僕は確かに僕だった

汐見千里

第1話

僕の友達は、どうしようもなく「女の子」だった。

休みの日には、服を買いに行って、プリクラ、スイーツ、自撮り……。

何度も同じことを繰り返した。


嫌だと言うことも出来ずに−−。


あのとき言えていたら、何か変わっていただろうか。

僕が「女の子」ではないことを。


小学生の頃、僕には友達がいなかった。

べつに僕はそれでもよかったけど、周りがそれを許さなかった。

そのとき声をかけてくれたのが、あの子だった。


「一緒に遊ぼう。」


嬉しかった……んだと思う。

僕はまた一人になるのが怖くて、必死になって「女の子」を演じた。

髪は可愛い飾り付きのゴムで結んだし、頑張ってスカートも履いた。

みんなと一緒でいれば、許されるんだと思った。


でも、僕は気づいてしまった。

−−普通ではいられないことに。


真っ先に、あの子に伝えた。確か、中学三年生のとき。


「……そうなんだ。」


そういって、君は不自然に話題を変えたよね。

怖かった? どうでもよかった? ねえ、どう思ってたの?


それから、あの子とは次第に疎遠になっていった。

当然だ。僕は「普通」じゃなかったから。


幸せなんて、望んじゃいけない−−。


本当に?


ねえ、普通ってなに? なんで僕は女の子に生まれてきたの?

男の人と結婚しなきゃいけないの?

−−友達は、つくっちゃいけないの?


ジリリリリ


目覚まし時計の音で、僕は飛び起きた。

背中にはじっとりと汗をかいている。

嫌な夢だ。


もう乗り越えたと思っていた。

今では、似たような人と会ったりもするし、一人ってわけじゃない。

みんなで肩を寄せ合って、この世界に隠れ住んでいる。


もう疲れたな。こんな生き方を続けていくのは。


いっそ死んでしまおうか。


そんな考えが頭をよぎって、気分は下へ下へと沈んでいく。


ああ、こんなときは−−


誰かにそばにいてほしいのに。

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