第3話神お墨付きの暇解消人間になっていたりした
英理菜が天界から消えた後、ファラウザーは盛大なため息をついた。今回の件は完全に自分のミス。大神から何を言われるものやら……
「下神に落ちないはずじゃよな?マニュアル道理じゃよな?」
つぶやいた声は、誰もいない空間によく響いた。
・・・否。もう一人いた。
「なにをやらかしたんだ」
今一番聞きたくなかった声を聞いてしまった。まるで図ったようなタイミングだ。きっと出てくるタイミングを考えていたに違いない。
「だ、大神様っ!!」
にやり、と笑った顔は目が死んでいる。
「ずいぶんあわてているようだがどうしたのだ?」
に、逃げたい。この場から消えたい……
大神はすべて知っているのだろう。先のやり取りも聞いていたに違いない。
「大神様が知っているとおり、かと…」
「そうだな、では、お前はなぜあの人間にあれが落ちたのか知っているか?」
偶然ではないのか?
「たまたま落ちた場所にいたからではないのですか?」
「動揺してあの人間の観察をしていなかったか……。はぁ、あきれたものだ。あの魔力は、本来ならあの人間の5000キロメートルほど南に落ちるはずだった。しかし直前で急に曲がったんだ。」
「な、なぜ…?」
「あの魔力があの人間に反応したからだ。あの人間はうちに力を秘めている。あの世界では異端といっていい。チキュウは魔力、魔法、スキルの類のない、科学によって発展させた世界だということは知っているだろう?当然そこで生まれたものはその類の力は持っていない。だが、あの人間だけは違う。チキュウにないはずの力を持っている。他に魔力のないところに魔力を持っているものがあったとしたら、当然そこに魔力はひきつけられる。」
「しかし、英理菜殿はあの世界でそのような力を使ったことがないはず…」
「あたりまえだ。空気中の魔素が0に近いところでは使えないだろうが。その力があの世界で解放されることはないが、それらのある世界に行けば解放されることになる。」
「なるほど…」
「まったく、少しは頭を使え、頭を。こんなものでも上神になれるのだから今後の天界が心配だな。あと数百億年でほろいていてもおかしくはないかもしれないな。」
ぐうの音も出ない。上神になって3千年。上神の中では1番の若手。経験不足もあるが、もともと一つのことに集中してしまうとほかがおろそかになってしまう自分の性格をいやというほど理解はしている。
尤も、直そうにもなかなか直せないのだが…
「あの人間は、少し普通ではない。お前の与えた力も少しだったが、元ある力が大きいためににプラスされれば影響力を持つだろう。よって、あの人間の様子を見守る必要がある。」
「そこまでするのですか?」
「何を言う。私たちは暇だ。下神・中神は1か月に何回も活動をしているが私たちはどうだ?はっきり言って退屈だ。」
「???」
「あの人間は少し面白そうじゃないか。今回の件だけは誉めてやろう。これで何年かは退屈しなさそうだな。」
どうやら今回の件では起こられるどころか褒められるらしい。そして、英理菜殿は面白いしい。
確かに急にここにきて死んだといわれても騒がなかったしな。むしろ私よりも落ち着いていた。
こっちはこの後にどんな罰が待ち受けているかとひやひやしていたというのに……。
大神様が面白いというのだ、私も見守っていようではないか。
こうして本人の知らぬ間に英理菜の”普通”は打ち砕かれたようだった。
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