兄弟〜二人は両片思い〜

七嶋 櫂

プロローグ

誰かを好きになるという事を知ったのは、ついこの前だ。

その人の隣にいると、頭の中が少しポワポワとする感覚。

その人の暖かさを感じると、鼓動が早くなる感覚。

その人の隣にいて、その人を守りたくなる感覚。

これを全て知った。

でも、その恋は報われるようなものではない気がした。相手が男だからではない。相手が兄弟であるからでもない。

相手が、弟の直哉が、自分に対して恋愛感情を抱いているとは思えないから。だから、この恋は報われないかもしれない。


***


好きになる感情は色々な本に書いてあったし、理解しているつもりだった。

でも、自分の知っていた『好き』と、自分の体験した『好き』は全く別物だった。

でも、自分の好きはちゃんと届くのか、受け止めてもらえるか。それだけが心配だった。

BL小説だと、相手からの愛をちゃんと受け入れてくれるけど、それが現実の恋も同じかどうかなんてわからない。

それに、この感情が原因でこれ以上ハルちゃんを困らせたくない。

だから、もし、遥希が無理だと言うなら、この想いは永遠に心の奥底の深く深く沈めて、出てこれないように封印しようと決断した。

した。

でも、多分、その封印は不完全なものになって、いつかまた浮上してくるだろう。

その時は絶対に、ハルちゃんに迷惑をかけないようにしなきゃ。


二人の『好き』と言う糸が、結われて一つになるまでの話。

そして、その二人の先の話。

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