第10話 出発

洗礼式から2年という猶予をもらい、かーさま、とーさまが魔法、マナー、商業、経済、と毎日厳しく教えてくれるようになった。





あのあまあまかーさまは、厳しく接することを渋っていたが、とーさまの「あの子は将来有望だ。ここでつぶすのはもったいない。」という説得により、レッスンの時だけなら、と了承していた。とーさまがここまで他人をほめるというのは珍しいことなのだという。





そして、なぜこんな普通の商会の娘がここまでよい、下級貴族のような教育を受けられ、ているのかというと、かーさまが元貴族令嬢だからなのである。


下級貴族で、10人兄弟の末っ子だったために、とーさまと恋愛結婚できたらしい。聞いた時にはさすがに驚いた。





そんなこんなで1年半。あと2か月で誕生日&国王様とご対面の日となる。


回避方法を考えて思いついたのは





①洗礼式の魔測定が間違っていた、故障していた、ということにしてもう一度隠蔽を強くしたものでやり直す。





②重い病にかかる





③家出をする





……碌なのがない





①が一見よさそうに思えるが考え付いたのが5つの属性の魔法を見られた後だった。時、すでに遅し。





②は家族をだましきれない。お医者様とか(医学は発達していないが、回復魔法とかでやってるらしい)呼ばれたら困る。前日にかかっても延期になるだけ。その場しのぎ。





③は、出て行ったところで生きていくすべがない。命がけ。








天才と呼ばれていたが、しょせんこんなものなのか!?





(……天才といわれないようにするのではなかったのか?天才のプライドみたいに聞こえるのだが。)





あ、あれ……。


まぁ、できなさすぎるというのも自分に嫌気がさす……。





(難しいものだな。人の心は時として理解しにくいものがある……。) 





「エレナちゃん、いるかしらー?」





かーさまの言葉の伸びがいつもの”~”ではなく、しっかりとした伸ばしであることに違和感を覚える。そういう時は、決まってよくないお知らせがあるのだ。





「かーさま、どうされたのですか?」





「前におばあ様のことは知っているかしら?」





「はい。会ったことはないですが、何度かかーさまからお話を伺っていましたから。」





「実はね、おばあ様にエレナちゃんのことは手紙で知らせてあったのよ。そうしたら、ぜひ会ってみたい、と言われたの。」





かーさまにとってはそこまでよくないお知らせではない。


私にとっては、おばーさまにまで広まっていたことがよくないお知らせである。


しかし、かーさまは、むしろ知ってほしいと考えているのだ。





「それでね、おばあ様の住んでいるところに、お泊りに行くことになったの。馬車で5時間くらいのところで、何日もかかるような旅にはならないけれど、森を抜けたり、がけにかかる橋を渡ったり、とにかく危険な道なのよ。おばあ様、隠居したらそれまでの別荘に住むと言い出してね…。」





かーさまが遠い目をしている…。





「本当なら私も一緒に行きたいのだけれど、出発の指定日に、王宮の方との打ち合わせのようなものがあるの。それでね、申し訳ないのだけれど、一人で行ってもらうことになるのよ…。」





あー。それでかーさまはおかしかったのか。は〇めてのおつかい、みたいな?





「大丈夫です、かーさま!」





精神年齢24+6歳・魔力人外だからね…








3日後、めちゃくちゃ心配するかーさまに見送られて、馬車は出発した。








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目指せへいおんライフな私の異世界物語!?波乱万丈はお呼びではありません! おいしいクルミ @oisiikurumi

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