ニートの逆襲 〜俺がただのニートから魔王と呼ばれるまで〜

第46話 施設

「姐御！ 」

「リズ姉！ 」

「りずねえたん！ 」

「おう！ お前ら元気にしてたか？ ずっとダンジョンに潜っててなかなか来れなくて悪かったな。今日からずっと近くにいるから覚悟しておけよ！ 」

「うわぁ！ 地獄のシゴキの日々がまた始まるー！ 」

「あっははは！ 体力作りをサボってないかしっかり確認してやるからな！ 」

「ふふっ、リズ姉に何かあったんじゃないかってみんな心配してたんです。それに昨日急に奴隷が解放されるってラジオで放送されたので、貴族にリズ姉さんが何かされてないかって話もしていました」

「サーシャ、心配掛けたな。ちょっと古代ダンジョンに挑んでてさ、あたしの元ご主人サマはお亡くなりになったんだ。ああ、この男はチキュウの人族でコウって言うんだ。めちゃくちゃ強くてあたしの命の恩人でありその……こ、恋人だ」

「「「は？ 」」」

「さ、サーシャ……オレの耳がおかしくなったのか？ あの姐御に恋人って……しかも人族て……」

「アルスだけではないです。私の耳にもそう聞こえました……いつもの見栄とかではないですかね？ 」

「オイッ！ サーシャ！ ぶっ飛ばすぞ！ なんであたしに恋人がいるのがそんな意外なんだよ！ お前らには色々あたしの経験談を話してただろ！ 」

「ああ、あの脳内妄想の……ぼべっ！ 」

「アルス！ ぶっ飛ばすぞ！ 」

「ぐふっ……も、もうぶっ飛ばしてるじゃんか……」

「リ、リズ姉さんなら恋人の1人や2人できて当然だと思います。ええ、それはもう」

「あたしは一途だからな。男はコウ1人で十分だ。2人もいらねえよ！ き、嫌われたくないしな」

「あ、はい……」

「あははは、仲がいいね。リズも嬉しそうだ。初めまして俺は阿久津 光だ。この世界の日本という国の出身だ。リズの恋人なのは間違いないよ。俺はリズが大好きだからね」

「ばっ！ コ、コウ！ チビたちの前で大好きとか……は、恥ずかしいこと言うなよな！ ったく！ う、嬉しいけど……」

「え〜……姐御が赤面とか初めて見たよ……これはマジなのか？ ……こんな乱暴な女をよく……ゴハッ！ 」

「アルス！ なんか言ったか！ 」

「まさか本当に？ あのガサツなリズ姉を恋人にでき……ギャン！ 」

「サーシャ！ 誰がガサツだ誰が！ 」

「リズ！ 子供に暴力はよくないよ。こっちおいで」

「あっ……うん」

「マジか……」

「完全に手懐けてるわね……」

　俺は再会した嬉しさから暴れまわるリズを制止して、隣にくるように言いリズと手を繋いだ。

　それを見た子供たちには驚愕の表情を浮かべた後に、俺を畏怖しているかのような眼差しで見つめていた。

　こんなにかわいいリズなのにな。みんな誤解しているよな。

　それにしてもたくさんいるな。まあ施設はここだけらしいから当然か。

　確か繁殖施設は戦闘に向いている種族が送られて、そのほかの子たちは孤児や一般の奴隷から預けられた子たちなんだったな。

　だから獅子とか虎とか強そうな種族が多いのか。

　昨夜はこのエルケの街の近くの森で野営をしてティナと4回ほどたっぷりと楽しんだあと、朝になって起こしにきたリズとシーナに、俺とティナが裸で抱き合って寝ている姿を見られて気不味い朝食を皆で食べることになった。

　食事中はリズもシーナも終始顔が真っ赤で俺とティナと顔を合わそうとしなくてさ、ティナは昨日肌を重ねたからか俺にベッタリくっついて朝食のパンからスープから全部食べさせてくれた。

　俺はデレまくってるティナが可愛くて、餌を待つひな鳥のように全部食べさせてもらったよ。

　その後は着替えるために部屋に戻ったリズとシーナの部屋にそれぞれお邪魔して、恥ずかしかったけどちゃんと今思っていることを正直に伝えることにした。

　2人に俺はティナとそういう行為をしたけど、リズとシーナともいずれしたいと思っている。それはティナと同じくらい2人が好きだからと真剣に話した。そしたら2人とも赤面しながら頷いてくれた。

　シーナは兎はコウさんのモノなのでいつでもって言うんだけど、モノじゃなくて大切な恋人だと言ったらさらに真っ赤になってうつむいて可愛かった。どうもシーナは支配されたい願望が強いように思える。

　まあこういうのは雰囲気とかタイミングだからね。ガッついてじゃあ今夜！ とか約束してもそういうのはあまりにムードが無いしな。もう10代の時とは違うんだ。ちゃんとリズとシーナのことを考えないと。

　それでも早くシーナのあの爆乳に顔を埋めたいし、リズの美脚も舐めたいしあのキュッと上がったお尻を直に触りたくて仕方ないけどな。

　そしてリズとシーナとそれぞれ濃いキスをしてから部屋に戻って着替えていると、ティナの部屋から3人がきゃあきゃあ言う声が聞こえてきた。

　俺はそれを聞いて気まずい空気が長引かなくてよかったと安心したよ。

　それからはテントの外に出てレミアやロイたちと合流しテントを収納した。

　みんなお風呂に入ってキレイになって、お腹いっぱいご飯食べたからかニコニコしていたよ。

　そんな上機嫌なみんなと歩いて、このテルミナ大陸の北東の半島にあるエルケの街にやってきたんだ。

　この街は皇家の直轄領で奴隷市場やオークション会場があり、そこに来場する貴族や商人を狙った商店が多くあるかなり大きな街だ。

　そしてその街の一角にエルフとダークエルフ、そして獣人の繁殖施設に教育施設が建っている。

　本来なら施設の入口には皇家の軍が歩哨に立って出入りを厳しく管理しているそうなんだけど、どうやら昨日勅令が発布されてから兵士たちは早々に帝都へと引き上げたそうだ。

　もうこの街や施設には街の警備をする少数の兵士しか残っていないみたいだ。

　俺たちが施設に向かう途中も、複数の魔導トラックに多くの荷物を載せて街を出ていく兵士が見えた。

　まあ皇家の直轄領なら直ぐに勅令に対応しなきゃマズイもんな。

　宰相も俺が確実にここに現れることはわかっていただろうしな。

　そんな話を施設に入って最初に通された獣人の施設長の部屋で聞いた俺は、勉強中だという子供たちのところへ行く前にティナとシーナとニーナたちに買い物を頼んだ。

　彼女たちには子供たちやニーナたちの着替えや生活用品を、今後のこともあるのでありったけ買ってくるようにお願いしたんだ。ティナたちにはマジックバッグ5つと金貨を大量に持たせたからしっかり買い占めてきてくれるだろう。

　首輪をしていないエルフと獣人に絡もうなんて奴はいないだろうけど、もしもの時はスキルを頭上に撃つように言ってある。近くだからすぐに飛んで助けに行けるしね。

　ティナたちは貴族の指示で奴隷が買い物をすることは、しょっ中あることだから大丈夫とか言ってた。けど俺はこの帝国の奴らなんか微塵も信用していないからな。とにかく何かあったらすぐに知らせてくれと言ったんだ。

　ティナとシーナはそう言う俺にクスりと笑って、俺の頬に軽くキスをしてニーナたちを連れて買い物に行った。

　なんかリズが顔を真っ赤にしてティナに色々頼んでたみたいだけど、下着とかかな？ 結構リズは見えないところをおしゃれにしてるんだよね。黒系の下着が多いのもポイント高いんだよな。

　ちなみにティナは水色や白が多く、シーナは白とピンク系が多い。

　それからはお勉強中の子供たちのところへ行って挨拶をしたんだけど、もうリズが大人気でさ。

　ほかの教室からも子供たちが集まってきて、あっという間に200人ほどに囲まれたよ。

　リズも嬉しそうに尻尾をブンブン振ってて、でも照れ隠しで年長の子供をバシバシ殴っててさすがに見かねて止めたわけだ。

「リズ。それじゃあ皆に説明して」

「ああわかった。オイ！ お前らは昨日をもって奴隷じゃなくなった！ ここにいるコウが皇帝のとこに乗り込んで力で奴隷解放を勝ち取ったんだ！ ラジオを聴いただろ？ 外を見ただろ？ この街はもう奴隷の街じゃないんだ。だからあたしはお前らを迎えにきた！ 帝国人のいない土地で一緒に暮らすためにな。施設長も先生も一緒だ！ 成人するまで面倒を見てやる！ 成人したら奴隷としてではなく、自由に生きていい！ 働く場所も住むところも、全てここにいるあたしの恋人のコウが面倒見てくれる！ もちろんあたしとシーナにこの施設出身のニーナたちもだ！ だからこの街を出るぞ！ あたしについてこい！ 」

「「「「 う、うおおお！ 」」」」

「「「 きゃああああ！ 」」」

《 皇帝と戦ったの！？ 》

《 あの恐怖の皇帝と！？ 》

《 ありえねー！ でも昨日確かに奴隷解放とかラジオで言ってた 》

《 奴隷じゃなくなるってどういうことになるの？ どうやってご飯食べるの？ 》

《 人族みたいに働くんじゃないか？ んでお金もらえるんじゃないか？ 》

《 ねえモモはわかった？ 》

《 よくわかんなーい。でもりずねえたんといっしょにいたい》

《 そだね。りずねえといっしょにいれればいいよね 》

　まあほとんどの子は奴隷解放とかよくわかってないみたいだ。

　施設長と教員だってイマイチ実感が湧いてないみたいだしな。

　それになぜこの街から出るのかもわかっていないだろう。

　ここは皇家の直轄領だから、子供たちが付いてこなくても生活の保護は受けられると思う。

　けれどこの施設の子たちはリズの弱点だ。なら多少強引にでも連れ出したい。

　まあ連れ出した以上、俺はこの子たちを食べさせてたくさん遊ばせてやるさ。子供らしくね。

　しかし300人はいる子供を預かるのか。乳児もいるみたいだし桜島でしっかり生活基盤を作らないとな。

「リズ、みんなに荷物をまとめるように言ってくれ。俺は寝具を回収してまわるから」

「ああ、それじゃあお前ら！ 今日の勉強は終わりだ！ 急いで自分の荷物をまとめろ！ 施設長にはマジックバッグを複数渡すから備品なんかを全部収納してくれ！ 行動開始！ 」

「「「「「 はーーい！ 」」」」」

　それからは子供たちがまるで遠足に行くかのようにワイワイと荷物をまとめ始め、リズはその荷物に子供たちの名前の札を貼ってマジックバッグにしまっていった。

　俺は大広間に並ぶ子供たちのベッドごと寝具を回収し、施設に設置されている魔導湯沸かし器や厨房の魔導コンロなどを根こそぎ回収した。

　キッチン以外は風呂もトイレも兵士用のマジックテントでしばらく代用できるからな。

　大量にご飯を作れる厨房機器は必須だ。

　それからしばらくするとティナたちが無事に買い物を終えて戻ってきた。

　ティナたちはクッキーなどお菓子も大量に買ってきていて、ニーナやレミアに子供たちへと配らせていた。

「ティナとシーナは付いてきてくれ。忌まわしい繁殖施設に行く」

「ええ、姉さんたちはきっといきなり首輪を外されて途方に暮れてると思うわ」

「先輩たちもですぅ」

「無理やり子作りさせるとかとんでもねえことするよな帝国は……」

「今までは仕方ないと思ってたけど、昨日コウとその……してみて本当に可哀想に思えたわ。好きな人と肌を合わせる幸せを知ってしまったら、好きでもない人とするなんて絶対イヤだもの」

「ふええ！ ティナさんオトナな発言ですぅ！ 兎にはまだわからないですぅ！ 」

「一度外で色々経験した女性が、好きでもない人とするのは相当な苦痛だったと思うよ」

　本当にとんでもない施設だ。人を家畜のように扱いやがって。でもそれももう終わりだ。

「ただこう言ってはなんだけど、私たちエルフは長寿だから無理やりそういう環境でも作らないと子供を作らないのよね。エルフの男性はなんというか人族よりそういう方面に淡白だから……」

「あ〜長寿の弊害か。でも女性は淡白なようには見えなかったけどな。昨日4回目なんてティナの方からまたがってきて……」

「きゃーきゃー！ ちょっと！ シーナが聞いてるじゃない！ もうっ！ 恥ずかしいわ……で、 でもあんなに幸せな気持ちになれるなんて、今まで知らなかったことを後悔したわ……コウ以外となんて想像もしたくないけど、もっと早くコウと出会いたかったと思ったもの」

「ふえっ！？ ティ、ティナさんダイタンですぅ！ う、兎はもう……ふええ！ 」

「うふふ、シーナもすぐにわかるわ。コウが教えてくれるわよ」

「ふ、ふえぇぇ……コ、コウさんと兎が……コウさんと……」

　シーナが俺の腕を抱きかかえながら、真っ赤になった顔と赤い目をウルウルさせて俺を見上げている。

　俺はシーナのうさ耳と頭を撫でながら下半身に血が集まるのを感じていた。

　ああ……シーナかわいいなぁ。

　しかしもっと俺と早く出会ってシタかったとか……こんなにエルフが積極的だったなんて……うん、今夜もティナとたくさん愛し合おう。

　おっと、これから行く施設のことを考えたらこんなところで興奮するのはヤバいな。この人族何を期待してんだとか、そういう目で自分たちを見るのかよとか嫌悪されてしまう。

「俺は出会えただけで幸せだよ。それよりエルフって何人くらいいるんだ？ 」

「ふふっ、私もよ。エルフの数はどうかしら？ 風と水の4つの里を合わせても7千人かそこらじゃないかしら？ ダークエルフはもっと多いと思うわ。エルフほど寿命が長くないからエルフよりも子供ができやすいのよ」

　無理やり子作りさせてもそんくらいしかいないのか……エルフはやっぱ子供ができにくいんだな。

　確か寿命はエルフが700年でダークエルフが500年だったか？ でも施設を作るくらいだから、ダークエルフも魔人よりは出生率が低いんだろう。そしたらダークエルフの数はエルフの3倍くらいかね？

　それでも1千万はいるという獣人に比べればかなり少ないよな。

　俺たちはそんな事を話しながら、まずはエルフの繁殖施設へと向かって歩いて行った。