第25話 魂縛

 



『『Death』』


「うおっ! 『滅魔』! なんだよ待ち構えてたのかよ! ビックリした! 」


 俺たちが90階層のボス部屋に入ると、すぐに低くおぞましい声が聞こえた。そしてそれと同時に霧状の魔力の塊が二つ、もの凄い速さで入口に立つ俺たちへと襲い掛かってきた。


 俺はとっさに滅魔でそれを打ち消し、声のした方へ視線を向けた。するとそこには50階層のボスだったS-ランクのデュラハンロードが六体ほど盾を構えて並んでおり、その背後で二体のリッチロードがこちらに骸の腕を向けていた。


 まさか今のが即死スキルか?


 俺は先ほど聞こえた単語から、80階層のボスのリッチロードのステータスにあった即死スキルを思い出した。


 80階層では瘴気と共に現れた瞬間に魔力を抜いてスキルを封じたから、即死スキルは受けないで済んだ。70階層もそれ以下の階層のボスも全てこのパターンだったから、90階層もボスは瘴気と共に現れると思っていた。しかしまさか待ち構えていたとは。


 しかも部屋に入ってすぐに即死スキルを二つ飛ばしてくるなんて、普通のパーティだったらこの初見の攻撃で何人かやられていたかもしれない。


 確かこの即死スキルは、リッチロードとの魔力値のランク差により成功確率が上がるスキルだったと思う。基本として20%の成功率があり、ランクが下の者に対して1ランク毎に10%成功確率が上がっていくんだったな。つまりリッチロードはS+ランクだから、魔力値SS+である格上の俺には20%の確率で即死させることができる。Sランクのティナだと30%で、A+のリズとシーナとオリビアだと40%の確率で即死する。


 でもまさか霧状のスキルだったとはな。これじゃあアダマンタイトの盾じゃ多分防げない。霧の範囲も大きかったから、恐らく範囲攻撃なのだろう。ここに来るまでにやたらアダマンタイトの盾や鎧。そして素材をドロップしたのは、それで防げるとミスリーディングさせるためだったのかも。


 そのうえリッチロードを守るデュラハンロードの鎧と盾はアダマンタイト製だ。固定砲台としてスキル打ちまくる気満々だな。まあ魔素を介して滅魔を放てばそんな鎧や盾は無視できるけどな。とりあえずティナたちに一撃入れさせてから処分するか。



「コウ! 追加で何か来るわ! 」


「な、なんだか大きな瘴気が現れましたです。まさか……」


「ぎゃー! コウ! あの大きさはもしかしてアンデッドドラゴンじゃねえか!? 」


『『Death』』


「『滅魔』! と、とりあえず邪魔なデュラハンロードを倒すから、みんなはアンデッドドラゴンとリッチロードに一撃当ててく……オイオイ! ここでドッペルゲンガーも出てくんのかよ! 」


 俺がリッチロードが連発してきた即死スキルを打ち消すと、目の前にアンデッドドラゴンが現れようとしていた。


 それを見た俺はアダマンタイトの盾でリッチロードを守るデュラハンロードを無力化し、皆に一撃入れてもらった後にとっとと倒そうと判断した。しかし皆にそう指示しようとしたところで、左右の壁からそれぞれ10体のドッペルゲンガーが現れた。


 俺が舌打ちをすると、ドッペルゲンガーは瞬時に俺たちに化けて剣を抜き間合いを詰めてきた。


「くっ……左側は私が抑えるわ! ウンディーネ! 押し流して! 」


「右は私が! コウさんは即死スキルの相殺をお願いします! 『灼熱地獄』! 」


「臭え! コ、コウ! まずいぜ! このままじゃ乱戦になる! っと『光刃』! 」


「臭いですぅ! あっ! オリビアさん危ないです! えいっ! えいっ! 」


「コウ! ブレスが来るわっ! 」


 あ、こりゃ駄目だな。


 俺は異臭に顔をしかめながらドッペルゲンガーに対処する恋人たちと、目の前でブレスを吐こうと灰色の腐肉を見にまとったアンデッドドラゴン。そしてまたスキルを放とうとしているリッチロードを見て、それほど余裕はなさそうだと判断した。


 《ヴオォォォォ! 》


 《Death》


 《Dark Flame 》


「『滅魔』! オリビア! こっちに! 」


「はいっ! 」


「『結界』! 皆! この部屋の魔素を全て吸収する! リズとシーナは扉を閉めてくれ! 」


 俺は駆け寄ってきたオリビアの腕を掴んで背後に回し、全力で後方に向かって結界を張った。そして空間収納の腕輪からひし形の空のSS-ランクの風竜王の魔石を取り出し、地面に置いてから皆に部屋の魔素を吸収することを告げた。


「わかった! 」


「はいぃぃ! 」


「ウンディーネ戻ってきて! 巻き込まれるわよ! 」


「行くぞ! 『滅魔』! 」


 リズとシーナが後方の扉を閉めたのと、ウンディーネがティナの無限水筒に戻ったのを確認した俺は、魔石に手を置いて部屋内の魔素と、そしてそれに触れる魔物たちの体内から一気に魔力を抜き魔石へと流し込んだ。


 その瞬間アンデッドドラゴンとリッチロードの動きは止まり、デュラハンロードは膝をつきドッペルゲンガーたちは白い人形へと姿を変えていった。


「ちょっと加減し過ぎたかな? まあもう即死スキルとブレスは吐けないだろう。みんな! 遠距離攻撃を! 」


「まかせてちょうだい! ウンディーネ! 龍となり好きなだけ暴れ回りなさい! 『水龍の舞』! 」


 俺の合図にティナはウンディーネで巨大な龍を創り出した。水龍はデュラハンロードとリッチロードを吹き飛ばしながら部屋中を暴れ回り、最後にアンデッドドラゴンに体当たりして消えていった。


「よっしゃ! さすがあたしの彼氏だぜ! 臭えドラゴンにリッチども! 喰らいやがれ! 『光刃』 『竜巻刃』! 」


「汚物は消滅ですぅ! えいっ! えいっ! 」


 そしてリズは破邪の双剣から光刃をドッペルゲンガーへと放ち、竜巻刃でアンデッドドラゴンとリッチロードを切り刻んだ。そしてシーナも聖弓から、光の矢を立て続けに放っていった。


 そんな彼女たちの戦闘をリッチロードの動きを警戒しながら見ていると、背後にいたオリビアが申し訳なさそうに話しかけてきた。


「コウさん。私がいるために手間を掛けさせてしまい申し訳ありません」


「なに言ってんだよ。恋人のオリビアを守るのは当たり前だろ。さあ、オリビアもスキルを撃ってくれ」


 パーティの中で唯一魔素が無いと生きていけない体質であることに、申し訳なさを感じているオリビアへスキルを放つように笑いながらそう言った。


 別にまったく余裕がなかったわけでもないしな。ドッペルゲンガーは彼女たちで対処できていたし、魔素を介して個別に魔力を吸収すればアンデッドドラゴンとリッチロードたちを倒すだけなら余裕だった。


 ただ、魔素を介して個別に吸収するのはちょっと時間が掛かる。さっきは混戦になりそうだったし、面倒だから部屋の魔素ごと吸収しようと思っただけだ。それなら結界内の魔素は対象外だから楽なんだよね。まあ、あんまり使わない手だから、魔物の体内からの魔力吸収は甘かったけどな。でも室内の魔素だけならともかくこのクラスの魔物の魔石まで吸収すると、空の魔石がすぐいっぱいになっちゃうから加減が難しいんだよ。


「はい! 『灼熱地獄』 『炎槍』! 」


「よしっ! これで全員攻撃したな。もう面倒だから魔石の魔力を全部抜くわ『滅魔』んでもって……『滅魔』! 」


 俺は皆が経験値をもらえる権利を得たところで、魔石から部屋に魔素を戻した。


 部屋に魔素を戻しても、体内の魔力が無いからリッチロードやアンデッドドラゴンたちはまだ動けない。


 そして俺は集中し、魔素を介して室内の全ての魔物の体内の魔石から魔力を抜き大気に放出した。


 


 魔石から魔力を抜かれた魔物たちは、身につけていた鎧や杖を残して消滅していった。周囲には実体のあるドッペルゲンガーだけが転がっている。


「くあ〜臭え! 『竜巻刃』! たつま……おっと! 危ねえ。またやっちまうとこだった。次はコウに嫌われるかもしれねえからな。危ねえ危ねえ。よし、こんなもんでいいかなっと」


「ありがとうリズ。でも大丈夫だよ、そんなことでリズを嫌ったりしないよ。でもちゃんと前に言ったこと覚えてくれててありがとう。これからもそれくらい慎重にしてくれると嬉しいよ」


 俺はアンデッドドラゴンが消えた後に残った臭気を霧散させるために、スキルを連続で放とうとして思い留まったリズにそう言って笑いかけた。


「へへへ、当たり前だっての。あたしは失敗して成長をするタイプなんだ」


「失敗したことをポジティブに考えるのはいいですけど、リズさんは失敗する前にもう少しよく考えて行動して欲しいですぅ。やらなくていい失敗が多すぎですぅ」


「ケッ! 古代ダンジョンの最下層で武器も装備も無しで全裸で鎖に繋がれて、犬みてえに四つん這いになって散歩する命知らずの変態兎に言われたかねえっての」


 あ、また始まった。


 俺はリズとシーナのじゃれ合いに巻き込まれないよう、彼女たちからそっと距離を取った。


「あれは失敗じゃないですぅ! 計画された愛のプレイですぅ! それなのにいつもプレイ中にデュラハンを連れきて邪魔するのやめてくださいですぅ! 」


「ケケケ、刺激的な夜を望んでるようだから手伝ってやったんだ。感謝して欲しいくらいだぜ」


「それは違いますぅ! あれは来るかもしれない、見られるかもしれないというのが刺激なんですぅ! 本当に来たらそこでプレイは終了してしまうんですぅ! 」


「はいはい。もうそのくらいにしなさいな。リズ? 青白い光を放ってる宝箱があるわよ? あれってコウが言っていた最上級の宝箱じゃない? 」


 リズとシーナがじゃれ合っていると、デュラハンロードとリッチロードの装備と魔石を回収していたティナとオリビアが戻ってきて仲裁に入った。


 確かにリッチロードのいた場所に青白い宝箱がある。これは期待できそうだ。


「おっ!? ほんとだ! シーナ! やべえスキルや装備が入ってるかもだぜ! 開けに行こうぜ! 」


「はいです! 聖なるドレスアーマーがあるかもです! 兎もティナさんのようなカッコイイ鎧が着たいですぅ! 」


「ふふふ、リズさんとシーナさんは元気ですね」


「ほんと元気だよなぁ。しかし久しぶりに見るなあの宝箱。90階層で現れるとは思ってなかったよ。もしかしてここが最下層とか? 」


 オリビアに呆れた感じて返したあと、ヴリトラの宝物庫にあったのと同じ青白い光を放つ宝箱を見て、これで攻略したのかもと期待した。


「だといいんだけどね。でも残念ながら違うみたい。宝箱の後ろに階段があったもの。やっぱりここも100階層はあると思うわ」


「ウエッ……それだと91階層からは、アンデッドドラゴンとエルダーリッチがセットで出てきそうだよね」


 俺はティナの言葉に、恐らく次の階層から頻繁に出てくるであろうアンデッドドラゴンを想像してゲンナリした。


 ダンジョンはボスだった魔物が20階層先で雑魚として出てくる傾向がある。デスナイトしかりデュラハンしかりエルダーリッチしかりだ。順番的に恐らく次はアンデッドドラゴンなんだよな。デュラハンロードみたいに希少鉱石を大量にまとってないから、ほぼ間違いなさそうだ。


「ゾンビやグールのいた階層の時みたいな思いをするということね……」


「あれは強烈でしたね……」


「うん、気が重いよね」


 一応防護マスクを用意してあるんだけど、息苦しいし見た目は良くないしでみんな被りたがらなかったんだよな。結局あの時は普通のマスクをしてゾンビエリアを駆け抜けた感じだ。まあ上層だったし、たった2階層分だったから耐えられた。でもここから10階層は厳しいな。


「おーい! コウ! やべえ! このスキル書やべえって! それにこの指輪! あたしたち仙人になっちまう! 」


「コ、コウさん! これ! このスキル覚えてくださいですぅ! 」


「ふふふ、良い物が入ってたみたいね。見に行きましょ」


「そうみたいだね。どんなスキルだろ? 」


 俺はティナとオリビアと共に、二つの宝箱を覗いて猫耳と兎耳をピコピコ震わせているリズたちのもとへと向かった。




「ほらコウ! 見てみろよこれ! 」


「どれどれ? 」


 俺たちが宝箱の前に着くと、リズが興奮した面持ちで俺に宝箱の中を見るように促した。


 俺は少し屈んで青白い光を放つ宝箱とミスリルの宝箱を覗いた。するとそこには金色のスキル書と白い鎧と槍。そして停滞の指輪が二つに祝福と護りの指輪が三つずつと、ネックレスが六つに時戻りの秘薬が二本あった。


 金色のスキル書は飛翔や結界を覚えたスキル書と同じ色だ。ということはユニークスキルのスキル書ということだ。やっぱり大当たりだな。


 とりあえずスキル書から見てみるか。


 俺は槍と鎧も気になったが、金色のスキル書から鑑定することにした。



【魂縛のスキル書】


 効果:自身より3ランク下位の者の魂を強制的に縛り隷属化させる。魂を縛られた者は術者の命令に背くと魂を締め付けられ、この世のものとは思えないほどの苦痛と恐怖がその身に襲い掛かる。命令に背き続けると死に至る。


 備考:必要習得ランクS+



 うげっ! なんだこれ! 隷属の首輪のスキルバージョン? いや、もっとエグそうだ。


「これは確かにヤバいスキルだね……」


「だろ? かなりやべえよな」


「魂を縛られて感じる苦痛と恐怖ってどんな感じなのかしら? ゾッとするわね」


「こ、こんな恐ろしいスキルがあるだなんて……」


「だね。さすがにこのスキルは覚えたくないな」


 俺は身震いをするティナと青ざめているオリビアに、首を横に振ってこのスキルを覚える気がないことを告げた。


「う、兎に掛けて欲しいですぅ! 是非お願いしますですぅ! 」


「こんな魂を縛るなんてスキルは、怖くてシーナに掛けられないよ。お願いだから電撃で我慢してくれよ。ほんともうお願いします」


 俺は哀しいほど予想通りのシーナの反応に、手を合わせて泣きそうなるのを堪えながら頼み込んだ。


 こんなの好きな子に掛けられるわけがない。そんなことをしたら俺の心が死ぬ。


「ふえぇ……そんな顔をしないでくださいです……わかりましたです。今回は諦めますです……」


「リッチロードやアンデッドドラゴンを見ても、涼しい顔をしているコウをここまで追むなんて……ある意味凄いわね」


「コウさんのあんな悲しそうな顔を初めて見ました」


「コウを泣かすなよなシーナ。あたしだってさすがにこのスキルを掛けられたシーナを見たくねえよ。でもよコウ? シーナのことは置いておいてさ、これがあればたいていの貴族を隷属させられんじゃねえのか? 3ランク下ならS+の十二神将もいけるだろ? 帝国を意のままに操れるぜ? 」


「いやいや、帝国なんて興味ないからどうにかしたいとか思わないよ。それにさすがの俺もこれは抵抗あるよ。こんなスキル持ってるのを知られたら、余計悪魔だの魔王だの言われるだろうしね。俺はどちらかというと勇者って呼ばれたい派なんだ」


 こんなの物語に出てくる魔王が使うようなスキルだろ。隷属させてカラコンつけて『阿久津光の名において命ずる』とかやってみたい気もするけど、それはもう十代の頃に卒業したんだ。今やる勇気なんてない。もう俺はヤンヘルたちほど無垢じゃないんだ。


 だいたいこんなエグいの使ったら、地球の人間にも魔王とか呼ばれかねない。これは覚えちゃいけないやつだ。敵対した奴に言うこと聞かせたいなら、滅魔で倒して隷属の首輪をはめればいい。俺は恐れられるよりも、子供たちに憧れられる存在でいたいんだ。


「ふふふ、コウは私たちにとって勇者よ。何をしようと魔王だなんて思わないわ。でもコウが覚えたくないなら無理して覚えなくてもいいわ」


「残念ですけどコウさんが嫌だと思うことはして欲しくないです。そこに愛はないですから」


 え? まさかシーナは、俺が鞭で叩くことを俺が望んでやってると思ってるのか? シーナとは一度じっくり話し合う必要がありそうだ。


「コウさんが何をしようと私は受け入れられますが、無理に覚える必要もないと思います」


「まあコウが嫌だってんなら別にいいけどな」


「ありがとう。このスキルは封印しておくよ」


 俺はシーナとの話し合いは後にすることにして、とりあえずこの物騒なスキル書を空間収納の腕輪に投げ込んだ。


「それよりもコウ、ほかのも鑑定してみろよ。そっちもすげーぜ? 」


「ですです! 凄いのがありますです! ティナさんも鑑定してみてくださいです! 」


「あらそう? それなら見てみるわ」


「ああ、この槍とかかな? ん? この指輪に秘薬……」


 俺がリズとシーナの言葉に再び二つの宝箱の中を覗いてよく見てみると、真紅の宝石が埋まっている停滞の指輪や、その他の指輪の宝石が少し大きいこと。時戻りの秘薬の金色の液体が光を発していることに気がついた。


 俺はもしかしてと思いながらも、まずは槍から順に鑑定していった。



【破邪の槍】 伝説級


 特性:聖属性。魔力を込め投擲すると戻ってくる。貫通・自動修復。



【魔防の鎧】 伝説級


 特性:アダマンタイトの全身鎧。スキル無効化・軽量化・硬化・サイズ自動調節・自動修復・体温調節機能



【清浄のネックレス】×6


 効果:一定の範囲内の空気を清浄化(毒の無効化、無臭化)する。



【祝福の指輪(1等級)】×3


 効果:継続して傷が治る。大回復+疲労回復



【護りの指輪(1等級)】×3


 効果:敵の攻撃を自動で一度だけ1分間継続して防ぐ。再使用時間1日。



【停滞の指輪(1等級)】×2


 効果:老化速度が10分1となる。



【時戻りの秘薬(高級)】×2


 効果:飲むと30年若返る。



「うおっ! 出た! 1等級! それに秘薬に高級ランクなんてあったのか! これは大当たりだ! 」


 俺は初めて見た1等級のアクセサリーと、時戻りの秘薬に上位の物があったことに驚いた。


 アクセサリーは2等級があるんだから1等級もあるとは思っていた。実際ここに来るまでに通常のポーション以外は1等級があった。だからアクセサリーもいずれは手に入ると思っていたけど、やっと手に入れることができた。


 停滞の指輪は3等級で寿命が5倍で2等級で7倍だったのが、1等級で一気に10倍か。祝福の指輪の1等級も凄いな。祝福の2等級は確か中回復+疲労回復だった。怪我してないから怪我の治り具合はイマイチわからないけど、戦っても疲労はあんまり感じなかったから大回復ともなればもっと凄いはずだ。


 護りの指輪は今まで単発の攻撃しか防げなかったけど、1等級になると1分間バリアが張られるみたいだ。つまりドラゴンのブレスも防げるってことだよな。これは絶対ティナたちに装備させなきゃ。


 清浄のネックレスは毒を霧状に吐く魔物も多くいるし、なにより臭いを防げるのは嬉しい。これでもうアンデッドドラゴンが現れても大丈夫だし、口臭のキツいおっさんとも笑顔で話せる。


 しかしまさか時戻りの秘薬に上位ランクのものがあるとはな。通常の物だと1本で10年若返る物が、高級だと30年か。通常の秘薬はここに来るまで6本手に入れたから、【魔】の古代ダンジョンのと合わせれば11本ある。本当は12本だけど、俺が古代ダンジョンを出る前に1本は飲んじゃったからな。10代の身体サイコー。


 この分だと100階層でも手に入りそうだから、全員千年生きるのは確定だな。ティナの寿命までの700年くらい生きれればいいと思っていたけど、こうなったら秘薬が無くなるまで生きるのもいいかもな。確かにリズのいう通り仙人になれるな。


「な? すげーだろ? 2等級だともしかしたら足りねえかもって思ってたけど、秘薬の高級もあるしこれでティナと同じ時を生きるのは確定だな! 」


「ですです! オリビアさんもずっと一緒です! 」


「リズ、シーナ……ありがとう。これでみんなとずっと一緒にいれるのね。すごく嬉しいわ」


「シーナさん、私まで……ありがとう」


 リズとシーナの言葉に、ティナとオリビアは二人の手を握ってすごく嬉しそうだ。俺もティナを一人にしなくて済んで嬉しい。



 それから俺たちは装備を分け合ってから、ボス部屋でマジックテントを張って一晩過ごしてから帰ることにした。


 装備の配分は、清浄のネックレスはもちろん全員が装備した。みんなあの異臭を嗅がなくて済むって喜んでたよ。1等級停滞の指輪はリズとシーナにはめてもらった。俺とオリビアは2等級の停滞の指輪をはめた。時戻りの秘薬はみんなに2本ずつ配ってお互いの老化具合を見て飲むようにして、秘薬の高級はとりあえず俺が保管することにした。


 破邪の槍は投げたら戻ってくるのは面白いんだけど、誰も槍を扱えないから保留にした。当たらなきゃ意味ないしな。魔防の鎧はオリビアに装備させて、1等級の護りの指輪をティナとリズとシーナが身に付けた。最後に1等級の祝福の指輪は、前に出て戦うティナとリズとオリビアが身に付けた。


 指輪関係のアクセサリーは俺がみんなの指にはめることになっているから、一人ずつ左手の薬指以外の指にはめてあげたよ。ティナとシーナは嬉しそうに、オリビアは顔を赤くして俺がはめてあげた指輪を撫でていた。リズは顔を背けて素っ気なく手を出してきたけど、横目で指をジッと見てるのが可愛かったな。


 まあそんな感じで90階層のボスを倒し、お宝を手に入れた俺たちはマジックテントでお疲れ様会をやってこの20日間の戦いをお互いに労った。


 そしてみんなでお風呂に入って、ベッドでみんなで一緒に夜の運動をしてから眠りについたのだった。

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