外伝11話 フランシェスカ王女の来日と軍事協定の発効 1

アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月28日・午前9時44分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・北海道地方・北海道・札幌市・札幌駅にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 



ラクロアナ王国のフランシェスカ・アブヒム・ラクロアナ王女は、外務大臣のエマリー・ロズリーを伴って、日本国との国交樹立に向けた外遊へと出発する。


 彼女達は、外務職員と護衛騎士隊を伴い、王都・アデニューム市近くに広がるロアナ湖の東側に位置するアデニューム港から出発する。


 アデニューム港とは、北西に聳え立つドラグリア山脈より南東方向へと流れ注ぐドナルク川の中間地点にある湖である。


 ラクロアナ王国は水運が盛んな国家であり、王都へと通じる物資の流通はアデニューム港を利用して行き来と取り引きが行われて居る。


 勿論、客船での行き来する事も当たり前で、ラクロアナ王国の王都から南東方向へと言った先には、ニュウヤーク州・州都・ニュウヤーク市がある。



 一日かけてフラン王女一行らは、港町であるニュウヤーク市に到着。


 同市に在るラクロアナ王国が太平洋へと面して居る重要港たるニュウヤーク港から日本の海上保安庁の大型巡視船に乗り込んで、日本の小樽港から密かに来日して来て居た。


 密かに日本国へと訪問と言うのは、何故かなのかと言うと、その理由は二つあるのである。


 その内の一つには、未だに日本国内では、異世界諸国への風当たりが悪いと言う事に在るからだった。


 交援省・外務省・防衛省などの政府機関がアースティア世界とユーラシナ大陸東側地方等を独自に調査したり、近隣地域諸国政府らと接触を図って行くに連れて、この世界に在り様が徐々にだが解明されて始めていた。


 今はアースティア大戦と言う世界大戦の真っ只中に在るアースティア世界。


 そんな世界大戦に日本国を始めとする地球系転移諸国らは、否が応でも巻き込まれる事が確定して居るとも言える情勢の中で、最も戦争に後ろ向きな日本国と日本国民は、異世界大戦に巻き込んで来る理由とは何か?


 それはローラーナ帝国を盟主国家とする西方バルバッサ帝国同盟とアセリナ王国を何故か盟主国家としてしまって居るシベリナ地方王国連合同盟らが、それぞれの立場を理由に、日本国を巻き込もうとして居るのでは無いのか?と考えていた。


 だから異世界諸国と異世界人達に関わらなければ、異世界大戦には巻き込まれる事は絶対に無いのだから無理して、国交開設をする必要が無い。


 等と言う妄想又は夢想に駆られて居り、反戦団体等が日本国政府への反対運動を展開する大きな理由として居た。


 そんな情勢下に在る為に、アースティア世界諸国の要人や外交官又は、使節団を迎えるだけなのに厳重な警戒と細心の注意を払う必要が有ったのである。



 下手をすれば、過激派反戦団体構成員らが、異世界諸国の要人を誘拐して捕え、何を要求して来るのかさえ分からない。


 国家公安委員会と警察庁は神経を尖らせて警戒をして居ると言う。




 さてフラン王女が日本国へと訪問したその目的とは?父であり国王であるレビル・アブヒム・ラクロアナ王の病状のお見舞いである。


 国内を留守にしてしまう為、ラクロアナ王国内での表向きの発表には、地方視察に一ヶ月ほど見て周ると発表されて居た。



 二人を含めた同行者達らは、日本の厳しい防疫検査と一ヶ月に亘る健康診断の結果、入国に際して問題無しとの連絡を受けると、直ぐに日本への入国申請を出したのだった。



それから程なくして彼女達の入国申請は、思いの外、簡単に通ってしまう。


 日本国内に入るのに厳しい審査だったが、身元素性がハッキリして居る事と健康上の問題が無ければ、日本と言う国は、結構あっさりとして居る物だと、二人は感じてしまうのだった。



 本来なら国交開設の外交交渉に向うのが当然の事だと思うが、国内情勢の不穏な動きと、未だ日本政府の準備が整って居ないとの返答が出されて居た。


 前に述べた国内情勢の不安が在るのと同時に、もう一つの理由が有った。



 それは何かと言うと、主だった諸国の元首や大臣を集めて、国際会議をしようとダバード・ロード王国のアーヤ・シュチュ―ド女王が呼び掛けてお陰で、今はそのスケジュール調整の真っ最中でも有るのだった。



 ラクロアナ王国は、その要請が来る前に国交開設の交渉を申し込んだが、アーヤの国際会議の招集と重なった為に、それに合わせた形での先送りと成ってしまって居たのである。



さて、二人はその日の夜には、小樽港へと到着すると、交援省の札幌支部の片平耕平と言う職員が案内役として出迎えていた。



 片平は外務省の外務課の職員として交援省に出向して来ている人物だ。


 他にも農水省や北海道庁から派遣されて来た職員もラクロアナ王国との将来的な観点から視察案内役を担う為に、港に出迎えに来ていた。


 警備は交援省の警備課に警視庁から派遣されて来て居る杉上豊・鶴山薫・神戸光博・甲斐田弘樹・鏑木隆志の5名と北海道警と札幌警察署から派遣されて来て居る私服警官で占められて居た。


 交援省の警備課とは?警察庁・警視庁等が中心と成って派遣する警察関係者の集まりだ。


 主な仕事は交援省関係者と施設の警備や交援省と接触や会談または接待相手と成る要人等の警護である。



 場合によっては、異世界人が巻き起こした珍事件等の警察捜査も請け負う事もあるとされて居る。


その人員は総勢350人で、警察庁・警視庁を含めた全国の警察官達の中から、選抜された人材が出向者として、福岡市内に在る交援省・警備課されて居る。



 その実働部隊の警備課係長に任命されたのは、杉上豊(すぎうえゆたか)と言う人物。


 43歳の独身で離婚暦有りで、警視庁・警部。


 警視庁捜査一課が解決できそうに無い様な何かといわく付の事件をさらりと解決してしまう厄介者と言われて居る警視庁の窓際族の一人。


 あらゆる分野の珍事件に首を突っ込んで左遷させられたのが、特別迷宮入り捜査係と言う部署。


 略して、特宮係と言う捜査課に追いやられてしまう変わり者。



 この度の転移災害騒動で交援省・警備課が設立となり、特宮係のメンバーは部署を解散した上で、交援省の警務課へと栄転と言う名の左遷をさせられてしまう。



そして警視庁からは川原憲一らを始め、10名が護衛に派遣されて来て居た。


 何で警視庁から外国の要人警護為に、警察官が派遣されて来たのかと言うとだ、何でも転移災害以降は、殺人事件等を含めた凶悪犯罪が減少傾向に在るらしく。



 逆にテロや組織犯罪が増加傾向に在るらしい。


 其処で一部余った人材の一部や混乱して居る国内情勢の不安から、警視庁の警察官の一部が、テロや組織犯罪対策の一環で、アースティア世界の要人警護をする為に、こうして札幌市まで派遣されて来て居るらしい。



 川原憲一は、警視庁・刑事部・捜査第一課の刑事だが、フランシェスカ皇女の護衛の応援として派遣させられる。


 事件現場で何かと出会う鶴山薫とは。「特宮係の鶴山が何で此処に居やがるっ!」等と言って始まる罵声を浴びせ、互いに憎まれ口を叩き合いながら突っ掛るの姿は、定番のシーンとして刑事関係者の間では割と良く知られて居る人物でもあった。


「おや?川原さんじやありませんか?奇遇ですね。」


「これは、これは杉上警部殿と・・・・・元特宮係の鶴山も居るのか?」


「何だよっ!俺が居ちゃ悪いのかよっ!?」



「はぁ~そうじゃねえんだよ。」


「転移災害以降は、こっちも割と暇に成ってな。」


「鶴山に突っ掛って頃が妙に懐かしくてな。」



「おお、そうかい?こっちは警視庁を追い出されてカミさんとは離れ離れに成って大変なんだよっ!」



「お喋りはそのくらいにして、そろそろお客様を迎えに行きます。待たせては相手の方に失礼です。」


「そうですよ。先輩方。何せプリンセスだそうですからね。」神戸光博(こうどみつひろ)と言う エリートのイケメン刑事だったが、上層部から命令で、杉上の好き勝手な捜査を監視する名目で特宮係へとは移動させられた人物。 


 転移災害後は、特宮係時代からの杉上の部下だった為に、彼と共に交援省の警務課へと異動をして居た彼が急ごうと促す。



 何せ、これから警護する相手と言うのは、超VIPである。



 何か有ったら大変と言える人物達で有るが故に、警備には万全の体制を敷いて居る。



日本国内では、未だ過激な反戦団体による数多くデモを行って居る。



 特にこれと言った考えや妙案も無く戦争を回避する為なら、シベリナ連合や帝国に敵対的な国家群よりも、寧ろ帝国と講和関係を結んで、一時的な平和を得る方が大事だ等とほざいて居る始末。


 その平和の為ならどんな賠償でも応じるべきだとも世間に訴えていた。



 正に2010年代に現れて大統領選に当選したレオナルド・ポーカー大統領(この世界の日本が居た地球の米国大統領)の様にフェイクニュースやツイッターで、フェイク投稿を平気な顔で飛ばしまくるのと同じ事している状況である為、異世界人には大変危険な事態とも言えた。 



・・・・・・とは言え、日本に取って大事な国賓でも有るから、厳重な警備を敷く必要が有った。


 小樽港のフェリー乗り場に着いた大型巡視船に架かった桟橋から降り立ったフランとエマリーの二人は、事前に日本側が用意して置いた洋服に着替えて船を降りて来て居た。


 これなら何所から見たとしても転移に巻き込まれた地球系外国人と言い張れる様に成っているし、パスポートもロシア国籍扱いに成って居た。



 勿論、日本とロシアの両政府の示し合わせた偽造パスポートで、何か有れば直ぐに身柄を受け取る手筈に成っている。



「ようこそ日本へっ!フランさん、エマリーさん。」



「お世話に成ります。」



「宜しくお願いします。」



片平は、事前の内合わせで、身分を告げる様な呼び方を禁じられて居る。


 即ち王女や大臣など呼んではいけないのだ。彼女達の日本訪問はあくまで秘匿事項なのである。



「それでは、殿下じゃなかったフランお嬢様。私は仕事でフクオカ市に参ります。旦那様に宜しくお伝え下さい。」



「ええ、エマリーも道中、お気を付けて下さい。」



 二人もロシアの水産加工会社の人間とされているので呼び方に気を使って居る。


 しかも国王が社長と言う事にしてあった。


 フランの身分は、その会社の社長令嬢と言う事にしてあった。



「フランさんの警備を担当する事に成りました。警視庁から交援省・警務課へと出向して居ます。杉上豊と申します。」



「どうも、鶴山薫です。」



 眼鏡を掛けたさわやかな感じの中年男性と、もう直ぐ40代に近く、砕けた感じの革ジャンスタイル男性がフラン達の護衛として応対する。


 杉上豊は警視庁の窓際に座り、長年の間、過去に起きた未解決事件などを担当する部署に居たが、様々な事を理由に交援省に左遷の様な形で出向させられて居た。


 その理由は、警視庁が騒ぐ事件を色々と嗅ぎ回り、迷宮入りや適当な決着が着きそうな事件を時より現場の人間よりも手早く正確に解決してしまうからだと言う。



「そして、神戸(ごうど)光博、甲斐田弘樹、鏑木隆志。」


「以上の五名で身辺警護させて頂ます。」


「エマリーさんの方は警視庁の川原が担当を致します。この北海道の滞在先での警備担当は、北海道警が厳重にして居ますので、どうかご安心ください。」



「有難う御座います。」



 その他の杉上の部下として、イケメンな男や警視庁幹部の息子。


 それに法務省から転職して来た変わり種警察官など、異色とバラエティーに富んだ人材ばかり・・・・・・と言うか厄介者ばかりが集まって居た。



出迎えの挨拶を終えたフランは、片平と杉上らと共に来客の二人は小樽駅へと向う。



 今日は札幌駅の近くのホテルに泊まり、翌朝に二人は、その場で別れると、其処からエマリーは、新幹線に乗って一路を福岡市へと向うのである。



 2025年には、新幹線は函館から札幌まで線路を延長されて居た。


 フランは父を見舞う為に札幌市内の大学病院である札幌医科大学付属総合病院 に向うのであった。




 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月28日・午前10時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・日本列島・日本国・北海道地方・北海道・札幌市・札幌医科大学付属総合病院にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 



 フランと片平と杉上らは、札幌医科大学付属総合病院に着くと特別病棟に向う。


 レビル国王は、その身分ゆえに、秘匿されるべき人物である為、日本政府の手によって特別病棟に入院させられて居る。




 因みに札幌医科大学付属総合病院とは、札幌市内に在る札幌医科大学の付属病院の事で、普段は札幌市民が心身ともに身体が病んだ時に癒しを求めて通院する事で知られて居る札幌市の地域医療を担う地域病院の一つである。 


 フラン王女一行は、そんな札幌地域の医療担う総合病院へと身分を隠しつつ、父親であるレビル国王の見舞いにやって来たのであった。



「すみません。私は杉上と言います。」



「特別病棟に入院して居られる。このお方の面会をお願いします。」



特別病棟のナースステーションに警護担当の杉上はサッと名刺と写真を渡す。



 受け取った看護士の女性は、事前に色々と打ち合わせをして居たのであろか、特別病棟に入院する人物に面会者が現れた場合は、責任者である婦長に聞きに行くらしい。


 それから暫くして、黒井と言う女性看護士が現れた。



「ご苦労様です。わたしは陸上自衛隊、黒井仁美1等陸曹です。」



「此方へどうぞ。」



何んとっ!現れた黒井と言う看護士は、陸自からの出向者であった。



 日本国内へと密かに療養にやって来て居るレビル国王の治療と警護の為に、警察病院関係者と自衛官の衛生科隊員で構成されて居た。


 万が一に備えて警察の特殊部隊も近くに待機できる態勢と陸自では普通科隊員が武器を携帯して見回って居る。


 黒井もこの病院内に専用の部屋を用意して貰って他の隊員と女性警察官で看護師の資格を持って居る女性と交代で、大学病院の看護師に成り済まして、レビル国王を警護して居た。



 それも政府が病院に手を回してである。


 しかも武器携帯を認められて居ると言う念の入れようであった。


 更にレビル国王の存在は、病院関係者の一部に限られて居るので、情報の漏えいに際して、細心の注意を払って居た。

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