外伝12話 フランシェスカ王女の来日と軍事協定の発効 2

 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月28日・午前10時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・北海道地方・北海道・札幌市・札幌医科大学付属総合病院にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 



 陸上自衛隊・黒井仁美1曹の案内で、フラン王女一行らが、レビル国王が入院して居る病室へと到着する。



「お父様、わたくしです。」



杉上達はフラン病室に入るのを見届けると、その病室近くで待機する事に成る。



 暫しの間だけ、親子水入らずの時間を過ごさせて上げるべく、病室から少し離れて警護に入る。



「お加減は以下かですか?お父様。」



「ああ、大分良く成って来て居るよ。」


「しかし、腰などが治るには、もう少し掛かると医者には言われて居てな。」


「出歩けるように成ったら、近くの名湯にでも、湯治でもどうかと医師には勧めてられて居るんだ。」



「まぁ、それは良いですわね。」



「此処ホッカイドウは、温泉がたくさん在ると聞いて居ますわ。」



「折角ですからこの際、療養も兼ねて、ゆっくりとホッカイドウを巡りながら骨休めでも為さって下さいお父様。」




「本当は国事が心配と言いたいが、この有様だ。」



「この際、医者とフランの言う通りにして見るよ。」



久し振りの親子の時間がゆっくりと流れていた。



「所でお父様、このお花はどちらから?」



フランは、ふと病室の一角に花束が花瓶に入れられて飾られて居るのが気に掛かった。


 しかも、特に花瓶は其れなりに値が張りそうな品物であった。



「おお、それはだな。テンノウ陛下やホッカイドウ知事、それにサッポロ市長と言った方々からの見舞いの品々だよ。」



「テンノウ陛下って、この国の皇帝に当たるお方では?」



「そうなのだ。」



「様々な諸事情が有って、直にはお会い出きないが、何れお会いしたいとお手紙を戴いて居る。」


「それも花束と一緒に花瓶まで戴くとは、何だか申し訳ないな。」



「お父様、この贈り物は特別な事で無いと思いますわ。」


「単にニホンの今の状況では、王族同士の交流すら、したくても出きないからですわ。」



「それに好意からくる贈り物をご遠慮なさっては、返って失礼に成ると思いますわ。」




そうなのだ。折角、異界の王国の王族が来日して居るに、天皇が挨拶すら出きないで居たのである。



「時より、このサッポロの町でもデモと言う行列行進が行われ、戦争反対、シベリナ連合各国との国交樹立反対、戦争して居る国との国交反対。」


「帝国との賠償交渉し講和すべきと随分と乱暴な訴えをする者達の声が聞えてくる。」


「それが原因でテンノウ陛下やヤスモト宰相は、私の元を訪れ難いのだろう。」



一部の人達は、先行きの不安から日本各地で戦争反対論を展開し、反戦団体も野党の支援者を巻き込んでの大規模なデモキャンペーンを展開して居た。




「ニホン国民の人達は、全く知らない世界に転移して来られて、とても不安なのね。」




「そうだ、下手をすれば我が王国は悪者にされてしまう。」



「しかしながらフラン、お前はある意味、ツイて居る状況とも言える。」



「まぁ、このわたくしがですか?」



「そうだ。明日からお前は、このホッカイドウを見て回るのだ。」


「このホッカイドウは、気候も風土も我が王国に良く似て居る土地柄だ。」


「それに日本国内でも本格的開拓が始まってから200程度の歴史しかない地方州でありながら、各種の産業も盛んだ。」



「特に我が王国でも直ぐに取り入れられる農林業と水産業に優れた地域とも聞いて居る所だ。」


「他の国が、ニホンとの交渉に手間取る中で、この私を出汁に使って、お前は逸早くニホンの優れた知識と技術の情報を我が王国へと持ち帰るのだ。」



「それにお前が希望するのならば、この国に留学しても構わん。」



「はい。」



「良いかフラン。我が王国は他の国に比べて軍事力が劣って居る国だ。」


「それ成らば、他国を支援が出きる様な国作りをすれば良い。」


「私の容態次第では、お前に国王代理として日本や他国との交渉を担って貰わなければと考えて居る。」



「その為に率先して、この国を視察をして来て欲しい。」


「恐らくは多くの他国は、武器兵器の類の工業産業の活性化を狙うであろうな。」


「我が国は、その逆をしつつ、余分に作った食料を売り出して、足りない物を買い入れたり、国内インフラ整備に当てる。」


「これが我が国の国力増強方針の柱とするのだ。」


「しっかりと頼むぞフラン。」


「はい。お父様。」



ラクロアナ王国のレビル国王は、国家の大方針として、農林水産業を重点にした貿易経済政策を展開して行く積りなのだ。


 その他の産業は、基礎的な知識や技術を取り入れつつ、次第に活性化させて行き、周辺国の足手まといに成らなないレベルで進め行く積りの様であった。




 ダバード・ロード王国のアーヤ・シュチュ―ド女王は、コヨミ皇国に続いて2番目に日本との友好関係構築に動いて居た。


 日本の使節団は、コヨミ皇国の国皇と謁見を境にして、頻繁にコヨミ皇国の駐在大使と面会して居た。


 そして、各国の大使等を通じて、異世界各国の政府とのコンタクトを取りつつあった。



 その一つが、アーヤが提案した日本への魔動機兵を20機を無償で提供する事である。


 この内、数台が演習にて、各種戦闘車両の火器の的と成り、耐久テスト兼ねて撃ち抜かれ、スクラップに成る予定である。



 アーヤは、とある手紙を竜史に送って居た。


 その内容の一つとして、政府の首脳人らと共に日本に行く。


 そして、アーヤは、反帝国を掲げる主要国を集めた国際会議をしたいと提案して居た。



 その間の各国の安全保障は、臨時協定を結んで対応する事と成って居る。



 国際会議の開催期間は3ヶ月か4ヶ月を予定として居た。



この話の提案が来た時、この世界でも開催されている従来通りの国際会議よりも、竜史は地球でも良く開催されていたサミット形式の開催する事を念頭に考えていた。



 各国首脳達が、日本に集まってじっくり日本を視察しながら、日本を始めとする転移国家と異世界の国家で、今後の世界のあり方に付いて、じっくり話をしようと提案する。



 その為に日本政府及びシベリナ各国などの帝国と敵対関係の国も呼びかけて、スケジュール調整して居た。



 これに対してアーヤは、自衛隊が自国に到着する迄には、各国の日本行きに付いて纏め上げ、出欠確認を決めて置くから、それまで待って欲しい。



 万が一、日本国の自衛隊が、我が国に来るまでにローラーナ帝国と戦闘に成る又は各国が帝国と戦闘状態になり、その周辺で自衛隊が戦闘に巻き込まれるか参戦と成った場合は、自衛隊の武器使用に際して無用な混乱と犠牲を避けるべく日本の指揮下に入る事を了承すると決められる事と成った。


 これに関してシベリナ連合各国も、ダバード・ロード王国の在コヨミ大使が音頭を取る形で、同地の在コヨミ皇国大使達は、ダバード・ロード王国政府と日本国政府とが、事前の協議で話し合った内容を了承する事を併せて伝えて来て居る。





アースティア暦 1000年・西暦2030年・ 5月30日・午前11時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・日本列島・日本国・福岡市東側郊外地域・神部町・異世界国家交流総合支援省・第1会議にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 




 この日の朝7時から行われて居たラクロナ王国外務大臣であるエマリー・ロズリーとの会談が行われて居た。



 彼女はアセリナ王国・アルガス公国・ラクロナ王国・ダバード・ロード王国の4カ国から、日本との国交開設交渉及び安全保障条約締結交渉が始まるまでの間。


 パイプ・ライン大河の航路上で、帝国との紛争または戦争に突入した場合の安全保障に関する臨時協定交渉の委任状を持って日本の福岡市に在る異世界国家交流総合支援省を訪れていた。



この4カ国の各政府は、警備上の理由から大臣クラスの要人を直ぐには、大勢送り出す余裕は無い為、日本から地理的に近いラクロナ王国外務大臣であるエマリーを各国は推挙して派遣を決めたのであった。


 この世界の今の状況下では、妄りに国の要人が会議の為に他国へ行くと言う情報を流すと、帝国が何をして来るのが分からないので、事を進めるのには慎重を期す必要が有ったのだった。



 エマリーは35歳で、ショートカットの金髪で大人の雰囲気を出して居るが、実はドジっ子と言う女性であるが、仕事はキッチリこなす才女だった。




「では、諏訪部大臣、高見大臣。」



「万が一、ニホン国がダバード・ロード王国へ派遣した艦隊の航路上で帝国との戦闘に遭遇した場合、ニホンが参戦、又は自衛戦闘を決めた時は、各国の軍は、ニホン国の国防軍である自衛隊の司令官を総司令とし、その指揮下に入る事とします。」



「ええ、問題ありません。」



「そちらも対ローラーナ帝国との共同戦に関する臨時協定に総意が無いですね。」




「はい、間違いなく。諏訪部さん。」



「ああ。」



 竜史は、諏訪部とエマリー等と共に作成した日本を含む5通の協定の書類を二組分、控え分を入れた合計を入れると、計10枚物もの書類を諏訪部とエマリーに手渡す。



 仲介役をしている竜史は、両国の官僚との調整役と言う仕事もして居る。




 お互いに内容を確認し、互いの横に居る秘書や官僚にチェックを入れて貰う。



 その後にエマリーは、交援省の敷地内にある自国の臨時外交事務所へと人を使って、通信機でコヨミ皇国のラクロナ王国大使館経由で、各国の本国へ最終確認をして貰い。



 その後にサインする予定である。



 更に電話で首相官邸に連絡を入れて内閣でも確認し、問題がなければ、諏訪部が協定にサインを入れる。




「はい、はい。安元総理からです。内閣でもサインOKと出ました。」



 エマリーも自国の分にサインを入れて、後にコヨミ皇国の各国大使館の大使らのサインを入れてから、各国へと郵送され、協定を発行されるのである。



 それと補足として、付け加える事がある。臨時の処置として、条約文書類にサイン時点と書類が本国に送られる間に、万が一問題が発生した場合でも、条約の仮執行が認められと成って居る。



「これで例え、何らかのキナ臭い出来事が起こっても、如何にか成りそうです。」



「ふう、厄介事が起こるのは、出きれば勘弁して欲しいがな。」



「そうですね。」



「ですが、今はそうは言って居られません。」



「今は戦って勝ち取るしか、我が国やアースティア世界には、平和と言うのは無いか・・・・・・・・・・・・・・」



この数日後に第二次龍雲海沖海戦が勃発し、その直ぐ後にブラキュリオス湖紛争が起こってしまうのである。


 日本は寸での所で安全保障協定が発効されて、起こった事に対して、事態をスムーズに対処が出来る事と成ったのである。


 後にアースティア暦 1000年・西暦2030年・ 5月30日と言う日は、後世の歴史に措いて、日シベ安全保障協定条約と言うアースティア国際平和維持連合安全保障条約、略称名・国連安保条約の前進と成って条約が結ばれた記念すべき日と成ったのだった。


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