第340話復活ロンドウィッチーズ
「うん、もう大丈夫だよ。こっちもあらかた聞き終わったから」
そう返事をして、お手伝いさんの4人も招き入れる。
ただ、いくらこの宿の一番大きな部屋でも、総勢で10人を超えるとちょっと手狭になる。なので私とラブナは扉近くに移動する。
「さて、お手伝いさんの無事も確認できたし、最初の予定を話すね」
みんなが揃ったところでそう切り出す。
「最初って、だってあなたたちはコムケの街に戻るだけじゃないの? 私たちの護衛を引き継いでさ」
リブが意外だと言わんばかりに口を挟む。
「それは一番最後だよ。私が受けた依頼はそれだけじゃないから」
「最後? 最初じゃないの?」
「だから違うって。私が受けた依頼は大きく分けて3つだから」
「えっ! 一度に3件の依頼を受けてたのっ!?」
「うん、そうだよ。先ずは、最初の依頼として――――」
「スミ姉、ここからはアタシが説明するわ。何だかスミ姉の説明が細かくなりそうで時間かかりそうだから」
リブを含めてみんなに説明しようと口を開くと、ラブナが割って入ってくる。
「うん、そこまで言うならお願いするよ」
なので、ラブナに任せて説明を譲る。
「リブさん、スミ姉が受けた依頼は、先ずリブさんのパーティーメンバーを助ける事、これが一つ目。それとお手伝いさんを護衛して連れ帰る事、これが二つ目。最後にリブさんたちも連れ帰るのも含まれて三つなのよ」
人差し指をたて、尚且つ仁王立ちしながら端的に説明を終えるラブナ。
確かに私よりわかりやすいかも。
「えっ? ちょっと待って、メンバーを助けるって――」
「いいや、待たないよ。護衛対象の無事も確認できたからね」
リブが何かを言い終わる前に、有無を言わさずRポーションを使用する。
「えっ!?」
リブの話を待たないのは、扉前での異種返しを含めてだ。
あの時は何も聞いてくれなかったし。
「ん、んん…… あれ? わたしは――」
「うう、ん…… ここって? ――」
静かに寝ていた二人がすぐさま目を開け周りを見渡す。
ダダダッ ――
「良かったっ! 意識を取り戻したのねっ!」
ガバッ
「な、何、リブ姉さんっ!? いきなりどうしたんですかっ!」
「リブ姉っ!? ちょっと痛いからやめていただきたいですっ!」
目を覚ましたマハチとサワラにダイブして首筋に抱きつくリブ。
起き抜けで状況が把握できない二人は少しだけ戸惑っている様子。
「本当に良かったっ! 私のせいであなたたちが死んだら、未亡人になるところだったっ! また独身に戻って生きていくんだと思ったっ! 生きててよかったわっ!」
二人を胸に抱き寄せ嗚咽を漏らすリブ。
「リブ姉さん……」
「リブ姉……」
そんな泣きじゃくるリブの様子を見て背中に手を回すマハチとサワラ。
何となく状況を把握できたようだった。
「………………」
「………………」
ただし、そんな感動的な場面でも私とラブナはお互いの顔を見合わす。
ちょくちょくと気になる単語が出てきたからだ。
「あ、あのさ、あなたたちマハチさんとサワラさんは女の子よね?」
堪らずと言った様子でラブナが尋ねる。
「はいそうですが、あなたは?」
「はいです。見て分かりますよね?」
「そ、そうよねっ!」
そんな二人は顔を上げ、心外だとばかりに答える。
ある意味失礼な質問だからだ。
ただ見た目で同性だとは最初から分かっている。
二人とも病み上がりだけど、充分美少女の枠組みに入っているからだ。
マハチはパッツン前髪の金髪美少女
サワラは目元が少しきつめだけど、ベリーショートの青色の髪。
泣きじゃくるリーダーのリブは、細めの高身長のセミロングの赤色。
因みに女性らしい部分は絶壁だ。
それに三人並べると信号機の様に見える。
髪色がそれぞれ赤青黄色だから。
「だ、だったら、さっきあなたたちのリーダーが言ってた独身って?」
「そうよっ! 未亡人とか言ってたわよねっ!」
今度は私、ラブナの順に二人に質問する。
もっと前に話が戻ると、嫁がどうとか言ってたし。
「ああ、あれですか。やっぱり気になりますよね……」
「まぁ、それが正常な判断です」
やれやれと言った様相で答える二人。
もしかして聞かれ慣れてる質問なんだろうか?
「じゃ、じゃあっ! あなたたちのリーダーって男なのっ?」
ビシィっとリブに指を付きつけ叫ぶラブナ。
その視線は目ではなく、胸部装甲に向けられていた。
「はぁっ! 何で私が男なのよっ! どう見ても女でしょっ!」
ラブナに男呼ばわりされると、立ち上がり反論するリブ。
上半身だけ見ると、色々と残念なので男装役に見えなくもないが。
「だったら何でリブさんはあんな事を言ってたのよっ! あれじゃまるで同性でも、け、結婚できるみたいじゃないっ! そんな国があるのっ!? あるんだったらアタシもユーアやスミ姉と…… ごにょごにょ…………」
「………………」
大体はラブナが言ってくれたけど、今聞いたことは忘れよう。
ってか、最後の方は俯いて良く聞こえなかったけど。
「それじゃ、あなたたちは、ただのパーティーメンバーって話でいい?」
今度は私が確認の為に3人に聞いてみる。
「ち、違うわよっ! 私の嫁よっ!」
「リブ姉さんが勝手に言ってる事です」
「可愛がってくれますけど、本当は迷惑です」
「え? マハチとサワラ?」
リブの嫁宣言の後に、手を振り真顔で否定するマハチとサワラ。
全否定されたリブが可哀想に見える。
まぁ、大切な仲間なのは真実なんだろうけど。
嫁ってのは過剰な気もするけど。
「で、でもあなたたち二人が治って良かったわっ! あの時はごめんなさい、私を庇ったばかりに危険な目にあわせて…… もしかしたら命も……」
気を取り直してって訳ではないが、元気な返事を聞けてまた涙ぐむリブ。
「そんなのは当たり前ですよ? リブ姉さんだって――――」
「はいです。リブ姉――――」
「え? 二人とも?」
そんなリブに二人は手を差し出し、胸に引きよせ口を開く。
「――だって、リブ姉さんがわたしたちを今まで守ってくれたんですから」
「――リブ姉の真似をしただけです」
「え? え?」
「「だから、今まで守ってくれてありがとうです」」
マハチとサワラはリブを抱いたまま耳元で優しく話す。
きっとその言葉通りに、今まではリブが二人を守ってきたのだろう。
それはその恩返し、なんて他人行儀なものではなく、もっと素敵なものだろう。
『――だって、そんな家族の結束みたいなの目の前で見せつけられたら、私ももっと大切な人を守るために頑張ろうって思っちゃうんだからさ』
まるで3
『さて、依頼の話はこれでいいとして、後は私の目的だよね』
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