183話 前哨戦っ!激闘っ!第3万次シュバルツバルド平原戦争 3
アースティア暦1000年・6月20日・午前9時05分頃・ユーラシナ大陸・ユールッハ地方・ユールッハ地方中央部・リユッセル北欧同盟勢力圏・コーランド王国南部・リユッセル北欧同盟及びローラーナ帝国との激突戦線・ユールッハ地方中央戦線・シュバルツバルド平原にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから更に10日後の6月20日。
ユールッハ地方中央部のコーランド王国南部を中心に、大規模な国同士の衝突が600年間もの間続けられて居るユールッハ地方戦線。
今年は20万人以上の軍隊の同士の衝突が、合計で10回ほど起きて居る。
アルビオン王国を盟主とするリユッセル北欧同盟は、今年11回目の戦争が勃発しようとして居た。
リユッセル北欧同盟の宿敵にして、不倶戴天の敵とも言えるローラーナ帝国との定例戦争が10日前から始まって居た。
このユールッハ地方は、南北の勢力に分かれて戦争を続けて居るユーラシナ大陸西方地方で、地球のヨーロッパ地方に良く似た土地でも在った。
その南部の大半を領有して居るのがローラーナ帝国、このアースティア世界に措いて通称帝国と呼称されて居る。
この世界で最大の国土と国力そして軍事力を持った帝政国家であり、世界唯一の大帝国と自称して居る国家である。
両陣営は、ユールッハ地方のど真ん中のアルヌクズ山脈を挟んで、お互いに常に対峙し合って居た。
その主な戦場と成る地域は、アルヌクズ山脈内の盆地かリユッセル北欧同盟内の南部に広がる平原地帯であった。
リユッセル北欧同盟の勢力図領域は、ユールッハ地方の西端にして南西に大きな半島たるアリべイ半島のヒスパニア皇国。
其処から北をぐるりと南を迂回するかのようにして進んで行くと、ガリア帝国が有る。
その西北に位置して居るのがアルビオン王国。この国は本島であるアルビオン島とエリンランド島・スノーランド島・スコッチランド諸島等を含む。
その周辺に浮かぶ30の島諸島から成り立って居る島国である。
アルビオン島とユールッハ地方のガリア帝国との間には、ドルバーズ海峡と呼ばれる海域が在って、海上商船と国防状の重要な海上経路と成って居る。
その沿岸部には、オーランタ商業都市連合国、デボン王国等の中小国家群が点在して居る。
同地域は海外貿易で栄えて居る国家で、西の果ての大陸と東の果てからも戦争や日常生活に必要な物資を同盟関係の強い各国へと流通させる事で利益を上げて居る。
其処から東へと進むとユールッハ地方中央部の最大国家であるコーランド王国があり、ローラーナ帝国との最前線の一つの地域として世界には知られて居た。
その東隣にはレイオス皇国と言うコーランド王国の次に国土を持って居る大きな国家が在り、オローシャ帝国国内で枝分かれして居るパイプ・ライン大河が国土を縦断する様にして東から西へと流れて居た。
そして、ユールッハ地方で最も北側に位置して居るのが、スカジナビア半島の二大国家で知られているスカジナビア王国とホムル王国。
バリバルト海を挟んでライオンの尾の様な形をして居ると言われて居る半島に在る国家である。
この二か国は、兵器工廠と鉱物鉱山が大量に保有して居る国で、リユッセル北欧同盟を陰から支えている縁の下の力持ちな国家であった。
以上がリユッセル北欧同盟の地図上での位置説明と近況情勢説明と成る。
そのリユッセル北欧同盟軍は、コーランド王国南部・シュバルツバルド平原を中心にして、軍勢を展開しながら集まり、侵攻して来た帝国軍に備えていた。
ローラーナ帝国との定例戦争をして居ると先に説明したが、その戦争中の陣幕の中に、アルビオン王国外務卿であるカデレイカ・ルィビィルドン・ガウェイン・マイホークの姿が有った。
アルビオン王国の円卓騎士は、政務以外でも交代で国防に参加する事が、アルビオン王国建国以来の義務と成って居る。
その理由は故国の国防は騎士の義務であり、アルビオン王国は騎士の国だからと言うのが理由らしい。
今回でこの地での戦争回数は、実に3万回を迎え、後の戦史での名称も第3万次シュバルツバルド平原戦争と成って居る。
両者の兵数の差は歴然と成って居り、リユッセル北欧同盟軍側が圧倒的に不利な状況であるが、何時もの事でも有った。
依然として、帝国側が圧倒的であるが、結束力と団結力と連携力を活かしながら地の利と各々の国の特徴的な戦い方と優れた将を使った戦いを繰り広げて居るお陰で、600年間の月日が経った今日でも、何とか戦線を維持して来れて居た。
ローラーナ帝国軍・ユールッハ地方方面制圧軍。
別名、欧州方面制圧軍とも呼称されるローラーナ帝国の第一方面軍団である。
その総規模は80万人から100万人以上もの兵力が有るとも言われ、主な任務の一つとして、ローラーナ帝国本土であるローラーナ半島の防衛も含まれて居る。
ローラーナ半島の南には、アドレニア海と言われるユールッハ地方とカリフア大陸に挟まれた海が東西に広く伸び切る形で広がって居る海が在るのだ。
そのカリフア大陸には第二軍団たるカリフア大陸方面制圧軍が置かれて居るが、300年前に主目的任務だったカリフア大陸制圧が既に達成されて居るので、今は直轄領土と従属国の監視と管理が主な任務と成って居る。
カリフア大陸から東へと伸び切った支配地域が帝国の徴兵地帯と食糧自給地帯の役目を担って居るお陰で、ローラーナ帝国は何百年間もの月日を戦争に費やせて居た。
それに対して反帝国同盟は独自の技術力で生産力を増やしたり、中立国や帝国勢力の及ばない大陸から食料や戦略素材料等を独自の航路で輸入して居ると言う方法で国を維持して居た。
他にも第四軍団である東南方面制圧軍が帝国から見て、ユーラシナ大陸・東南地方に向かって地続きの国々を七割ほど従え、順調に行けばあと一〇〇年以内には、残るミンフィル王国東南諸国同盟の制圧が完了すると見られて居る。
第三方面制圧軍はシベリナ連合を担当しており、総司令官は、ローラーナ帝国の第五皇子のゾイザルである。こちらも日本が出現して来なければ、あと数十年の命運と言われて居た。
他にも幾つかの独立艦隊や軍団に浮遊島要塞軍など有して居るが、地上で主に活動を活動して居る軍勢は上記に書かれて居る通りである。
レリカは、コーランド王国南部・シュバルツバルド平原の北東部にあるアルビオン王国軍として、自分の領軍に割り当てられた幕舎の天幕内で、東部の情勢。
十日前に始まったレジェンダリア諸島を巡り、ローラーナ帝国軍のグリクス地方軍団と対峙をして居たアルガス公国軍を主力とするシベリナ連合軍。
それに加え日本からダバード・ロード王国を目指して居たダバ派遣艦隊と連合を組んだ日シベ合同作戦軍との戦いであるブラキュリオス湖畔紛争が始まったとの報告が齎されて居た。
「やっぱり。予想をして居ましたが、レジェンダリア諸島を巡っての戦が、はるか遠くのブラキュリオス湖で、十日も前に始まったのですのね?」
「はっ!」
「それで、何方側が有利ですの?」
「第一報告では、両者は一進一退攻防を繰り広げて居るらしく。勝敗の行方は、定かならずとの事です。」
レリカが聞いた戦況報告は、丸で関ケ原の戦いの序盤みたいな戦況報告だった。
彼の戦いも、兵数で勝って居る西軍が余裕で勝っても可笑しくない状況なのに、東軍側が家康の采配と諸将の個々の能力高さと謀略が効いて居るお陰で、五分の戦いに持ち込んで居た事は有名な史実だった。
「そうですか・・・・何とも、もどかしいですわね。」
「此方も戦に掛かり切りで、只でさえ東方の情勢の情報が入り難いユーラシナ大陸の西の最果ての地で、続報を待ち続けるのは・・・・・・」
「アーヤ陛下とミランダ陛下のお誘いは、とても魅力的でしたのに・・・・・」
「此方も相変わらず、欧州名物と化して居るシュバルツバルド平原戦争の真っ最中。」
「それも秋辺りまでの話ですの。」
「ローラーナ帝国は攻め難く成った欧州での戦が無理攻めが出来ないと悟ると、軍内部で、別の手柄を求めて夏頃から別方面へと戦場へと転戦するのが昔からの慣例。」
「それに加えて、ローラーナ帝国本土の近隣領内での夏場の山越えでの物資の輸送や秋の実りの輸送に際して、多くの労力を割きたいのが彼らの本音。」
「何とかこの戦いも例年通りに凌いで、二ホンへ・・・・・・・トウキョウへと欧州の皆様をお連れしたい所ですのに・・・・・・・・・」
「肝心の通り道が塞がれては、世界各地の同盟国との連絡路が経たれた我々は、ローラーナ帝国に、その弱みを突かれてた挙句、此方にもローラーナ帝国の軍勢を差し向けられ、毎日のローラーナ帝国軍の攻勢は必須。」
「何とかしてと言いたい所ですが、東方に援軍を出す余裕は、我がリユッセル北欧同盟には有りませんの。」
ブラキュリオス湖での戦いが、もし敗戦となれば、連鎖的に西へ東へドミノ倒しと成ってしまう。
下手をするとリユッセル北欧同盟の敗戦へと繋がり、別の意味で欧州の戦争の終焉が来るかも知れない。
それは自分達の命と国の終わりを意味して居る。
「申し上げます。」
新たな伝令官が現れた。
「如何しましたの?」
「ローラーナ帝国軍が、アルヌクズ山脈のスエルス地方の本陣を出発し、リユッセル北欧同盟の各地へと向いつつあるとの報告が、偵察部隊と密偵部隊から入りました。」
「くっ、今度は我々方ですのっ?!ローラーナ帝国の奴らは、何所まで貪欲なんですのよっ!」
「当地方の主力軍を担うコーランド王国軍からです。」
「アルビオン王国軍は、南西方面へと進出し、同地に侵攻するローラーナ帝国軍を迎撃、撃滅すべしっ!」
シュバルツバルド平原での戦線では、コーランド王国軍の管轄であり、リユッセル北欧同盟の慣例的に各地方に出向した援軍は、その地方の軍の傘下の指揮下で戦うとされて居る。
レリカが率いるガウェイン斬鉄騎士団と彼女の立場は、この地方に措いては一軍の将軍クラスとして扱われて居るが、総司令はコーランド王国軍の将軍以上か委任を受けた参謀とされて居る事が多い。
命令を受けたレリカは、ガウェイン斬鉄騎士団の出陣を決意する。
「ガウェイン斬鉄騎士団全団員へ通達。先陣を切りますわよっ!」
「はっ!」
レリカはアルビオン王国軍で、伝統的に持ち回り制と成って居る軍の先陣当番の任を全うすべく、自軍指揮下の軍である5千人のガウェイン騎士団に対して出動命令を下した。
どうやらローラーナ帝国は、各地での戦いに連動して、それぞれの軍の勢力が大功績を上げ様とし、大攻勢を仕掛けて来て居る様子である。
どれかが成功をずれば、反帝国同盟は一気に瓦解する事に成るかも知れない危機に瀕していた。
東京でのサミット前にして、戦いの嵐は激しさを増して行く。
ジャンブロー要塞の嵐の前哨戦とも言われる第3万次シュバルツバルド平原戦争が始まろうとして居た。
それは欧州の長い数日間の始まり意味して居たのだった。
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