144話 出撃!

またまた時間軸は少々変わり、ソフィアとさくらが村長宅へと姿を消した後。マリアとボルガ―サイドの出来事。


カチャカチャと整備を続ける2人。と、ボルガ―は何かに敏感に気づきマリアに忠告をする。


「お嬢。そろそろ来ますぜ」


「え、もう? わかった準備するね」


平静を装い荷台へ乗り込んだマリアが隠していたものから布を取り外そうとしたその時だった。


「よお、工房の。機動鎧を貰うぜ」


どこからともなく現れたのは悪人面した盗賊達。出るわ出るわ30人?40人?いやもっといる。


それを見た村人の何人かは逃げようとするが、その盗賊に押し返され、あっという間に荷台の前に移動させられた。ボルガーはそんな彼らを庇うように前に出てドスの効いた声で威嚇する。


「なんだぁ?てめえら…」


およそ職人に相応しくないような、いや寧ろ血気盛んな職人に相応しいともいえる声に数人怯むが、すぐに調子を取り戻す。


「俺達の仲間がこの村の色んな場所で人質をとっている。下手に逆らわなければ無事に解放してやるよ」


ジリジリと迫ってくる彼ら。それに押されるようにボルガ―も下がる。そして荷台にぶつかるまで下がった時、マリアが大声をあげた。ただそれは悲鳴ではなく―。


「皆さん!急いで荷台に乗って下さい!」


村人達へ号令をかけたのだ。


既に逃げ場がない村人達は慌てふためきながら乗り込む。逃げられてしまうと思い込んだ盗賊が数人急いで駆け寄ろうとするが…。


「ボルガ―!なんとかして!」


「あいよお嬢!」


マリアの合図にニヤリと笑ったボルガ―は荷台に立てかけておいた自前の武器、鎖鉄球を手にする。そしてそれを勢いよく振り回し始めた。


ブンブンブンッ!


その勢い凄まじく、思わず足を止める盗賊。そこに向けて―。


「ぜりゃあ!」


ビュウッ! ドガァッ!


重たい鉄球がぶん投げられた。


「ぎゃあ!」


直撃を食らった盗賊は真後ろへ吹っ飛び昏倒。一瞬沈黙が流れるも、ハッと気づいた盗賊の1人が鬨の声を挙げる。


「ぶっ殺せ!!」


「「「うおぉおおおおおお!!!」」」


一斉に襲い来る盗賊達。だが―。


「これでもちょいと前まで『鎖鉄球のボルガ―』で名が通ってたんだぜ!食らいな!」


ジャリリリ!ドガガッ!!


「ぐえっ!」

「ぎゃうっ!」


ボルガ―の鉄球が次々とヒット。1人、また1人と潰されていく。


だが盗賊の中にも賢しい者がいるらしく―。


「先に村人から殺せぇ!」


誰とはなしに飛んだ声に反応し、幾人かがボルガ―を無視。荷台に寄ろうとする。だが―。


「近寄らせませんよ~!お母さん特製!『シールドシステム』起動!」


マリアは布で隠していた機構をカチリ。すると…。


ブウウウウン…!


なんと荷台を囲むように半球型の障壁が発生。あまりに突然だったため…。


「ぶへ!」


「ぐへっ!」


そのままべちゃりとぶつかる盗賊達。潰された蛙のような声を挙げた。その様子を見て救出された村人達はほっと胸を撫でおろすも、すぐに心配事を思いだしマリアを抑える。


「私達の家族が捕まっているんです!どうか穏便に…!」


「ふっふ~大丈夫ですよ。仕込みは既に済んでます!なのでご安心を! それでは私は次の準備に入らせてもらいますね」


そう村人達を宥め、マリアは他に隠していたの荷を解くのだった。




「くっ…こうも数が多いと辛いぜ…! お嬢!まだか!?」


流石に数十人vs1人では分が悪すぎである。焦燥感がこもった声でボルガ―は背後の荷台へ声をかける。


「お待たせボルガ―! 準備できたよ!」


中から聞こえてきたのはマリアの返事。だが、妙にくぐもっている。一方その荷台に避難している村人達はマリアの変わり果てた姿に大口を開けて驚いていた。


「みなさん!一時的に障壁を消します。その間は危険なので体を低くしておいてください!」


マリアの喚起に慌てて身を守る村人達。それを確認すると、彼女はシールドシステムのスイッチを押した。


ブウウウウン…と音を立て、解除される障壁。代わりに姿を現したのは…。


「一時的にシールドシステムを解除、確認。各部位の運動性、抜群。視界、良好!『特製機動鎧』、マリア出撃!!」


ドンッと音と共に飛び出したのは子供サイズの機動鎧。ただし、農具や力仕事で使われるものではない。専用のカラーリングと装甲、兵装が施されたマリア特製の「戦闘用」機動鎧だった。


「ボルガ―!交代!」


「任せたお嬢!」


タッチを交わし、ボルガ―は荷台へと入り障壁を張り直す。


「さあ、行きますよ~!」


ギュイギュイギュイイイ!と音を立て、マリアが駆る機動鎧は動き出す。どうやら足裏に車輪がついているらしく、ローラースケートの要領で移動を開始した。


「どーん!」


ドゴォ!


「どーん!!」


バゴォ!


「どーん!!!」


バシィイン!


勢いよく向かってくる鎧に次々と跳ね飛ばされる盗賊達。暴走車の如く手が付けられない。


「乗ってるのはガキだ、数人がかりで止めちまえ!」


誰かの指示を聞き、力自慢らしい体格のよい盗賊数人が囲んで無理やり取り押さえようとするが―。


「効きませ―ん!!」


ブオン!!


「ひぃっ!」

「わああっ!」


なんとそんな相手を全員勢いよくぶん投げてしまった。


「さあ、次は誰ですか~!!」


次の獲物を見定めた闘牛のように、彼女はまたも勢いよく動き出した。



周囲は阿鼻叫喚。たった一台のロボットにより混沌の中。そんな折、村長とその家族を連れたさくらとソフィアがその場へ合流した。


「あれが…例の…!」


「そう!マリア専用特殊兵装装備の特製機動鎧!いい活躍っぷりね!流石我が娘!」


ソフィアが自慢げになるのも道理。そちらに注目が行き過ぎてさくら達には盗賊が一切襲ってこないのだ。危なげなくボルガ―が守る荷台に着くと、ソフィアはそのまま唯一残っていた何かの布を剥がす。現れたのは…勿論機動鎧。ただし、マリアとは全く違うカラーリングと形、兵装である。


それをいそいそと着こむソフィア。


「さくらちゃんはここで休んでいて。後は私達が倒してくるわ」


有難い申し出だが、さくらは首を振る。ここまで来たら自分も戦いたい。


「そう?じゃあボルガ―、さくらちゃんの援護に入って。村長さん、すみませんが私達が外に出たらそこのボタンを押してください。そうすれば再度障壁が張られますから」


こくこくこくと勢いよく首を振る村長に笑顔を見せ、フルフェイスの兜を被り障壁を解除するソフィア。と、さくらはその機動鎧の背についているとある物に目がいく。あれはもしや…いやしかし…だけどどう見ても…!


「よし、一時的にシールドシステムを解除、確認。各部位の運動性、抜群。視界、良好!バックパック、正常!『特殊機動鎧』、ソフィア出撃する!!」


やはり…!その背についているのはよくロボットアニメで見かけるようなジェットパックである。これも竜崎の入れ知恵なのか。そんな質問を投げかける暇もなく―。


「点火!」


ボオオオオッ!ドオッ!!


機動鎧を纏った彼女は空へと飛びあがった。

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