外伝1話 混乱する転移国家たち 前編

 アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月1日・午前9時00分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本国・関東地方・東京都・千代田区・永田町・総理大臣官邸にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 この日の総理官邸は、何時もと変わらない平凡な日常の朝である・・・・・・・筈だった。



 日本国総理大臣である安元宏孝は、毎月の最初の初日の1日には、内閣閣僚等を集めての定例閣議を行う事を決めていた。


 午前9時に成ると総理官邸に各閣僚が集まり、定例の報告と意見交換等を含めた会議が有る筈であった。


 だが、この日は何時もとは違って居た。


 総理たる安元が総理公邸を出ようとした瞬間であった。



 体感震度が7強くらいの地震が日本全土を襲ったのである。


「今のは物凄い地震だったな?」


「ええ、そうでしたね。」


「それよりも安元さん、急いで官邸に向いましょう。」


「これ程の地震が発生したのですから、国内の何所かで・・・少なくとも関東地方内部には、何らかの大きな被害が出て居るかも知れませんから・・・・・・・・・・」


「そうだな。総理官邸に向かう移動途中にでも、直ぐに気象庁や関係各省庁に、何か無かったかを問い合わせて置いてくれ。」


「分かりました。手配します。」と安元の秘書は答えた。


 日本人に取って地震は体感し慣れたモノある。


 その昔、19世紀末には、お雇い外国人として日本にいたジョン・ミルンやジェームス・アルフレッド・ユーイングが地震を体験した事が切っ掛けと成り、日本地震学会が設立され、地震計の開発や地震の研究が進み始めたと言う話がある。


 日本人に取って日常的で当たり前と成って居る自然現象でも、外国では地震と言う災害現象を知る人々は火山地域に住む人々か、その地域に行った事が有る人くらいなものである。



 そんな地域に行った事も住んだ事も無い人達に取っては、未知の体験で有り、日常生活とはかけ離れた遠い自然現象の一つなのであった。


 それはさて置き、此処からが永田町の長い日が始まったと言える。


 安元が総理官邸に着くと早速、その日のスケジュール確認を執務室で受けようとした時だった。


「たっ、大変ですっ!!!」


「先ほど入った情報なのですが、外国との通信が一部を除いて途絶して居るとの情報や苦情が、都道府県各地の国民達からの通報が相次いで居るとの事です。」



「これは大手通信会社3社が、苦情電話を通じて発覚した事なのですが、外国とのネット回線の繋がらないの事に腹を立てた国民達が、通信関連を統括する担当省である総務省に向けて、引っ切り無し苦情を言って来て居ます。」



「まぁ、落ち着けっ!!それ位なら通信会社と電気工務会社に通じて、調べさせれば良いだろう。」


「それが通信会社各社の方からも、幾度もシステムと設備を点検したそうですが。システムソフトウェアも通信設備にも、特にこれと言った問題は見当たらないとの事です。」


「そんな馬鹿な事を言うなっ!!現に苦情が殺到してるだろうがっ!!!」


「総理、それだけではありませんっ!!」


「別の筋からの続報なのですが・・・・如何やら近隣で飛行中の飛行機が引き返して来て居るそうなのです。」


「何でも日本を離れると隣国の航空管制局との連絡が一切が取れない事と、日本国外でのGPSの使用も一部を除いて使用不可能に成って居ると言って居ります。」


「安全面を考慮し、空港に着陸して飛行機の総点検をしたいとの事です。」


「それで、それ何機なんだ?」


「少なくも200機以上は居るかと・・・・・・・」


「何いいいぃぃぃーーーーーっっ!?」


「直ぐに急いで、それら引き返して来た旅客機らを、全国の飛行場に燃料の残量に応じて、分散形式で順次着陸させるんだっ!!」


「下手をすれば、大惨事に成り兼ねないっ!!!」


「総理っ!!」


「今度は何だっ?!」


「それがその・・・今度は船舶の方も日本に帰港したいとの多くの問い合わせが、全国の港に入って来て居りますが・・・・・・」


「それも直ぐに対応させるんだっ!!」


「ったくっ!!!一体、何なんだ?今日は・・・・・・・・」


 安元は、最初は何らかの不備が関係機関での出来事が、立て続けに偶然にも続いて居ると思い。


 対処と復旧を急ぐ様にと指示を出した。


 また、通信設備関連会社と航空運行会社や船舶運行会社の社長等を呼び出して、この度の不祥事は一体、如何言う事なのか事情説明を求めたが、呼び出された社長らに、逆に政府へ苦情を言い返されてしまう。


 其処でお互いの主張が食い違っている上に、似た様な事で混乱して居ると確認すると、取り合えずは、それぞれが管理して居る部署の安全と設備の復旧と調査の結果をお互いに取り組み報告し合うと決めた形で、その場を収める事に成った。


 其処へ文科省と気象庁から共同で、総理官邸へと新たな報告書が届けられた。


「総理、文科省と気象庁から共同の報告書です。」


「今朝方、午前7時30分頃に発生した地震は、気象庁や地震研究施設と火山研究施設など日本各地大学研究機関共に観測装置の針に動きが無く。震度ゼロと出て居るそうなのです。」


「また、今日起きた地震は、人や乗り物に建物には大きな揺れを感じされるだけだったとの確認が日本全国の調査した結果、全て同様の現象であるとの確認が取れました。」



「また、地震による被害と思われる事故や建物は、現在の処、300件前後との事です。」



「引き続きこの地震による被害報告を注視して行くと共に、自衛隊・警察・消防等で災害に対する支援活動と合同対策本部を設置しも事態の対処を致して居ります。」


「それと興味深い事が国交省からも報告されて居ます。」



「先月3月の末日の事なのですが、正確には29日から31日掛けて日本近海の航行する船舶と航空機が消息を断って居るらしいとの事です。」


「んん??ちょっと待ってくれっ!!!何でそれと今回起きた地震との関連が、どう関係在るんだ?」


「それがですね。何れも消息不明と成った地点で、無線機の通信が途切れる寸前に、何れも地震みたいな感じの大きな揺れが起きたと言ってからプッツリと通信が途絶えて、忽然と姿を消して消息を絶ったと言うんですよ。」


「船なら波が激しく揺れて居るせいとも言って、何とか説明もこじ付けも付けられるが・・・・航空機の飛んで居る空も風と空気抵抗の摩擦具合で荒れて居れば、揺れもするだろうに・・・・・・・・・」


「確かにそうでしょう。」


「でもですね。旅客機の飛行を管理して居る近隣地域の管制塔とのやり取りで、激しい揺れが起きたと言って居るんです。丸で地震の様だったとも・・・・・・」


「それは単に時化て居るとか、乱気流とか、現場が単に混乱して気が動転して居るだけの何かの間違いじゃ・・・・・・・・・・」


「我々も調査して居る関係省庁機関等も、最初はそう思ったんですけど・・・・・・調べを進めて行く内に、そうとは言い切れないんですよ。」


「では一体全体、何だと言うんだ?」


「話を勿体ぶらずに経過よりも、分かって居る結果を言って見ろっ!!!」


「では答えを簡潔に言います。」


「総理は、ここ最近・・・世界規模で起きて居る奇怪な事件を知って居ますね。」


「ああ、G7サミットや国連総会でも話題にも成って居たな。」


「国や諸島、果ては船舶や飛行機に至るまで消失した神隠し・・・・・我が国も昨年に起きたジブチ・ソマリア消失事件で自衛隊員に被害を出してしまった事で、内閣に対して責任問題として槍玉を食らったが、それは幾らなんでも無茶振りも良い所だ。」


「流石に何時起きるとも分からない自然災害までもが、この俺と政府のせいにされてもな。」

「流石に自然災害を如何にかしろと言われても、如何にも為らないと言うので、それを理由にした内閣不信任決議案は免れた。」


「それで・・・・それが如何したと言うんだ?」


 昨年の春頃に起こったジブチ・ソマリア消失事件。


 それはジブチ共和国と隣国のソマリアが突然に消えると言うニュースが、地球世界各地の国々で、大きな話題を呼んでいた。


 これまでもバミューダ諸島を軸にしたバミューダトライアングルの様な消失事件みたいな感じのオカルトめいた消失事件は、地球世界でも立て続けに起きて居たが、どれもホラ話も良い所。



 しかしながら、そんなオカルト都市伝説とは別に、地球世界では5年ほど前から船や飛行機に、島等が忽然と地球世界地図から消えていた。



 その中には米軍の1艦隊が、丸ごと消えると言う珍事も起きたので、当事国であるアメリカは、国を挙げて発狂するほどの大混乱となり、その対応に追われて居たが、事件の解決には至って居ない。


 日本も自衛隊が海賊対策で派遣して居た部隊が、派遣された現場地域に在る基地と共に、その運命を共にしたので、日本政府が・・・自国党政権その物が、その責めを負わされそうに成って居たのである。


 また、ジブチに居た筈の国際有志連合は、ソマリアの治安維持にも関わって居た事も有り、消失事件での被害者人数は、最大で約5万人が消えたとされ、多くの将兵らが犠牲と成って居た。(この作品内での2030年地球世界設定での編制)


「我が国が・・・・いいえ、正確には我が国と一部の国と地域。」


「それにオマケと言わんばかりに、航空船舶と一軍と艦隊に加え、複数の陸海空軍から成る基地などの施設が、地球から一斉に消失したのでは無いかのと・・・・・・文科省や気象庁、それに国交省は各情報を整理した上で、この時空転移と言う事象が、今の日本の状況下に起きて居る事なのでは無いのかと・・・・結論付けて居るのです。」


「そんな馬鹿なっ!!!」


「それこそ有り得ないっ!!!」


「世界から消失したら、生命体その物の命が無いと、各界の学者達が結論付けて居る筈じゃ・・・・・・・・・・・・」


「それも仮説での憶測であり、実際に体験した訳でも結果を見た訳でも有りません。」


「ですが、これを前提に動くべきと転移に巻き込まれた。或いは遭遇したと見られる行方不明事件を調査して居る関連省庁が、総理に上申して来て居ます。」


「総理、此処は臨機応変にあらゆる事態に備えるべきです。」


 総理官邸に詰めて居る官僚達等の一言、一言に聞かされる意味不明な出来事に、事態を整理して行く許容量をオーバーと成ってしまった安元は、一時黙り込みながら頭の内で情報を整理して行く。


 数分間掛けて見聞きした情報を整理して行く中で安元は、これまで発生した一連の混乱中には、何かが在るとも思え始めて来て居た。


 其処で彼は的確な指示を出そうと動き出す。


「それもそうだな。何も無ければ笑い話で済む。」


「至急、防衛省に居る小西に、自衛隊の災害出動を命じてくれっ!」


「海保にも連絡を入れて、近隣の船舶の救助と誘導を命じて欲しい。」


「災害出動ですか?」


「そうだ。建前上は仕方ないだろう?それに海保だけでは、手が足りないだろうし、空自と海自による飛行偵察も不可欠だっ!」


「分かりました。小西防衛大臣と杉下海上保安庁長官に伝えます。」


「おおっと、それと此処が異世界と言うのならば、迂闊な争いは成るべく避けてくれっ!」


「今混乱の最中に在る日本が、異世界国家と紛争や戦争と成るのは、非常に厄介だからな。」


「だが、向こうから仕掛けてきた場合は、遠慮は要らない。」


「追い払う程度で良いから、此方の強さを見せつけてやれっ!!でないと我が国の国民や国土に友好国とその民間人等を守れんからな。」


 安元が官僚や秘書らに妥当な指示を出すと、総理官邸の窓から外に目をやる。


「・・・・・これは長い一日に成りそうだ。」


 外では変わらない風景だが、一部で騒ぎに成り始めていた。



 その直後である・・・・・・・今度は海保と防衛省からであった。



 それは起きては欲しくない恐れていた事態である。


「総理、海保の巡視船やしまと海自のP-3C哨戒機が、行方不明と成って居た定期船フェリー、あさくら号を東シナ海沖で発せられて居た救難信号と無線通信を受信し、発見に至ったとの事です。」


「あさくら号?」


「はい。2日ほど前から行方が分からなく成って居る民間企業の定期船フェリーで、福井県の敦賀港から新潟県の直江津港を結んで居る定期客船です。」


「この他にも多数の客船や貨物船。そして、旅客機などが行方不明と成って居ましたが、ここ数時間の間に、次々と我が国に無事な報告や救援を求めて居ます。」


「あさくら号は、今朝方に一番に、確認が取れた船だと海保と海自は言って来て居ます。」


「報告が遅れたのは?」


「恐らく現場の方が、実動部隊の自主対処が早かったらしく、トップである頭の省庁は、今は災害に伴う対応に追われて混乱して居る為かと・・・・・・・・・」


「如何に混乱しているとは言え、人命に関わる事だ。」


「自主出動した事の積任は訪わんから、一刻も早く救助や災害対応を迅速に行なう様にとの指示を出せっ!」


「それと護衛艦を向わせろっ!東シナ海は外洋だっ!!何かが有ってからでは対処が遅過ぎる。」


「はい。既に事の次第を聞いた小西防衛大臣は、対処に必要な指示を出して居ます。」


「他の省庁も対応に追われて居ますが・・・・・・・・・・」


「だったら夕方までには各省庁の仕事をそれぞれの副大臣に、引継ぎをさせて官邸に一時報告に来させろっ!」


「少なくとも9時か10時には第一報の速報を報せる記者会見を開く。明日には、その結果報告を国民達に向けて、発表が出きれば良いが・・・・・・・・・」




 たが、安元の不安の予想は的中し、その混乱は一向に収まりそうに無かった。




 防衛省では、小西勝幸防衛大臣が各地の自衛隊に、謎の地震災害が原因で起こった事に対して、災害出動を総理大臣よりも先駆けて行って居た。


 災害出動が発動されるのと同時に被害が出て居る地域の県や市町村からの災害出動要請が寄せられて居た。


 また、地方の自衛隊基地と駐屯地から地元での起こった被災場所に向って良いかと問い合わせて来ていた。


 彼の時空振動地震は、地震計には反応が無く。


 乗り物に建物や大地には、少なからずの影響が有った様だった。


 まだ、多くの日本国民が、この未知の天災の事を通常の地震災害で、しかも珍しい日本規模の大地震災害と思って居たのである。


「ったくっ!何なんだっ!今回の地震は?」


「分かりません。」


「ですが、可笑しな事ばかりが報告されています。」


「小西大臣。空自の偵察機であるRF-4EJ改や海自のP-3C哨戒機を日本周辺海域に派遣して、状況の実体を調査して居ますが、民間の飛行機や船舶が見た事も無い帆船を見たと言って居たり、パイロットの中には、竜を見たと言う報告が有ります。」


「竜だと、そんな馬鹿な話があるかっ!!!」


「幾ら日本がオタク的な文化が強くて、ファンタジー作品がゲームや小説にアニメに至るまで作られて居るからって、見間違いやデマにしては盛りすぎた話だっ!!!」


「ええ、そうですね。確かにそう思います。」


 其処へ総理官邸へとよりも早く、多くの情報が集められ大臣執務室へと上がって来ていた。


「小西大臣。佐世保基地の地方総監である西村智道海将から緊急通信の知らせが届いて居ます。」


「西村海将から?」


「はい。海自の岩国基地から飛び立ったP-3C哨戒機が、あさくら号と言う定期船フェリーからの緊急救難の通信をキャッチしました。」


「そのフェリーが東シナ海方面で殆んど立ち往生している状態で、微速航行しており、とても日本への到達が困難して居るとの事で、救難要請が来て居ります。」


「それなら国交省の管轄下である海保の事案だろう?」


「其方を差し置いて海自が現場海域に居合わせた訳でも、海保からの協力要請すら来ても居ないのに、率先してやるのは越権行為に近いから、それは流石に不味い。」


「それもそうなのですが、その海保からも協力要請が来て居ます。」


「その理由は?」


「それは救難海域が外洋であり、今の日本はとても混乱して居る状態です。」


「海保も巡視船の多くを日本近海での救出出動に船の多くを割いて居ます。」


「曳航とも成ると、護衛も必要に成るかも知れません。」


「海保も出来る限り早く、巡視船を派遣すると言って居ますが、自衛隊も多用途艦や掃海艦などを含めて曳航させれる艦を救出船として、派遣を検討すべきかと・・・・・・」


「なるほど、でもそう多くの派遣は出来んぞっ!!!」


「ええ、状況に応じてですが、今回の様に外洋での事故や護衛を想定する場合は、民間船に対して、特定の場所で合流させて護衛や曳航するとすれば、救出対策案としては良い方法かも知れません。」


「そうかっ!ソマリア沖の海賊対策で、やった方法か?」


「そうです。これなら海保より船数の少ない海自でも対策と対処は可能かと・・・・・・・」


「ヨシっ!全自衛隊でも日本や外国籍の船や航空機の可能な範囲での護衛や誘導をするんだっ!」


「国交省と海保との調整も必要だが、協力が必要なら此方も調整すると伝えてくれっ!」


「はい。」


「陸自は引き続き、都道府県や市町村の要請に応じた災害出動に、全力を尽くして欲しい。」


 其処へ総理官邸に居る安元総理から改めて、防衛省宛に命令指示が来ていた。



「防衛省と自衛隊は、各都道府県や市町村自治体の要請に応じての災害出動を命じる。」と。




 小西は、これで動きやすく成ると、全国の自衛隊に向けて本格的な災害出動を命じるのであった。


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