109話 代表戦⑧
「協力…!?」
思わぬ提案を受け、さくらは惑ってしまう。それを見て、鳥人の子はさらに一押しを加えてきた。。
「予選にもいただろ?裏で手を組んでいた奴。本戦でも当然禁止なんてされていない。まあお前達は開幕それに狙われた側だが…。エルフの弓術は俺の様な鳥人には厄介極まりないからな。一緒に倒そうぜ」
現状、自分達学園側の戦力は低下している。リカバリの時間を確保するためにも、追加の戦力はぜひとも欲しいところ。まさしく垂涎ものの提案だった。
どうしよう。受けるべきなのか。葛藤しながらメストの方をむくと、彼女は相手の攻撃を警戒しながら諭してくれた。
「さくらさんとクラウスくんの判断に委ねるよ。ただ、周りに気を使って自身の気持ちを隠す必要はないさ。思うままに答えて」
「自分の気持ち…」
そう言われ、少し考え込む。確かにこのチャンス、逃すのは勿体ない。でも…!
「お断りします!」
あまりにも無謀な回答だということはさくら自身にもわかっていた。だが、純粋に嫌だったのだ。エルフのあの子、副隊長妹は代表戦開幕前に丁寧に挨拶をしてくれた。そして副隊長自身も見に来ている。そんな状況でこちらがズルをするわけにはいかない。
クラウスもそれに同調した。
「俺も、断る。さっきはお前に助けてもらった立場だが、その要求は飲めない。ジョージ先生の弟子として、正々堂々戦いたいんだ」
「えー。甘ちゃんだな。それで負けたら意味ないだろうに」
不満を露わにする鳥人の子に、さくらは言い返した。
「それでも、です。そんな手段で勝っても嬉しくないんです!」
と、獣人の子が鳥人の子に近寄ってきた。
「おい、やっぱ駄目だわ。エルフの連中からは拒否られた」
「まー無理か。気高い連中だからな。こっちも駄目だ、弱っていても学園代表。意外としっかりしているよ」
「…え?」
さくらは彼らの会話が理解できなかった。そんな中、一歩引いて様子を見ていたメストが答え合わせをした。
「なるほど、エルフ達の方でも何か話し合っていたと思ったら、双方に共闘を持ち掛けていたんだね」
「は…?」
唖然とするクラウス。様子がおかしいと気づいたエルフ達も様子を窺いに来た。
「上手くどっちかに取り入れれば、その分楽に戦いが進められるからな。1つの策略だ」
獣人の片割れの言葉を聞き、彼らも開いた口が塞がらない様子。
両陣営を引っ掻き回した彼ら。それが今や双方から睨まれる事態に。つまり、共通の敵となったということ。副隊長妹とさくらは目だけで会話をし…。
「『炎の矢』!」
「火の精霊!」
獣人二人に向け、一斉に攻撃を放った。
「あっぶな!おい!なんで火ばっか撃ってくるんだよ!獣だからってか?いやどの種族だって基本火は怖いだろ!せっかく整えた尻尾が焦げる!」
いやまあ確かにその通りではあるのだが。他の子も参戦し、火の矢火の魔術は撃たれ続ける。周囲は燃え盛り始めた。
「アチチ…予定通り、撤退だな。他を探しに行こう」
「んだよ。結局学園の一人を助けただけじゃないか。骨折り損だわ…」
毛や羽に火がつかないように、彼らは急いで逃げていった。
「さくらさん、邪魔が入りましたがこれで元通りです。勝負いたしましょう!」
「うん!」
エルフは矢を番え、こちら側も武器を構える。いざ尋常に―!
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