第35話 有能と無能
アルナビス学園の屋上でレースの様子を観戦する少女がいた。
黒薔薇ドレスのゴスロリドレスを着飾り。用意されたテーブルと椅子に座り。ランチタイムにしゃれこんでいる。パープル色の長い髪を靡かせるパトリシアの小さな唇がふふと不適に嗤う。
「丁度良い機会だったわね。まさかマーガレット・ベルジェインがアイシャ・マーヴェラスに決闘を挑むなんて。私もあのノーマル種の実力を知りたかったのよねえ♥️。」
「········。」
後ろで控えるように盲目のようにとじた瞳と黒色の羊のような曲がりくねった角を生やすメイド姿はじっと直立姿勢を保つ。
「ナーティア、貴女の見立てではどちらが勝つと思う?。」
ナーティアはじっとしたまま口を開く。
「はい、本来ならノーマル種はエンペラー種に勝てない筈ですが。アイシャ・マーヴェラスのノーマル種の騎竜なら······。」
「予想がつかないと?。」
ナーティアはこっくりと頷く。
「面白いわねえ。アイシャ・マーヴェラスという貴族を調べたら面白いことが解ったわ。まさかあの七大貴族と関係した貴族とわね。しかも神竜救世時代とも繋がっていたなんて。さっき歴史で習ったばかりなのに···。」
ふふとパトリシアは不適に笑う。
「·······。」
「神足る竜を喪った貴族は何処までいけるのかしら?。もしノーマル種が喪った竜と同じくらい優れているのなら私のコレクションに迎え入れて差し上げても良くってよ。」
パトリシアの小さな唇が学園屋上でずる賢そうにつりあがる。
「アイシャ様が大丈夫でしょうか?」
角を生やし後ろ髪を三つ編み束ねたマウラは心配そうに眉を寄せる。
騎竜のノーマル種はどうでもよいがネフィスの娘であるアイシャには学園を恥をさらして欲しくない。
セーシャは二階廊下の窓越しで校庭グランドから見えるアイシャの姿を仇を見るかのように睨んでいた。
「何処まで···何処まで恥をさらせば気がすむの···。」
ぐぐ
セーシャの唇が歪み指がぎゅっと握りこぶしをつくる。
「セーシャ·····。」
一年教室内ではクラスが窓際に集まっていた。皆アイシャ・マーヴェラスとマーガレット・ベルジェインの決闘を観戦する為だ。ただクラスで浮いたように席をくっつけてお弁当を食べているものがいた。
「今日のお弁当何かなあ?。」
ふわふわ
雲のように揺れる巨大な胸を弾ませ。ピンクの髪を揺らし。椅子に腰掛けるアーニャは大好きなお弁当の蓋を開ける。
「あんたねえ。こんな状況でよく弁当をほおばれるわねえ。あきれ返って言葉も出ないわよ。」
ポニーテールの栗色の髪を揺らし。揺らすこと叶わぬペッタンな胸の前に肘を机につけ。カリスはあときれ顔をする。
「?、カリスしゃべってるよ。」
「言葉のあやっだっちゅ~の!。全く、皆貴族の決闘とかで盛り上がっているのにあたしたちときたら。」
カリスははあっと何とも言えないため息を吐く。隣の席で熱心に教科書を読書にふけこむ角を生やす青髪の少女と机にはみ出さんばかりの胸を押し付けて。さもけだるそうに眠たそうにする角を生やした大人の女性に目をやる。
「ハウド、モルス、私達のことは構わないから決闘観に行ってもいいのよ。」
ペラ ペラ
「結構だ。エンペラー種とノーマル種が対決してどちらが勝つかなど明白。観ても無駄。意味無いこと。」
「ああ、私もパスです。眠いし。暫くここで眠ります。ぐ~ぐ~」
ハウドは無感心に読者にふけこみ。モルスはそのまま熟睡してしまう。
我ながら騎竜達も個性派揃いである。
「私だけでも決闘を観戦しようかしら?。」
一人と二匹を横目にカリスそんな思いを巡らす。
学園敷地の森林木陰から校庭グランドの決闘の様子を窺う。
白い獣のような少女ルゥの隣に深縁色の鱗に覆われた竜ロロが寄り添う。
「ロロ、あのドラゴンさん駆けっこするの?。」
白い獣耳をぴくぴくさせ。顔が白毛の毛並みに覆う顔が粒羅な瞳でロロに対して心配そうに訴えかける。
『大丈夫ですよ。あのライナさんでしたら敗けることはありません。何故なら···。』
緑森竜は森と深い繋がりを持つ竜である。故に自然界の精霊とも精通していた。あのノーマル種のライナの周りに精霊が集まっていた。火、水、風、土、光、闇、問わず全てがの精霊があのノーマル種の竜に集まっていた。精霊を手順も踏まず付き従えることができるのは唯一妖精竜とそして今は亡き大いなる神足る竜だけである。ロロは森深く村に住んでいた。都会の騎竜の上下関係にも疎かった。でもライナという騎竜は他の上位種よりも強いと理解していた。何故なら彼の中に流れる生命力は奥深い樹林の大樹に勝るものがあったからだ。だからこそロロはライナという騎竜が敗けることなど微塵も感じていなかった。
「いきなり早々面白いことになったねえ?。」
男性紳士用の服を着たボーイッシュなブラウン色の髪の少女は少年のような無邪気な笑みを浮かべる。
『キリネ。あの、ノーマル種のライナ、エンペラー種のメリンに勝てますかねえ?。』
四本角のラナシスは長首を上げ。来客専用竜舎の屋根に腰掛け足をだら~んさせて校庭グランドの決闘を様子を窺うキリネに声をかける。
「解らないけど。ノーマル種のライナがもしエンペラー種のドラゴンに勝てたら学園が大騒ぎになるね。」
キリネは少年のようにケラケラ笑い。その様子を心から楽しんでいる。
幻竜ラナシスはそんな姿をじっと母親のような暖かな竜瞳で見守る。
学園長室
「どうやらあのアイシャ・マーヴェラス嬢とマーガレット・ベルジェイン嬢が決闘をするようですね。」
窓越しで学園長は穏やかな笑みを浮かべる。
学園長室からみえる校庭グランドを観える決闘の様子を楽しそうに観戦する。
「まさか入学早々決闘だなんて。我が学園にとって前代未聞です。」
眼鏡をかけた凛とした姿勢の教頭をため息を吐く。
「あら?、昔は私もよく決闘していたわよ。」
ケロッとした紫波顔で学園長は返す。
「学園長の場合はしなくてもいい決闘までしていたでしょうに!。それが原因で付いたあだ名が決闘魔でしょうがっ!。」
教頭ははあ~と大きなため息を吐く。
学園長の若い頃を知る教頭は頭を抱える。若い頃教頭は学園長とは先輩と後輩の間柄であっる。教頭は女傑と呼ばれた学園長に若い頃何度も他の学年の生徒、教師、一般人さえも決闘を挑んで止めるのに苦労させられた。培った連戦連勝も生まれつき令嬢らしからぬ好戦的な性格から来てるものが大きい。
「でもアイシャ・マーヴェラスとノーマル種の騎竜の実力を知る良い機会でしょうに。」
「そうですね··。それに関しては都合が良かったです。」
教頭は未だノーマル種が上位種に勝つなど信じていなかった。アイシャ・マーヴェラスが炎帝であるレイン・ルポンタージュと炎竜族の炎速ガーネットを打ち負かしたのも騎竜乗りであるアイシャ・マーヴェラスの力ではないかと推察する。救世の騎竜乗りの血を引いているのならその能力を最大限に生かす力が身に付いていても可笑しくはない。偉大な騎竜を喪ってもその偉大な騎竜乗りの血筋は絶えていないのだ。騎竜が最低でも騎竜乗りが優れているならばどんな騎竜を乗りこなしてもそれは優れた飛行ができるもの。例えそれが能力が低いと言われた最下層の竜だとしてもだ。だからこそ教頭は騎竜よりも騎竜乗りであるアイシャ・マーヴェラスを注視していた。彼女の才能がどれ程ものか確かめるためである。故にアイシャ・マーヴェラスの連れているノーマル種の騎竜に関しては何のも興味も期待もしていなかった。
キャーー!キャーー!
わーーー!わーーー!
ヒュ~~
校門上空を飛行し旋回する。
学園の敷地の塀を目印にその上空を突き進む。
「さあ、メリン!。まずはノーマル種とエンペラー種の飛行スピードを見せてやりなさいですわ!。上位種とノーマル種の飛行能力の違いを思い知らせてやるのですわ!。」
ダイヤモンドのように煌びやかな騎竜の背に乗るマーガレットはロール金髪を風に靡かせ豪胆に言い放つ。
マーガレットの胸の膨らみは風の抵抗を抑えるかのようにぷるぷると揺れていた。
『はあ~、解りました。お嬢様。』
至高竜メリンは全てに諦めた様子で言葉を返し。煌びやかな竜の翼を平行にかざす。
ぎゃぎゃあ!?
「何をする気だ!?。」
スッ ヒューン
なっ!?。
マーガレットの乗せたメリンは煌びやかな翼を平行にかざすと一瞬姿を消し。一気に前に出ていた。それを連続で繰り返し俺との距離が大きく開く。
まるで瞬間移動したかのように場所から場所へ移ったような飛行方法だった。
相も変わらずファンタジー世界をぶち壊すような飛行方法だ。
炎竜ガーネットの噴射するジェット機のような飛行方法を垣間見て上位種の飛行は変というか異常なものだと覚悟していた。
「ライナっ、行くよ!。」
ガアッ
背中に乗せるアイシャお嬢様掛け声とともに俺は筋肉のついた緑色の翼を大きく広げた。
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