第80話 剣帝竜

『では始めようか····。』


対峙するエンペラー種剣帝竜ロゾン、一体どんな攻撃をするのだろうか。いや剣というからには身体の剣のように鋼鉄化し。切り刻むのではないかと想像する。剣と名をつくのだから剣のように鋭利に鋭い切り刻む竜って言うのが普通に連想できるだろう。しかしこの異世界ははっきり言って俺の想像を覆す。ジェット機やガメラのように噴射する竜やレーザーやビームを放つ竜もいるのだ。だから剣と名の付いた竜でもただ剣のような鋭い鋭利な牙や爪を持った竜では絶対ないはずだ。


「ライナ、私も戦えるから。」


今日の対闘訓練で特別に用意されたドラグネスグローブは武器をマジックボックスのようにしまうことができる特別なドラグネスグローブであった。当然アイシャお嬢様がドラグネスグローブにしまっている武器はブーメランである。


「武装解放!。」


俺の背でアイシャお嬢様が叫ぶとドラグネスグローブの甲に嵌められた宝玉が光り。アイシャお嬢様の手許に装飾が施された木製のブーメランが現れる。アイシャお嬢様は装飾が付いた木製のブーメランを右手で掴む。


『ふむ、ブーメランか····。騎竜乗りとしての武器としてはあまり頼りないと思うが。』


剣帝竜ロゾンはアイシャお嬢様が武器にブーメランを使うことに対して不満そうに顔をしかめていた。

確かにブーメランは武器としては心ともないところあるけれど、それでも性能悪いわけじゃい。投げたら戻ってくるし。狩りに関してなら性能は高い筈だ。特性を活かせば頼りがいのある武器である。

剣帝竜ロゾンの背に乗るイーリスは何故かドラグネスグローブから武器を出さなかった。というよりはドラグネスグローブが武器をしまう特別なドラグネスグローブではなかったか?。


「·········。」


何だ?。何で武器を出さない。手を抜いている。先輩だから後輩に華を持たせているのかと考えたが。武士のような騎竜と無口な令嬢イーリス・カティナールにそんな思惑などあるとは思えない。剣帝竜ロゾンは武人のように誠実だし。イーリスというお嬢様に関しては何を考えているか正直解らないところがあるけど。相手に対して手抜きをするような真似をするタイプではない筈だ。としたら何かしら彼等だけの戦法があるはず。


『では、手始めに真っ向勝負と行こうか。』


イーリスお嬢様は身を低くする。

剣帝竜ロゾンのギザギザした鋭利な翼はジャキンと金属音を鳴らし翼が広がる。

俺は集気法を行い気を吸収し。いつでも対応できるようにする。

背に乗るアイシャお嬢様は右手からブーメランを掴みいつでも投げれる動作をする。


ひゅっ

同時に互いに突撃するように突っ込む。

まず俺は鉤爪の素手でロゾンのエンペラー種の巨体を引っ掻く。

ギギギギギ ギ ギィン

俺の引っ掻く鉤爪はロゾンの硬い鋼色の巨体に触れ火花を散らして弾かれる。

続いて尻尾を使い腰を捻る。尻尾が回し蹴りの要領でロゾンの鋼色の巨体の脇腹辺りにヒットさせる。

ガイーン

相手よりも尻尾当てた俺の方が身体に響いた。

くっ!硬すぎる。

鋼色の鱗に覆われた巨体は本当の鋼のように硬かった。

ロゾンは鋭い爪の付いた鋼の腕を大きく振りかざす。 

ズアッ

俺はそれをすれすれで避け剣帝竜ロゾンから離れる。


『ふむ、悪くない動きだ。何処か武術をならっているような感覚がする。お主は何処で武術を習った?。』

ギャアガアギャラギャアガアギャギャアギャ

「師であるレッドモンドさんから習いました。」

『レッドモンドだと!?。矢張あやつまだ生きておったか。』


ギャガアギャガアイ?

「師と知り合いで?。」

『ああ、あやつとは何度も剣を交えた相手よ。そうか···レッドモンドが師であるならば弟子に対して本気ださぬのも無礼であろう。』


ゾク

俺は直ぐに剣帝竜ロゾンから離れる。

ロゾンの漂う雰囲気が一気に変わったからだ。


『お嬢、宜しいですか?。』

「·······。」


コク

イーリスお嬢様は口を閉じたまま頷く。

何だ?何をする気だ!?。

とてつもない威圧感がロゾンの鋼色の竜体から放たれていた。


『千の深き剣落ちし。闇深き魔を断ち、聖祈りしは白き刃、百と見なし千と成りて。』


ジャキン

ギザギザした鋼の翼の大きく広がる。


『剣千想界(けんせんそうかい)。』


ごおおおおおおおおお 


何だ?。

剣帝竜ロゾンの周囲の空間が歪む。

チャギ チャギ チャギ チャギ チャギ

歪んだ空間から何十何百何千の剣が並ぶように現れる。


『私のスキルだ。剣帝竜は千の剣を具現化させることができる。聖剣、魔剣、運が良ければ神剣も生み出すこともできる。』

·············

俺は言葉を失った。

剣帝竜のスキルに驚いたのも理由だが。

それよりも確かに俺は剣帝竜だから剣に連想するドラゴンだと思っていたよ。だけどね。それよりも俺が言いたいのはドラゴンが千の剣を生み出して意味あんのかと突っ込みを入れたかったのだ。

剣は人間の使うものであり。ドラゴンが使うものではない。寧ろ聖剣とか魔剣とか神剣とかはドラゴンの退治にしいられるものだ。千の剣がドラゴンが生み出して意味あんのかと心から本気で突っ込み入れたい


ギャガアギャギャアガアギャラギャアガアギャラギャアガアギャラギャアガアギャギャアガアギャ?

「ロゾンさん、聖剣、魔剣、神剣を生み出すスキルは解りましたけど。ロゾンさんが使うのですか?。」

『いや、お嬢が使う。お嬢は剣の武芸に長けておるからなあ。ここの宙に浮いている何百何千の剣も全てお嬢が使う剣だ。お嬢には使えぬ剣はないからなあ。』

·············

つまり、剣帝竜は剣を出し。主人がその剣で戦う戦法らしい。

騎竜事態が剣を使うわけじゃないようだ。


『さて話はここまでにしよう。お主の力はその程度ではあるまい。レッドモンドから教えられた気の力を見せてみよう。そしてそれ以外の力もなあ。』


剣帝竜ロゾンは俺が気を扱うだけじゃなく精霊の駆使した力も見抜いているようだ。

出し惜しみする相手ではない。


「ライナ、私はブーメランで援護するから思う存分戦って。」

ギャアガアギャラギャアガアギャラギャアガアギャギャアギャアギャアガアギャガアギャ

「ありがとうございますと言いたいのですが。お嬢様は自分の身を気にしてください。」


剣帝竜の出した聖剣や魔剣或いは神剣をイーリスお嬢様が扱うのなら。その矛先はアイシャお嬢様に向けられる。タイプ的に剣帝竜ロゾンは直に攻撃を仕掛けるようなタイプじゃないようだ。侍の格好しているから肉弾戦が主流だと思っていた。


「解ったライナ、でも私もライナの足手まといにならないように魔法の授業で幾つか魔法を会得したんだよ。きっとライナにも役に立つよ。」

ギャガアギャギャ

「それは楽しみです。」


人化できないからアイシャお嬢様が教室内でどのような授業を受けていたか解らないが。どうやら俺の修行の間、アイシャお嬢様も強くなったようである。


『では参ろうか·····。』


ジャキン

剣帝竜ロゾンのギザギザの営利な翼が広がる。

背に乗るイーリスお嬢様は宙に浮いた剣を一本取る。炎纏った魔剣のようだ。


俺は集気法を行い黄色の粒子を集める。

アイシャお嬢様はブーメランを構え。何か呪文のようなものを唱え始めた。




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