第189話誘拐犯は双子姉妹?


※この物語は作者の創作の世界になります。


 他の作品の設定や、現実の倫理観とは

 異なる場合がありますので予めご了承ください。



※前半はスミカ視点

 後半はゴナタ(初)視点 になっています。





 せっかく来てもらったけど、メルウちゃんには帰って貰った。


 安全で言えばレストエリア内が安全なのだが中に入れる訳にはいかない。

それだと何も知らないメルウちゃんを巻き込む事になる。


 この場合は何も知らないのが一番なのだ。



 そして私は一人外に出る。

 メルウちゃんの情報の真偽を確かめる為に。

 ユーア達には直ぐに戻ると声を掛けて。


『ん、さすがにもう真っ暗だね。時間的には晩ごはんを食べ終わった頃かな?』


 私は透明鱗粉を纏いながらスキルを足場に空中を駆ける。

 一般の住宅街を見下ろしながら。 



「そう言えば、慌てて出てきちゃったけど、もっとメルウちゃんに話聞いておくんだった。偉そうなと怖そうな人ってしか特徴聞いてなかったよ」


 人混みが少なくなった街の通りを探しながらふと気づく。

 こんな情報だけで出てきても見つかるのに時間が掛かりそう。


「うん?あれは――――」


 私は何処かで聞いた声に速度を落とし気配を消し、念のために少し上昇する。



 そこには――――




※※※※





 ワタシたち姉妹は、もう暗くなった住宅街の通りを歩いている。

 お姉ぇたちの待っている家を目指して。


 お姉ぇに紹介して貰ったお店『黒蝶姉妹商店』を出て、その後は冒険者ギルドに寄った帰り道だ。


 紹介して貰ったお店の、店主のニスマジという人と働いてる人たちは、正直変な人たちだったけど、ワタシたちにも親切に説明してくれたり、シスターズと言うことで割引もしてくれたいいお店だった。


 それに冒険者の人たちもちょっとぎこちなかったけど、ワタシとナゴ姉ちゃんに話しかけてくれたり、色々な事も聞かれた。


 そして冒険者の人たちとは、訓練で少し汗を流してもっと仲良くなれた。

 お姉ぇと、みんなには本当に感謝している。


 ワタシとナゴ姉ちゃんを救ってくれた事を。


 まぁ、途中からルーギルとクレハンが訓練に参加してたけど。




「また来ようなナゴ姉ちゃんっ!」


 ワタシはマジックバッグから買い物の袋を出してナゴ姉ちゃんに話しかけた。

 その袋の中には、ニスマジのお店で買った物が入っている。



「そうね、価格もそうだったけど品揃えも良かったし。ここの常連になってもいいかしらね。それに――――」


 と、ナゴ姉ちゃんは買い物の袋の口を広げ、


「それにお姉さまの身に着けてる物もここなら多いでしょうからね?」


 そう言ってナゴ姉ちゃんは、色とりどりの下着をそっと見せて仕舞った。



 それは、白や黒や赤や縞々、はたまた何かの動物が縫い付けてある可愛いものや、少し高級そうな装飾があるものなど、たくさんの種類のパンツたちだった。


「そう言えば、ナゴ姉ちゃん、お姉ぇが買い物してるのずっと見てたもんなっ!」

「ふふ、バレちゃった?ゴナちゃん」

「うん、ワタシも気になって見てたからなっ」

「実は私もゴナちゃんが気にしてたの知ってたんだけどね」


 そう、ナゴ姉ちゃんとワタシはお姉ぇがサイズの違うコーナーで手に取ってたのを覗いていた。真剣な表情のお姉ぇはそれぞれ2枚づつ買っていたのを。


『もう一枚はきっとユーアちゃんのなんだろうな。って事はユーアちゃんはいつもお姉ぇと一緒のを身につけてるって事かな?』


 それはそれで色々羨ましいけど、お揃でといったらワタシたちも一緒だ。

 色違いではあるけど。


 それに、お姉ぇは下に履くものはたくさん買っていたけど、上に身に着ける下着は、今回一枚も買わなかった。


『だから、ワタシたちとお揃いなのはパンツだけなんだよなっ。今度お姉ぇと来たらよく見てみよう。うん、どうせなら上の下着もお揃いにしたいからなっ!』


 ワタシはそんな事を考えながら、ふと足を止める。


「ナゴ姉ちゃん?」

「うん、分かってる。私たちに何か用みたいね」


 声を掛けたナゴ姉ちゃんも頷き足を止める。

 数人の足音がそれと一緒に消える。


 どうやら追って来てたのは間違いなさそうだな。



 ザザザッ


 と、ワタシたち姉妹を4人の男たちが囲む。


 どうやら道を尋ねたいとかそういった事ではないみたいだ。


「お前らナゴタゴナタ姉妹に聞きたいことがある」


「そうだけど。あなたたちは?」

「そうだぞ」


 と、先頭の男が一番前に出てそう聞いてくる。

 これだけ聞けば特に何も警戒はしない。


 例えワタシたち姉妹の事を知っていても、過去の事や、昨日の模擬戦の件もあるからわざわざ驚くことでもない。


 けれど、


「お前らみたいな冒険者がいるから、親父や娘が真似をするんだ」


「………………っ」

「………………?」


「教養も礼儀も何もなく、ただ野蛮に魔物を倒すだけしか能のないお前たち冒険者が、俺は嫌いなんだよ」


「はぁ?突然あなたは何を言って、礼儀で言ったらあなただって――――」


「ああ、すまんな。冒険者と聞くとイラつくあいつの顔がチラついてな。みんな同じに見えてくるんだよ俺には。碌に仕事も出来ないくせに地位だけを与えられやがって」


 そう言ってその男と、数人の男たちは鋭い眼光をワタシたちに向ける。


「…………………」

「…………………」


 元々険悪な雰囲気だったけど、その男の言葉で触発されたように、他の男たちの雰囲気が更に悪くなる。


 ワタシの考えだと、どうやら――――


「お前たちは私たちが嫌いなんだなっ」

「そうね、私たちって言うより、冒険者そのものを嫌悪してますね」

「え、そうなのか?ナゴ姉ちゃん?」

「そうでしょ。どう見ても」

「さ、さすがはナゴ姉ちゃんだなっ!ワタシ勘違いしちゃったよっ」


 と、ワタシはナゴ姉ちゃんの賢さに感心する。

 お姉ぇと一緒で頭がいいなって。


「クククッ、やはり冒険者は頭が足らないようだな。頭を使うのは魔物を狩る時と、金勘定の時ぐらいか。まぁいい、これ以上お前たちと話をしてると俺の品が下がる。それよりも――」


 ワタシたちのやり取りを聞いた男は口元を微かに歪める。

 それはワタシたちを挑発している様にも見える。


「それよりもお前たちだろう?」


「何がですか?」

「何がだいっ?」


「俺の娘をさらったっていう、女冒険者は」 


 その男の言葉に反応して、ワタシたちを囲む男たちの輪が更に小さくなった。


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