45話 第二次龍雲海沖海戦 2

 ローラーナ帝国暦600年・アースティア暦1000年・西暦2030年・5月26日・午前5時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・ロートレア地方・ドラグナー皇国(おうこく)・首都・新王都・ニューサリヴァン市にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ドラグナー皇国は、10年前にシベ帝戦争と言う戦争に措いて、ローラーナ帝国・第三方面軍・帝国東方制圧軍と戦って破れて居る。



 そんなドラグナー皇国は、シベ帝戦争で荒廃してしまった旧都・サリヴァン市とロートレア城を再建する為に、旧王都を明け渡す形で、ドラグナー皇国は北部沿岸地域に在るサリヴァン山脈地方へと居城と首都等の拠点を移し、ニューロートレア城とニューサリヴァン市を再建して居る。



そんな歴史を持ち、再建されてから日の浅い新王都であるニューサリヴァン市には、帝国軍の海軍基地が都市郊外に軍艦と共に平然と置かれ、旧都に至ってはその郊外に陸軍の要塞が立てられ、旧都ロートレア市を我が物顔で帝国の軍人と商人らは歩いてしまって居た。



 サニューリヴァン市の港にドラグナー皇国の海軍の戦艦と竜母が停泊して居り、10キロ離れた所には空挺飛行場には、空挺戦艦と空挺竜母が並んで停泊して居る。


 山脈を利用して作られた新都に再建されたニューロートレア城の中は広く、東西に7キロ、南北に10キロと、その広さは中々に広大である。


その北東の丘には小さな城壁が築かれ、庭付きの屋敷が建って居た。



その場所に無愛想な女性が、ある人物を訪問する為に廊下を歩いて、その屋敷に向って居た。


 日頃から着こなしている白銀の鎧を纏い腰に装飾がとても綺麗で、使い込まれた頑丈な魔法剣が挿し込まれて居る。



 時より海から流れ込む潮風が挿し込み、金髪の髪が軽く風で靡く。


 目的地の屋敷の前に立つと、ドアを軽く叩きノックをした。



「私だ。」



素っ気無い短い声掛けをした彼女は、ヴァロニカ・サークラ・レアモンこのドラグナー皇国の第一皇女にして姫将軍である。



 鍛え上げられた引き締まった筋肉と身体のラインが素晴らしく、贅肉が無く、鍛えた筋肉が自己主張の余地が無い位に綺麗に締まっていた。


 バストの膨らみもしっかりと在り、鍛えた女性ボディビルダーみたいに、乳房は削ぎ落ちていないスタイルを維持している。


 彼女の母からは、余りバストを削ぎ落すと、殿方から全く相手にされなくなると言われ、その言い付けを守って居た。


 殆んどの男は夜伽の際に、女の胸に母の愛と女性としの魅力を感じて居るのだとも指摘され、意中の相手や自分に興味を持って貰いたいのなら、相手の男に対して魅力的なバストを持ちなさいとのアドバイスを母から貰い、バストアップだけは維持して来た結果の賜物であった。



「流石にまだ、メイドの者らは起きては来て居ないか・・・・・・・・・・」



まだ早朝であり、日は昇り始めたばかり。


 城へと奉公に来て居る者等も、自宅や寮で身支度して居る頃だろう。


 日本で言えば午前5時くらいの時間帯だ。


 始業時間が早いとは言え、身支度を含めた私用を済まさないと、日常業務をこなす事は儘ならない。




「レナ、わたしだ。ヴァロニカだ。」



 呼び掛けに対する反応が無いので、彼女は勝手に屋敷に上がって行く。



 此処は帝国に誘拐された レナ・ミーサガ・リンバースの幽閉所である。


 彼女は城内とサリヴァン市内を見張り付きでの自由が認められて居る。


 それと引き換えに帝国に使えそうな魔導技術関連の研究成果や設計図を出す様にと、レナは帝国上層部から言われて居た。



 そんな事を言われて「はい」そうですかと従う彼女ではない。


 レナは微妙な設計図や研究論文を提示して、帝国技術者や魔導師らを集めて適当な説明をしつつ、舌先三寸で煙巻いて居た。




そんな訳で帝国が彼女の出した研究成果を元に、苦労の末に出来上がった兵器は微妙な性能だが、使えない事も無いと言うものばかりだった。


 帝国側が文句を言わないのは、レナが天才過ぎるからで、帝国技師らが不甲斐無いからだと本気で思って居るからだった。


 傍から見れば、何とも間抜けな事なのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ふああああぁぁぁぁぁぁ~っ!!」


「うーん・・・・・何よ?もう朝?」



「むにゃむにゃ・・・・・・其処に居るのは・・・・・だぁれ~?」



「ああ?なぁんだ、ヴァニロカなの?」



二階の寝室のベッドの上で眠たそうに目を擦って居るレナ。


 周りには書籍が散乱しており、本棚には引き抜かれて巻数が揃って居ない本が数多有った。




研究と戦闘以外では、本当にだらしがないのが玉に瑕と、親しい人間達は言って居た。



 そして、間違ってもヴァロニカの事をヴァカ「バカ」と呼んではイケナイ。



 レナとマーヤはからかう時にヴァカとか言うのである。


 妹達らは、しっかりとヴァロニカねぇか、ヴァロニカ姉様と呼んで居た。



「ふあああぁぁぁ~っ!」



「また、徹夜か?」



「別に良いじゃない。どうせ実家には帰えれないし、王都とから逃げなければ、お金は使い放題で、比較的自由に過ごせるんだから、こんなにも良い幽閉場所は無いわね。」



「お前がそんなのだから、周りの者が本当に雷光のレナかと言われて居るのだぞっ!!」


「折角、私が警備を甘々な状態にしてやって居ると言うのに、おまと言う奴は・・・・・とっと逃げれば良いものの、わたしやお前の家族に遠慮して大人しくして居る事も無かろうに・・・・・・・・・・」



「どうせ、何をしても世界は変わらない。」


「このまま東側勢力は、ジリジリと滅びを待つだけ。それなら私なんかの才は、帝国の利用される訳には行かない。」


「利用される位なら、私は自身の才能を腐らせるだけよ。」



聡い彼女は世界が帝国色に染まって行くの嘆いて居た。


 故国の機密に当たる事を何も知らない己は虜囚となり、敵方となった親友の預かりとなった。


 日々の何もできない日常の中で、自分を腐らせて居ると言う事が、唯一の抵抗であり、帝国への嫌がらせの様に多額の生活経費を要求する位である。


 風の噂を聞けば、妹のリナは、故郷であるダバード・ロード王国から追放され流浪の身と成ったとかで、己の両親や親族は監視付きで暮らして居ると言う。



つい最近聞いた噂では、リナはすっかり性格が様変わりして居て、帝国相手に喧嘩を吹っ掛けまくって居るとかと言う話を聞いて居た。



「ふあああぁぁぁぁ~っっ!!それじゃ、日課の見回りの挨拶は済んだわね。ご苦労様、二度寝っ、二度寝っと・・・・・・・」



「ちょっと待てえいっ!」



 ぶっきらぼうで無愛想のヴァロニカの額にバツ印が浮かんで居る。


 自由気ままの親友は放って置くと、そのままドンドンとズボラに成るのを知って居た。



ヴァロニカも別方面・・・取り分け色気の面で自分に無頓着だが、目の前の新友は、人前では着飾る事を知って居るが、それ以外面で有る生活面で、だらしが無いのだ。


 放っておくと健康を気遣っての運動の時間以外は、殆んど城内の屋敷に篭って居た。



「なぁ~に?もう、良いでしょう?何もする事が無いんだからっ!!好き勝手に寝ーかーせーてーよおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」



「はぁ~っ、貴様に付き合って居たら話が進まない。」



「簡潔に言って置く。これから出陣する事に成った。」



「えっ?!」



親友からの唐突の発言にベッドから身を起した。



「帝国辺境侯爵であるアディーレ・グレッサ少将が、行方不明の話くらいは知って居るだろう?」



「えっと、確か・・・・・・・一月前に、シャッポロの帝国海軍から艦隊を三十隻を率いてサリヴァン港に寄港して、龍雲海に向けて定期警戒に出た女性辺境侯爵で、少将の位の持ってた人物よね。」


 興味が無ければ、殆ど世事を気にしない彼女も最低限の情報は把握している様だった。



「ほう、自堕落と言う服を常に身に着けて着て居る様な性格をして居る貴様にしては、良く世間の事を把握して居るな?」


「ああ、確かにそうだ。」



「まぁね。帰港して来た彼女の艦隊を気まぐれに、場内散歩へと出掛けた際に、偶々見掛けただけよ。」



「あの日は偶々、城外の風景を眺めて居た時に、暫く振りに港に帰港した艦隊をこの城から眺め見て居たけど、あれは尋常じゃ無いやられ方よ。」



「流石に一体、何が遭ったのかって思ったわよ。」



「ああ、私も目の当たりにした。船体に在った傷痕は、とても大砲や魔法でやれた後には見えなかった。」


「それに半数以上が撃沈か行方知れずだと言うのだ。」


「生き残った兵士らの尋問には、我が国も軍幹部の将校等も同席したが、どれも要領を得ないのだ。」



二人はそれぞれの目線で、ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊・第120艦隊の末路を見ていた。



 レナは城からボロボロと成っていた艦隊に疑問を持ち、噂程度の話を人伝に聞きいて居たので、その事実に驚く。



ヴァロニカは、ズタボロの船体を見て生き残りの証言を聞き、馬鹿げた話だと思ったが、目の前のボロボロの艦隊が証拠だろうと考えていた。



「なぁ、特異能力持ちや竜人族、龍族以上に、高速で空飛ぶ鉄の龍や空飛ぶ槍なんて物が、魔力無しで飛んで居られると思うか?」




「アースティア世界の古代大戦前後に起きたって言う転移災害で現れた国々なら、そんな物が在っても可笑しく無いし、有り得たかも知れない。」


「けれど、今の時代の常識で考えれば、空を飛べるのは種族的に恵まれた生物と魔法力、それに特異能力持ちで無いと有り得ないのが常識よ。」



「今の常識ならば・・・・か・・・・・・・・・」



 暫し二人の間に、沈黙が訪れる。



「今は色々と情報が錯綜して居る。一つだけ変な噂が流れている。」



「知ってるわ。東や南に謎の島国が幾つも現れたって話しでょ?」



「ふっ!それくらいは知って居て当然か・・・・・」



レナは研究バカで世間の流れを気にしないが、最低限の情報を得られる様に努めていた。


 それに興味が沸くと、その事をトコトン追求する性格でも有るので、だらしないのに反して、必要と思われる情報や知識を集める事に関して落差が有り過ぎるのも玉に瑕だった。



それにヴァロニカは、親友個人の情報網による情報収集能力で既に得て居る事に、特段、驚いている様子は無く落ち着いて居た。



「ここ最近に成ってから、東の空向こうが最近に成って、急に明るさが増して居るんだもの。」


「噂と目で見た事を比較した結果よ。」



「それなら話が早い。実はな、最近に成って家の聖龍騎士団の航空隊の連中が、我が国から200キロの地点で、鉄の龍を見たと言う報告が後を絶たないのだ。」



「それって、もしかして・・・・・」



「ああ、多分。帝国が騒いで居る物だろうな。」



 ドラグナー皇国の聖龍騎士等が見たのは、恐らく台湾軍や同地に応援に来て居る米軍の戦闘機や偵察機だろう。



台湾共和国として某国からの独立宣言をこの世界で果たした彼の国の所在地は、ドラグナー皇国から500キロ地点に在った。



 その境界線で互いの哨戒部隊同士が、遠巻きに接触しても不思議は無かったのである。



転移した各国は、日本政府との協議で、地球転移国家群は、異世界国家との武力衝突を避ける事に成って居た。



今現在の転移国家の軍事力順位は以下の通りと成って居る。



ハワイを中心に島と海軍を中心に転移したアメリカ。


 アジアやインド洋、それに太平洋に展開して居た海軍が、主に災害に巻き込まれ200万人以上が巻き込まれてしまい、このアースティア世界へと現れて居た。



 地球では世界中に展開しているアメリカ軍は、800万人は有ると言われる米軍の一部が、紛争や挑発行為が激しい地域から忽然と軍勢が消失してしまったのである。


 地球の某2カ国はある意味、喜んで居るかも知れないし、北国のボンボン委員長が居る国も、ひょっとしたら国を挙げて万歳と言う声を叫んで居るかも知れない。



台湾共和国。


 且つては中華民国と呼ばれて居た国の勢力である国民党が、某独裁政党との争いに破れて大陸から逃げ込んだ地域である。


 且つては総兵力30万人近くであったが、徐々に兵隊を減らして来て居る今は、隣国との紛争に備えて最低限の防衛力と成って居るが、15万人くらいの兵力は残って居る。


 以外にも経済と工業力は高く在るので、ある意味この世界では、下請け関係でぼろ儲けができる地位に有ると言える国であろう。



 兵器に付いては一部の国産を除いて、その多くはアメリカ製を買って居るので侮れない。


 迂闊にも、この世界の国家らが台湾へと攻め入って戦争をすれば、手痛いしっぺ返しが待って居ると言える国だった。



ロシア連邦改めロシア共和国。ウラジオストク市があるシベリア地方の一部が転移して島に成って居た。


 クリル諸島にに加え、サハリン島(樺太)、カムチャッカ半島が半島ごと転移してい形で此方に来てしまっていた。


 正にカムチャッカ半島が、カムチャッカ島になると言う言葉遊びに成ってしまい笑えないジョークとして日本ではニュースで流れて居たりする。


 他にも近海に幾つもの無人島が多数あるらしく。ロシア政府が調査を始めたとの事である。


 その軍勢はウクライナ危機と言われたウクライナ戦争で、随分と兵力を目減りさせてしまったが、その兵力を徐々に回復させ、何んとか3軍合わせて20万人らしい。


 特に陸軍と海軍が充実して居ると言うが、ヨーロッパ地方と違って引き抜きを受けたのが陸軍だけだった事も在り、根気よく仕官を増やし、予備兵で穴埋めした努力の賜物であった。



 欧州離島諸国連合。


 その名称は地球の時と同じくEUとされていた。


 本当の名称を略すと違うが、其の儘の方が呼び易いし、地球系転移国家群の間でも知られて居るからだった。


 フォークランド諸島でイギリス軍と共に、定期の欧州諸国軍事演習訓練を行っていた時に転移災害に巻き込まれた者達であった。


 悲惨なのは、虎の子である兵器の数々が、此方側へと来て居ると言う事である。


 各国の自慢の空母や潜水艦に戦車に加え、ある程度の纏まった部隊が転移して居ると言うのだ。



 地球の欧州各国の本国では、今頃は大いに頭を抱えて居るのに違いない。



 何せ、欧州各国自慢の最新鋭装備の戦車から空母や潜水艦に至る兵器がこの世界の欧州連合に集ってしまって居るからだ。



 他にもパプアニューギニア・インドネシア・ブルネイ・シンガポール。


 マレーシア・タイ・ラオス・ベトナム・カンボジア・ミャンマー等のアセアン諸国の各軍も、多少なりともずば抜けて居ると言えた軍勢であった。



「其処で帝国が東の海へ調査をすると決めたらしい。」



「調査ねぇ・・・・・・」



「レナも思っている通り、それは表向きだ。」



「これは龍雲海での海戦で出た行方不明者の捜索と成って居るが、2が月を過ぎた今では遅すぎるし、戦で負けた為、帝国が良くやる何時も通りの建前の言い訳だろう。」


「実質の目的は、威力偵察だろうな。」


「遺族の嘆願と謳っても居るが、此処までの大敗北は、人外の領域に居る種族以外では有り得ない。」



「この周辺では、あの様な損害を出させる存在など、我らが師であるエリン様以外に有り得ないのだ。」



「グレッサ家が中心となって帝国東方面総司令部に直訴したらしいと有るが、流石にこれも怪しい。」


「直訴自体は有ったかも知れないが、その事実は定かでは無いし、それに・・・あの帝国が、其処までお人好しな事をするとも思えん。」



「それじゃ、人々から敗戦の目を逸らす為にね。」



「それが真実じゃないかと私は考えて見て居る。」



「それでヴァニロカ、わたしに会いに来たの理由は、なぁに?」



 流石は聡い親友だと思い、話が早くて助かるとも思ったヴァロニカ。




「レナ、暫く城を留守にする。」


「帝国は、我が国の聖龍騎士団にも出陣を命じて来た。」



「恐らく大方、我らドラグナーの聖龍騎士団を盾代わりと露払い役にする積りだろう。」



「それに私の力も当てにしてな。」



「ふふっ、天下無双の血染めの鋼鉄姫将軍様に敵う者が、他にも居るのかしらね。」



「全く、関係ない他人事だと言いたい様だろうが、お前もそれなりに知られて居るんだぞっ!!」


「それよりも私の帰りが・・・・もし、遅くなったり、行方が分からなくなったら身辺には気を付けろっ!!!」


「万が一の時は、私や王族の事は気にするなっ!!此処から逃げ出しても構わんっ!!」


「お前の妹のリナは大丈夫だっ!」



「エリン様が鍛えて下さったお陰で、もう十分に強い。」


「他の妹達も、もう十分に1人で生きて行ける。」


「お前は妹の為に、此処に居るのだろう。」


「父上や母上、それに兄上とも話は付いて居るし、他の親族らとも話は付けて有る。」


「まぁ、我らが皇家一族が貴様を逃がす事を了承したのは、単に暴れられて、この城と城下を焼かれるのが怖く。とても迷惑だと言うのが本音だと、何れの者達も言って居るのだがな。」


「まぁ、貴女の御両親で有る小父様や小母様に、それにお兄様ですらも出て行って良いと仰られて居るの?」


「でもねぇ・・・・・もう少しだけ、だらけて居たいわね。でもね、ヴァニロカ、わたしは、あの艦隊の悲惨な姿を見て思ったわ。」



この時二人は声が合わさって言う。



「「歴史の風向きが変わる。」」



「ふふっ・・・・・」



「くくくっ・・・・・」



思わず二人は笑った。


 多分、歴史が・・・・・・そして、それぞれの祖国が助かる時が近いと二人は、幾つもの小さな情報から読み解いて行きつつ、直感で間も無く時代が動くと感じて居たのだろう。



「やっぱり、そうか。」



「ええ。」



「じゃ、来るべき日の為に働きに行くとするか。」



其処へ、下からある人物がやって来た。



「姉上っ!!姉上っ!!そろそろ出立の刻限ですっ!!!あっ?!」



「いらっしゃい、アルビィ。」



現れたのは、アルビィーヤ・サークラ・レアモン。



 ヴァロニカの妹で、この国の第二王女である。



 真面目な頑固者で、幼い時は紅葉と何時も喧嘩をしていた悪友でもあった。



「レナ姉さま、お休みの所をお邪魔します。」


「それよりも姉上っ!急ぎませんと帝国者達が煩く成ります。」



「レナ、くれぐれも・・・・・・・・・・」



「ええ、分かってるわ。」



 ヴァロニカは、レナに近付いて彼女の耳元で囁く。



「それとアルビィを当てにするな。」


「いざと成れば、こいつは頑固者だ。情よりも決まりを優先するだろう。紅葉の奴と違って規則破りが、出来辛い頑固な性分だ。」


「私の妹が、お前を処刑台送りにして、親友達との殺し合いに成って欲しくない。」



「そうね。」



 この姉達は、「自分の妹達がこんなに可愛くてしょうがない!!」と言う表現が正しい位に妹達を溺愛して居る。



「ではな・・・・・」



 鎧の金属を響かせてヴァロニカは、アルビィと一緒に屋敷を退出して行った。その背中をレナは静に見送って居た。



 後にこのドラグナー皇国は、日本を中心とした国際連合で採決される帝国への一大反攻作戦を議決し、国連軍を結成。本格的な反撃作戦を決行に移す事に成る。



 その国連軍による大上陸作戦により、多くの犠牲を払った後に解放されのだが、それに至るまでの道には、親友同士の殺し合いしなければ成らない過酷な運命が待ち構えて居るのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る