第3話 自己紹介 後半

自己紹介は名前の順のため、次はアリシアの後ろの席に座る俺の妹、アリスの番となる。……が、先程の自己紹介があまりにもすぎたせいか、どこかやり辛そうにしながら立ち上がった。


「えっと……ア、アリス、です。よろしくお願いします……」


 うん、普通だな。

 それ以外に感想が出てこない程普通だ。

 まあ、俺以外に知り合いがいないこの状況で、ということを鑑みればしょうがないか。顔を赤らめ、なんとか聞こえるくらいの声ではあったものの、まあ良しとしよう。


 それから何人かの自己紹介が恙なく進んでいく。後半に差し掛かったところで、どこか見たことのあるような銀髪ロングの子が、片足を上げて格好良くポーズを決めた。

 あ、もう少しでパンツ見えそう。


「私はミーナ! いずれ世界最強の魔法使いとなる者!」

「ん? ……あー、隣の家のミーナちゃんか。見ないうちに随分と大きくなったなぁ」

「あ、お久しぶりです、ハルトお兄ちゃん。最初見た時びっくりしましたよ」

「悪いな、伝えてなくて。でも、俺のことはちゃんと先生と呼べよ?」


 はーい、と元気よく返事をするミーナ。

 ミーナは家の隣に住んでいる子で言ってしまえば少し年の離れた幼馴染みたいなものだった。十二歳になって冒険者カードを作ってからは殆どの時を王都で過ごしていた為、久しぶりにあったミーナをミーナだと分からなかった。

 ちなみに、こちらを睨んでる引きこもりな我が妹は引きこもりであるが故にミーナのことを知らない。

 きっと後でお兄ちゃん呼びについて言及されるんだろう。

 アイツ結構ブラコンの気質があるからな。かなり分かりやすいんだが、本人はバレてないつもりらしい。


 その後は自己紹介も滞り無く進み、いよいよ最後となった。

 銀髪ショートの、どこか少年っぽさもある少女がビシッとポーズを決める。


「私はルミア! クラス一の天才にして、いずれ雷霆魔法を操る者!」

「あー、お前か。とんでもない魔力値を叩き出したっていう天才は。ていうか、雷霆魔法の適性あんの?」

「勿論、ありますとも!……ああ、使えるようになるその日が待ち遠しいです……」

「お、おう……」


 うわ、変態だ。

 うっとりと恍惚とした表情を浮かべて思いを馳せる少女に俺は少し引く。

 適性がなれけば、習得することすら叶わない世界三大魔法の一つである雷霆魔法は歴史上を含めても成り手は10人もいない。そう考えれば如何にこの少女が天才であるか分かるが、やっぱり顔を赤らめながら興奮している少女には引く。

 勿論、俺には雷霆魔法の適性なんてない。

 仮に適正があったとしてよしんば覚えることができたとしても、多分魔力が足らなくて撃てない。


 そんな悲しい事実に打ちのめされ、一瞬気持ちが落ち込むが、すぐに割り切って気持ちを切り替える。俺の才能がないのなんて今に始まった事じゃないしな。

 生徒が使えるであろう魔法を使えない先生……


 べ、別に悔しくなんてないんだからね!?


 はあ、ほんと凹む……

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