第3話 クリスマスを守れ、アバレオン!
「クリスマスイヴだってのに、悪党どもは出てくんな!」
アバレオンは一人、廃棄されたはずの化学工場でゾクアックの戦闘員達と格闘していた。
マゼンタはちゃっかり有給取得で休暇の為の孤軍奮闘だ。
戦闘員をあらかた倒したところで、アバレオンの足元が爆ぜる!
「ちぃ! 誰だ!」
バックステップで回避したアバレオンが見上げると、白骨でできた異形の拳銃を構える紫のヒーロー風のスーツを纏った怪人が産業タンクの上でたたずんでいた。
「俺の名はコップキラー、貴様を殺す男だ!」
コップキラーが名乗りを終えてから再度銃撃を行う。
「コップキラー? あの裏切り者か! ふざけんな、ぶっちめる!」
スーツの弾道予測機能を駆使し、コップキラーへと走るアバレオン。
だがアバレオンが自分の間合いに相手をとらえた瞬間、彼の背中に衝撃が走る!
「ぐはっ!」
回避したコップキラーの銃弾が跳ね返りアバレオンの背中で爆発する。
床に倒れ伏すアバレオン、コップキラーは拳銃を乱射し工場の爆破を始める。
爆発が連鎖し始めたのを見たコップキラーは瞬間移動で工場から消えた。
そして、工場全体が爆発し炎に包まれた。
跡地からは、アバレオンの遺体は発見されなかった。
時間は進み昼時、夕暮町の駅前広場はクリスマスで賑わっていた。
ツリーが飾られてクリスマスソングが流れ、そこかしこでサンタクロースやサンタガールに扮した住民が商売に励んでいた。
そんな平和な昼時、突然空が曇ると同時に雲を割って現れたのは空飛ぶ海賊船。
ゾクアックのアジトであり旗艦ザイアーク号だ。
ザイアーク号から広場へと錨が卸され、鎖を伝って怪人や戦闘員達が滑り降りてくる。
「ヒャッハ~♪ クリスマスの大略奪だ~♪」
赤と緑で彩った人体模型もどきの怪人が叫ぶ。
「男は殺せ! 女はさらえ~♪」
両手がフォークの七面鳥怪人も叫ぶ。
「宝石は私の物よ~♪」
ブロンズ色の肌に宝石を散りばめた女性型の怪人も高らかに宣言する。
「アバレオンは倒した、助けは来ない」
最後に降り立ったコップキラーが、アバレオンを倒したと宣言し人々を震え上がらせた。
「も、もうだめだ~~!」
叫び声をあげて逃げ出す人々、それを追い回す戦闘員達。
平和だった街は悪の魔の手に落ちようとしていた。
だが、邪悪が蔓延るなら立ちふさがる者達もまた必ず現れる。
「勝手な事、抜かしてんじゃね~~~っ!」
怒りのこもった筋肉質な僧侶の叫び声と共に、天からの雷が戦闘員達へ降り注ぐ。
「お前らの好き勝手にさせるかよっ!」
爆発に巻き込まれたはずの心破も叫ぶ。
「貴方達の悪行、見逃せません!」
涼しくも怒気を孕んだ声で囁く白い礼服姿の金髪の美青年も猛る。
「クリスマスの平和は私達が守るんだから!」
緑色の忍者装束を着たポニーテールの少女も怒る。
「貴様は死んだはず! そして貴様らは一体何者だ!」
アバレオンこと心破が生きていた事に驚くコップキラーが叫ぶ。
「へっ! そう簡単にくたばってたまるかよ行くぜ、獣着!」
「仏身降臨っ!」
「変身っ!」
「戦闘変化!」
心破と同行者達が一斉に変身する。
「獣王刑事アバレオン!」
「怒りの化身、ヴァジュラマン!」
「白薔薇の騎士ブラン!」
「戦闘忍者ミドリ!」
まずは各自が名乗りを上げる。
「「我ら、クリスマススクワッド!」」
次は全員でチーム名の名乗り。
「クリスマス限定の特別チームで、お前ら全員ぶっちめる!」
そしてアバレオンが締めると同時に、ヒーローとヴィランが同時に動き出した!
「さっきの借り、返してやるぜ裏切り者!」
「くそ、貴様は死んだはずだ! 何故生きている!」
コップキラーの銃撃をジャブで打ち落としながらラッシュで攻めるアバレオン。
「サンタクロースに助けられたんだよ!」
コップキラーのドテッ腹にストレートを叩き込むアバレオン。
コップキラーが消えた後の工場内に現れたのは赤い服を着たガタイの良い老人。
全宇宙に名を轟かす聖なるスーパーヒーロー、サンタクロースその人だった。
「やられたなあ、坊や? 今助けよう」
サンタクロースはアバレオンを白い袋に包むと、指を鳴らして空間転移を行った。
意識を取り戻した心破が周りを見回すと、戦艦のブリッジのような場所で大勢のサンタクロースが準備に追われている景色だった。
「お、目覚めたか♪」
心破に声をかけたのは自分と同じくらい似つかわしくない筋肉質な肉体を僧衣で包んだ坊主頭の青年だった。
「サンタがいっぱい? 何で坊さん?」
疑問符で頭が満ちる心破の所へ駆けつけたのは更に場違いな白の礼服姿の金髪の美青年と緑色の忍者装束を纏ったポニーテールの美少女。
「大丈夫ですか? 汎銀河警察の刑事さん?」
「わ~っ♪ アバレオンの中の人だ~♪」
美青年が手を差し出したので受け取り立ち上がる心破。
美少女は瞳を輝かせている。
「あ~、何だかわからねえが助かって何かに巻き込まれた見てえだな?」
心破がつぶやく。
「礼応巡査部長、遅かったですね?」
サンタガールの格好をしたマゼンタがサンタクロースと一緒にやってくる。
「ぶ! お前何してんだよ?」
驚く心破に対して、マゼンタは冷静に告げる。
「特別任務です、サンタクロース様のお手伝いをするように私は有給扱いですが
礼応巡査部長はペナルティとして辞令が出ております」
淡々と告げる相棒に唖然とする心破。
「な~に、悪いようにはしねえよ♪ お前らヒーロー共にはチームを組んでもらい悪党を叩きのめして子供達にプレゼントを配るのを手伝ってもらいてえんだ♪」
サンタクロースが渋い声で微笑みながら語る。
その声に、心破は自然とサンタの言葉を受け入れた。
「お前らヒーロー共にもプレゼントは用意してある、気合い入れて行こうぜ!」
サンタの号令に自然と心破も拳を突き上げていた。
かくして、サンタクロースにより集められたヒーロー達は動き出した。
六本腕に五つの目の魔神のヴァジュラマンが人体模型もどきを雷を纏った蹴りで撃破すれば白い薔薇をモチーフにした甲冑を纏うブランも七面鳥怪人を華麗な剣戟で打ち倒す。
カエルをモチーフにしたヒーロースーツを纏ったミドリも、宝石女のビーム攻撃を
ケロケロと避けながらトリッキーな動きで逆に翻弄して蛙飛びアッパー頭突きで地球の外まで吹き飛ばすと戦績を上げた。
「「決めろよ、アバレオン!」」
仲間達の激励に応えるようにアバレオンが両腕のタービンを回転させる。
タービンが回りだすとアバレオンの拳が赤熱化した。
「燃えるぜ! アバレオンインパクト!」
コップキラーを燃える拳のラッシュで攻め立てそのガードを崩す。
そして、コップキラーの顔面にとどめの左ストレートを打ち込んだ!
ドカンと派手な爆発を上げて、コップキラーは爆散した。
ゾクアックの怪人軍団は敗れ去り、ザイアーク号も錨を上げて空へと消えて行く。
ヒーロー達、クリスマススクワッドの勝利だ。
「ふ~、やれやれだぜ」
ゾクアックを撃退して一息つくアバレオン。
「ちょっと~! お仕事はこれからが本番ですよアバレオンさん!」
若く元気なミドリがアバレオンに小言を言う。
「そうですよ、私達にはこれから子供達へのプレゼント配りが待ってます」
ブランもアバレオンをたしなめる。
「さあ、気合いを入れるんだアバレオン!」
ヴァジュラマンも激を飛ばし活を入れる。
「あ~、もう! わ~ったって! 頑張りますよ!」
やけっぱちになるアバレオン。
かくして、戦いは終わりヒーロー達によるプレゼント配りが始まった。
ヒーローにクリスマス休みがあるとは限らない、頑張れアバレオン!
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