第33話 手袋は胸に充てるものではない

「えいっ!」


むにゅううぅ♥️


ええわ~♥️。 ええわ~♥️。


ブンブン ブンブン

俺はアンナさんに背中を抱きつかれ。竜舎内で竜の尻尾を激しく振りまくっていた。

赤毛のアンナさんのオーバーホールに包まれ締め付ける豊かな膨らみの感触が緑の鱗の肌を通じ伝わってくる。


「何をしておるんじゃ?。」


竜舎内を掃除作業をしていたモロトフさんが白眉を寄せ困惑する。

アンナさんは俺の背中から離れる。


「アイシャ様から教えて貰ったんです。ノーマル種のライナさんは背中を抱きつくと喜ぶんですよ。」

「ほう、そうかそうか。では儂も。ほ~れえっ。」


ドォんッ

·············。


ライナの竜の眉間に紫波が寄る。 

竜顔が苦虫を噛み砕いたように嫌そうに歪む。

ブンブンと激しく振りまくっていた竜の尻尾の動作も段々沈静していき。最後には完全に停止する。

モロトフはライナの抱きついた竜の背中から降りる。


「何じゃ?。全然喜んでおらんぞ。」

「あれ?おかしいですねえ。」


二人は互いに不思議そうに首を傾げる。


〘男に抱きつかれて!誰が喜ぶかあっ!!。ボケえーっ!!。〙


俺は内心、心の底でそう突っこむ。

新しい竜舎の新居でライナは新生活を満喫していた。



  アルナビス騎竜女学園一年教室


 

コツコツ

カーネギー教官は黒板に文字をかく。一時限目は歴史であった。生徒はノートに黒板に書かれた文字を書き写す。

カーネギー教官は黒板に書きながら騎竜乗りの歴史を説明する。


「昔昔二匹の全能なるドラゴンがいた。全能なる二匹のドラゴンは世界の命運を懸けて互いに争っていた。一匹の竜は世界に繁栄と栄華もたらし。もう一匹の竜は滅びと終焉をもたらすドラゴンであった。互いの竜の争いは三日三晩続き。永遠に決着つかないと思われた。全能なる二匹のドラゴンの争いは世界に甚大な被害を与えた。大地を荒廃させ。火山は荒れ狂い。水流は暴れ。大樹は腐敗していった。世界全ての種族の生活に疲弊と被害を与えた。」


カキカキ

生徒は熱心にノートに書き写す。

ドサッ

カーネギー教官は教科書は教壇に置く。


「さて、我々騎竜乗りの始まりは何か知っているか?。」

「はい!、ですわ!。」


左角席に座る金髪ロールを耳から流す令嬢が元気よく高々に手をあげ返事をする。


「マーガレット・ベルジェイン!。」

「はい、ですわ!。」


ぷるん

マーガレットは堂々と立ち上がると二つ膨らみも大きく揺れる。


「救世の騎竜乗りですわ!。」

「正解だ!。」


カーネギー教官はニッコリと満足そうな笑みを浮かべる。

ぷるん

マーガレットは誇らしげに胸を張る。


「全能なる二匹のドラゴンは決着つかず。世界が静かな終わりを迎えようとしていた。人々は絶望に悲嘆していた頃。そこに一人の勇気ある少女が現れる。少女は全能なる二匹のドラゴンの戦場の真っ只中で一人果敢に全能なる二匹のドラゴンに会話を始める。二匹の竜に争いをやめるよう説得する。だが全能なる二匹の竜は決着を着けなければならないと断れる。だがこのまま争われると地上の人達が困るのでならば少女は駆けっこで決めればよいと提案する。全能なる二匹の竜は駆けっこつまり競争で勝敗を決めることにした。全能なる二匹のドラゴンの競争は世界規模で世界を何周するものであった。それでも決着が着かないので少女はまた提案する。全能なるドラゴンの片割れの繁栄と栄華をもたらす竜に乗って競争するという提案だ。そんなことで決着を着くとは思えなかった全能なる二匹のドラゴンだったが。再び競争を始め世界を一周すると信じられないことに少女の乗った全能なるドラゴンが勝ったのだ。滅びと終焉をもたらすドラゴンは勝敗が決まり。静かにそ竜の姿を消していった。これが我々騎竜乗りの始まりであり。救世の騎竜乗りの伝説である。」

「はい、先生!。」


クラスの女子生徒が突然手をあける。


「何だ。え~と、カリス・ナイン。」


ガラッ

カリスは立ち上がる。

隣には角を生やした生真面目そうな青い髪の少女がじっと熱心に授業を受けている。


「救世の騎竜乗りは実在するのですか?。」

「実在はする。あの王家の七大貴族に救世の騎竜乗りの文献もある。だがそれは王家では秘匿にされている。」

「何故です?。」


カリスは眉を寄せ困惑する。


「救世の騎竜乗りの子孫の居場所を知ることはそれと同時に全能なる騎竜の存在も知られるということだ。全能なる騎竜しいて言うならば神に匹敵する騎竜を世間に知られればどの貴族もそれを手に入れようと画策する。だから王家七大貴族だけは救世の騎竜乗りの情報を隠蔽保護しているのだよ。だが··まあ···今はもう隠蔽する必要性もないのだがなあ····。」


カーネギー教官はフッと含み笑いをする。


カランカラン

校舎の鐘が鳴り響く。


「これにて一時限の歴史の授業を終了とする。解散!。」


カーネギー教官が教室を出る。

クラスの生徒達は散らばり各々のコミュニティを結する。

アイシャはレインとパールと一緒に次の授業まで軽い雑談をしていた。


「それで、アイシャあの時にね。」

「アイシャ・マーヴェラス。」


突然声が飛び交いアイシャ達の会話が中断される。


「貴方、ノーマル種を騎竜にして恥ずかしくないのですわ!。」

「マーガレット様····。」


気弱な感じのメイド姿のメリンは弱々しくも懸命に主人を静止しようとする。

両耳から金髪ロールを垂れ流すマーガレットはぷるん大きな膨らみを揺らし胸を張る。


「貴女···確か?。」

「マーガレット・ベルジェインですわ!。高貴の名を忘れるとは何事ですの。」


マーガレットはふんと鼻息をならし不機嫌になる。


「ごめんなさい····。」


アイシャは一応礼儀正しく謝罪する。


「貴女も救世の騎竜乗りを見習うべきですわ。彼女は全能なるドラゴンを騎竜にしているのですから。ノーマル種を騎竜するなど騎竜乗りの名を泥で汚しているのではなくて!。」


ガラッ

マーガレットの発言にアイシャはカッと胸が熱くなり思わず立ち上がる。


「救世の騎竜乗りなんて私には関係ありません!。私はライナと一緒に騎竜乗りになるだけです!。」


アイシャとおしゃべりしていたレインとパールはマーガレットに冷たい視線を向ける。赤ドレス着た紅角をはやす炎竜ガーネットは面白げに状況を見守り。青宮玉竜レイノリアはじっと静かに沈黙を保つ。

周囲の女子生徒も異様な空気に敏感に察知し。アイシャとマーガレットの会話を注意深く注視する。

他の席に座っていたカリスは好奇な目をむけ。隣でアーニャはあわわあわわとあわてふためき爆乳をふわふわと揺らしている。

右奥席に座るパープル色髪の小柄の少女は小さな唇に微笑を浮かべ。盲目のように閉じた羊角を持つナーティアはじっと直立を保ち。久しぶりに授業を出てきたキリネはわくわくしたように少年じみた無邪気な笑顔でアイシャ達の会話に聞き耳立てていた。

セーシャは興味なさげに無視し。マウラだけは心配そうにアイシャにだけ視線を向ける。


「もう我慢なりませんわ!。貴女のような貴族の令嬢はこの学園に相応しくないですわ!。メリンあれを出しなさい!。」

「し、しかしお嬢様。この程度のことで。そこまで····。」


気弱で謙虚だったエンペラー種のメリンもマーガレットがなそうとすることに激しく非難する。


「お黙りなさい!!。この方に私が騎竜の力量の違いを教えてあげるのですわ!。だからメリン!早くあれを出しなさい。」


メリンは仕方なく所持していた手提げ袋から手袋を取り出す。それは騎竜乗りが騎竜に乗るときに使うドラグネスグローブであった。

マーガレットは無造作にメリンが手提げ袋から取り出したドラグネスグローブを取りアイシャ目掛けて投げつける。


バサッ

ドラグネスグローブは制服から盛り上がったアイシャの二つの胸の膨らみにあたり。そのまま机に落ちる。

アイシャはマーガレットのした行為に不思議そうに首を傾げる。

マーガレットは人差し指をぴんとアイシャに向ける。


「アイシャ・マーヴェラス!。私、マーガレット・ベルジェインは貴女に決闘を申し付けますわ!。さあ、貴女はそのドラグネスグローブを私に投げ返しなさい!。それで決闘は受理されます。」


ざわざわ

周囲の女子生徒は騒ぎだす。


「アイシャ、受ける必要ないわ!。貴族の騎竜乗りの決闘は本当にお家同士の諍いで行われるものなの。これはどうみても個人的な私事よ!。」

「貴族の決闘は絶対だ。一度受けたらやめることは不可能よ。本来貴族同士で勝敗によって賭けるメリットを決めるのだけど。これはどうみても決闘の名ばかりの嫌がらせにしかすぎないわ。受ける必要ないわ!。」


レインとパールに言葉にアイシャは眉を寄せ迷う。


「受けないのですわね?。やはり貴女のノーマル種では家の高貴なるエンペラー種である至高竜メリンには叶わないのですわ!。ザマー見ろですわ!。」


マーガレットは耳から垂れ下がる金髪ロールを勝ち誇ったようにかきあげる。

アイシャはぎゅっと唇をしめマーガレットを睨む。

アイシャは机に落ちたドラグネスグローブを握りしめ。そのままマーガレットの誇らしげに揺れる豊かな胸に投げつける。


バサッ ボヨン


マーガレットの誇らしげ前に突き出した胸にドアイシャの投げ入れたラグネスグローブ当たり激しくバウンドし。二つの膨らみが激しく揺れる。


「アイシャ・マーヴェラス。その決闘を受けます!。」


アイシャは力強い眼差しをマーガレット・ベルジェインに向ける。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る