184話 前哨戦っ!激闘っ!第3万次シュバルツバルド平原戦争 4

アースティア暦1000年・6月20日・午前9時05分頃・ユーラシナ大陸・ユールッハ地方・ユールッハ地方中央部・リユッセル北欧同盟勢力圏・ガリア帝国・リユッセル北欧同盟及びローラーナ帝国との激突戦線・ユールッハ地方中央戦線・アルヌクズ山脈・アルヌクズ山脈西側・ウォージェ山脈・ブルゴーニャ平原・ガリア帝国東部最前線防衛要塞・ブルゴーニャ要塞・ブルゴーニャ平原地方戦線にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



アルヌクズ山脈のスエルス地方を出発したローラーナ帝国軍は、120万人もの軍勢を4方向に分割させ、各方面に20万人づつに分かれてリユッセル北欧同盟国領内勢力圏へと侵攻を開始する。


 それらの軍勢を支援するべく、同伴するのは100隻もの空挺魔導戦艦艦隊と陸上魔導戦艦隊と各種魔道輸送艦隊と共に同じく前進していた。



元々このスエルス地方は、300年前までスエルス公国と呼ばれている小さな独立国が在ったが、ローラーナ帝国との戦争が激化して行く影響で、王侯貴族を筆頭に国民全員が西の大陸へ亡命し、亡命政府を作った上で国外退避をして居る。


 

アルヌクズ山脈の西側、北から南西へと聳える山脈が在り、その名をウォージェ山脈と言う山々が連なって居る。


 このウォージェ山脈を挟んで相対しているローラーナ帝国と、その向こう側の山脈西側に、広大な領土を有するガリア帝国。


 それぞれの両国は、このウォージェ山脈を各々国境として扱って来て居た。



 ローラーナ帝国・ガリア帝国方面制圧軍は、ガリア帝国の東の最前線防衛要塞であるブルゴーニャ要塞へとやって来た。


 ブルゴーニャ要塞は複数の大砲と石壁に囲まれ、小高い丘を加工して作られた全長が6キロもある要塞で、付近の城や砦と連携して、この地方を守り続けて居た。

 



 その周辺に広がるのはブルゴーニャ平原と言って、中小の森と草原と小さな沼が点在している地域が広がって居る。


 ローラーナ帝国軍を迎え撃つのは、ガリア帝国・ヒスパニア皇国の連合軍が約14万人。


 その編成は、昔ながらの歩兵に騎士。


 騎馬隊に重装槍兵隊に加え、多数の魔導機兵隊や大砲部隊と魔導士部隊。


 その後方には、鋼鉄製と木造製の陸空魔導戦艦の艦隊が30隻ほど展開して居る。


「リユッセル北欧同盟の勇士達よ。侵略者から祖国を守れえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」



 2年前から一人の少女がガリア帝国の戦場を大きなユリ紋章旗を掲げて、義勇兵と国軍、地方騎士団を率いて駆けていた。


「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」



「オルレバノン聖女だああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」



「聖女ジャンヌ・ダルムンクが来てくれたあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」


 ローラーナ帝国が求心力を付けて一躍大帝国を築けた要因でもある宗教、創造神アーライトを称えるアーライト教。


 このローラーナ帝国が崇める国教とは別に、ユールッハ地方を中心にして、古くから有る宗教、聖光教と言う物が在った。


 太陽神アマデゥスを崇める宗教で、ローラーナ帝国が崇めている宗教である創造神アーライトのみが神だとし、それ以外を徹底的に否定する一神教の宗教宗派閥であった。


 それに対して聖光教は、別に他にも神が居て、拝んでも良いと言う多神教信仰を認めて居る懐の深い宗教であった。


 ジャンヌは元々放牧をしていた農家の1人娘で、徴兵される対象からは外れて居た筈の14歳の少女である。


 彼女の故郷であるオルレバノンは、長閑な農村地帯で、大きな町と言えば、故郷の州都であるオルレバノン市と首都の帝都バリン市くらいであった。


 何処にでも英雄と言う奴は、良くも悪くも偶然と必然が重なり合う切っ掛けで生まれる物なのだろう。


 このジャンヌは、故郷の農村の外れに在る寂びれた聖光教会で、熱心に神様にお祈りを捧げていた。


 明日も無事に過ごせます様にと・・・・・・・・・・・・・



 だが、その日も村から徴兵されて行った人達が遺体と成って帰郷して来た。


 そんな悲劇は何時まで続くのかと再び教会で祈りを捧げると、気まぐれな神様が聖槍オルレアンと、聖旗セイントフラッグと言う聖具を授けたと言う。


 その神様とは、太陽神アマデゥスと言うらしく。


 ジャンヌは太陽神アマデゥス神から信託が下り、聖具すら授かったとして、その事を祖国の為政者達に告げるべく、その地方を治めているオルレバノン侯爵の下へと参じた。


 オルレバノン侯爵は城へとやって来たジャンヌとおとぎ話に近い事実に対して、半信半疑ではあったが、気まぐれな神様が授けたと言う聖槍オルレアンと聖旗セイントフラッグと言う聖具は恐ろしく仕えた。


 聖槍オルレアンは味方と成る将兵達の士気を高め、防御魔法付与する。


 聖旗セイントフラッグは、任意の味方に対して、あらゆる傷と病を治し、即死で無ければ手足が千切れた状態ですら再生させられる回復魔法の付加の力を秘めていた。



 ジャンヌが現れた事により、ガリア帝国・ヒスパニア皇国の連合軍の5万人の先陣部隊は、戦意と高揚感つ包まれ、安心感と身体の底から力が沸き立ったって来たのである。


 長方形陣と言う盾を四方と頭上に掲げながら隊列を組んで行軍する手堅いやり方で前進して行くガリア帝国・ヒスパニア皇国連合軍。


 総指揮はガリア帝国のジルドレン・ド・モンモランシー大元帥と言う25歳の下級貴族出身の若者。


 前線指揮官として、アルテア・ド・リッシュモン将軍と言う中流階級貴族出身で、23歳の凛々しい女性が指揮を執っていた。


 この世界では、才能次第で第一線に配置されるのも決して珍しくない出来事なのだ。


 戦争が世界規模に行き渡って居るせいなのか、人手不足な理由も有って、この様な地球では絶対に有り得ない様な人材配置が現場では良く見られて居た。


「申し上げますっ!」


「ウォージェ山脈を超えてきたローラーナ帝国軍は、その軍勢を三手に分かれて侵攻中の模様っ!」


「先鋒部隊は重装歩兵大隊3万。第二陣は魔導機兵大隊5万の模様っ!」


「流石にアルテの中軍だけでは、その軍勢の相手をするのはキツイな。」


「いや、何処の戦線も似た様なものか・・・・・・・・・」


「元帥殿。如何なさいますか?」


 近くに居る4名ほどの参謀将校は、どう采配するのかを聞いて来た。


「よし、先方のジャンヌ少佐に伝えよ。」


「敵に一宛てをしたら、ゆっくりと十分に引き付けながら、敵を領内深くまで撤退するフリに見せかけ、敵に見失わせろっ!!」


「予定位置に敵を入れたら一斉に襲い掛かって、各個撃破をする。」


「大砲大隊、魔導士大隊、魔導機兵大隊は、味方との支援と連携を行いながら敵を広く薄く半包囲する。」


「それと例のアレの用意を。」


「了解です。」


 ジル大元帥の言うアレとは、コヨミ皇国、ラクロアナ王国、ダバード・ロード王国、アルビオン王国を経て齎された試作武器や兵器であった。


 それは魔導式ロケット弾の試作品で、コヨミ皇国大使館に勤務している外交官らが日本の使用して居る兵器や武器の歴史と言う日本国内でも簡単に手に入る書物や自衛隊と地球系転移国家の軍の視察をした際に見た物を参考にして居た。


 流石にミサイルの真似や最新式の大砲の真似は無理だったが、アームストロング砲や、見よう見真似で作った魔導式の簡易式ロケット弾の試作の開発には、成功したらしい。

 

 この手の武器や兵器の開発には、反帝国同盟内でも魔導技術大国のダバード・ロード王国とあらゆる分野の兵器工廠を多く有して居るスカジナビア王国。


 それに下請けや材料集めをしているオーランタ商業都市連合国とホムル王国の資金を含めた動きが有った様だった。


 特にロシア軍・アメリカ軍・台湾軍をそれぞれ視察した一団は、手に取って試射すらさせて貰ったらしい。


 日本では法的に難しい部分であって出来ない所を他所の国ならば、上の許可が有った為に出きた事だった。


 この事に付いては、日本政府も黙認して居る部分も有るし、他国の内政干渉し過ぎるのも問題との考えから来て居る様だ。



 竜史も交援省大臣の立場から将来に置いて、武器や兵器の生産ラインを国外で量産品タイプを売り出したり、独自開発をして行く機会を無くすのも良くない。


 それにこの大戦を終わらせる上で、武器・兵器の各国の国産開発は、重要な事柄と進言し、専門家の意見も交えて提唱もして居た。


 勿論、最新技術の基幹部分の開示に関する書籍や情報は秘匿事項にすると地球系転移国家との間で取り決められても居る。


 初歩的なロケット弾や銃砲火器の類は、何れは基礎技術がバレる物だと割り切って情報開示に踏み切って居た。


 そうでないと敗戦しそうな国家群が、この先、天災の被害を受けた会社が倒産する様にドンドンと滅び続けてしまうからだ。



 日本を含めた国が、攻勢と反撃の態勢を整えるのに数年は掛かるだろうと見られて居るこの状況下で、その多くが少しでも、生き延びられる方法を提示や製造技術の情報開示して行く事も重要視されて居る所である。


 そして、反帝国同盟が特に戦術として注目を集めていた居たのが、散兵戦術であった。



 大軍を少数精鋭の寡兵で討ち破る。


 このやり方に各国の元帥から下士官の指揮官に至るまで、大きな衝撃を覚えた。


 近代戦術の定番とも成って居るこの戦術は、この世界の戦術の中心とも言える大軍と高性能の兵器に、魔法武具を多く揃え、それを扱う人材を集め育てる。



 これが当たり前とされて居る認識の中で、訓練次第で誰でも出きると書かれて居る書籍の写本を手にした反帝国同盟諸国の軍人達は、正に目から鱗が落ちる思いがしたと言った感じと成って居た。




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