アースティア大戦史・歴史紀行・第12回

アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月25日。


 この日、コヨミ皇国の皇都である星都市、星都城ではコヨミ皇国の国家の行く末を決める最後の御前会議が開かれて居ました。


 力仁国皇を前にした主戦派と講和派と言った二大派閥は、激論を交わすこと、一月余り事です。


 遂に最後の結論を出す決定的な出来事は日本国使節団の到着であったと言います。


 この頃のコヨミ皇国は、日本国と地球系転移国家諸国の出現により国内情勢と国論が真っ二つに割れていました。



 主戦派と呼ばれる者達は、ローラーナ帝国の属国か、又は支配下に置かれるの為らば最後の一兵に成るまで戦うと言う物でした。


 コヨミ皇国と皇室に忠義的な派閥で構成される中で、その筆頭人物として名高った足柄一葉を筆頭にして、徹底抗戦だけを主張する猪集団だったが、日本と転移国家諸国が現れると、それまで唱えていた戦争一辺倒の政策を転換する事と成ります。



 この時の力仁国皇は、日本国を迎えるのに必要な万代港の港湾の設備の改修と皇都である星都市まで街道の改修を日本主導で、日本式に行う事を国皇権限で認めると関係各位に通達をして居ました。




 そして、国内の講和派と主戦派、それに中立派を集め、最終的な国論を纏め様とする判断材料とする積りで居たのです。


 それら現実論的に事実を反戦派閥たる講和派に見せ付ける事で、ぐうの音も出させずに、不穏な言動や行動の目立つ諸侯の動きを押さえるか、拘束する積もりでも居たのです。




 つまり、この御前会議は、皇国に措ける不穏要素の目立つ人物を一斉掃除する絶好の機会で有るのだ。






 そもそもコヨミ皇国の国内が、此処まで御前会議が拗れるのは、帝国との外交政策に措いてコヨミ皇国内には、二つの勢力が有って、コヨミ皇国は二つに割れて居るのが原因と言うの先に説明した通りです。




 講和派と言うのは、コヨミ皇国の西側と最前線の北西に領地を持ち、帝国と貿易を通じて、帝国とは多少の国交の有る講和派の藩主達。



 それに対して主戦派と言うのは、東と南、南西と北東に領地があって、帝国に対して誇りと独立を守ろうと言う主張する藩主達の事である。




 しかし、そのどちらにも付かない各地で日和見をしている中立派の藩主も居るが、最近に成って中立派閥の藩主達の風向きが変わりつつ在りました。



 その切っ掛けと成った龍雲海沖海戦が起こり、その後、日本国へと渡った南西国藩主の嶋津義隆と皇女紅葉からの報告で、その実情が明らかに成って行く事により、中立派閥は次第に主戦派と強調体制を取る様に成って行くのです。


 力仁国皇とコヨミ皇国政府は、これらの異界国家との国交樹立と軍事同盟の成立は、コヨミ皇国だけでなく、この世界のパワーバランスの有り様を根幹から覆す事を決めて居ました。



 この事態に慌てたのは、講和派とその筆頭の相州国藩主である北条正成であったと言います。


 彼は兼ねてより、自分の私腹と藩国の利益の為に、帝国との戦を避けるべく動いていた。


 

 講和派の主張は以下の通りでした。


 「帝国に戦で勝てないのは火を見るより明らかである。ならば、紅葉皇女殿下等、3姉妹を帝国の王子か名のある貴族と婚姻し、姻戚関係を持って穏便に済ませるのが妥当だ。」と正成らは強硬に主張して居ました。



 ですが当の本人である紅葉がこれを大変に嫌がり、政略結婚を言い出した本人を斬り付け、いや、殴り付ける等をしたのです。




 如何なる理由が有ろうと望まぬ結婚を嫌がるのが当たり前であるが、彼女が嫌がる理由は有った。




 それは嫌な噂が絶えない帝国とその王侯貴族らは、他国の全ての身分に関係無く、女性に対して何をして来るのかが分らないからだった。


 要するに下種な輩が多いと言われて居たのです。


 それに暦の巫女としての直系の血筋たる紅葉を差し出すのも、国としてコヨミ皇家としても有っては成らない事。


紅 葉は大事な可愛い妹達や、皇族に連なる親族の娘達を生贄の様にして、差し出す等とは言語道断であり、決して許せないと講和派を徹底的にぶちのめしたのでした。



 一方で主戦派は、当初は、足柄一葉を筆頭にして、徹底抗戦だけを主張する猪集団でしたが、日本国が現れると、それまで唱えていた戦争一辺倒の政策を転換する事にしました。




 そして、日本国の元で交易を通じて彼の地の優れた技術と経済力を吸収しつつ、日本式の軍隊を編制し、帝国と戦おうと言う冷静かつ、理知的な物へと変わって行ったと言います。



 それだけではなく、日本国の国防軍である自衛隊なる組織を国内に駐留させ、抑止力とするとまで決めて居ました。


 これに講和派が真っ向から反対しました。


「得体の知れない国家に何が出きる。チョッとばかり国力の高そうに見える国ではあるが、軍隊の数が少なすぎるから大した事は無い。」



「全ての国家に対して、ニホンの経済支援を行い、技術を取り入れ、軍隊の庇護下に入る等と言う考えは妄言に過ぎず、貴公らは錯乱して皇国を混乱に陥れ様としている。」



 更に付け加えると「我がコヨミ皇国をニホンの傀儡国家にしようと企む奸臣であるっ!恥を知れっ、この痴れ者共っ!」と言って居ます。



 要するに彼らの持っている自国領地の既得権益や私腹を肥やす事を戦争や他国に侵されたくないのが本音なのでしょう。


 それならば、領土安堵を早期から確約してくれる覇権国家に依存した方が良いと考えて居るのです。


 そんな理由から日本とか言う何処ぞの馬の骨とも知らぬ輩の国に、自分達の邪魔をされるのは我慢が成らないのであった。



 これに対して主戦派は、日本から送られた分厚い資料を片手に反論をしたのでした。




「講和派の主張している事は根拠が全くない。このニホン国の国内の資料が描かれている物の本は紛れもない事実だ。」




「写真なる絵は精巧な技術で、現実の風景を写し取るカメラなるからくりで採られた絵図は、海の向こう側にあるニホンの姿であり、真実だ。」




「更に紅葉皇女殿下がニホン国の九州島地方を自らの目で視察をされた。殿下が自ら撮影された写真もあり、殿下の書状とニホン政府からの資料は真実である。」




「この事実を噓つき呼ばわりする事は、皇室への不敬であり、講和派は何某かの不都合な事実を隠しているとも見て取れる行為だ。我が国は早急に、この国との国交を結ぶ事を急ぐべきだ。」




「更に皇都には、ニホン国の使節団の先遣隊が既に入国を主上さまご自身が既に、許可をされている。」






「そして、彼らが扱う乗り物や道具の多くは、我が国の兵士や市民らの目に留まり、臣民達は驚きの声を上げている。それに貴様らは、帝国との癒着の噂が囁かれている。奸臣と言うのは、何方の事なのかな。」



 両者はお互いの主張を一歩も譲らず、国皇の前で開かれていた御前会議は紛糾し、最後は力仁国皇が臣下の者達の議論をさせて機会を見て自分の意見を述べました。



 力仁国皇は諜報部の事前の情報から得た話に措いて、力関係の勢力の弱い講和派が中立派の切り崩しをしようと言う情報が持たされる聞き付けると、御前会議の最終日に成って、臣下達に言ったのである。






「我が娘の忠言を全面的に受け入れる。これまで我が国は、コヨミ皇族のお告げの力に助けられて来た。紅葉の見た未来と、紅葉が視察見聞して来たニホン国の内情は皇国の未来を決める重要な決断に間違いは無いだろう。」






「成らば、ニホン国との国交樹立は正しいと言える。更にニホン国の国力の高さは、紅葉と南西国藩の藩士らの手によって下調べをして来た資料で明らかだ。」






「正成、お主の意見も一理有ると言いたいが、これだけの物的証拠が揃っているのにニホン国が大した国でないと強引に主張を通すのは無理が過ぎるぞっ!」






 透かさず正成は、反論をしました。






「しかしですぞ、主上さまっ!このままではコヨミ皇国は、ニホンの傀儡国家に成り下が・・・・・・」



「くどいぞっ!下がれ、正成。わたしは既に決めている!貴様の今の発言は、帝国の講和を受け入れた時の条件下での我が国の状態を言っているのだぞっ!」




「ニホン国は、民が偽政者を選挙なる方法で決めている。彼の国の宰相は、市民から選ばれた元老院議員の中から選出された者だ。」




「それ故に、間違いは余程の事がない限り起こらない。独善的な政治も勝手が出来ない政治体制だ。帝国の体制とは根本的に違うのだぞ。」



「既にわたしは、紅葉を通じてニホン国に、国防軍たる組織である自衛隊の派遣要請を出した。更にニホン国は多数の技術指導者と貿易の基本条約するとも言ってくれている。」






「だから帝国とは一戦を交える所か、帝国が降伏するまで我がコヨミ皇国は一歩も退かぬぞっ!他の講和派の者達も如何なる理由があろうと反対は許さぬ。そこで貴公らに此度の件で申し渡す。」






「帝国との癒着が有るとの噂の絶える事の無い貴公達は、その罪状がハッキリとするまでの間は、皇都の邸宅で謹慎しておれ、貴公ら自領の兵達も自領地へと退かせよ。」




「貴様らの見張りの指揮は近衛隊の加藤清忠と陸軍大将軍補佐の細河夕らの兵の任せる事とする。」 


 この日を境にコヨミ皇国の国論は一つに成り、主戦派は拘束され皇都・星都市内に幽閉される事と成ったのです。


 ですが、これが後にコヨミ皇国の内乱を招く切っ掛けと成った出来事でも在りました。

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