第47話 泥噴杯(マッドジェットカップ)

ドッ ドオオオオッーーーーっ!!。


ぼたぼたぼた びちゃびちゃびちゃ


泥にまみれた湿地帯に間欠泉のように泥が地面から吹き上がり。泥の土壌に落ちていく。

ぼちゃぼちゃぼちゃ


ギャアガアギャギャアギャガアギャアギャアガアギャアガアギャア

「ここが泥噴杯(マッドジェットカップが開催される地、噴泥地帯か。」


俺とアイシャお嬢様は学園からレース出場許可申請を貰い。マッドジェットカップ(泥噴杯)が開催される地、噴泥地帯にきていた。

レース開催日が学園の休日ではないので休日レース外出許可証も、申請してきている。

親友のパールとレインもマッドジェットカップに観に或いは出場したかったようだが。休日レース外出許可証はレース出場者とその騎竜の関係者でなければ許可がおりない。レースで既にマーガレットの父親であるベルジェイン侯爵がエントリーしていたので寸なり出場できていた。既にレースエントリーは締め切っていたのでパールお嬢様はともかくレインお嬢様は渋々断念せざる得なかった。相棒のレイノリアとガーネットもお忍びで応援に向かおうとしたが。主人がいない騎竜が外出が許される筈もなく。補導されるように学園に連れ戻されていた。

噴泥地帯は東方大陸にあり。この世界の大陸は4つに分けられ。東方大陸、西方大陸、北方大陸、中央大陸に分けられている。俺とアイシャお嬢様の家、マーヴェラス邸とアルビナス騎竜女学園は東方大陸に位置する。出場したマンゴスチン杯やクリムゾン杯も東方大陸で開催されている。また俺とアイシャお嬢様は他の大陸のレースに出場した経験はまだなかった。


ドッドドドッドドドドーーッ‼️

ぼちゃぼちゃぼちゃぼちゃ


それにしても凄いなあ。どういう原理で泥が間欠泉のように吹き上げられているのだろう。下が地熱地帯なのかなあ?。でもそうなると泥はカサカサに乾燥するはずだが。間欠泉の原理はよく知らないが。地下の空洞に水が溜まり。地熱によって膨張して吹き出すらしい。


「それじゃ。ライナ。私は観客席で観戦しているから頑張って。」

「お嬢様。お気を付けて。」


アイシャお嬢様と人化のメイド姿の至高竜メリンはレース場に用意された観客席せと向かう。

俺は金髪ロールとぷるんと胸を揺らすマーガレットお嬢様と一緒にマッドジェットカップのスタート地点へと向かう。


「はあ~何で私が泥にまみれたレースに出場しなくてはならないんですの。嫌になるのですわ。服も汚れますわ。」


マーガレットお嬢様は愚痴の独り言を呟いていた。

レースのスタート地点には既に騎竜と騎竜乗りが集まっていた。騎竜乗りは泥まみれになることが解っているようで水着、スパッツ姿のような軽装をしていた。

因みにマーガレットの格好はゴージャスなフリフリのドレスような服装である。

汚くなるなら軽装のような汚れてもいい服装にすればいいのにと俺は想う。マーガレットお嬢様の性格にしてダサい服装を着るのがプライドが許さないのだろう。面倒くさっ‼️。


辺りをキョロキョロと見回す。

マッドジェットカップというレースはマーガレット・ベルジェインから説明されたが泥まみれになるレースだと聞いている。現地についてレースコースである泥が吹き出す間欠泉を垣間見て理解した。確かにあれなら泥にまみれるなあ。俺が竜のオスだから特に問題ないが。メスであるレイノリアはマッドジェットカップはメス竜が一番出場したくないレースの断トツ一位らしい。ちなみにメスである筈の炎竜のガーネットはおも一気しやる気満々出る気満々であった。まあ、あの炎竜ガーネットのようなメス竜はある意味例外なのかもしれない。


ギャアギャアギャアガアギャ!

「ライナ、ライナじゃないか!。」


突然竜の鳴き声飛び交う。

竜の鳴き声に振り向くと同じノーマル種の竜の姿が目に写る。


ギャ~

「え~と。」


《竜言語変換》


目の前の騎竜に何処か見覚えがあった。

ノーマル種の騎竜の隣に革鎧の軽装した騎竜乗りの女の人もいた。


「俺だよ!ルイードだ。」

「嗚呼、ルイードか!?。て言うことは隣の騎竜乗りはマーナさんかあ。」


俺は竜のくちばしが深く頷き納得する。

マンゴスチン杯で戦ったノーマル種のルイードと庶民出の騎竜乗りマーナさんだ。本当に懐かしい····。あれから四年ちょっとぶりかなあ~。


「しかしこんなところで逢うとはなあ。奇遇を通り越して運命を感じるぜ。」

「はは、そんな運命いらないけどなあ」

「相変わらずの減らず口だなあ。あれからどうしてた?。俺とマーナは各地のレースを巡っているんだけどなあ。」

「嗚呼、俺はアイシャお嬢様とレースで十勝し。念願のアルビナス騎竜女学園に入学したよ。」

「アルビナス騎竜女学園だって!?。大丈夫なのかよ。あそこは人間の令嬢のたまり場だろう?。騎竜も殆どが上位種のはずだ。」

「それに関しては大丈夫だぞルイード。あんたが無駄といっていた強豪の炎帝や炎速にもクリムゾン杯で勝ったし。学園ではエンペラー種にも勝ったんだよ。」


俺はここまでの経緯を全て話した。


「はあ~、本当にお前は上位種の騎竜を負かしてしまうとはなあ。しかもあのプライド高いメス竜にも背中に抱きついて貰えるとは。流石は竿師のライナだよ。」


ルイードはうんうんと竜の顎を頷き感心しまくる。

いや、竿師は関係無いだろう。

俺は微妙な竜の顔を浮かべる。


「ルイード。そのノーマル種の騎竜と何を話しているの?。」


隣でノーマル種同士で話し込んでいることに気になりマーナさんが話しかけてくる。


「ああ、マーナ。ほらこのノーマル種の騎竜はあのマンゴスチン杯で戦ったノーマル種のライナだよ。」

「え?でもそのノーマル種の同じ隣にいる騎竜乗りは違うわよ。四年たっているとはいえあの金髪の少女とは全然違うわ。髪型が金髪ロールだし。」


マーナは不思議そうに首を傾げる。

金髪ロールで判断するんですね?貴女は。

マーナさんの判断基準に俺は心の底でそう突っ込む。


「そういえば確かに違うなあ。四年たっているとはいえ成長してもあんな我が儘で高飛車な娘に成長しないはずだ。」


見た目で我が儘で高飛車な性格と見抜くなんて凄いなあ。

ルイードの洞察力には感服する。


「実は俺はレェンドラ(貸借竜)、騎竜契約を交わしているんだ。ここのレースには彼女の依頼できている。俺の主人であるアイシャお嬢様は観客席で観戦しているよ。」


俺はここまでの事情を話す。


「そうか····まあ、頑張れや。俺らも出場するからには手を抜かねえぞ!。上位種を打ち負かした力を見せてもらうぞ!。」

「嗚呼、望むところだ!。」


そして昔の好敵手と別れる。


「あのノーマル種といかにも庶民出の騎竜乗りと知り合いですの?。」

「まあ、昔レースで戦ったライバルだよ。」


俺はそうマーガレットに説明する。


「流石はアイシャ・マーヴェラス。低俗な庶民の騎竜と騎竜乗りの知り合いがいるのですね。」


マーガレットお嬢様の発言に俺は少しイラッと眉間に紫波をより竜顔をしかめる

いちいちトゲのある言い方しないでくれるだろうか。相手を貶しているつもりはないだろうが。彼女は無自覚に毒を吐いている。


『さあ!今宵もやって参りました!』


噴泥地帯のスタート地点に設置された魔法具のスピーカーから実況者と思われる声が発せられる。

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