するように前を歩き。後にシーア・メルギネットと白銀竜プラリスナーチが続く。

ゴ ゴゴ

突然騎竜専用の竜舎の木製大扉が開かれる。


ドシドシ


ギャア~~ギャガアギャガアあ~!!

(う~~ん、今日も良い天気だあ~!!。)



守衛室の反対に位置する来客用専用の竜舎から背伸びしたノーマル種が現れる。


「あの馬鹿竜!。」


教頭は罰の悪そうに竜舎から出てきたノーマル種を睨み付ける。

守衛は慌てて飛び出し。竜舎の大扉から出てきたノーマル種の竜(ドラゴン)をおもいっきり竜舎内に戻そうとする。


ガア!ガア!。ギャ?ギャ?ギャガ?

「わっ!わっ!。何?何?何なの?。」



気分よく朝の竜舎から外に出てきたライナだったが。突然守衛に無理矢理強制的に竜舎内に押し込められ戸惑う。

ドン

竜舎の大扉は再び閉められ。ライナは竜舎内に押し戻された。


「お見苦しいところをお見せしました。」


学園長は深くお辞儀してお詫びする


「いえ、あれは何なのですか?。見たところノーマル種のようですが。」


シーアは本来貴族の騎竜乗りの令嬢が集まる学園にノーマル種がいるなど有り得ないと思った。それなのに何故か学園内の竜舎にノーマル種がいたことに大いに困惑する。


「はい、竜舎内にいたノーマル種はライナと申します。とある令嬢の騎竜でございます。」


学園長の説明に眉を吊り上げ。シーア・メルギネットは大いに驚く。


「ノーマル種を騎竜にしているのですか?。貴族の令嬢が!?。信じられない!。それは無謀を通り越して愚かです!。」


貴族がノーマル種を騎竜にするなど絶対有り得ない。この貴族の騎竜学園に入学してノーマル種ではやってはいけないということは貴族の令嬢なら誰もが知る周知の事実である。それなのにノーマル種を騎竜にするのだから無謀を通り越して愚か者である。


「お言葉ですが。シーア・メルギネット様。あのノーマル種ライナはただのノーマル種ではありません。エレメント種の炎竜、エンペラー種の至高竜、ロード種跪伏竜、レア種の黒眼竜全て倒した経験があります。レースの戦績でもこの学園内で既に8勝しており。ほぼ無敗でございます。」


教頭はむきになったようにシーアに言い返す。


「私を謀っているのですか?。でしたら此方としても出るところ出なくてはなりませんが。」


シーア・メルギネットは甲冑の鞘におさめられた剣を抜こうとする。


「お待ちください。シーア・メルギネット様。全て事実でございます。シャルローゼ様もノーマル種ライナのことを存じておりまし。寧ろ気にかけているご様子です。」

「シャルローゼ様がノーマル種を?。何かの間違いでは?。あの方が最弱とうたわれるノーマル種を気にかけるなどあり得ません。」

「ならば本人逢い確かめれば宜しいでしょう。ノーマル種ライナの主人である令嬢も貴女のメルギネット家と所縁があるものでしょうから。」

「どういう意味ですか?。言っときますけど。私の知り合いにノーマル種を騎竜にする貴族などおりませんよ。いえノーマル種を騎竜する貴族などこの世にはいないと私は断言出来ます!。」


シーアは自信を持って断言できる。自分の知り合いにノーマル種を騎竜する貴族など絶対にいない。


「ではそれも含めてシャルローゼ様とお逢いし。確かめれば良いでしょう。」


学園長は冷静に静かに言葉を返す。


「解りました。ではシャルローゼ様に逢って話を聞きましょう。ですがそれがもし嘘でしたら。」


チャキ

シーアは鞘に剣の握りを掴む。


「ではそれも含めて。」


学園長は軽く会釈して再び案内をはじめる。

白銀竜のプラリスナーチじっと立ち止まり。ノーマル種を押し込めたであろう竜舎をじっと見つめる。


「プラリス。早く行きますよ!。」


シーアは門内で立ちすくすプラリスを呼ぶ。


『う~ん。あのノーマル種、何処かで観たような?。』


白銀竜プラリスナーチは何故か来客用竜舎から出てきたノーマル種を何処かで見た覚えがあるような気がした。プラリスの白銀の長首を傾げる。


「プラリス!。」


主人の急かす言葉に仕方なくプラリスは考え止め。白銀の尻尾をふりながらついていく。

学園長と教頭に案内され三年令嬢シャルローゼ・シャンゼリゼのいる場所へと向かう。シャルローゼ・シャンゼリゼは明朝、騎竜と朝練するのが日課になっていた。

シャルローゼと友人のセランは自分の騎竜、絶帝竜カイギスと疾風竜ウィンミーに乗って競争していた。


『んも~今日もカイギスのじっちゃん敗けたよ。』


ウィンミーは不貞腐れたように竜のくちばしをへの字にする。


『ふっふっ、まだまだ若いもんには敗けんよ。』


年期の入った傷だらけ鱗の巨体の老竜から笑いがこぼれる。


「そろそろ止めましょう。シャルローゼ。」

「そうね。充分にトレーニングもできたし。もう良いでしょう。」


セランの提案にシャルローゼは笑顔で承諾する。


バァサッ!

バァサッバァサッ

二匹の騎竜は地上に降り立つ。


「シャルローゼ様!?。」


ガチャガチャ

甲冑の音を鳴らし。急いで駆け寄りシャルローゼが乗る絶帝竜カイギスの巨体の前にで跪く。


「シャルローゼ様。お元気そうで何よりでございます。」

「シーア。」


シャルローゼは馴染み顔に綺麗な顔立ちの唇が緩む。

クラスメイトの親友であるセラン・マカダインは何故かシーアの姿を目にすると嫌そうに眉を寄せた。



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