111話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦 (闇夜に燃えるカントルナ砦 13)
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦から7キロ地点・ダバ派遣隊・特科火砲大隊陣地 第四・第五特科中隊陣地にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
展開を終えた多連装ロケットシステム自走発射機M270(MLRS)20両と88式地対艦誘導弾20両の部隊は、ミサイルのコンテナを東の夜空へ・・・カントルナ砦の方角へと向けられる。
「こちら特科大隊、第四・第五特科中隊。」
「これより味方の撤退支援の為、此れより敵艦隊に向けて対艦攻撃を敢行する。」
「各車発射よーい。」
「目標の捕捉と割り振りと誘導照準先の入力完了しました。」
第四・第五特科中隊に所属する各車から準備完了の知らせが、それぞれの部隊の中隊長へと届けられる。
「第一波発射始めっ!」
多連装ロケットシステム自走発射機M270(MLRS)20両と88式地対艦誘導弾20両の発射口から、第一波のミサイルが撃ち出されて行く。
ゴオオオオオォォォォーーーーッ!
暗闇の中で、火柱と轟音と白い煙が立ち込めながら敵へと飛び立って行った。
一方、ダバ派遣艦隊の本隊、ダバ派遣支援艦隊に所属していて、護衛として居残っていた護衛艦しらぬい、おおよど、試験改修艦あすかの3艦からは、対艦ミサイルが発射され様としていた。
「対艦、対空対水上戦闘よーい!!」
「CICの指示目標、グリクス地方艦隊の水上艦隊及び空挺艦隊・魔導巡洋艦クラス艦隊!目標捕捉!」
「艦対艦誘導弾、発射始めっ!!」
「発射用意っ!撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!」
護衛艦しらぬいと試験改修艦あすかからは、90式SSM4連装発射管から2発つづ、護衛艦おおよどからは、ハープーンSSM2が2発が、それぞれの発射管から発射される。
陸海による対艦ミサイルの同時攻撃、そのミサイル群は夜空に一際目立つ炎を輝かせて、定められた目標へと飛んで行くのである。
ゴオオオオオォォォォーーーーッ!!と言う噴射音を響かせて、グリクス地方艦隊へと自衛隊が、撃ち放った長距離ミサイル群の第一波が命中する。
「ぐううっ!!」
爆発の衝撃で、オバム大佐が乗り込むドッコス・ギアレス級空挺戦艦オクト・パレスが、爆風等でガタガタと揺れて居る。
「報告っ!本艦隊の西側に展開中の水上・空挺の艦隊に、噂に聞くニホン軍の空飛ぶ鉄槍群が来襲し、我が艦隊の魔導巡洋艦、魔導駆逐艦等合わせて40隻以上が撃沈されました。」
「ええいっ!!たかだか砦からの撤退戦や殿退却の為に、此処まで派手に攻撃を仕掛けて来ると言うのかっ!?ニホンと言う国はっ!?」
今までの戦いから、彼はニホン軍と戦えば、艦隊や部隊は、殲滅か7割の損失を被ると言う割に合わないと言う事を理解し始めていた。
今回の戦いも、例え勝ったとしても割に合わないのは、目に見えていた。
それでも突き進まなければ成らない。
それが悲しきローラーナ帝国に所属する臣民であり軍人としての責務だからである。
「報告っ!!第二波が来ますっ!!」
「各艦っ!!回避いいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
オバム大佐の命令を空しく、無常にも沈めれ続ける友軍艦隊。
彼は何も出来ずに、この戦況を見守り続けるしか無いのだった。
一番乗りを果たした300人の兵士らは、追撃より砦内に残って居るかも知れない物資や金目の物を家捜し始めた。
戦利品の一部は、一番乗りの褒美として、一番乗りをした部隊が貰える事に成る機会が多い。
兵士らに取っては、数少ないチョッとした臨時収入が入る貴重な機会なのである。
「申し上げます。砦内は、蛻の空であります。」
「ちいっ!奴ら目、最初から撤退準備をして居たか・・・・・」
「成らば、急いで追撃に移るぞっ!」
一番乗りのを果たした一隊は、敵にしてやれたと思い知らされる。
その後ろから続々とカントルナ砦を完全に手にするべく、駐屯部隊を送り込まれて居た。
「おい、砦内に敵部隊が侵入した様だ。」
「うーん、もうちょっと入らないか?」
「約3千人程度、まぁ、一度痛い目に遭って居るからな。こんな物だろう。」
グリクス地方軍団もバカでは無い。以前制圧したジャイアガル島・ジャイアガル軍港基地での手痛い目に遭った事で警戒して居るのだ。
それでも敵施設を押さえなければ成らないのは、軍事的な勝利と言う観点から来る物で、こればかりは仕方が無いと言える。
しかし、これから犠牲と成る者からすれば、堪ったものでは無いのだがな。
「爆破だっ!」
「りょーかーい。」
コブラ隊に護衛され、CH-47JA輸送ヘリコプター4機は、隊員の撤退と砦爆破を行う為にギリギリまで近くの空域に居残って居た。
敵兵がカントルナ砦内へと入る様子を篝火や松明の光を頼りに双眼鏡で眺め見ていた。
其処にアパッチ隊と合流すると、爆破を任された隊員が、カチッと持って居た電波送信機の発破装置のスイッチをオンにする。
ドッカーーーンッ!!!
遠目にカントルナ砦は土煙を盛大に上げて吹き飛んで居た。
「此方は、チヌーク隊に搭乗中の殿回収班の部隊長ですヘリコプター部隊の最後尾から報告を致します。」
「カントルナ砦から全面撤退を完了。」
「地上部隊、水上艦隊、航空隊の全隊・全員の無事を確認。」
「負傷の程度は、概ね掠り傷程度。」
「なお、砦は予定通りに敵突入部隊と共に爆破。」
「敵の損耗の程度は、目算で3千人程度だと思われます。送れ。」
「こちら前線総司令部。了解っ!」
「無事な帰還を求む。交信を終わる。送れっ!」
夜の暗闇に消えて行く陸自ヘリ部隊と陸上車両部隊撤退と共に某怪獣映画の行進曲は、切の良い所で演奏が止められたのだった。
それを追い掛けるグリクス地方軍団は、軽装の騎馬兵隊や速竜騎兵隊が後を追って居た。
速竜騎士が扱うのは、速竜種と言う竜種である。その個体名はヴェキエルと言う。
その竜の姿格好だが、地球のヴェロキラプトルとディオノニクス等の恐竜の姿の想像図の絵に良く似ていた。
グリクス地方軍団の追撃隊は、それら陸竜種から成る速竜騎兵団と騎馬から成る通常騎兵団が、日シベ合同軍の追撃を仕掛けて来て居た。
その後を追う形で歩兵部隊がノロノロと後に続いて追い駆けて居た。
島内は広いが狭い湖畔の群島の中なので、日本の動力式車両には追い付けなくとも、行き先は分かって居る。
追撃中止の命が下るまで、彼らは手柄を求めて、軍を突き進む事だろう。
だが殿戦での戦いは、日本の方に分が有ると言える。
「来たぞおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」
「各車両の各員っ!構えええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」
軽装甲機動車隊12両からなる一隊が乗車して居た隊員ら共に射撃体勢を取って居た。
車両から顔を出している隊員は、車載されていた5.56ミリ機関銃MINIMIを構えていた。
隊員の中には、01式軽対戦車誘導弾や84ミリ無反動砲を構える者も居た。
弾数は少ない物の、敵からすれば強力な火器を揃えていた。
「まだだっ!まだ撃つなよ・・・・・・・・・」
軽装甲機動車隊を指揮している部隊長は、殿戦の第一の遅滞戦と成るこの持ち場を任される緊張にも関わらず、冷静に指揮を執って居た。
殿での戦いは、一気に逃げ出すと言う物ではない。
味方同時が連携を取り合い、後続から逃げて来る部隊と入れ替わりながら、敵の追撃を食い止めつつ、本隊を撤退させて行く物である。
やり方は様々だが、基本は大将または司令官を逃がすのは勿論の事。
今回の場合は、アルガス公国軍をレジェンダリア諸島の中央部本島であるセイジョン・ローグリア島のセイジョン・ローグリア城へと逃がす事である。
「やあっ!!」
「はいやっ!!」
グリクス地方軍団の追撃第一陣である第九グリクス地方騎兵団は、3千の馬と竜の混成騎兵団を率いて軽装甲機動車隊の真正面に現れた。
手に軍団旗や分隊旗、松明を持った騎兵多数軍団の左右に同道し、部隊の誘導をして居る。
それらを迎え撃つのは、自衛官たった48人吞み。
騎乗する馬や竜の蹄の足音だけが遠くから大きく響き聞え渡って居る。
「構えっ!!」
隊長は静かに射撃準備を命じ、敵が有効射程内に入るのを待ってから、「撃て」と命令を下そうとして居た。
「目標っ!正面敵騎兵団。距離700・・・・・・・・撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!ダダダダダダダダダダダダダダタダッ!!
「撃ち方止めっ!」
5分程で銃撃を止めると、生き残った騎兵団の兵士達は、軽装甲機動車隊に目掛けて突撃を仕掛けて来た。
「まだ、来るか。」
「自衛隊の方々、撤退準備を。」
「後は我らでも十分に討ち勝てます。」
「各員撤収っ!」
弾を大方撃ち尽くした軽装甲機動車隊は、残弾をある程度有る内に、撤退を開始した。
弾の無い自衛隊は、白兵戦を主力としている軍隊相手には不利な点が多々多い。
万が一の為に、後ろに控えていたアルガス公国軍のレジェンダリア騎兵団千人が、突撃を仕掛けて行く。
「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
レジェンダリア騎兵団は、軽装甲機動車隊によって兵数を削られて居る第九グリクス地方騎兵団を意図も簡単に討ち取って行く。
大軍と重機動師団が相手で無ければ、アルガス公国軍の騎士団の実力が上である。しかも敵騎兵団は少数、この場での勝敗は既に付いていた。
「グリクス地方騎兵団の第一の追撃軍っ!!打ち破ったりーーーーーーっ!!」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
レジェンダリア騎兵団は、勝ち鬨の歓声の声を上げる。
「次が来る前に、直ちに撤退いいいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
勝利の余韻に浸るのも束の間にして、レジェンダリア騎兵団は、速やかに撤退を開始する。
撤退の夜は、まだまだ長い。
両軍の戦いは、恐らく夜明け近くまで続くと見られて居た。
撤収するレジェンダリア騎兵団の後ろからグリクス地方騎兵団の足音と松明の明かりが再び迫って来て居たのであった。
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