第34話 決闘

ざわざわ ざわざわ

教室内が騒然となる。


「面白いことをしているな。」


カーネギー教官が教室の扉前で仁王立ちしていた。


「あっ!?カーネギー教官!。」


カーネギー先生が入って来たことに気づいた生徒達が次の授業が始まると知り急いで席に戻る。

しかし、アイシャとマーガレットはお互いに睨み合うように立ち尽くし硬直している。

隣ではレインとパールはその状況をじっと黙って見守る。


「マーガレット・ベルジェイン、アイシャ・マーヴェラス。その決闘の見届け人、審判は私が引き受けよう。」


カーネギー教官の発言ににマーガレットとアイシャは眉を寄せ困惑する。


「宜しいのですか?カーネギー教官!。私、叱られと思っておりましたわ。」


学園内で貴族の決闘をするなど前代未聞。マーガレットは叱られことを覚悟していた。


「なあ~に、学園内で貴族の決闘が前例が無いわけではないがなあ。昔よくあったんだよ。だが近頃のお嬢様方は行儀良すぎてあまり決闘のような過激なことをしたがらなくてな。ほんとに騎竜乗りというものはそんなもんじゃないんだがなあ·····。」


カーネギー教官は力抜けたように苦笑する。


「決闘は昼休み時間を利用するが良いか?。まあ食事をとる時間は少し空けてやろう。学園長に相談すれば即許可するだろう。あの方は女傑と呼ばれるほどレース好きだからなあ。決闘というなら尚更な。」

「あの、何故そこまでしてくれるのですか?。」


アイシャは勢いで決闘を受けてしまったが学園の教師がそこまでする義務も義理もないと思った。これは単なる騎竜乗りの貴族同士の喧嘩である。学園の教師としては貴族の喧嘩に肩入れするすることに何のメリットもないのだ。

カーネギー教官はフッと含み笑いをする。


「アイシャ・マーヴェラス、私も知りたいのだよ。ノーマル種を騎竜にして我が学園に入学したことを。無謀ととるか勇敢ととるか。はたまた愚者であるか?勇者であるか?。それとも救世の騎竜乗りのような奇跡を起こす足り得る者かとね?。」


カーネギー教官の引き締まった唇がニッコリと微笑む。

アイシャは真剣な眼差しでカーネギー教官を直視する。


「私は救世の騎竜乗りではありません!。私はノーマル種を騎竜にするただの騎竜乗りです!。」


アイシャの力強い眼光を放った顔立ちにカーネギー教官の表情が少し気圧される。

カーネギーの唇からか細い小さな小言が漏れる。


『偉大な竜を喪ってもマーヴェラス家の騎竜乗りは根っからの騎竜乗りなのだなあ····。』

「?。」


アイシャはカーネギー教官が呟いた小言に首を傾げた。


「何でもない。あい、わかった。席に戻れ!。授業を始める。昼休みまでに決闘の段取りを決めておく。二人とも相違ないな!。」

「ありませんわ!」

「ありません!」


お互い二人は真剣に表情を返事をする。騎竜乗りの決闘が昼休みに行われることになった。


     来客専用竜舎


グー スピー グー スピー


ライナは竜の鼻穴から大きな鼻提灯を吹かして藁の寝床で一眠りしていた。


んががー

藁の寝床で竜のイビキをかいて熟睡していた。

グー パチンッ!

ライナの鼻提灯が膨張し破裂する。


ンガッ?ガッ?ガッ?

寝惚けたルイナは長首を上げキョロキョロと左右を見回す。


ガア ~

周囲を確認したら安心したかのように再び竜の瞼を閉じてライナは眠りについた。


ンガー ンガー



    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


キャーー!キャーー! 

わーー! わーー!


校舎の校庭から女子生徒の歓声が沸き上がり。窓越しから女子が顔を覗かせ絶叫を上げていた。



一体全体どうしてこうなった!?。


俺は校庭グランドで呆然と立ち尽くす。

校庭のグランドでは何故かアイシャお嬢様ととマーガレット・ベルジェインという貴族の娘と決闘することになった。

何でもアイシャお嬢様がマーガレットの決闘の申し出を受けたそうだ。

スポ根かよ!と俺は微妙な竜顔で顔をしかめる。

入学早々決闘受けるなんて何処の青春漫画だよ。


「アイシャ・マーヴェラス。逃げなかったことを誉めて差し上げすわ!。」

「マーガレット・ベルジェイン。私はここで証明する。ライナはエンペラー種よりも強いことを!。」


アイシャお嬢様とマーガレットというお嬢様はお互い顔を合わせ。メラメラと闘志の炎を瞳に宿していた。

やっぱスポ根だよコレ。ここお嬢様学校なのに。おしとやかで優雅で華麗なお嬢様の学校じゃないのかよ。お嬢様学校でスポ根っ····てっ、あったわ!。そう言えばアニメや漫画でお嬢様の青春スポーツ系に確かにあった。かなり古いけど····。確かエースをねらとか言うやつだ。自分はスポーツ系のアニメや漫画はあまりみないけど。こういったライバル対決みたいなの確かにあった。

よく考えたら騎竜乗りのレースも一応スポーツに入るのだと気づく。


アイシャお嬢様はドラグネスグローブを嵌め。俺の竜の背に股がる。


「さあ、メリン。貴女の偉大なるドラゴンの姿を皆に御見せなさい!。」

「はい、お嬢様····。」


メリンというエンペラー種の人化した騎竜は半場諦め顔である

あの騎竜相当主人に苦労されていそうだな。見た目からしてマーガレット・ベルジェインという令嬢は高飛車で我儘そうな感じがしているし。俺はマーガレットの昔懐かし金髪ロールをまじまじとみる。


パアアッ

メリンは人化を解くと巨大な煌びやかな竜に変貌する。鱗一つ一つがダイヤモンドの原石のように輝いていた。騎竜は竜種によっても様々で体格差もある。エンペラー種は大抵大型である。因みにパールお嬢様の騎竜のロード種のレイノリアも人化を解くとかなり大きい。BIGオブザBIGと言わしめるほどデカイ。それを正直に指摘すると恥ずかしい!といって巨大なレイノリア尻尾が俺の溝にクリンヒットし。暫く身悶え苦しんだ。メスドラゴンは人間と同じように体格差を気にしているようなので以後気をつけることにしている。


「決闘のルールは簡単だ。校内の塀を校門から逆時計回りに一周し。この校庭グランドに再び戻ってくればいい。尚相手の妨害行為は殺生行為と判断する以外はOKとする。」


マーガレットは煌びやかな巨大な竜に股がる。


「さあ、メリン!。貴女のエンペラー種としての力を見せつけなさい!。スキルも魔法も全ておのノーマル種にぶつけてやるのですわ!。」

『お嬢様··もう少し謙虚に。』

「何を言っているのですわ!。高貴な私達にあのわからず屋な貴族にわからせるのですわ!。派手にやりまくりますわよ!。」

『はあ~。』


「位置に付け!。」


カーネギー教官の指示でメリンと俺はスタート位置につく。

背を低くし翼を平行に広げる。

こうなっては仕方ない。遅かれ早かれ学園に入った以上エレメント種やロード種、エンペラー種、レア種と渡り合わなくてはいけないのだ。覚悟を決めよう。

俺は翼をばたつかせる。

エンペラー種のメリンに限っては特にそんな動作もしていない。普通に平然と煌びやかな翼を下に下げている。あれがエンペラー種の通常の飛びかたなのだろうか?。

俺は翼を広げ身構える。


「よ~い、ドラGoー!。」


ズガッ!

バっサッ バサバサッ!!

俺はカーネギー教官のスタート開始の掛け声にヅッコケそうになったが。態勢を立て直して再び校庭の大空を舞い上がる。

二匹の騎竜はアルナビス学園上空の虚空を舞う。

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