32話 自衛隊西方への大遠征。発動!輸送艦隊護衛大作戦・・・・・・なのです! 2

 佐世保基地と呉基地は東シナ海の警戒態勢を取りつつ、護衛艦隊の一部をコヨミ皇国に派遣している関係で、これ以上の派遣は困難と成っていた。



 その穴埋めを横須賀基地、舞鶴基地、大湊基地から増派で補われて居た。


 バックアップとして在日米軍とロシア軍が万が一に備えて待機して貰って居る。グアム島の米軍と台湾軍が、帝国の勢力圏である大陸よりの西側の海を監視を続けていた。



 その他の地域は米軍を始め、転移に巻き込まれた欧州各国の軍と現地の軍が協力体制を敷いて居るのだった。



更にこの艦隊は、今度行われる海上自衛隊観艦式に参加予定の艦隊でも有る。


今海上自衛隊は、全てのドッグで補修と修理、改修、総点検が行われて居た。


普段は輪番体制を行い4分の1くらいがドッグ入りして居て、残りが訓練と警戒任務に付いて居る。



 政府は事の危機的状態が明らかに成るに連れて、直に戦時体制準備に入りつつあった。


臨時予算を組んで先ずは、全護衛艦の整備を開始したのである。



次に装備と弾薬の生産体制も請負の会社との交渉に入って居る。



特にロケット兵器関連や電子機器関連の生産計画は、急ピッチに進められていた。


 電子部品関連の会社の一部は、サービス業関連の会社に人材確保と一部閉店を決めた店舗なんかを町工場に改装し、生産に向けてお互いに提携する契約に動き始めていた。


 半田ごてでの溶接とプログラム技術さえ有れば、パソコンや電子部品の簡単な生産は、可能と見られて居る。


 特にミサイル内の電子基盤の国内の生産が間に合わなく恐れが有る。



 これは使い捨て同然の部品が多く使われており、それらの部品の余剰の生産体制の構築が、今課題と成って居るからだった。


 また、アマテラス計画と言う観測ロケットとGPS衛星の打ち上げ計画が進められて居た。



 その第一計画が、5月5日に種子島宇宙センターから5本のロケットが打ち上げられた。



 その内容は、軍事監視衛星2機とGPS衛星1機と通信衛星1機、それに気象衛星1機の打ち上げである。


 それでも日本が世界を股にかけて使用するには、幾ら有っても足りないのである。



 当面は生き残っているアメリカの軍事衛星と転移に巻き込まれた宇宙ステーションの使用が、アメリカ臨時政府から許可されていた。


「アメリカ合衆国とニホン国は、一身胴体デース。他の同胞の国々と一緒に成って、この難局を乗り切りましょう。」


「それに自由と人権を踏みにじる帝国なる国は許せまセーン。奴らに正義の鉄槌を下してやりマショウ。アーッハッハッハ。」なんて言ってたりする。


 まぁ、かつてわが国と喧嘩してスッチャカメッチャかした挙句。


 日本と笑い合ってフレンズをしている合理主義で打算主義、ドラ〇もんに登場するガキ大将、ジャ〇アンみたいな国なのだ。


 博愛と自由と人権を謳っている割に、ヨソモノをノケモノにする扱いが多いような・・・これは言い過ぎかもしれないが、それは兎も角、アメリカ軍が後方を守ってくれるのは、日本に取って心強い事なのである。



 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月30日・午後14時00分・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代港・防衛省・新世界アースティア・ユーラシナ大陸調査自衛隊派遣隊総司令部・万代支部・日本国及び自衛隊専用区画港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 日本から輸送任務の為に増援として、新たな護衛艦隊が、この万代港に入港しようとしている。


 この万代市に訪れている竜史は、異世界の多国間の交渉に関する仲介の仕事と各国の大使との相談面会の合間を縫って、紅葉を伴い日本から新たにやってくる第二次大陸派遣艦隊を出迎えにやって来ていた。




 近くには万代藩主の伊達愛海、その後ろに控えめな感じでお供をしている片倉喜多。


 地元の地方軍のコヨミ皇国軍からは、高雄瑞樹と愛宕千棘の二人が来ていた。


 そして、海自派遣隊の代表でもあり、日本異世界外交大陸調査派遣団の自衛隊全総司令官でもある羽佐間道直海上幕僚長が出迎えに来ていた。




「ねぇ、竜史。今日来るって言う最新の護衛艦って、どう言う物なの?」



紅葉が竜史に、最新の護衛艦であるあかつき型についての一般的な範囲での質問をしてきた。



「あかつき型護衛艦は、あきづき型護衛艦をベースに作られた護衛艦だ。全長151.1m 幅17.4メートル 排水量4650トン。」


「127ミリ砲塔 1基 20ミリCIWS2基 90式SSM4連装発射筒 2基 Mk41VSL(シー・スパロー短SAM、アスロックSUM) 1基(32セル) 3連装短距離魚雷発射管 2基。」



「 航空機 SH-60J/K哨戒ヘリコプター1機 乗員176名で、あまりあきづきと性能は変わらないけど、元々は最新の護衛艦の数を増やす目的と、古くなったはつゆき型の交代を目的に建造されたんだ。」



あかつき型の1番艦あかつき・2番艦ひびき・3番艦しらつゆ・4番艦しぐれ・5番艦すずかぜと名づけられた。


 (ちなみに実際の海自では音響測定艦ひびき型のひびきがあるが、名前がことねと成っていて、この世界の日本では音響測定艦ひびきとして名前は存在していない。)


 このあかつき型の名前が付けられた経緯は、今だに根強い人気を誇る某ネットゲームの影響がある。



 そのゲームは、今では護衛艦を女の子に擬人化するまでとなり、親子二世代に渡る人気ネットゲームと成って居た。



「言ってる事の殆んどが分からないけど、確かに貴方の国は、軍事力が凄いのに戦闘艦の数が、この世界の基本水準に比べて少な過ぎるものね。」



「元々隣国の軍備拡張に併せた配備だったからな。地球の水準でも日本はちょっと足りないかな。でも維持して行くのが大変だから、日本は軍艦の数の管理での匙加減は難しいと思う。」



海自の音楽隊が海自の行進曲でお馴染みの「軍艦」で、第二派遣艦隊を出迎え、遥々日本からやって来た護衛艦隊が湾内に入港する。


 入港して来た護衛艦隊の編制を見て、竜史が想わず口にしてしまった台詞があった。



「おおっ!あれはファンの間でも、お約束の編制なんて言われている護衛艦達だ。此処は愛称で呼ぶのがファンとしての礼儀だろう。」



「礼儀ねぇ・・・・・・・」



 また、ロクでもない事を言うんだろうなと呆れ顔をしている紅葉。



「つっきー、びっきー、雷電。」



「んん?あれ?何で最後は名前を纏めるのよ?」



入港して来たある護衛艦を順番に愛称で呼んで行くと、竜史は一緒に入って来た二隻のある護衛艦の名を何故か纏めて呼んだ。


 その事を疑問に思う紅葉、その答えは船を降りて来た若い海自隊員の一言で分る様な感じに成るのだった。



「「「「「一緒にするな!」」」」」



「「「「「纏めるな!」」」」」



「「「「「人括りにするな!」」」」」



言ってる事は同じなのだが、このツッコミは多くの護衛艦ファンの間ではお約束な事なのである。


 ・・・・・と言うか、あかつき型の命名は、これを狙ったものではないかとの噂話が有るのだ。



 とは言え、本当の自衛官がこんなツッコミ染みた言い返しはしないが、○これが未だに流行って居る関係で、これ等の護衛艦に乗っている隊員の一部が、見にやって来る客に対して、ツイツイ言ってしまう場面が見られた。


 ちなみに海自の一部の隊員は、○これをしているが、いかづちといなずまの主な隊員達は、オタクではない。


 特に新しく出きたいなずまの乗員は、そう言われる原因を○これを遊んでいる隊員から言われて知ったばかり者も多い。



 いかづちの方は、主なオタク隊員が転属と成り、これも後ほど奇妙な纏めた呼び方の原因を知る事となる。


 かくして港に着く度に、火消しの一言を言ってしまう隊員達なのであった。


 紅葉は、隊員らの心の内を読み取ると竜史の悪戯同然の呼び方に合点が行くのであった。



そんなふざけたやり取りの中で、万代港は既に船が、一杯なので、一部の艦長や主要な海自幹部らは、内火艇を使って桟橋まで船でやって来ていた。



 その中でも護衛艦きりしまでやって来た海自幹部の代表が女性である事がコヨミ皇国側を大いに驚かせた。


 海上自衛隊にも女性隊員は少ないがそれなりの人数は居る。


 だが、艦長を含めそれほど多くの女性自衛官が護衛艦に乗船している訳ではない。


 近年に成ってから、ようやく女性艦長の就任が認められる様に成って来たが、何故、女性を採用し辛いかと言うとトイレや浴室等の言わば、男女で使用を分けなければならない部分が有っての事である。


 プライベートの殆どが無い、護衛艦と潜水艦内の船室での相部屋は、特に大きな問題として取り上げられて居た。


 今まで改善をしなかったのは、その特殊な事情故に、海上勤務をする女性自衛官の配備は見送られて来た経緯が有ったからである。



 建艦される護衛艦は、女性に対して配慮すべき余分なスペースの無かったからである。


 それに建艦する資金は税金である。


 戦闘艦で有る護衛艦に余分なスペースを作る事は、運用上の余分な負担と成るからだった。



 特に古い護衛艦になれば成るほど女性にとって使い勝手が悪い事がある。



 そして、近年に成ってから、そうした事を最初から考慮したひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦が建艦配備された頃からは、女性の配備前提の設計に成って来て居る。



そんな事情をコヨミ皇国の人達に説明した事も有り、実際に真実を目の当たりにして居るので、大変に驚いて居るのだった。


 これは日本としての交流上のアピールでもあり、女性の軍人が多い相手国に対する配慮でもある。



 女同士なら話し易い事も有るだろうとの考えからであった。



 きりしまが岸壁に接岸し、桟橋が降ろされた。



 降りてきた女性は、コヨミ皇国側の人達の前で初めてと成る海自女性艦長である三石琴実2佐は敬礼して到着の挨拶をした。




「三石琴実2等海佐、コヨミ皇国への向う第二次大陸派遣艦隊の総指揮官の任務を無事に完了しました事を羽佐間道直海上幕僚長に、ご報告を申し上げます。」



「ご苦労。」



「コヨミ皇国の皆さん、改めまして三石琴実です。先ほど申し上げましたが海自の2等海佐であります。」



コヨミ皇国側の人達もそれぞれ形式の敬礼で挨拶をする。迎えの車が横付けされると、それぞれ指定された車両に乗り込んで行った。



 万代港には、自衛隊の為に用意された土地に駐屯地と海自基地、更に仮設だが郊外の空き地には、空自基地設置され始めて居る。


 滑走路は、既に設置済みである。



 これは日本とコヨミ皇国との最初の取り決めで話し合われて設置されて居た。



 万代市の自衛隊基地の場所は、万代港の南に空き地が広がって居り、其処を中心にして、陸海空自衛隊の施設が建てられて居る。


 基地の周囲には、金網のフェンスとコンクリートの壁で囲まれて居る。



 それは郊外の空港を管理する空自の施設まで広がって居た。



 今はそれぞれの建物がバラバラに建っているが、何れは屋根付の廊下で繋がる予定でいる。


 此処の基地は、主に日本本国との連絡と補給基地に使用される。



 此処から皇都の基地に向けて様々な物資が送り届けられて行く。




 海自は主に万代港を拠点に、各地へと展開できる基地として此処を利用する予定だ。


 空自は各地の空港に併設される基地が活動の拠点であるが、同時に海自の航空護衛艦との連携も欠かせない。


 陸自は各自衛隊の拠点となる全ての基地に駐屯地が作られている。




 これらの自衛隊の基地と駐屯地の設置は、今の所、コヨミ皇国の南西国藩の藩州都である賀古島市、万代藩の藩州都の万代市、コヨミ皇国の皇都の星都市。



 それとダバード・ロード王国のアルインランド州・州都・ベルクラネル市の南に広がる湖、アイリッシュ湖に浮かぶガイダル諸島に有った古い時代の航空基地を改修して作った連絡拠点であるガイダル・タバ日統合隊基地の稼働も始まっていた。


 日本は着実に異世界の国防と調査を続けて行く足場を固め始めたのであった。

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