第2話 アバレオンの日常
「
「わ~ってます、怪我人をいじめないで!」
獣王刑事アバレオンこと
ヒーローネームに刑事と付くように表の顔は刑事である。
ただし、宇宙の警察の刑事だ。
「アンダースーツの性能テストをサボって逃亡、偶然事件に遭遇して解決したから報告書の提出だけで済んでるんですよ?」
マゼンタ色のショートボブカットに眼鏡を掛けた黒スーツ姿の巨乳美女が心破に小言を言う。
「実地でやったから良いじゃん、性能テストの報告も併せて書いてるよ!」
相棒のピンク髪にぶ~たれつつも手は休めない。
「そこ、三行目に誤字がありますので訂正をお願いします♪」
「鬼! 悪魔! 税務署! ピンク髪!」
「私の名前はマゼンタです、カレー馬鹿さん♪」
ピンク髪ことマゼンタが、毒舌で返す。
「インドとカレーを馬鹿にするな、クシャトリアの末裔として聞き逃せん!」
心破、インドの血が流れていた。
「ならクシャトリアの血に賭けて、報告書を書き終えてくださいね♪」
「や、やってやら~いっ!」
心破とバイオロイドマゼンタ、二人は
宇宙から悪党が地球に来れば、それに対応する警察も警察署ごとやって来た。
何で日本の田舎町に来たのかと大騒ぎになるも、三年ほどで地球に受け入れられていた。
「相棒兼教育係の私を無視しての暴走行為のペナルティです」
お説教モードに入ったマゼンタ、人間と変わらず食事や生殖などが可能な有機ボディだが思考はロボットだ。
「へいへい、罰則には従ってますよ」
「任務での行動は高評価できますが、素行面の改善が課題ですね」
野生の心破と理性のマゼンタ、この凸凹コンビが夕暮町の対宇宙人犯罪の要だった。
「でもあのアンダースーツ、もうちょっと固くならねえ?」
先日、オクトモンスターの触手攻撃を生身の蹴りで払えたのはレザースーツ状の
アンダースーツが衝撃を反発したからだ。
「その件も記載を忘れないで下さ……ゾクアックの反応を探知!」
「っしや、出動だっ!」
書類作業を放り出そうとして片足を吊るされている事を忘れベッドから中途半端に落ちた心破。
「怪我人は無茶をしないで下さい!」
「いや! 行かねえでどうするよ?」
「あなたは、きちんと自分自身の安全も守って下さい!」
「だったらそこはお前に任せる! 付き合えよ!」
無茶苦茶な事を言う心破の吊られた足を開放するマゼンタ。
「支離滅裂です、ですが非常時事態として許可します」
「へ♪ 流石俺の相棒」
解放され、片足にギプスを付けた姿で立ち上がると検査着を脱ぎ捨てる心破!
「礼応巡査部長の体内ナノマシン起動、アンダースーツ電送します」
マゼンタの目から心破へ光が放たれると、心破は黒のレザースーツを身に纏った。
「うっし、痛みは止まったな♪ 行こうぜマゼンタ♪」
「一時的な処置で活動限界は一時間です、無茶はしないで下さい」
「つまり、一時間以内なら好きなだけ暴れていいんだな♪」
「……あなたのその思考パターンは理解できません」
「理解しあえなくても上手く人付き合いはできる、獣着っ!」
「マゼンタ、アーマーを装着します」
心破がアバレオンに変身し、マゼンタも名前の通り赤紫色のロボットを思わせる武骨なアーマーを身に纏い二人で病院の窓から飛び降りる。
「で、現場はどこだ?」
走り出しながら訪ねるアバレオン。
「先導します、マシンで移動した方が効率が良いのですが怪我人に運転をさせるのは規則違反なので仕方なく走ります」
脳筋な相棒に呆れながらも走っていくマゼンタとそれを追うアバレオン。
凸凹刑事コンビが到着したのは、地元の石材店の採石場だった。
灰色の犀の怪人が黒づくめの戦闘員達に石を投げさせ、投げられた石を角で砕いていた。
「そこまでだ、ゾクアックのアホ共!」
「あなたも負けてないと思います」
名乗りの前の声掛けで叫ぶアバレオンと、毒づくマゼンタ。
「あ~ん? テメエがアバレオンか!」
犀の怪人、ライノモンスターが振り向く。
「おう、獣王刑事アバレオン!」
名乗りを上げるアバレオン。
「汎銀河警察のマゼンタです、不法侵入に器物損壊ですね」
冷静に敵の罪状を述べるマゼンタ。
「やかましい、警察が怖くて宇宙海賊ができるか!」
反論し、クラウチングスタートの構えを取るライノモンスター。
戦闘員達は怪人を後ろから見守っている。
「抵抗するようですね、か」
「宇宙海賊討伐法でぶっちめる!」
マゼンタがしゃべる前に突っ込んで行くアバレオン。
ライのモンスターの突進とアバレオンの頭突きがぶつかり合い
アバレオンが吹き飛ばされて戻ってきた。
「スーツの損傷二十パーセント、相変わらず理解不能です」
呆れるマゼンタ。
「相手の技は一度は受けるのが俺の戦いの礼儀だ」
「プロレスなどの格闘技の試合ではないのですから改善してください」
「断る、痛みを知る事を戦う人間は忘れちゃいけねえんだ!」
相棒と言い合いながらも構えるアバレオン。
「敵の攻撃の痛みを知り、それを守るべき人々が受けたらどうなるかを思い、そうはさせじと立ち向かうのが俺の流儀だ!」
己の流儀を語り聞かせるように叫ぶアバレオン。
「理解できそうですが受け入れ難いです、決着を付けますよ」
「ああ、やってやる!」
マゼンタと共に突撃するアバレオン、同じタイミングで敵も動き出した。
「ヒャッハ~! トレーニングの成果を見せてやるぜ~!」
アバレオンと手四つになるライノモンスター、どうやら採石場を勝手にジム代わりにしていたらしい。
「この町はお前らの遊び場じゃねえんだよ!」
敵との力比べに応じるアバレオン。
「戦闘員達は私が処理します」
脳筋な相棒に怪人を任せて、戦闘員達を相手に格闘するマゼンタ。
ライノモンスターは、力自慢なだけあってアバレオンを押していた。
「オラオラ、どうした!」
アバレオンを煽るライノモンスター、だがアバレオンも腕のタービンを回して
出力を上げて押し返す。
「だあっ!」
骨折が完治していないのに足を踏ん張り、押し返しから殴り返しに行くアバレオン。
「良いねえ、根性あるじゃねえか!」
ライノモンスターが腕を肥大化させてラリアットで返す。
吹き飛ばされるも倒れず耐えるアバレオン。
「くたばれ~~~!」
ライノモンスターが止めを狙い突進してきた!
アバレオン、わずかに体勢をずらしぶつかる瞬間にライノスモンスターの腋にアッパーの要領で腕を差し込む!
「アバレオンホイップッ!」
腕を差し込むと同時に体を背負い投げのように捻り敵を投げ飛ばしたアバレオン。
投げられたライノモンスターは岩山に激突した!
「決めるぜ! アバレオンファイヤーッ!」
相手の動きが止まった所で、必殺技のアバレオンファイヤーを発射する!
超高熱の火球が岩に角が刺さり動けなくなったライノモンスターを爆砕した!
敵を倒すと同時に変身が解け、痛み止めの効果も切れて心破は倒れる。
「事件解決ですね、お疲れさまでした」
戦闘員を倒し終わったマゼンタが、心破を抱き起す。
「あ~、硬かったぜあの野郎!」
どこか心地よさげに叫ぶ心破。
「そうですか、では病院に戻ったら今回の報告書と始末書を書いて下さいね」
機械的に告げるマゼンタ。
「ちょ! 待てよ、事件解決しただろ!」
書類仕事と聞いて慌てる心破。
「ええ、だからこそ報告書の提出は重要ですし病院脱走や書類仕事のサボタージュの規則違反のペナルティと功績を差し引けばトントンかと」
規則は規則と、心破を抑え込むマゼンタ。
罰則を恐れず粉骨砕身する、それがアバレオンの日常だった。
規則に負けず、平和を守れアバレオン!
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