第20話 アルプス山脈の決戦 前編



 ――スイス アルプス山脈手前 ローヌ川上空 デビルキャッスル 艦橋 阿久津 光 ――




『報告します。第2偵察飛行隊より前方のシュヴァルツホルンという山を超えた位置に多数の魔力反応を確認。数はおよそ7万。地上と山中に陣形を組んで待ち構えています』


「わかった。偵察隊を帰艦させてくれ」


 俺は艦橋から暗闇に浮かぶ山々を眺めながらそう指示をした。


『了解! 』


「さて、いよいよ最後の決戦だな」


 やっぱりシュヴァルツホルンで待ち構えていたな。


 確か魔界の門はシュヴァルツホルンの10キロほど先にある、ヴァイスホルンの麓にあったはず。


 逃げられるかな? いや、逃げるならもう逃げているはず。


 でも夜間戦闘になるし万が一があるか。


「ティナ、悪いんだけどメレスと竜騎士団を連れて回り込んでもらえるかな? 」


 俺は後ろのテーブルでリズやメレスたちとお茶をしているティナに、後方に回り込んでもらえるように頼んだ。


「退路を断つのね。いいわ、大きく迂回して後方に回り込むわ」


「夜間戦闘になるから気をつけてな」


「なあコウ! あたしはいいんだよな!? 」


「ああ、リズは残っていいよ。おとなしく待ち伏せなんてできないだろ? 」


 勝手に後方から突撃しそうだしな。そんな事されたら混乱に乗じてジャマルとかいう悪魔軍の大将に逃げられるかも知れない。


「まあな! 最後の決戦だしな! 」


「ふええ! 兎は待ち伏せのほうが良かったですぅ……」


「あはは、リズを頼むよ。シーナが付いていてくれないと心配なんだ」


 お目付け役がいないと好き放題するからな。


「うう……わかったです。まったく、コウさんに頼られる兎と違って、リズさんはダメダメなお姉さんです」


「なんだと! シーナは後ろでピーピー喚いてアタシにしがみついてるだけじゃんか! 何度もちびってるくせによ! まったく、ガキの頃のままで参っちまうぜ」


 あ、始まった。艦橋ではやめて欲しいな。女性しかいないとはいえ、クルーの目が……


「ち、ちびってなんていませんですぅぅ! リズさんだって夜はコウさんに責められて何度もお漏ら……」


「ハイハイ! いいから出撃準備するわよ。ほら、早くイグニスのところに行きなさいな。オリビアとメレスも行くわよ。リリアはオルマや護衛の騎士数人を連れてメレスに同乗してちょうだい。アルディスさんは皇帝のとこから離れないでしょうしね」


 羞恥プレイがまた始まりそうなタイミングでティナが仲裁に入ってくれた。


 リズとシーナはティナに言われてブツブツ言いながらも艦橋を出ていく。


 俺は恋人たちをまとめるティナに頼もしさを感じながら、席を立ち艦橋を後にする彼女たちを見送るのだった。


 すると前の艦長席に座っていたイーナが、笑みを浮かべながら俺に向かって口を開いた。


「ククク、相変わらずにぎやかだねえ」


 彼女はそう言って手に持った煙管キセルを逆さにし、コーンと灰皿を軽く叩いた。


 イーナは相変わらず花魁のような派手な着物の胸元を大きく開けて着崩しており相変わらず色っぽい。栗色の狐耳と顎のホクロがまた妖しい雰囲気を醸し出している。


「ははは、いつも騒がしくて悪いな」


「いいさ、こうして戦場に連れてきてくれたんだしね」


「あんまり出番はないと思うけどな」


 正直過剰戦力だし。


「まあそれは残念だけど、ドラゴンがあんなにいちゃあしょうがないさ。こうしてボスと一緒に戦場にいれるだけでも嬉しいんだよ。なあ、お前たちもそうだろ? 」


『『『ハイッ! 』』』


「あはは、照れるな。まあこの戦いが終われば、しばらくはデビルキャッスルが出動することはないしね」


 俺はお世辞に愛想笑いを浮かべながらそう返した。


 まあここにいる子の何人かの彼氏はこの戦争に参加してるからな。心配で付いてきたかったんだろう。実際ここまでの戦いで数百人ほど戦死したしな。まあ遺体が回収できたと言ったら安心して喜んでたけど。


 俺が蘇生させるとはいっても恋人が死んだのに喜ぶってどうなんだろ?



「しばらくは……ねぇ。ククク、それは楽しみだねえ」


「何のことかな? さて、それじゃあ軍に指示を出すからフォースターに繋いでくれ」


 俺はイーナの意味深な言葉にとぼけつつ、通信手にフォースターの旗艦に繋ぐように言った。


 すると少しして大型モニターにフォースターの姿が映し出された。


「フォースター、偵察隊の報告は聞いているな? 敵は待ち伏せをしているようだから夜襲をかける。まずはゾンビたちを突入させて張られているであろう罠を破らせ、そのあと俺の乗るヴリトラを先頭にシュヴァルツホルンを超え突入する。今回は夜間戦闘のうえに雪山ということもあり地上部隊は投入しない。その代わり艦隊は包囲陣形を組み、一匹も悪魔を逃さないようにしろ。山の上には撃つなよ? 雪崩を起こすとあとで悪魔の遺体の回収が大変になるからな」


《ハッ! 皇軍とともに艦隊を展開し、包囲陣形を取らせます! 》


「頼む。では俺はゾンビに命令してくる」


 俺はそう言って通信を切り、ローヌ川を超えている最中の20万ほどのゾンビの元へと向かった。


 ジャマルよ、震えて待っていろ。もうすぐ俺がこの手でお前の魂を魔界に還してやる。






 ―― スイス アルプス山脈 シュヴァルツホルン 四魔将軍 鋼鉄のジャマル ――




「失礼します」


 山の中腹に張ったテントでくつろいでいると、ナンシーが中へと入ってきた。


「どうした? 魔人に動きがあったか? 」


「ジャマル様。前線に送った者たちがこちらへと逃げてくるようです。中には同胞の姿もあります」


「なんだと? 」


 ドラゴンがいるとはいえ、オークやオーガならまだしも誇り高きアバドン族の戦士が逃げ帰ってくるとは面汚しどもめ。


 敵前逃亡で処刑してやりたいところだが、ドラゴンが現れた時の囮に使った方が有効か。


「チッ、それで逃げ帰ってきた数はどれくらいになる? 」


「それが10万以上はいると思われます」


「10万以上だぁ? サイクロプスの奴らは戦わず逃げてきやがったのか? そこにドイツに侵攻していた同胞が合流したってことか? 」


 10万以上ってことは、この先に布陣させたサイクロプスの王の軍が丸ごといるってことだ。そこに同胞が合流して戦わずに一緒に逃げてきたってことか? いくらドラゴンがいるからって情けなさすぎねえか?


「……恐らくは」


「あのサイクロプスが逃げ帰るってのも信じられねえが……まあいい。こっちの準備は整った。もう時間稼ぎする必要はねえから合流させろ」


 谷を挟むようにそびえ立つ左右の山の中腹に、大量の大型の弩弓とそれを操作するオーガを配置した。


 あとは5万の地上兵を展開したこの谷にドラゴンをおびき寄せ、左右の山から魔鉄の網を弩で放つだけだ。そして身動きできなくなったドラゴンと術者を、俺が率いる1万5千のアバドンの兵と2万のガーゴイルで捕獲する。


 この雪山に魔人どもの地上の兵はやってこねえだろうから、そのあとは飛空艦を落とすだけだ。


 そうして魔人の軍を壊滅させたあとは、ドラゴンを手懐けて再進撃だな。



「はい。そのように指示をいたします」


 ナンシーはそう言って頭を下げたあと、その美しい翼を広げ谷にいる軍へと伝達しにいった。


 その際にナンシーが口もとに笑みを浮かべていることに気付いた。


 ん? 笑ってるのか? 


 ククク、ナンシーも勝利が近いことに興奮しているみてえだな。それでこそアバドン族の王であり、この世界を支配する俺の女というものだ。



 そしてそれから数時間後。逃げてきた同胞と魔物たちが谷へと姿を表した。


 月の光に照らされこちらに歩いて来る者たちは、逃げてきた割にはサイクロプスの王を先頭に統率が取れているように見えた。


 ん? なんか多くねえか?


「オイ、10万どころじゃなえぞ? 20万以上はいるぞ? それにベヒーモスも送り出した8頭全部いるじゃねえか。どういうことだ? 」


 こちらに向かってくる魔物たちが、報告で聞いていたより多いことに疑問を持った。


 20万ていやあ送り出した魔物の殆どだ。それがほぼ丸々戻ってきた? ドラゴン相手に戦ったってのに? どう考えてもおかしい。


「……恐らく警戒していた者が暗くて数を見誤ったのではないかと」


「そういうことを聞いてるんじゃねえよ。これだけの数が生き残っているってことがおかしいと……ん? なんだ? 突然どうした? 」


 いつものナンシーらしからぬ物言いに、苛立ちつつも俺が疑問に思っていることを説明しようとした時だった。


 飛行しながらこっちに向かって来ていた1500ほどの同胞と、1万ほどのガーゴイルが突然速度を上げ左右の山へと向かっていった。


 何のつもりだと眺めていると、奴らは山の中腹に設置した弩弓を次々と破壊していった。


「なっ、なにしてやがんだ! 止めさせろ! 」


 突然弩弓を破壊し始めた同胞とガーゴイルに対し、配下の者たちに止めさせるよう命令した。


 すると今度は隣にいたナンシーの叫び声が耳に入ってきた。


「ジャマル様! 谷の兵たちが! 」


「!? なんだなんだぁ? こりゃいったい何が起こってんだぁ!? 」


 ナンシーの指差す方向を見下ろすと、そこでは逃げてきた兵たちが谷に配置していた兵に襲い掛かっていた。


 なぜだ!? なぜ同士討ちをしてやがんだ!?


 俺が何が起こっているのか混乱していると、弩弓を破壊している同胞を止めに行っていた者の一人がこちらへと戻ってきた。


「報告します! ジャマル様! 弩弓を破壊していた同胞は我らを認識できておりません! 何かに取り憑かれたように弩弓と我らに襲い掛かって来ております! 」


「何かに取り憑かれただぁ!? 操られてるってことか? 」


 なんだ? サキュバスの魅了のような精神魔法を掛けられてるってことか?


「ジャマル様。谷の帰還した兵たちをよく見てください。目は虚で動きは緩慢です。まるでゾンビのように見えます」


「ゾンビってダンジョンや冥界にいるというあのゾンビか? 確かに聞いていた特徴に似てはいるが……」


 ナンシーの言葉に月明かりと、谷のあちこちに設置してある松明の明かりに照らされた帰還した兵を目を凝らして見てみる。


 確かにいつもの動きとは違う。


 ただひたすら真っ直ぐ進むベヒーモスや、無差別に稲妻を発生させているサイクロプスの無秩序さ。オーガに囲まれ何度斬られても、まるで痛みを感じていないかのように金棒を振り続けているトロール……確かにゾンビみてえだ。


「恐らくドラゴンを飼いならしたのと同様に、ダンジョンで手に入れたゾンビ化のスキルかと」


「そんな無茶苦茶なスキルがあってたまるか! たとえあったとしてもこれほど大量のゾンビを作るとなれば膨大な魔力が必要になるはずだ。20万だぞ!? 冥王じゃあるまいしそんなことできるわけねえ! 」


 殺した敵をゾンビにして操るだぁ? 冗談じゃねえ! 魔人ごときがそんな力を持っているわけがねえ! 


「ですが現に大量のゾンビに谷にいる兵たちは全滅の危機を迎えています。同胞とガーゴイルのゾンビに対しては数で圧倒できておりますが、不意を突かれ弩弓も半分以上破壊されてしまっている様子。もしもこのタイミングでドラゴンが現れれば……」


「グッ……オイッ! 谷の兵はいい! ゾンビ化した同胞とガーゴイルを片付けドラゴンに備えるようアバドン族の兵に伝えろ! 」


 まさか本当にゾンビを作るスキルなんて物があるっていうのかよ!


 俺は半ばヤケクソに報告に来た兵に命令したあと、ナンシーを連れてテントを出た。


 そして翼を広げ親衛隊を引き連れ、山の頂上付近まで移動し終えた時だった。


 前方の山の影から、月明かりに照らされた3頭のドラゴンが現れた。


「あれはドラゴン!? オイッ! 3頭もいるぞ! 2頭じゃなかったのかよ! 報告と違うじゃねえか! 」


「申し訳ございません。恐らく後方に隠れていたか、新たに使役したのではないかと思います」


「クソッ! どっちにしろやるしかねえ! ガーゴイルを突入させ、体当りさせてドラゴンの動きを止めさせろ! アバドン族はドラゴンの頭上から急降下で翼を狙う! 背に乗っている魔人の術者の捕獲も忘れるな! 後方から来る飛空艦はドラゴンの後だ! ドラゴンに接近すりゃ魔導砲ってのはどうせ撃てねえ! ガーゴイルを盾に距離を詰めろ! 」


 俺はハルバードを掲げ、全軍にそう命令した。


 命令を受けた1万5千の同胞たちもハルバードを掲げ、ドラゴンへの恐怖を振り払うかのように唸り声をあげ飛び立った。


 用意した弩弓も使えず、ドラゴンが3頭もいるんじゃかなりの犠牲が出るがやるしかねえ。特にあの先頭の一際デカイ黒いドラゴンはヤバイ。あんなドラゴンは魔界でも見たことがねえ。


 クソッ! せっかく罠を張ったってのにゾンビのおかげで全て台無しだ!


「俺も出る! 親衛隊は続け! ナンシーはここで待っていろ」


「いえ、私もジャマル様と共に戦います」


「ナンシー……それでこそ俺の女だ。だが俺の背から離れるな。お前は俺が守ってやる」


 大剣を手に真っ直ぐ俺の目を見つめるナンシーに、俺は同行することを許した。


 さすがこの俺が一目惚れし、配下の者を手にかけてまで奪おうと思ったほどの女だ。これほどのいい女は魔界中探しても見つからねえだろう。


「はい。絶対に離れませんとも……」


「それでいい。ならドラゴン狩りといくか! まずはあの一番強そうな先頭の黒いドラゴンから狩る! 行くぞ! 」


『『『『『オウッ! 』』』』』


 俺はナンシーと残った300人の親衛隊を引き連れ、ガーゴイルを盾にドラゴンへと肉薄する同胞の後を追った。





 ——スイス アルプス山脈 シュヴァルツホルン アバドン族軍 副官 ナンシー ——




「な……何がどうなってやがる」


 同胞の後を追いかけていたジャマルが突然急停止し、愕然とした顔でそう呟いた。


 周囲を飛んでいた親衛隊や私も目の前で起こっている光景に理解が追いつかず、ただ呆然とその光景を見ていることしかできなかった。


 なぜガーゴイルが突然墜落したの? しかも数千匹が一瞬で……


 飛空艦による主砲の斉射を受けつつも、ガーゴイルが先頭の黒いドラゴンに肉薄したまでは良かった。けど、突然ガーゴイルたちがまるで糸の切れた人形のように墜落していった。


 ドラゴンがブレスを吐いたわけではない。そんな仕草は見えなかったわ。


 ではいったいなぜ?


 私がそう考えている間もガーゴイルが次々と墜落していき、そしてその上空にいたアバドン族の兵たちもガーゴイル同様に墜ちていった。その力の抜けようは、明らかに命を失っているようだった。


 なんとか得体のしれない攻撃から逃れようと回り込む兵もいたが、右側面から回り込もうとした兵は墜落し、反対方向の兵は二頭のレッドドラゴンによるブレスで焼かれていった。


 ガーゴイルという盾を失ったというのに、アドバンの精鋭たちはそれでも果敢にドラゴンへと挑もうとしている。


 その様子を見て私はあることに気付いた。


 あの黒いドラゴンの背に乗っている黒髪の魔人の男……あの男が手をかざすと広範囲の兵たちの命が奪われているように見える。その証拠にあの男が見ていない位置にいる兵は動けている。


 もしかして命を一瞬で奪うスキル? 


 そんな物が存在するの? でも死者に仮初の命を与えてゾンビを作ることができるスキルがあるくらいだもの。逆に奪うスキルがある可能性も否定できない。信じられないし信じたくないけど、現に目の前で多くの同胞がその命を刈り取られている。


 あれは駄目。ジャマルをあんな一瞬で死なせることは許容できない! それにこのままではジャマルの死に顔を見れず私も一緒に死ぬ! 私が利用したダロスも一緒に……


「ジャマル様! 恐らくあの黒いドラゴンの背にいる黒髪の魔人の仕業です! 手をかざした相手の生命を一瞬で奪うスキルを持っていると思われます! 」


 このままここで終わるわけにはいかないと、私はジャマルへ決死の思いで進言した。


「手をかざしただけで命を奪うだぁ!? なんだそのデタラメな能力は! そんなもんあるわけねえだろうが! 」


「現に目の前で精鋭たちが何もできず命を奪われているではありませんか! ここにいては危険です! 魔界へ退きましょう! 」


 私は目の前で起きている現象を理解しようとしないジャマルに撤退を進言した。


 黒い竜がこっちに気づく前に早くここから離れないと! 早くしないと私の復讐が!


「ふざけるなナンシー! この俺に魔界に逃げ帰れだと!? 四魔将であり、誇りあるアバドンの王である俺に逃げろというのか! 仮に逃げたとしてもバラン様と魔王様の使命を果たせなかった俺が生き残れると思ってるのか!? ほかの四魔将に滅ぼされるだけだ! 俺の領地も! 魔界で待つ領民も皆殺しだ! だったらここで戦って死んだほうがマシだ! 」


「ジャマル様! 通常ならそうなされた方がいいでしょう! ですが魔人はドラゴンを使役し死者をも操り、そして精鋭たちの命を一瞬で奪う力を持っています! 事前の情報とは大きくかけ離れた彼らの能力は、魔界の驚異となるでしょう。あのゾンビとドラゴンが魔界に攻め寄せてきたことをお考えください! これは魔界の存続に関わるほどの危機なのです! 先陣を任された私たちには敵の持つこの強大な力を魔王様に報告する義務がございます! それができ、魔王様にその言を信じさせることができるのは、四魔将であるジャマル様ただお一人なのです! ここは屈辱に耐えお退きください! あっ! いけない! 親衛隊よ! 盾になりなさい! 」


 私が必死の想いでジャマルを説得していると、黒いドラゴンと私たちの間に一瞬空間ができた。その時。ドラゴンの背に乗る男の視線がこちらに向いたことに気付いた私は、瞬時に親衛隊に命令し壁を作らせた。


 ギリギリだった。


 横一列に並びジャマル様の盾となった100ほどの親衛隊は、一瞬にして命を失い墜ちていった。あと一歩遅ければジャマルと一緒に私も……


「!? クッ……退くぞ! 残存の兵を呼び寄せ時間を稼がせろ! 」


 さすがに目の前で最精鋭である親衛隊が何もできず命を失った姿を見て、ジャマルもこのまま無駄死にはできないと考えたのでしょう。私の肩に手を回し魔界の門のある後方へと飛び立った。


 その後ろをアバドンの兵と親衛隊が盾となりながら続く。


 そう、それでいい。


 このまま数を減らしながら後方に進めばチャンスが必ず……

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