第455話下心満載な怒髪天幼女




「ん、フーナさま。お土産買い過ぎ。お店の人驚いてた」


「そうかな? でもみんないっぱい食べるでしょ? お屋敷でお留守番しているアドもエンドたちも。だから大丈夫だよっ!」  

 

 今の時刻はちょうどお昼の時。

 私とメドは久し振りに来たノトリを満喫している。


 お昼はこの街で有名&定番の、キュートードを使った数々の料理を食べ歩いている。

 串焼きやスープを片手に、持ち帰りできるものは購入していった。


 このキュートードと言う魔物は、煮ても焼いても生でも絶品だ。

 全ての部位を美味しくいただける、万能を通り越してもはや至高の食材。



「ん、でも殆どのお店が売れ切れになってた」

「うっ? 確かにそうだね…… ちょっと買い過ぎたかな?」


 私とメドが寄ったお店の殆どが暖簾を下げたり、店を片付け始めていた。



「ん、それもそうだけど。ちょっと前にシクロ湿原に強力な魔物出て流通が止まった」


「あ、わたしも聞いた事あるっ! 突然現れて消えたりする凄い魔物がいて、それのせいでキュートードを捕獲できなくってこの街が危なかったってっ!」


 ポフと手を叩き、メドの話から思い出す。

 因みにポンと手を鳴らせないのは、長すぎる萌え袖のせい。



「ん、今はもう大丈夫。退治されたらしいから」

「おおっ! それは良かったっ! もしかして冒険者だったのかな?」

「ん、そう聞いてる」

「でもこの近くに冒険者っていないよね? 誰か依頼で来たのかな? え~と」

 

 メドに聞きながら、自分でも頭の中で考えてみる。  


『ん~、私たち以外にこの国の高ランクだと、神速の冷笑と剛腕の嘲笑の双子姉妹と、問答無用の断罪シスター。人形使いのハーレム巫女に、災害の魔法使い幼女。って、それは私か? あ、それと元Aランクの鉄壁の開墾幼女もこの大陸にいたっけ? 後は貴族の息子で――――』


 指折り数えながら、有名で強い冒険者を思い出す。

 異名呼び名のは、本名よりもその特徴が知れ渡っているからだ。



「ん、確か退治したのはCとDとFランクの3人の冒険者って聞いた」

「え? マジでっ!? そのランクで?」


 一人悩んでいる私にメドが教えてくれる。


「ん、しかもその中の二人は冒険者になりたてのCランクとFランクの魔法使い。もう一人はベテランの魔法使い」


「へ~、魔法使いだけのパーティーで倒したんだ―――― ん? Fランクでなりたてはわかるけど、Cランクはランクアップしたばかり?」


 メドの話に違和感を感じ聞き返す。


 もしかして説明を間違えたのかな?

 冒険者になりたてのCランクじゃなくて、Cランクになりたてかなって?


「ん、そう聞いた。その日にCランクって」

「え? そんな事あるの?」


 メドの横顔を覗き込む。


「ん、少なくともワタシは知らない。情報もまだ少ない」

「う~、きっとそれ間違っているよ? わたしも冒険者歴長いけど知らないもん」


 確実にない、とは言えないけど、少なくとも20年近く聞いた事がない。 

 特例のルールが私が知らないだけで出来たなら別だけど。



「ん、でも確かな情報もある」

「なに?」

「その中のリーダーらしい人物はメスで――――」

「メスじゃなくて女性ね?」

「ん、女性で、蝶の格好をしている。羽根生えた衣装を着てる」

「へ~、なかなか奇抜な格好だね? わたしも人のこと言えないけど……」


 立ち止まり、自分の服装を見てみる。

 ダボダボなローブと長すぎる三角帽。

 

 うん、私も同類だね。



「ん、それと女性だけのパーティーを組んでいて、みんな幼い少女みたい」

「え? 少女っ!? しかも幼い?」

「そう。6歳から16歳くらいの美少女を集めて、はべらせてるって聞いた」

「美少女もいるのっ!」


 もろ私の範囲内だよっ!


「あと、幼い子供を集めて孤児院にかこってる」

「え?」

「それで無理やり働かせて、お金も稼いでいるって聞いた」

「…………むむ?」

「他には、スラムからも女の子をさらってきたみたい」

「う~」


 何それ?


 うらやま…… じゃなくて許せないよっ!

 幼女を孤児院って場所に軟禁しながら、無理に働かせるなんてさっ!


 一体幼女を何だと思ってるのっ!? 

 眺めて触って堪能するものでしょうっ!


 プニプニの頬っぺや、ツルツルのお腹やお尻やちっぱいを覗くのが嗜みでしょう?

 たまにタッチしたり、スリスリしたりするのは間違った振りして回避だよっ!


 なのに家畜のように働かせて搾り取るなんて、絶対に間違っている。

 そんな人間は世の中全ての幼女の敵だ。

 

 いいや、それだけじゃない――――



「うが――――――っ!!」


「んっ! どうしたの? フーナさま」


 いきなり両手を挙げて、空に咆哮した私の行動に驚くメド。

 

「わたし決めたっ!」

「ん? なにを?」

「その蝶はわたしが駆除するっ!」

「んっ!?」

「だって、その蝶を退治しないと不幸な子供が増えていくもんっ!」

「ん」

「もしかしたらメドたちの敵になるかもしれないもんっ!」

「………………」

「だからその蝶は今日からわたしの敵だっ!」

「……………ん」


 そう。


 悪の根源を駆逐しないと、この先幼女たちに未来はない。  

 嫉妬だとか羨望の念とか、そんな邪な考えさえ頭に浮かばない。


 それほどに私は怒っているのだ。


『うふふ、ちょっとだけメドが私に見蕩れてる。これで好感度アップ間違いないねっ! この流れで今夜はもしかしたら一緒にお風呂入れるかもっ!』


 隣を歩く、白くて華奢な体をチラ見しながら、今夜はご馳走だと期待した。


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