第13話  悩める鈴木さんと金髪少女と先生 その3(全14話)

鈴木さんが生徒会室に向かってから結構な時間が経っているような気がする。


そろそろ職員室に戻って視聴覚準備室の鍵を借りてこないといけないな。


「よし、先生はそろそろ職員室に戻っていろいろと準備をしないといけないので行くことにするけど、二人はあんまり遅くまで残ってちゃだめだぞ」


教師の威厳をいかんなく発揮していると


「先生、ソフィーと一緒に写真撮ってくれてありがとうございます。あんなにたくさん連射するとは思わなかったけど、嬉しかったです。また二人の写真撮ってくださいね。約束ですよ。では、私も部活に行ってきます」


「おう、また撮ってほしい時はいつでも言っていいからな」


「先生の写真を撮る才能に脱帽しました」


「先生の腕じゃなくてスマホの性能が凄く良いのと、モデルが二人とも美しく輝いているからだと思うよ」


齋藤さんはソフィアさんに抱き着かれた時と同じ角度で照れながら、内腿を的確に蹴り続けてきた。


陸上は総合格闘技のための基礎を作るためにやっているんじゃないかと思うくらい、正確に同じ個所を蹴り続けられた。


「ナナちゃん、そんなにマサ君先生の足を蹴っちゃだめだよ。怪我したら陸上部の活動できなくなっちゃうよ!!」


ソフィアさんは時々心配する方向性を間違えてしまう癖があるのかもしれない。


いや、これはソフィアさんなりの冗談だと信じておこう。


僕の可愛い生徒たちはきっと優しい人しかいないはずだから。


齋藤さんは自分の席に置いたバッグを持ってくるとすれ違いざまにとても小さな声で


「先生、写真ありがとうね。またお願いします」


と言った後、ソフィアさんに手を振って部活に向かっていった。


やっぱり僕の生徒たちはいい子ばっかりだな。



うんうんと一人で納得していると不思議な生物を見つけたような顔でソフィアさんが訪ねてきた。


「先生、なんか、ニヤニヤして気持ち悪いよ。ナナちゃんに何か面白い事言われたの?」


「面白い事ではないけど、良い事は言われたよ」


「そうなんだ、マサ君先生は若い女の子なら誰でもいいんだもんね」


そう言って教室を飛び出したソフィアさんは廊下に出たところで立ち止まって振り向くと


「私もまだまだ若い女の子だから大丈夫だね」


そう言って齋藤さんと一緒に写っていた写真よりもいい笑顔で真っすぐに見つめてきた。


ちょっと引っかかる言葉ではあるので、廊下には誰もいないといいな。

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